著者
篠原 雄治 ヨハネス ノヴィクルニアワン 鈴木 康司 佐見 学
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00095, (Released:2023-01-23)

ビールは、その特徴(エタノールの存在、低いpH、高いCO2含有量など)により、微生物の増殖が抑えられ、微生物学的に安定な飲料として認識されてきた。その一方で、限られた微生物はビール中で生育が可能であり、それらの微生物はビール混濁微視生物と呼ばれる。近年、新規なビール混濁微生物の出現や、従来の伝統的なビールよりも微生物学的安定性が低い非伝統なビール(ローアルコールビール、ノンアルコール飲料など)の人気の高まりにより、ビール混濁微生物が継続的に出現し、微生物による変敗事故が発生する可能性がある。このようなビール混濁微生物の増加は、種特異的なPCRベースの検出方法に大きく依存する検出法では、対応できなくなると考えられる。よって、種特異性にとらわれないより普遍的な検出法、すなわち「種非依存的」な検出法と、「より広範な微生物種を正確に判定できる包括的な種判定法」が必要とされると考えた。そこで、著者らはホップ耐性遺伝子horAやhorCなどのビール混濁乳酸菌特異的な遺伝子マーカーを用いた種非依存的なPCR検出法、および新しい技術である第3世代DNAシーケンサー(MinION)を用いた微生物同定法を開発し、高精度かつ広範囲で、醸造所における品質管理として使い勝手のよい手法を確立した。また、第3世代DNAシーケンサーを用いた複数の標的遺伝子の同時解析に成功し、種の同定と種内識別のための、特異的遺伝子マーカーの検出を同時に行う方法を考案した。第三世代シーケンサーは、その応用範囲の広さ、初期投資コストの低さ、ランニングコストの低さから、ビール工場における新たなビール混濁微生物対策の武器として広く採用されることが期待される。
著者
中澤 洋三 森野 達也 宮下 慎一郎 南 和広 相根 義昌
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.25-31, 2023-01-15 (Released:2023-01-16)
参考文献数
13

北海道固有の生物資源であるエゾシカを有効活用するべく, エゾシカ肉の特徴を活かし, 独特な臭みや硬い食感などの欠点を改善した「蝦夷鹿ソーセージ」を開発した. 粗挽きエゾシカもも肉に粗挽き豚脂20 %, 砕氷20 %, 食塩2.4 %, 砂糖2 %, 発色剤0.15 %, 発色助剤0.1%, ポリリン酸塩0.2%, 重曹0.4 %, ブラックペッパー粗挽き0.6 %, オールスパイス0.2 %およびセージ0.2 %を添加して, 手捏ねで混合した後, 羊腸に充填し, 60 ℃雰囲気-30分乾燥後, 60 ℃雰囲気-30分燻煙し, 中心温度70 ℃-1分のクッキングで製造した「蝦夷鹿ソーセージ」は, 食感と血のような味質が大幅に改善し, シカ肉に特徴的なタンパク質と鉄の含量が高く, 脂質の含量が低い栄養特性を有し, 肉色の赤さを生かした赤みが強い, 官能評価のバランスに優れた製品となった.
著者
西本 有紀 辻井 良政 菱川 美千代 髙野 克己 藤田 明子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00055, (Released:2023-01-06)

本研究では,ブレンド米の食味評価方法に着目し,ブレンド比率による各評価の精度や,ブレンド米の食味について新知見を得られた.1. 酵素活性量測定,粘弾性測定,食味官能評価,機器による食味評価(食味鑑定団),いずれの方法においても,精白米のブレンド比率ごとの予測値と測定値の相関係数はr≧0.57(p<0.05)であり,高い精度で測定ができることがわかった.2. 食味評価が低い精白米のブレンド割合が多くなるにつれ,食味の低下がみられた.ただし,特徴が異なる精白米のブレンドにおいてはその比率による食味の変化が大きく,類似品種のブレンドにおいては,食味の差異が小さいことがわかった.3. ブレンド比率が食味に与える影響は,酵素活性量(β-アミラーゼ,β-ガラクトシダーゼ),粘弾性評価,そして食味評価(食味官能試験・機器測定)により明らかになることがわかった
著者
安田 みどり 米山 明男 竹谷 敏 田端 正明 川﨑 美紅 江原 德美 廣沢 一郎 妹尾 与志木
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00053, (Released:2023-01-06)

本研究では, 機械そうめんの食味の特徴をミクロ構造から解明することを目的とした. 食味検査により, そうめんのコシ (弾力) は, 機械そうめん (神埼そうめん, MS1) <手延べそうめん (揖保乃糸, TS) <機械そうめん (ナンバーワン, MS2) の順となった. 一方, 破断強度の測定によって求めたコシは, MS1<MS2<TSの順に強くなった. 放射光CTスキャン測定により, TS (乾麺) は中心部に帯状の大きな空隙が存在しており, 茹でた後も一部帯状の空隙が残っていることがわかった. この外側と中心部の内部構造の違いが, 破断強度のコシが強い要因であると考えられる. 一方, 機械そうめんは小さな空隙が均等に分散した内部構造であった. これが, 破断強度のコシが低い値となった原因であることがわかった. しかし, 食味検査でMS2がTSよりもコシが高いという結果であったことから, 茹で操作における吸水速度も食感に影響したと考えられる.
著者
深井 洋一 松沢 恒友
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.839-841, 1999-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1

スイカの肉質悪変化である,うるみ果(コンニャク果)について食品化学的な測定を行った.その結果,うるみ果は,健全果と比べて,水分およびpHが有意に高いのに対して,明度,硬度,遊離糖組成含量,可溶性固形分およびアミノ酸組成含量が有意に低くなることが認められた.
著者
大泉 加奈子 井戸川 詩織 岩元 靖 伊藤 健介 藤井 智幸
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.142-149, 2016-04-15 (Released:2016-05-31)
参考文献数
34
被引用文献数
6 4

本研究では,豆乳コロイド分散系の不安定化に及ぼすpHの影響について,まずpH低下に伴う豆乳の脂質およびタンパク質成分の寄与に着目し,粒子径分布,粘度を評価した.アスコルビン酸の添加によって,粒子径はpHがおよそ6から5.8までそれほど増加しなかったが,pH 5.6になると急激に大きくなった.また,流動性指数はpH 5.8以下で1より顕著に低値であった.このことから,豆乳のpHが低下するに伴って凝集が起こり,粘度が上昇したと考えられた.次に,コロイド分散系の不安定化を遠心操作によって促進させコロイド安定性を評価し,豆乳コロイド中の状態変化について3段階に分けて考察を加えた.豆乳の粘度変化および安定度変化には,タンパク質と脂質の凝集体生成が寄与していることが示唆され,その生成には原料豆乳成分の影響が認められた.本研究の結果から,pH低下に伴う豆乳コロイド系の安定性を,原料豆乳の成分組成から予測することが可能となった.
著者
成澤 朋之 仲島 日出男 海野 まりえ 乙部 千雅子 山田 昌治 朝倉 富子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.315-323, 2020-09-15 (Released:2020-09-25)
参考文献数
23

Flavor is one of the important factors for udon, white salted Japanese noodles. Using gas chromatography/mass spectrometry, we analyzed the volatile compounds from the flour, dough, and boiled noodles to clarify the mechanism of udon flavor formation. Hydrocarbons were the main compounds from the flour, while aldehydes and ketones were the main compounds from the dough and noodles. These aldehydes and ketones are presumed to be generated from the enzymatic oxidation of unsaturated fatty acids by lipoxygenase (LOX) upon the addition of water. LOX activity was significantly higher in the cultivar Norin61 than in Satonosora. In conclusion, the characteristic volatile compound profiles of Norin61 are due to differences in LOX activity. These results have been applied to the development of new value-added noodle products by various companies.
著者
福渡 努
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.325-330, 2018-06-15 (Released:2018-06-21)
参考文献数
19

Recent years, many people have wanted to be healthier and paid attention to vitamin rich foods. However, vitamin contents in foods shown in tables of food composition do not always correspond to vitamins available for body, because dietary B-group vitamins exist as free-, cofactor- and bound-forms and human cannot completely digest and absorb the bound-form B-group vitamins. This manuscript shows our recent works to develop evaluation of vitamin nutritional status and bioavailability of B-group vitamins in diets and foods using urine samples as nutritional biomarkers. Especially, our results showed that eggs contained enough amounts of bioavailable pantothenic acid and biotin. Evaluation of bioavailability of B-group vitamins in foods and intake of foods such as eggs containing high bioavailable B-group vitamin is important to maintain health.
著者
細谷 幸恵 川崎 晋 前田 憲成 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.376-383, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
21

味噌に混入させた大腸菌O157の消長を明らかにするために,市販味噌24検体を対象に複数の保存試験区(5,10,20,30 °C)における大腸菌O157生菌数の変動を寒天平板法およびMPN法により観察した.全保存試験区において,味噌混入下の大腸菌O157は増殖することなく段階的に死滅し,その死滅速度と味噌原料(米,麦,大豆)に関連は見られなかった.一方,味噌検体の水分活性値が大腸菌O157の死滅速度に影響を与える可能性を示した.本結果により,大腸菌O157が意図せず味噌に混入した場合であっても,常温での流通,保存の期間に死滅することから,そのリスクは実質的に無視しうるものであると推察された.
著者
村松 良樹 田川 彰男 笠井 孝正 境 博成 福島 正義
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.548-550, 2000-07-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

10∼45%(w/w)の固形分濃度に調整したリンゴ果汁の熱物性を10∼50°Cの温度範囲で測定した.その結果,熱伝導率,温度伝導率は温度について一次式,また濃度に関しては二次式とした実験式でそれぞれ表すことができた.また,比熱については,温度,濃度双方に関して一次式とした実験式を得た.
著者
井奥 加奈 高田 陽子 青山 紗弓 竹井 よう子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.190-195, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

野菜類におけるフラボノイド含有量の季節変動を検討するため, 6月に流通する主な市販野菜のフラボノイド含有量とピーマンに含まれるケルセチン・ルテオリン含有量の季節変動を検討した. ピーマンにおいては10-12月にケルセチン・ルテオリン含有量とも多くなり, 5-6月に減少する傾向がみられた. フラボノイド含有量が多い時期は, 産地間の含有量にも有意な差がみられた. そこで, 緑黄色野菜5種類 (ケール, こまつな, ほうれんそう, チンゲンサイ, 青じそ) に関して6月におけるケルセチン含有量と1月におけるケルセチン含有量を比較した. その結果, ケルセチン含有量の多いケール以外では有意な差がみられなかった. したがって, 野菜類のフラボノイド含有量の季節変動は変動が大きな野菜と小さな野菜がある可能性が示唆された.

1 0 0 0 OA クドア

著者
川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.491, 2017-09-15 (Released:2017-09-22)
参考文献数
1
著者
合谷 祥一 村上 敦 佐藤 桂子 稲積 佐代子 山野 善正
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.679-684, 2000-09-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11

疎水基であるトリテルペノイド基にカルボキシル基が結合したムクロジサポニン(SS)の界面活性,乳化性,クリーミング安定性およびゼータ電位に対するpHの影響を調べ,特にクリーミング安定性とゼータ電位についてSoyasaponin I (SI)によるエマルションと比較した.(1) 界面生成直後の界面張力は,pH 7以下でほぼ一定であり,pH 8以上で大きく増大し,pH 9で一定になった.界面生成3時間後では,pH 5以下で,界面に不溶性の膜が観察された.(2) SSはpH 6未満でそれ以上よりも低い乳化性を示した.(3) SSのエマルションのクリーミング安定性はpH 6以下で低くなり,乳化性と一致した傾向を示した.pH 7以上では,SIよりも平均粒径が低いにも関わらず,高い水相分離率を示した.(4) ゼータ電位は,pH 6から8にかけて増大し,pH 8.5以上でほぼ一定になった.また,どのpHにおいてもSIエマルションのゼータ電位よりも低い値を示した.
著者
木下 幹朗 柚木 恵太 得字 圭彦 川原 美香 大庭 潔 弘中 和憲 大西 正男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.270-275, 2008-06-15 (Released:2008-07-31)
参考文献数
34
被引用文献数
4 2

ナガイモのガンに対する機能性を探索する目的で,1,2-ジメチルヒドラジン投与マウスにおける大腸腺腫(ACF)発症に与える食餌性ナガイモ粉末の効果を検証した.ナガイモ粉末をAIN-93G標準飼料のコーンスターチ部分に100%または50%置き換えて投与したところ,大腸腺腫の発症が有意に抑制された.また,加熱および非加熱の生ナガイモ粉末ともに同様の効果が認められた.DNAマイクロアレイを用いて大腸での遺伝子の異同を調べたところ,ナガイモ投与群ではアポトーシスを誘導する遺伝子群の増加が認められた.
著者
白井 展也 樋口 智之 鈴木 平光
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.88-94, 2015-02-15 (Released:2015-03-31)
参考文献数
26

緑茶抽出物と魚油の6ヶ月間の同時摂取が,高齢者の認知機能と血漿脂質に与える影響について実験した.緑茶抽出物と魚油の同時摂取は,摂取前に比べて,6か月後の知能評価スケールを有意に改善した.また,緑茶抽出物と魚油摂取群の6か月後の知能評価スケールの増加は,プラセボ群に比較して,有意に高かった.これらの事から,緑茶抽出物と魚油の同時摂取は,高齢者の認知機能を改善している可能性が示唆された.血漿中のDHAおよびEPAの割合は,両群とも摂取前に比べて6ヶ月目で高くなった.しかし,3ヶ月目において,緑茶抽出物および魚油摂取群のDHAおよびEPAの割合は,プラセボ群に比べて,有意に増加を示した.これらの変化は,途中,試験群による違いが見られるものの,最終的に食材に提供される魚介類の増加が影響したと考えられた.血漿中の中性脂肪含量は,緑茶抽出物および魚油摂取群において,摂取前に比べて,6ヶ月目に有意な低下が示され,高齢者においても,緑茶抽出物および魚油同時摂取は中性脂肪の低下に有効である可能性が示唆された.これらの事から,緑茶抽出物と魚油の同時摂取は認知機能の改善に有効である可能性が示唆され,また,高齢者においても中性脂肪の低下に有効であると考えられた.
著者
藤原 孝之 坂倉 元 伊藤 寿 本庄 達之助
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.24-28, 1999-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

ブドウ果実の糖分析中のショ糖分解に及ぼすインベルターゼの影響を検討した.1.ブドウ果実の搾汁液においては,ショ糖の加水分解が急激に起こり,主にインベルターゼの作用によるものと判断された.搾汁液のショ糖分解程度およびインベルターゼ活性には,大きな品種間差異が認められた.2.今回供試したブドウ7品種の中で,‘スチューベン’のみは特異的にインベルターゼ活性が低く,ショ糖含量が高かった.3.‘スチ〓ーベン’を除くブドウ各品種のインベルターゼ活性は,イチゴ,ニホンナシ,メロンおよびウンシュウミカンより極めて高かった.4.ブドウの糖分析において,エタノール抽出を行う場合,抽出時のショ糖分解を抑えるために,抽出前に果肉切片をマイクロ波処理することが必要と判断された.
著者
上中 登紀子 福田 滿 豊沢 功
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.626-631, 2000-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

大豆の吸水時における種子の形状変化を子葉細胞の形状変化の観点から調べ,以下の知見を得た.(1) 大豆は乾燥時には球状体に近い形であるが,吸水すると種子の幅(W)方向や厚さ(T)方向と比較して,長さ(L)方向への膨潤が著しいため楕円体に変形した.しかし,小豆やいんげんは,乾燥時からL方向に長い形をしており,吸水,膨潤してもほぼ元の形状を保っていた.(2) 乾燥大豆の子葉細胞はL方向に収縮しているが,吸水,膨潤すると,L方向に特に大きく膨潤し,細胞間隙が広がることを認めた.(3) 吸水大豆の子葉細胞は,種子のL方向と垂直な長軸をもつ細長い楕円形の回転体に近い形で存在していた.(4) 乾燥大豆の子葉細胞の細胞壁には,種子のL方向と垂直なしわが存在し,子葉細胞はL方向に折りたたまれていることが明らかになった.(5) 大豆の吸水による膨潤は,枝豆種子の乾燥・収縮時における形状変化の逆過程に類似している.なお,大豆種子の吸水・乾燥によるL方向への膨潤・収縮には,皮も関与していると推察した.

1 0 0 0 OA 応答曲面法

著者
柴田 真理朗
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.728-729, 2013-12-15 (Released:2014-01-15)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4