著者
茂木 弘之 宇佐見 衛 勝崎 裕隆 今井 邦雄 樋廻 博重 小宮 孝志
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.688-691, 2002-10-15
被引用文献数
5

15種の香辛料粉末の80%<B>エタノール</B>抽出物についてヒト白血病細胞の増殖抑制率を調べた。<BR>(1)<B> タイム,ナツメグ,スターアニス,クローブ,トウガラシ,ターメリック,ジンジャー,ガーリック,シナモン,ブラックペーパー,オールスパイス,ローズマリー,セージ,ローレル</B>の抽出物のうち200<B>μ</B>g/mlの濃度で80%以上の細胞増殖抑制率を示したものは<B>タイム,ナツメグ,クローブ,ターメリック,ジンジャー,シナモン,ブラックペーパー,ローズマリー,クミン,ローレル</B>であった。これらの香辛料抽出物の50<B>μ</B>g/ml濃度で細胞増殖抑制率が70%以上のものは<B>ナツメグ,ターメリック,シナモン,ブラックペーパー.ローズマリー,セージ,ローレル</B>であった。香辛料抽出物の10<B>μ</B>g/ml濃度で<B>ターメリック</B>は100%,<B>ローレル</B>は95%の高い細胞増殖抑制率を示したのに対して,他のものはいずれも50%以下であった。<BR>(2) 細胞増殖抑制率の高かった<B>ターメリック</B>と<B>ローレル</B>の抽出物の作用機構としてDNA断片化が観察され,<B>アポトーシス</B>誘導によるものと推定した。
著者
四宮 陽子 宮脇 長人
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.271-279, 2009-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
1

食料自給率40%の2002年と60%の1970年の食事を国民栄養調査結果などの資料に基づいて再現し,食品構成や栄養バランスおよび食料消費に伴うCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行った.<BR>1. 1970年は和・洋・中の料理の種類に関わらず,ご飯とみそ汁,漬物がベースという食事パターンが多かった.2002年は主食の米が減少し,主菜の肉類や魚介類が豊富に増加し,副菜も季節,産地を問わず贅沢に多様化した.<BR>2. PFCバランスを比較すると1970年の方が理想バランスに近く,2002年はたんぱく質と脂質が増加し,炭水化物が減少していた.<BR>3. 献立から計算された1日平均CO<SUB>2</SUB>排出量は,1970年907g/日に対して,2002年は2743g/日と約3倍に増加し,その差は環境省のCO<SUB>2</SUB>削減目標値1人1日1kgを大幅に超えた.この増加の原因は摂取量増加と自給率低下の両方が考えられる.

2 0 0 0 OA 複雑系

著者
平藤 雅之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.340-340, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
著者
盛永 宏太郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.245-249, 2002-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
11

(1) 乾燥丸大豆を破砕後に焙煎して,TI活性の変化を調べたところ,無傷の大豆のTI活性は熱失活して1/20程度に低下したが,破砕して微細になった大豆ほどTIは熱安定性を増して熱失活しなくなった.粒径1mm以下に破砕した大豆のTI活性値は未加熱大豆のTI活性に近い高い値を示した.また,乾燥大豆を圧扁してから焙煎してそのTI活性の変化を調べたところ,破砕の場合と同様に,薄く圧扁した大豆のTIほど熱失活せずTI活性は高い値になった.これは破砕または圧扁処理により,大豆細胞が破壊されたためにTIが熱安定性を増したものと思われた.(2) 生大豆および焙煎丸大豆,焙煎破砕大豆のタンパク質をトリプシンで消化したところ,三者共にトリプシン量が残存するTI単位量以下の少量であっても,そのトリプシン添加量に応じて消化率は徐々に向上し,TI単位量に達したときに消化率は約50%になった.その後もトリプシンの添加量に比例して消化率が向上した.添加トリプシン量がTI単位量の約2倍になったときに消化率はほぼ最大値に近くなった.また,焙煎丸大豆のタンパク質はTI活性が低いので少量のトリプシン量で良く消化するのに対して,生大豆と焙煎破砕大豆はTI活性が高いために消化が悪く,多量のトリプシンを加えないと消化率は良くならなかった.(3) 焙煎大豆のTI失活に及ぼす焙煎温度と時間の影響を調べたところ,120℃加熱では温度が低く,無傷の丸大豆でもTI失活は不充分であった.破砕大豆TIはまったく失活しなかった.150℃加熱の丸大豆は加熱10分後にTI活性値は1/10に減少し,20分後には1/20になった.150℃加熱の破砕大豆のTIは20分後でもわずかに10%減少しただけだった.180℃加熱の丸大豆は加熱5分でTI活性値が1/10に減少した.しかしこのときの大豆は黒変して焦げた状態になった.破砕大豆のTIは180℃加熱でもなお幾分活性を持続し20分後の値は生の約1/5を示した.
著者
大久 長範 大能 俊久 熊谷 昌則
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.91-95, 2006-02-15
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

1)稲庭うどんのタンパク質含量と茹で麺の表面の硬さ(H1),全体の硬さ(H2)及びH2/H1の関係を調べた.H2/H1とタンパク質含量とは負相関になった(r=-0.61).<BR>2)同一企業でタンパク質含量(10.3%,9.6%)の異なる稲庭うどんの空隙を調べたところ,タンパク質含量が低い方が平均長径が大きくなった.<BR>3)各種の稲庭うどんの横断面の空隙率とH2/H1には空隙率が8%から10%に最大値があり,それを越えるとH2/H1が低下するという傾向があった.
著者
田辺 創一 渡辺 道子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.948-951, 2001-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1
著者
法邑 雄司 鈴木 忠直 小阪 英樹 堀田 博 安井 明美
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.619-626, 2006-12-15
参考文献数
11
被引用文献数
9 12

丹波黒の無機元素組成による産地判別モデルを構築し,丹波黒一粒による産地判別の可能性について検討を行った.<BR>国産,中国産計66点の丹波黒について,約100粒をマイクロ波試料分解装置により酸分解し,ICP-AES法及びICP-MS法により計24元素測定した.後進ステップワイズ法により選択した6元素(Ba, Ca, Mn, Nd, W, Ni)とKの濃度比により,全試料66点について国産,中国産を正しく分類する線形判別モデルを構築した.<BR>モデルの構築に用いた試料65点,及び新たに収集した試料32点の計97点からそれぞれ一粒ずつ取り出し,同様に各元素とKとの濃度比を求めた.6元素とKとの濃度比を,構築した判別モデルに代入したところ,約84%(97点中81点)が適中した.さらに,ICP-MS測定の15元素から選択した3元素(Cd, Cs, V)とKとの濃度比により線形判別モデルを構築し,一粒による産地判別について検討したところ,約94%(97点中91点)を適中し,判別精度の向上を図ることができた.
著者
小林 健治 土佐 典照 原 安夫 堀江 修二
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.930-938, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
6 11

水道水を電気分解処理して得られたアルカリ性水の炊飯水としての有効性について検討を行い,以下の結果を得た.(1) 白米と浸漬水の総体積変化は,アルカリ水,原水(水道水),酸性水の順に大きくなった.任意のpHに調整された試験水を用いた実験より,白米の膨潤度はpHの影響を受けていることが確認された.(2) 画像処理装置により炊飯米形状を二次元的に計測し,面積はアルカリ性水,酸性水,原水の順に大きく,アルカリ性水のものは原水のものよりも約4.5%の差がみられた.(3) 三粒法により各米飯のテクスチャーを測定したが,粘りと硬さの比がアルカリ性水,酸性水,原水の順に大きな値をとった.アルカリ性水により処理された炊飯米のテクスチャーが高い原因として,炊飯米表面の糊化した澱粉量が多いことによるものであることが考えられた.洗米において白米からの澱粉の溶出量は,アルカリ性水処理によるものが最も高く,炊飯米においても同様であった.この原因として,洗米では高いpHや界面活性的な働きが白米表面物質の遊離を促進するため,また炊飯米では高いミネラル濃度が澱粉細胞の細胞壁に沿って存在するタンパク質の可溶性を促進するためと推察された.
著者
熊谷 武久 瀬野 公子 川村 博幸 渡辺 紀之 岡田 早苗
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.677-683, 2001-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
21
被引用文献数
5 6

米及び米加工品より分離した植物性乳酸菌の食品発酵性,人工消化液の耐性及びヒト食餌モデル培地での生育について検討した.(1) 用いた乳酸菌はL. casei subsp. casei 6株及びL. plantarum 3株であった.(2) L. casei subsp. casei 327, 379, 409, 508及び511の5株は植物性素材で良好なpH低下を示し,米,小麦,トウモロコシ及びジャガイモでは菌数は103 cfu/mlオーダー程度に増殖し,豆乳,野菜汁及び果汁は109cfu/mlオーダー程度まで増殖した.牛乳ではpHの低下が少ないが,菌数は108cfu/ml以上に増加した.(3) L. plantarum 3株も植物性素材の発酵性は良く,米のみがpHの低下,菌数の増加が他の植物性素材よりやや悪かった.牛乳はpHの低下,菌数の増加がほとんど見られなかった.(4) 人口胃液pH 3.0以上では生菌数の変化は見られなかったが,pH 2.5ではL. plantarum 204の生菌数が若干減少し,耐酸性の高さが示唆された.それ以外の株では顕著な減少が見られた.(5) 人工腸液においては,全ての株で生菌数の増加が見られたが,胆汁無添加よりは生育度が低かった.(6) 胆汁を含む日本人とアメリカ人の食餌をモデルとした培地を調製し,両培地で生育が認められた.継代をすることで,生菌数が増加し馴化が見られた.
著者
藤野 正行 何 普明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.618-623, 1998-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
8 5

食用キノコであるタモギタケの加工にともなって生じる煮汁の有効利用に端を発した研究の一環として,熱水抽出物(煮汁)の血糖値抑制効果を調べた.<BR>タモギタケの熱水抽出物は,経口投与により,II型糖尿病モデルマウスKK-A<SUP>y</SUP>の血糖値上昇を抑制し,耐糖能を改善した.<BR>熱水抽出物をβ-グルカナーゼ処理した後,3倍容のエタノールで処理して得たエタノール処理画分は,KK-A<SUP>y</SUP>マウスの血糖値を一時的に抑制したが,作用は微弱であった.<BR>熱水抽出物を対照動物(C57BL/6Jマウス)に投与したが,血糖値および耐糖能に変化はみられなかった.<BR>今後,有効成分の特定と作用機序の解明が必要であるが,本研究は,副生物の有効利用の可能性を示唆した.
著者
伊藤 智宏 伊藤 裕子 水谷 峰雄 藤城 克久 古市 幸生 小宮 孝志 樋廻 博重
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.339-344, 2002-05-15
被引用文献数
1 15

アズキ熱水抽出物(アズキ煮汁)の抗腫瘍活性及びその作用機構の一つであるアポトーシス誘導について検討を行った.<BR>アズキ熱水抽出物をDIAION HP-20で処理した後,蒸留水,40%エタノール,60%エタノール,80%エタノールと順に溶出溶媒を切り換え,各溶出画分を得た.これらの溶出画分を用いてヒト胃癌細胞(KATO III cells)の形態学的変化,増殖抑制作用及びアポトーシス誘導により生じるDNAフラグメントの検出を行った.その結果,40%エタノール溶出画分に小球状のアポトーシス小体が観察され,さらにアポトーシス誘導により生じるDNAの断片化を示した.<BR>また,40%エタノール溶出画分によるアポトーシス誘導についてDNA断片化の濃度及び培養時間依存性に関して検討した.その結果,アポトーシス誘導は濃度及び培養時間依存的であることが判明した.また,40%エタノール溶出画分によるヒト正常細胞に対する影響は観察されなかった.以上より,40%エタノール溶出物による抗腫瘍活性機構にはアポトーシス誘導が関与していることが示唆された.
著者
杵淵 美倭子 関谷 美由紀 山崎 彬 山元 皓二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.323-328, 1999-05-15
被引用文献数
8 36

1. コシヒカリの原料玄米中の遊離アミノ酸<BR>コシヒカリの原料玄米からは6.4mgのGABAが抽出された.特に多く含まれていた遊離アミノ酸はアスパラギン,アスパラギン酸,グルタミン酸であった.<BR>2. 圧力処理による玄米の水分変化<BR>400MPaの圧力処理によって玄米中の水分の吸収が早まった.700MPaの場合は圧力処理直後の水分吸収が顕著であった.しかしそれ以降の吸水は無処理のものと比較して大きな差が認められなかった.<BR>3. 圧力処理および浸潰時間による玄米中へのGABAの蓄積<BR>(1) 400 MPaで圧力処理を施し,25℃で浸漬した玄米からは10時間で13.0mg,18時間で18,3mgのGABAが抽出された.200MPa,700MPaでは400MPaよりGABAの蓄積量が少なく,無処理では更に少なかった.<BR>(2) 玄米と水が1:1(w/w),1:0.3(w/w)の場合とも10時間後に玄米中へ蓄積されたGABAの量に違いは認められなかった.<BR>4. その他の遊離アミノ酸の変化(1) 玄米を浸漬することによって多くの遊離アミノ酸が増加したが,400MPaで圧力処理を施した後に浸漬をした場合にはそれが顕著であった.GABAの基質であるグルタミン酸も増加した.しかし圧力処理の有無にかかわらず浸漬中にアスパラギンとアスパラギン酸は減少した.<BR>(2) 圧力処理後浸漬を施した玄米中には無処理に比較して制限アミノ酸であるリジンの増加が認められた.
著者
西条 了康 武田 善行
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.138-147, 1999-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
29
被引用文献数
9 35

(1) 粉砕した茶葉400mgをアセトン抽出→メチルイソブチルケトン溶解→メタノール溶解→ODS処理によりカテキン類を調製し,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った.(2) 抹茶,高級煎茶,普通煎茶,番茶,焙じ茶など5種類の日本茶について調べたところ,(-)-エピガロカテキン-3-ガレート(-EGCg),(-)-エピカテキン-3-ガレート(-ECg),(-)-エピガロカテキン(-EGC),(-)-エピカテキン(-EC)など4種類の主要カテキン類含有量が,総カテキン類の殆どを占めていた.また熱変化生成カテキン類(エピメル化物)である(-)-ガロカテキン-3-ガレート(-GCg),(-)-カテキン-3-ガレート(-Cg),(-)-ガロカテキン(-GC),(-)-カテキン(-C)も少量であるが検出された.特に焙じ茶には多く存在した.(3) 中国緑茶(竜井茶,雲南茶,ガンパウダー),ベトナム緑茶,インド緑茶(ダージリン茶,ダージリン・シルバーチップ)など6種類の外国産緑茶には,日本茶よりも総カテキン量が多く,主要4カテキン類特に(-)-エピガロカテキン-3-ガレートが多かった.4種類の熱変化生成カテキン類も存在した.また少量成分として(-)-エピガロカテキン-3-メトキシガレート(-EGCmetg),(-)-エピカテキン-3-メトキシガレート(-ECmetg),(-)-エピガロカテキン-3,5-ジガレート(-EGCgg),(-)-エピカテキン-3,5-ジガレート(-ECgg)などの存在が確認された.以上のことから,日本茶,外国産緑茶からはFig.1に示した全てのカテキン類と,熱変化生成カテキン類4種類がHPLCにより確認された.(4) -EGCg/-EGC,-ECg/-ECの比率は製茶原料用茶生葉の葉位,成熟度などの情報を与えるものと考察した.熱変化生成カテキン類は焙じ茶製造時に生成したと考えられる.2種類のジガレート(-EGCgg,-ECgg),2種類のメトキシガレート(-EGCmetg,-ECmetg)はそれぞれアッサム種,中国種の特有成分と推定した.
著者
黒田(澤井) 玲子 佐々木 裕 西川 智子 黒田 和道 桜井 孝治 山本 樹生 清水 一史
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.496-498, 2011-10-15 (Released:2011-11-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

我々は,カリン(Chaenomeles sinensis)中の高分子ポリフェノールの季節性インフルエンザウイルス A/Udorn/ 307/72 (H3N2)に対する感染性中和活性および赤血球凝集抑制効果を既に報告している. カリン中の活性画分CSD3を用いて,新型インフルエンザウイルス A/Chiba/1001/2009 (H1N1) pdm に対する赤血球凝集抑制活性および感染性中和活性を評価したところ,5 μg/ml のCSD3で処理したウイルスは赤血球凝集価が約1/2に,感染性が約1/10に減少することが明らかになった.250 μg/mlの処理では感染価は1/3 000に減少したこれらの結果は,カリン中の抗インフルエンザウイルス活性成分は,H1N1新型インフルエンザウイルスに対しても有効であることを示す.更に,赤血球凝集価の減少以上に感染性が減少したことからウイルス吸着段階以降における抑制作用の存在が示唆された.
著者
松木 順子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, 2010-05-15
被引用文献数
4

1982年,Englystらは,アミラーゼ耐性澱粉を難消化性澱粉resistant starch (RS)と名付けた.現在では,1992年EURESTA (RS摂取の生理学的意義に関するヨーロッパ農産業食品関連研究共同作業部会)で定められたRSの定義「健康なヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れる澱粉および澱粉分解産物の総量」が広く受け入れられている.<BR>Englystらは澱粉を消化性別に3種に分類し,さらにRSを要因別に3種<SUP>1) </SUP>(後にBrownらにより4種<SUP>2) </SUP>)に分類した(表).RS<SUB>1</SUB>は細胞壁などで物理的に閉じこめられて,消化酵素が接触できない状態のものである.RS<SUB>2</SUB>はX線結晶回折図形がB型を示す生澱粉である.澱粉粒に穴が少ない,結晶部分のアミロペクチンの側鎖長が長く分岐が少ないことなどがRS<SUB>2</SUB>の難消化性の原因と言われるが,詳細は未解明である.RS<SUB>3</SUB>は,一度糊化した澱粉が再結晶して安定な構造をとるようになった老化澱粉である.湿熱処理澱粉,パーボイル加工澱粉,プルラナーゼ処理澱粉なども含まれる.RS<SUB>4</SUB>は化工によりエステル架橋,エーテル架橋などを施して消化性を低くしたものであり,食品加工後も難消化性を保つことができる.<BR>RSの定量は,消化性の澱粉を取り除いた後に残る非消化性澱粉を定量して行う.Megazyme社が販売しているRS測定キットは,AOACおよびAACCの公定法として認められている.<BR>RS<SUB>2</SUB>, RS<SUB>3</SUB>, RS<SUB>4</SUB>は市販されており,これらは一般的に無味,白色で,糊化温度が高く,エクストルーダー加工性,フィルム形成性がよい.非水溶性食物繊維に比べても保水性が低く,食品素材として小麦粉などと一部置換したときの加工性への影響も少ない.また,焼成品へのカリカリした食感や歯ごたえの付与が可能となる.<BR>RSの生理作用として,血糖応答性およびインスリン応答性の改善,腸機能の改善,血中脂肪に関する症状の改善,プレバイオティクス,シンバイオティクスとしての機能などが注目されている.RSを多く含む食品からのグルコースの遊離は緩やかであり,短期的には食後血糖値上昇の抑制,食後インスリン応答の抑制,満腹感の持続などが報告されている.また,インスリン応答の抑制により,貯蔵脂肪の消費促進が期待され,長期的には,2型糖尿病や耐糖能異常などの症状の改善と予防,肥満や体重の管理に役立つことが期待される.消化を免れて大腸に達したRSは,腸内微生物により酪酸を中心とした短鎖脂肪酸(SCFA)となる.SCFAは大腸上皮細胞の主要なエネルギー源となり,上皮細胞の増殖速度を上げて細胞数を維持する.また,消化管の血流量増加,空腸の蠕動運動の促進,結腸内pH低下,炎症反応の抑制,ガン細胞の増殖抑制など,腸の機能に影響を及ぼす.RSの種類別の効果,ヒトでの長期的な効果の検証が待たれる<SUP>3) </SUP>.<BR>RSは,アレルギー反応を起こすという報告もない.食品中の澱粉の一部をRSで置き換えることにより,食事の質を保ちながらカロリーを減らし,さらに食品からのグルコースの遊離を遅くすることができる.生活の質を高め,疾病リスクを低減する機能性食品の素材として,多岐にわたる応用が期待される.
著者
沖谷 明紘 大根田 弥生 久保 友人 石井 剛志 鈴木 理世子 粟田 隆之 砂田 泰志 山下 幸恵 右田 光史郎 松石 昌典 畑江 敬子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.170-176, 2008-04-15
被引用文献数
2 5 1

(1) スルメイカ外套膜を真空調理したとき,官能による測定では煮えたものの食感をもつ,軟らかい煮イカが得られる加熱時間は,50℃と55℃では4~5時間,60℃では1~4時間であった.この加熱時間で皮(表皮の第3層と第4層の膜で構成)が消失したので筋肉内コラーゲンも可溶化したと推察された.<BR>(2) 60℃で1時間真空調理したイカ肉と80℃で1時間真空加熱したイカ肉の破断強度は,環状筋筋線維に直角および平行に破断したときのいずれの場合も前者のイカ肉の方が小さかったが,両イカ肉間の差は平行に破断したときの方が著しく大きかった.<BR>(3)SDS-PAGE分析の結果,加熱によってイカ肉の筋原線維からアクチンが不可逆的に離脱することが明らかとなった.この反応は60℃で著しく進行し,2時間後でもアクチンは可溶化したままであった.80℃でもこの反応はわずかに認められたが,可溶化アクチンの出現は2分までであった.<BR>(4)(2)と(3)の結果より,60℃で1時間真空調理した煮イカが80℃で1時間加熱した煮イカより軟らかい原因の1つとして,筋肉中で加熱によって起るアクトミオシンからのアクチンの離脱可溶化度合が,前者でより大きいことが推察された.<BR>(5)すべての結果から,真空調理スルメイカ筋肉のソフト化は筋肉内コラーゲンの可溶化と筋原線維からのアクチンの離脱可溶化現象によって惹起されると示唆された.
著者
藤井 恵子 高橋 貞幸 木内 瑠美子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.363-368, 2000-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
4 7

本研究では,ゲル化能を有する絹フィブロインに着目し,これを米粉と複合化してスポンジケーキの調製を試み,複合化効果について検討した.1.薄力小麦粉を用いることなく,米粉と絹フィブロインを複合化させることにより,スポンジケーキを調製することができた.2.米粉と絹フィブロイン泡沫を用いたスポンジケーキは薄力粉と卵白泡沫を用いたスポンジケーキと比べ,比容積が低くなり,膨化が小さかった.3.絹フィブロインを添加することでスポンジケーキの老化速度が遅くなった.4.官能検査の結果より,米粉と卵白/絹フィブロイン混合泡沫を用いたスポンジケーキは薄力粉と卵白泡沫を用いたスポンジケーキと比べ,内部のきめが細かく(P<0.01),しっとりとしており(P<0.01),最もおいしい(P<0.01)と評価された.
著者
江口 智美 吉村 美紀
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.353-361, 2014-08-15 (Released:2014-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

エステル化タピオカ澱粉を0%,6%,10%,15%混合し,13分間ゆでたうどんの,力学特性と,若年者および高齢者における嗜好性,咀嚼特性を検討した.エステル化タピオカ澱粉を混合すると,混合濃度に関わらず,0%よりも有意に水分が多くて,やわらかいうどんになった.この中で,10%が,最も澱粉粒子間の隙間が広く,澱粉粒の膨潤・糊化が進行しやすい乾麺構造をもち,若年者・高齢者の両世代において,0%よりも有意にやわらかくて食べやすいと識別され,なめらかさが好まれた.しかし,咬筋および舌骨上筋群の咀嚼特性値に試料の有意な影響は認められなかった.若年者と高齢者の嗜好性・咀嚼特性を比較すると,高齢者は,若年者と同じ混合濃度のうどんを食べた場合,咀嚼力が低下するため,同じ硬さであっても,その硬さを有意に好まなかった.また,高齢者では,嚥下能力の低下に伴う舌骨上筋群の筋力の低下を,咬筋を強く動かすことで補い,最終嚥下を行っていることが示唆された.