著者
村山 徹 長谷川 浩 宮沢 佳恵 武田 容枝 村山 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.314-318, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
28
被引用文献数
3 2

夏秋作における有機および慣行栽培ミニトマトの品質成分の実態を明らかにするため,有機および慣行栽培ミニトマトを各16圃場から試料を得,果実特性とアスコルビン酸,リコペン,β-カロテン,糖類,遊離アミノ酸,クエン酸含量およびエチレン生成量を調査した.有機栽培ミニトマトでは,慣行栽培のものと比較して,果実硬度が小さく,アスコルビン酸とリコペン含量が有意に高かった.また,エチレン生成量が有意に低かった.これらの差違の原因として,実際に流通している有機と慣行栽培ミニトマトには熟度に差がある可能性が推察された.
著者
元賣 睦美 吉瀬 蘭エミリー 松山 博昭 細谷 知広 門岡 幸男 浅田 千鶴 内田 俊昭 川上 浩
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.442-446, 2007-10-15 (Released:2007-11-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

ラクトフェリン可溶化鉄(FeLF)は溶解性および生体利用性に優れ,鉄特有の異風味を殆ど呈さない特徴を有する.本研究では貧血傾向のある成人女性にFeLFを含有したサプリメントを12週間摂取させ,FeLFが貧血指標に及ぼす影響について検討した.その結果,血中Hb値13g/dl未満あるいはフェリチン濃度45ng/dl以下の被験者において,血中Hb濃度,MCV,MCHおよびフェリチン濃度が有意に上昇した.また,血液生化学的検査項目に関して臨床上の問題は認められず,一般的な鉄剤にみられるような胃痛やむかつき等の副作用もまったくみられなかった.以上の結果から,FeLFは医薬品で治療するレベルではない貧血傾向あるいは潜在的貧血傾向の人々が安心して日常の食生活の中で摂取できる安全性の高い素材であると考えられた.
著者
石崎 太一 黒田 素央 杉田 正明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.225-228, 2006-04-15 (Released:2007-05-15)
参考文献数
11
被引用文献数
19 17

プラセボ食群を対照とした,シングルブラインドの2群並行試験により,中高年の気分・感情状態に対する鰹だし継続摂取の影響について調査を行った.全被験者を対象とした解析の結果,鰹だし摂取により「眼の疲れ」,POMSの「抑うつ-落込み」得点が有意に低下(改善)することが示された.疲労感を自覚している被験者を対象とした解析の結果,気分アンケートの「疲労感」,「集中力」の項目において,鰹だし群は摂取時に有意に低下(改善)した.また,POMSについて,鰹だし群は「緊張-不安」において有意に低下し,また,TMD(総合感情障害指標)変化量において鰹だし群はプラセボ群よりも有意に低値を示した.すなわち,鰹だし群はプラセボ群と比較して有意にTMDが改善することが示唆された.これらの結果から,味噌汁形態で鰹だしを摂取した時に,気分・感情状態が改善する可能性が示唆された.
著者
植村 邦彦 井上 孝司 星野 貴
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.185-189, 2016-05-15 (Released:2016-06-30)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

Heat treatment is commonly used to inactivate microorganisms in liquid foods in order to improve food safety and extend shelf-life. However, using heat treatment to kill heat-resistant microbial spores also thermally damages the food, which can adversely affect the flavor and lead to loss of nutrients. We have developed an apparatus for applying high electric field alternating current (HEF-AC), which inactivates not only vegetative cells but also spores in liquid foods while preserving the freshness of raw fruit. In this study, HEF-AC was applied to inactivate Alicyclobacillus acidoterrestris spores in fresh juice. As a result, A. acidoterrestris spore numbers were reduced by four logarithmic orders of magnitude. The purpose of this study was to clarify qualitative changes in treated juice, and an ultra-high-temperature (UHT) treatment was employed for comparison purposes. Quality parameters of orange juice treated with HEF-AC maintained higher values compared to UHT treatment; meanwhile, the two treatments showed an equal inactivation effect. Notably, lemon juice treated with HEF-AC has been commercially available since 2014 from POKKA SAPPORO Food & Beverage Ltd.
著者
佐藤 俊郎 加茂 修一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.527-533, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
44

Soyasaponins : Soyasaponins are triterpene glycosides that possess an oleanane-type aglycone with 1 or 2 polysaccharide chains. Due to differences in the aglycone compounds, soyasaponins are mainly classified as group A or B soyasaponins. Soyasaponins, especially group B soyasaponins, have been reported to have several physiological functions such as antioxidative, cholesterol-lowering, antiviral, anti-inflammatory, renin-inhibiting, hepatoprotective, and antitumor effects. We found that group B soyasaponins are more readily absorbed than group A soyasaponins, which may explain why group B soyasaponins exhibit more potent effects.Vitamin K2 : Vitamin K is a cofactor required for post-translational gamma-carboxylation of vitamin K-dependent proteins, including coagulation factors, anti-coagulation factors, osteocalcin (OC) in bone, and matrix Gla proteins (MGP) in arteries. Among major vitamin K homologues in foods, only vitamin K2 as menaquinone-7 (MK-7) can activate osteocalcin, which modulates bone structure at nutritional doses. Vitamin K2 also induces collagen accumulation in bone, contributing to bone quality and strength. In addition, MK-7 activates MGP, an artery calcification inhibitor, and is reported to be associated with the prevention of cardiovascular diseases. The higher efficacy of MK-7 compared to other vitamin K homologues is due to the better absorption and longer half-life of MK-7.
著者
小川 哲郎 一色 賢司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.535-540, 1996-05-15
参考文献数
14
被引用文献数
3 18

アリルイソチオシアネート(AIT)を含むハーブの揮発性成分による微生物の増殖抑制の可能性を追求すると共に,これらの揮発性成分の併用による微生物制御を試みた.<BR>AITを除く14種の揮発性成分のうち,真菌に対してはアルデヒド類のみが抑制効果を示し,枯草菌に対してはアルデヒド類および炭化水素類が抑制効果を示した.特にサリチルアルデヒドは,供試した真菌,細菌いずれの増殖も抑制した上,細菌に対してはAITと同じ10.0mgの添加で抑制効果が認められた.また,カルバクロールは,AITでは抑制効果の弱かった黄色ブドウ球菌に対し増殖抑制効果を示した.AIT 3.0mgとカルバクロールあるいはサリチルアルデヒド5.0mgを併用することにより,供試菌すべての増殖を抑制することが可能であり,それぞれの使用量も半分以下に軽減された.AITとこれら2種の揮発性成分の組み合わせによる餅の保存試験では,40日経過後においてもカビの発生は認められなかった.<BR>AIT臭のマスキングについて検討した結果,バニラ及び柑橘系オイルで高いマスキング効果が認められた.
著者
小堀 真珠子 雨宮 潤子 酒井 美穂 白木 己歳 杉下 弘之 坂上 直子 星 良和 柚木崎 千鶴子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.408-415, 2006-08-15 (Released:2007-09-14)
参考文献数
24
被引用文献数
6 6

We previously demonstrated that bitter gourd (Momordica charantia L.) ethanol extract induced apoptosis in HL60 human leukemia cells. To examine the effect of different bitter gourd cultivars on cancer cell growth, we determined the effect of nine bitter gourd cultivars grown in Miyazaki prefecture on the growth of HL60 cells. Although growth inhibitory effect of seed extracts was stronger than that of pericarp or placenta extracts, all the extracts inhibited the growth of HL60 cells at concentrations of 25-200μg/ml. The extracts of pericarp, placenta and seeds of bitter gourds cultivars induced apoptosis in HL60 cells after 24h incubation.Suppression of inflammatory responses is expected to reduce inflammatory disease and development of cancer. Therefore, we determined the effect of the major bitter gourd cultivar ‘Sadowara 3’ on the bacterial lipopolysaccharide (LPS)-induced TNFα production from RAW264.7 mouse macrophage-like cells. Placenta extract inhibited the TNFα production induced by LPS ; however, it did not have any effect on the growth of RAW264.7 cells. The bitter gourd placenta is suggested to possess the suppressive effect on inflammatory responses.
著者
木村 啓太郎 久保 雄司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.379-384, 2017-07-15 (Released:2017-08-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

納豆発酵過程での香気成分変動を明らかにするため,納豆菌接種前の煮豆および接種後3,7,12,18時間の納豆をサンプリングし,香気成分をGC/MSシステムによって分析した.香気成分一斉分析用に開発されたソフトウェアMetAlignおよびAIoutput2を用いてデータ解析した結果,38種の香気物質が同定あるいは推定された.この内23種は納豆菌接種前の煮豆からも検出された.煮豆に存在した成分のうち6種は発酵が進むにつれて減少あるいは消滅し,12種については発酵過程での変動は小さく発酵前後での違いが顕著ではなかった.5種は納豆発酵中に増加した.納豆の主要な香気成分であるピラジン類や短鎖分岐鎖脂肪酸を含む12種の香気成分は納豆菌の増殖が定常期に達した頃(12時間後)に急激な上昇が見られた.
著者
早川 文代 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.197-207, 2000-03-15
参考文献数
8
被引用文献数
13 14

食感覚の擬音語・擬態語が,どのような食物のどのような特性を表現しているのかを明らかにすることを目的に,調査,解析を行ったところ,以下の結果を得た.<br>(1) 各用語が示す食味要因(外観,匂い,味,温度,音,テクスチャー)が明らかになった.<br>(2) これらの用語は,テクスチャーを表現するものが多く,また,音を表現する用語は,同時にテクスチャーも表現していることが明らかになった.さらに,テクスチャーと味,テクスチャーと外観のように,全く質の異なる2つの要因を表現する用語もみられた.<br>(3) 食感覚の擬音語・擬態語は,一部の例外を除くと,「脆性」と「弾性」の2軸からなる平面に布置された.<br>(4) 食感覚の擬音語・擬態語と食物との関係が明らかになった.
著者
今村 美穂 片山 弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.343-354, 2017-07-15 (Released:2017-08-18)
参考文献数
44
被引用文献数
3 3

市場に流通している生しょうゆと火入れしょうゆの官能的な品質の違いを客観的に示すことを目的として,異なるメーカーで製造された市販の生しょうゆおよび火入れしょうゆ6対,計12銘柄のQDA (Quantitative Descriptive Analysis)による詳細な分析を行った.また,得られたQDAの結果と過去の知見11) を統合し,日本のしょうゆから見出される91種の特性をフレーバーホイールとして体系化した.さらに,これらの過程で以下の知見を得た. (1) 12銘柄の生しょうゆおよび火入れしょうゆは48種の官能特性を呈した.これら特性のうち,13種は本研究が初めての報告であり,エステル系の特性や穀物系の風味,グリーンな香りが多いことを特徴とした. (2)生しょうゆは,火入れしょうゆと比較して,甘味,旨味に加え,大豆の風味が強いという特徴を有した.その一方で,火入れしょうゆは苦味,渋味·えぐ味,後味の苦味が強かった. (3)今日,日本で市販されている多くのしょうゆは20∼25種の共通する特性を有した.しょうゆの品質評価においては,それぞれのしょうゆに特徴的な特性を見出すだけでなく,基本的な特性のバランスの評価が重要と考えられた.なお,しょうゆや和食に対する嗜好性の確立や継承にしょうゆの苦味が与える影響の評価,および生しょうゆと火入れしょうゆの旨味の差異に対するメイラード物質の寄与の評価は,今後の課題と考えられる.
著者
堀口 俊英
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.339-346, 2021-08-15 (Released:2021-09-02)
参考文献数
30

Coffee flavor is considerably influenced by the quality of green coffee beans. Therefore, specialty coffee has a richer aroma, higher acidity, and a more distinct flavor profile compared to commercial coffee. The current methods for evaluating specialty coffee quality are mainly SCA sensory evaluation and complementary techniques such as taste sensing systems and NIRS. However, because the flavor profiles of specialty coffees have become complex over the years, we propose a new quality index method based on physicochemical numerical values.
著者
上田 京子 山田 耕路 塚谷 忠之 村山 加奈子 倉田 有希江 竹田 絵理 大塚 崇文 高井 美佳 宮崎 義之 立花 宏文
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.242-249, 2015
被引用文献数
2

本研究ではブロッコリー全草を6つの部位に分け,各部位の栄養成分および細胞機能への影響を明らかにすることを目的として,ビタミンC,<i>S</i>-メチルメチオニン,総ポリフェノール,乳がん細胞増殖抑制および免疫調節機能について,ブロッコリーの各部位の比較検討を行った.<BR>花蕾 : ビタミンC並びに<i>S</i>-メチルメチオニンを多く含有し,ヒスタミン放出抑制能が高かった.<BR>茎,主軸下部 : 可食部以外である茎,主軸下部は,ビタミンC,<i>S</i>-メチルメチオニン,ポリフェノールはほぼ同等量含まれていた.また,花蕾と比較すると抗体産生増強能を有していた.<BR>葉軸 : 茎,主軸下部と同等のビタミンC,<i>S</i>-メチルメチオニン,ポリフェノールを含んでいた.ヒスタミン放出抑制,IgA産生の増強,IgE産生低下の傾向を示した.<BR>葉 : ビタミンCは花蕾の18%,<i>S</i>-メチルメチオニンは花蕾の29%であったが,ポリフェノール量は花蕾の3.1倍含んでおり,ヒスタミン放出抑制,ロイコトリエン放出抑制,IgE産生抑制の傾向が見られ,花蕾と比較すると抗アレルギー素材としての特徴を有していた.<BR>根 : ビタミンCは花蕾の12%,<i>S</i>-メチルメチオニンは花蕾の25%,ポリフェノールは花蕾の83%含まれており,特にMCF-7のがん細胞増殖抑制能を有していた.<BR>以上のように,ブロッコリーの部位別に栄養,機能が分布していることを明らかにした.その他の部位は可食部である花蕾と栄養·機能の特徴が異なっており,これまでに利用されてきた部位には存在しない生理活性物質が未利用部位に存在する可能性がある.
著者
室田 一貴 馬場 貴司 島田 昌彦 佐藤 信行
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.163-170, 2010-04-15
参考文献数
25
被引用文献数
3

骨粗鬆症予防に寄与しうる食品研究の一環として,メタアナリシスにより骨粗鬆症予防効果が示された,一日摂取目安量あたり400mgのカルシウムを配合したフィッシュソーセージの過剰摂取時の安全性を評価した.<BR>試験はオープン試験形式のヒト臨床試験で行い,20名の健常者が推奨の3倍量を,食事とは別に,4週間連続して摂取した場合の影響を検証した.評価は有害事象の確認,理学検査,臨床検査および栄養調査を行った.<BR>4週間の摂取期間,および摂取期間終了後に設定した2週間の後観察期間において臨床上問題となる変動は認められなかった.<BR>以上の結果から,本フィッシュソーセージを日々の食事とは別に日常的に摂取しても,常識的な範囲で摂取を行う限り安全性に問題はないと考えられた.
著者
肥後 温子 和田 淑子 佐藤 之紀
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.562-571, 2012-11-15 (Released:2012-12-31)
参考文献数
25
被引用文献数
4

生地の配合割合を変えてガスオーブン加熱法とマイクロ波併用加熱法でクッキー様焼成品を作製し,調湿保存して力学特性値の変化を調べたところ,マイクロ波加熱を含めた糊化度の高い試料では吸湿時にさらに硬化が助長されて最大破断強度,総エネルギー値が大きくなり,強靭な硬さになるとともに硬化領域が拡大する現象がみられた.吸湿時の硬化現象と水のクラスとの関わりを吸着および脱着時の収着曲線を解析して調べたところ,脱着時のWm,MC量の方が力学特性値との相関が高く,力学特性値の変化と水のクラス変化とがよく一致することがわかった.力学特性値とWm,MC量との間に高い相関関係が認められたことから,デンプン性食品が吸湿後に強靭な硬さを保持し硬化領域が拡大する要因の一つは糊化に伴う結合水量の増加である可能性が大となった.糊化した試料ほどWm,MC量が多く,吸湿時に脆性破断状態が保持されるR.H.7.6~43 %はすべてWm領域に入ること,R.H..56 %から延性破断となり,糊化度が高い試料ではR.H.56~88 %まで硬化領域が拡大すること,硬化した領域はすべてMC領域に入ることが明らかになった.
著者
中西 謙二 桑原 正章
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.251-258, 1996-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

チロシン分解酵素を有する乳酸菌を利用したタケノコチロシンの分解技術を開発する目的で,チロシン分解乳酸菌のスクリーニングを行い,分離菌によるタケノコチロシンの分解方法について検討した結果つぎの知見を得た.乳酸菌35株からチロシン分解活性を有する乳酸菌7株を分離した.この中でEnterococcus sp. 4株及びLactococcus lactis subsp. cremoris IFO 3427株に強い分解活性が認められた.Enterococcus faecalis IFO 3971株を添加培養することにより,スライスタケノコで2日間,1/2切断の場合は5日間で肉眼的に認められない程度に白色固形物は分解された.また,Lactococcus lactis subsp. cremoris IFO 3427株についても同等の結果が得られた.乳酸発酵にともなう成分変化は,乳酸と酢酸の増加及び糖の減少は大きかったが,他の成分については大きな変化は認められなかった.
著者
紙谷 雄志 岩井 和也 福永 泰司 木村 良太郎 中桐 理
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.336-342, 2009-06-15
参考文献数
25
被引用文献数
2 12

本研究は,超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と,その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与,さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した.<BR>(1) コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり,8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された.<BR>(2) クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く,順にカフェオイルキナ酸,フェルロイルキナ酸であった.その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し,カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された.<BR>(3) コーヒー豆抽出物は&alpha;-GI剤(アカルボース,ボグリボース)と類似した作用機序を示し,効果量より低い&alpha;-GI剤量に対して,相加的な併用効果があることが推測された.また,&alpha;-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し,糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された.
著者
紙谷 雄志 岩井 和也 福永 泰司 木村 良太郎 中桐 理
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.336-342, 2009 (Released:2011-04-05)

本研究は、超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と、その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与、さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した。(1)コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり、8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された。(2)クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く、順にカフェオイルキナ酸、フェルロイルキナ酸であった。その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し、カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された。(3)コーヒー豆抽出物はα-GI剤(アカルボース、ボグリボース)と類似した作用機序を示し、効果量より低いα-GI剤量に対して、相加的な併用効果があることが推測された。また、α-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し、糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された。
著者
成田 正直 阪本 正博 秋野 雅樹 武田 忠明 今村 琢磨 飯田 訓之
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.277-283, 2011-07-15
参考文献数
11
被引用文献数
2

2009年度における北海道のホタテガイの生産量は44万9千トン、生産金額は476億円で、これは北海道の魚種別生産量の約3割、生産額の約2割を占める.ホタテガイは1970年代に天然採苗技術や中間育成技術が確立され、その後、オホーツク海での地まき放流の拡大などにより、生産を増大させてきた.しかし、生産量の増大とともに価格は低下し、1990年代前半から低迷している(図1). ホタテガイの主な加工品目は冷凍貝柱、生鮮貝柱、ボイル冷凍、乾貝柱で(図2)、生産量の割に加工品の種類が少ないことが、魚価低迷の一因とされる.特に冷凍貝柱と生鮮貝柱への仕向け割合が高く(66%)、これらのアメリカ向けを中心とした輸出がホタテガイ価格の底支えを行っている. 北海道立総合研究機構水産研究本部(旧北海道立水産試験場)では、ホタテガイの付加価値向上と需要拡大を図るため、これまで多くの技術開発を行ってきた.この中では、生鮮貝柱の高鮮度流通技術の開発や乾貝柱の品質向上技術など既存製品の高品質化、生産の効率化とともに、新たな製品の企画、開発を行ってきた.その中で、最近製品化されたものとして、ホタテガイ貝柱フレーク(以下、貝柱フレーク)とホタテガイ貝柱の飯寿し(以下、ホタテ飯寿し)がある.本稿では、これら新規製品の基本的製法の確立、技術的改良から、企業移転を図るまでの経過を紹介する.
著者
太田 尚子 遠藤 茉里 澤木 心美 岸川 めぐみ
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.183-191, 2014 (Released:2014-09-25)

α-カゼイン(α-CN)は非常に熱に対する安定性の高いタンパク質として知られているが,オボアルブミン(OVA)との共存下で特徴ある物性を有するゲル状凝集体をつくり得ることが判った。また,この混合タンパク質の試料溶液を調製するにあたり,脂肪酸塩の添加がより均質なサスペンジョンを調製する上で効果的であった。カプリン酸ナトリウム添加のα-CN/OVA混合システムは,OVAに比べ加熱処理の過程でより緩やかな相転移現象を経てゲル化に至り,結果的にこれまでのOVAゲルとは異なる新規なテクスチャーをもつことが示唆された。