著者
塩境 一仁 鍵村 達夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.90-94, 2014-03-25 (Released:2014-04-30)
参考文献数
8

ケース・クロスオーバー研究は,研究の対象とするイベントが発現したケースだけの情報を使った研究であり,自らのデータからコントロールを得るため,セルフ・コントロールド・スタディに分類される.ケース・クロスオーバー研究が妥当な研究になるためには多くの制約がある.一方でケース・クロスオーバー研究が妥当な研究条件下では,ケース・クロスオーバー研究はコントロール群の患者の情報を別途収集する必要がなく,また遺伝情報や背景情報が一致したコントロールが得られるなど多くの利点がある.本稿では近年疫学研究で利用されているケース・クロスオーバー研究の概略をまとめた.(薬剤疫学 2013; 18(2): 90-94)
著者
北澤 京子
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.71-78, 2008 (Released:2009-03-06)
参考文献数
11

目的 : 英国および日本の医学記事の特徴を比較する目的で、両国の代表的なニュースサイトに掲載されている記事を、メディア・ドクター・オーストラリアのチェックリストを用いて評価する。研究デザイン : 横断研究方法 : 2007年1月から6月までの間に、英国(BBC、Guardian、Independent、Times、Yahoo! UK)および日本(朝日、読売、Yahoo! Japan)の健康・医学ニュース専門ウェブサイトに発表された病気の予防および治療に関する記事を抽出した。メディア・ドクター・オーストラリアが開発したチェックリストを適用し、記事の質を調べた。総合得点を両国間で比較した。結果 : 英国記事296本および日本記事79本が抽出された。媒体ごとの総合得点は朝日 (45.7)からIndependent (63.4)まで幅があった(満点は100)。日英で総合得点を比較したところ、英国 60.0 (95%CI 58.2-61.8)、日本 47.8 (同、45.4-50.2) で、英国記事の方が有意に高かった(p<0.001)。結論 : 今回の研究で抽出された記事は、メディア・ドクター・オーストラリアの観点からは必ずしも満足できる情報を提供しているとは言えなかった。質の高い健康・医療情報を一般市民に届けるために、医学研究者とジャーナリストが協力できる可能性が高いと思われた。
著者
竹内 久朗 鍵村 達夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-83, 2014-03-25 (Released:2014-04-30)
参考文献数
8
被引用文献数
3

本稿では,近年疫学研究で利用されているコホート内ケース・コントロール研究の概略をまとめた.また,本邦での研究事例として,使用成績調査から再構成された降圧薬データベースを用いた2つのコホート内ケース・コントロール研究を紹介した.コホート内ケース・コントロール研究は,ケース・コントロール研究で生じるバイアスを回避するとともに,コホート研究と比較して効率的に実施することが可能であるため,データベースを用いた薬剤疫学研究においても,広く用いられている研究デザインである. (薬剤疫学 2013;18(2):77-83)
著者
小林 哲 村山 一茂 太田 悠葵 川崎 ナナ 豊島 聰 石井 明子
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.63-76, 2017-03-31 (Released:2017-05-25)
参考文献数
23
被引用文献数
2

日本で承認されている免疫調節作用を有する抗体医薬品 12 品目について,報告数の多い有害事象の基本語 (Preferred Term;PT)を特定するため,2015 年時点で医薬品医療機器総合機構が公開していた医薬品副作用データベースに集積されていた症例を解析した.その結果,報告数の多い PT として,肺炎,間質性肺疾患,ニューモシスチス・イロベチイ肺炎 (Pneumocystis jiroveci pneumonia;ニューモシスチス肺炎),蜂巣炎,敗血症,および帯状疱疹等を特定した.これらの PT について,特に日本で 5 種類の製品が承認されている抗 TNF 薬 (infliximab,adalimumab,golimumab,certolizumab pegol およびetanercept) をはじめとした関節リウマチ治療薬に着目し,医薬品ごとに各 PT の発現頻度と初回発現時期を解析・比較した.ここでは,シグナル検出指標の報告オッズ比 (reporting odds ratio;ROR) を発現頻度の指標として用いた.また,初回発現時期の対照薬としては,抗 TNF 薬とは標的が異なる関節リウマチ治療薬で,症例の報告数も比較的多い抗インターロイキン-6 受容体抗体の tocilizumab を選択した.その結果,肺炎と間質性肺疾患,および敗血症については,ROR と初回発現時期の解析からは特定の関節リウマチ治療薬との関連を示唆する結果は得られなかった.一方,ニューモシスチス肺炎については,特に infliximab で高い ROR が得られた.Infliximab ではニューモシスチス肺炎の初回発現時期も他の医薬品より早い傾向にあり (0.19 yr),tocilizumab (0.32 yr)を対照として Mann-Whitney 検定を行うと,有意水準 1%で有意差が認められた.Infliximab はニューモシスチス肺炎の ROR が高いだけでなく,初回発現時期も特徴的であることから,ニューモシスチス肺炎との間に他よりも強い関連が示唆された.同様なことが,蜂巣炎とtocilizumab,帯状疱疹と certolizumab pegol についても観察され,感染症に関する一部のPT は,特定のバイオ医薬品に強く関連する可能性が示唆された.肺疾患や皮膚疾患を持つ患者等については,抗 TNF 薬を使用する際に,これらの感染症が生じやすい可能性に配慮する必要があると考えられた.
著者
久保田 潔 青木 事成 漆原 尚巳 鍵村 達夫 景山 茂 小出 大介 古閑 晃 佐藤 嗣道 中村 敏明 中島 研 畑中 直也 平河 武 宮川 功 望月 眞弓
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.57-74, 2014-06-30 (Released:2014-08-13)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

日本薬剤疫学会では,医薬品リスク管理(Risk Management Plan:RMP)を作成,実行する側の製薬企業と医療現場およびアカデミアからなるタスクフォースを設置し,2012年4月に厚生労働省より発出された医薬品リスク管理計画指針通知に明記されているICH E2E に準拠した安全性監視計画(Pharmacovigilance Plan:PVP)が立案可能となるようなガイダンスを作成した.内容は以下の 6つから構成されている.1.はじめに:市販後安全性監視に係るこれまでの当学会活動や,活動の目的2.安全性検討事項(Safety Specification:SS)の選択と特徴を記述するためのプロセス・SS をどう選択するか・SS をどう特徴付けるべきか・リサーチ・クエスチョン(Research Questions:RQ)にどうつなげるか3.RQ の決定と記述・RQ とは何か・各種ガイドラインではどう扱われているか・PVP へ RQ を記述する方法と具体的事例・PVP 全体としてみた最適とは4.RQ に最適化された PVP・通常の PVP で可能か,追加の PVP が必要か・追加の PVP のデザインの選択について(RQ と研究デザイン,PICO を用いた RQ の記述,評価の指標)・PVP の記載事項チェックリスト作成について5.結語:使用成績調査の位置づけ,背景発現率と比較群の必要性,今後の PVP の課題6.別添:PVP の記載事項チェックリスト以上をもって医薬品リスク管理計画指針に明記されている「ICH E2E ガイドラインに示されている安全性検討事項及びそれを踏まえた医薬品安全性監視計画」が作成,実行できることを期待したい.
著者
Jia GUAN Shiro TANAKA Shuhei YAMADA Izumi SATO Koji KAWAKAMI
出版者
Japanese Society for Pharmacoepidemiology
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
pp.25.e2, (Released:2020-07-15)
参考文献数
32
被引用文献数
1 2

Objective: To describe the treatment patterns and time to next treatment (TTNT) in newly diagnosed multiple myeloma patients (MM) using a large-scale claims database in Japan.Design: Cohort studyMethods: The patients with newly diagnosed MM from 2008 to 2015 were classified into two groups: age <65 years, and age ≥65 years. Specific regimens and general regimens were identified with a complex algorithm considering interval of no therapy, additional and discontinued agents. Correspondingly, TTNT between the first- and second-line were measured among non-transplant patients with Kaplan-Meier method.Results: A total of 425 patients were eligible to participate in the analysis. The most common regimen for the treatment of MM was bortezomib-based regimens (52.9% in the first-line, 28.2% in later lines), followed by melphalan-prednisolone (27.1% in the first-line, 12.9% in later lines) and lenalidomide-based regimens (4.7% in the first-line, 26.1% in later lines). TTNT between the first- and second-line was 11.4 months and was seen to vary greatly with each regimen. A statistically longer TTNT was observed in subgroups of patients aged 65 years or over compared with patients aged younger than 65 years, but no statistical difference was found between conventional therapy and novel therapy.Conclusion: Based on the data from the study, patients with MM were commonly treated with novel agent-based regimens, especially bortezomib-based regimens. Between the first- and second-line therapies a relatively short TTNT was observed, indicating that therapies in clinical practice poorly complied with treatment guidelines.
著者
杉浦 亙
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.91-97, 2021-06-20 (Released:2021-07-26)
参考文献数
32

新興感染症を制圧するためには治療薬の開発が重要である.しかし新興感染症では,パンデミック発生時点では有効な治療薬は存在しないことが多い.このような状況下で先ず取られる治療薬の開発手段は既存薬の中から治療効果がある薬剤の探索 repurposing であり,この 1 年間様々な COVID-19 治療薬の候補が検討されてきた.その結果,抗ウイルス剤としては Ebola の治療薬として開発が進められていた remdesivir,サイトカインストームを抑えるための抗炎症薬としては dexamethasone の 2 剤が治療薬として承認された.いずれの薬剤も海外での臨床試験の結果に基づく承認である.我が国でも多くの候補薬が提唱され,臨床試験が進められてきたが,明確な結論が得られた試験は数少ない.その中の一つ喘息治療 ciclesonide の有効性と安全性を検証する単盲検無作為割付比較試験(Randomized clinical trial:RCT)では,目標症例数 90 例の登録完了に 181 日を要した. 一方で同時期に実施されていた,ciclesonide の「観察研究」では 180 日間でその 30 倍にも達する 3,000 人が登録されており,現場の医師にとって RCT に参加するハードルが高いことがわかる.要因は様々であろうが,RCT を実施するにあたって投入できる人的リソースの不足などが課題として挙げられよう.今回のパンデミックを教訓に,これらの課題を解決すべく,また次の新興感染症も見据えた RCT を支援する司令塔の役割を担う組織の設立が切望される.SARS-CoV-2 は感染を拡大しつつ,変異の選択と淘汰を経てヒトを宿主とするウイルスとしての姿を整えつつあるようであるが,ヒトとの共存関係が落ち着くまでには相当の時間を有するのであろうか.予防ワクチンが開発・実用化され,治療薬についても間違いなく研究開発が進展しており,COVID-19 の制御が可能となり,社会活動の再開ができる日はそう遠くないことを期待する.
著者
田中 大祐
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.77-90, 2017-03-31 (Released:2017-05-25)
参考文献数
37

医薬品は様々な疾病の治療やコントロールに重要な役割を果たしている.しかしながら,医薬品はこのようなベネフィットをもたらす一方で,有害反応を引き起こすこともある.医薬品は,そのリスクとベネフィットを正しく理解し,適正に使用されることにより,その価値を最大限に発揮することができる.そのためには,臨床使用における医薬品の安全性の評価とモニタリングが欠かせない.つまり,適切に機能するファーマコビジランスシステムが必要である.WHO は公衆衛生に関する国連の専門機関であり,世界の人々の健康を守るための広範な活動を行っている.この活動には,ファーマコビジランスも含まれており,国際医薬品モニタリング制度を実施している.WHO のファーマコビジランス活動は,WHO 本部にある必須医薬品部の医薬品安全グループが総括している.WHO はファーマコビジランスを⌈医薬品の有害な作用やその他の医薬品に関連する問題の検出,評価,理解及び予防に関する科学と活動⌋と定義している.⌈その他の医薬品に関連する問題⌋には,例えば,規格外医薬品,医療過誤,有効性の欠如,乱用・誤用,偽造医薬品などが含まれる.国連ミレニアム開発目標をはじめとした国際社会の努力を通じて,必須医薬品へのアクセスは世界的に改善されてきている一方で,ファーマコビジランスシステムの発展は,まだ十分とはいえない状況である.ファーマコビジランスシステムが十分ではない国にも新たな医薬品が導入され始めている現状は非常に懸念される.本稿では WHO のファーマコビジランス活動の中心となる WHO 国際医薬品モニタリング制度について,その経緯,概要および現状について取り上げるとともに,WHO におけるファーマコビジランス活動の中核を担っている医薬品安全グループが実施している活動,業務内容について記載する.
著者
田中 大祐
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.43-53, 2015-12-31 (Released:2016-02-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

ワクチンは人類史上で最大の公衆衛生上の成功の一つとされている.現在,予防接種は全世界で毎年250万人の子供の死亡を防いでいる.予防接種は,人の健康に関する権利の重要な要素の一つであり,個人,コミュニティ,そして政府の責任であるとも考えられている.各国における予防接種プログラムに使用されるワクチンは,適正に使用すれば概して安全かつ有効であると考えられる.しかし,他の医薬品と同様にゼロリスクではなく,予防接種後に副作用が生じる場合がある.このため,予防接種プログラムを成功させるためには,ファーマコビジランス活動を通じて,ワクチンのリスクとベネフィットのバランスを継続的に監視し,適切な情報提供を行うことにより,一般からの信頼を得ることが重要である.ワクチンをはじめとする医薬品は,リスクとベネフィットを正しく理解し,適正に使用されることにより,その価値を最大限に発揮することができる.ファーマコビジランスは世界保健機関 (World Health Organization: WHO) により「医薬品の有害な作用または医薬品に関連する諸問題の検出,評価,理解及び予防に関する科学と活動」と定義され,医薬品のリスクとベネフィットのバランスを正しく評価するために欠かせない存在である.WHO では,世界におけるワクチン接種率のさらなる向上を目指していると同時に,デング熱やマラリアなど新たなワクチンの開発にも乗り出している.また,先進国,途上国間でのワクチン接種開始ラグが減少しているとともに,様々な技術協力等により様々なワクチンが途上国でも製造されている.このため,ワクチンの接種率が増加し,新規のワクチンも含め,多種多様なワクチンが世界的に投与されるようになってきた.ワクチンのファーマコビジランスの重要性はますます増加し,ワクチンの安全性を確保するための様々な国際協力も積極的に行われてきている.このような状況の下,ワクチンのファーマコビジランスに関して,WHO の動きを中心としてグローバルな動きについて記載する.
著者
高橋 行雄
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.14-22, 2014-06-30 (Released:2014-08-13)
参考文献数
7
被引用文献数
5

副作用自発報告は,実際に臨床現場において副作用と認識された事象の一部しか報告されないこと,またその割合がさまざまな要因で変動するといった報告バイアスが存在すること,発生頻度が求められず一般的な副作用発現の評価手法が適応できないという問題が知られている.そのため,シグナル検出という探索的な解析法が確立されてきた.(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医薬品副作用データベース(JADER)が, 2012年4月に公開され,誰でも制約なしに使えるようになった.本データベースの活用により,薬剤疫学研究の質が向上することが期待されている.しかしながら,活用方法としては「シグナル検出」に注目されがちであり,その結果,規制当局が対応すべき課題と認識され,製薬企業などでの活用事例の報告は少ないのが現状である.筆者ら第2期医薬安全性研究会薬剤疫学グループは,JADER 公開以前から網羅的ではないが,PMDA が提供している「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索」で得られたリストを取りまとめてデータベース化し,薬剤疫学の検討方法を参考に製薬企業の中での活用を試みてきた.その後,JADER を用いて一般的な PC でも可能なシグナル検出のための統計量を容易に算出するための方法を考案し,各種の課題に応用を試みてきた.本論文では,シグナル検出を可能にするための JADER の処理方法について解説する.この方法を用いて,多くの薬剤疫学の課題に対する応用が活発に行われ,薬剤疫学研究の質の向上に寄与することを期待する.
著者
Tomomi KIMURA Toshifumi SUGITANI Takuya NISHIMURA Masanori ITO
出版者
Japanese Society for Pharmacoepidemiology
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.53-64, 2019-08-27 (Released:2019-10-07)
参考文献数
25
被引用文献数
15 14

Objective: The Charlson and Elixhauser comorbidity indices (CCI and ECI, respectively) are widely used to study comorbid conditions but these indices have not been validated in Japanese datasets. In this study, our objective was to validate and recalibrate CCI and ECI in a Japanese insurance claims database.Methods: All hospitalizations for patients aged≥18 years discharged between January 2011 and December 2016 were randomly allocated to derivation and validation cohorts. Predictability for hospital death and re-admission was evaluated using C statistics from multivariable logistic regression models including age, sex, and individual CCI/ECI conditions at admission month or the derived score in the derivation cohort. After stepwise variable selection, weighted risk scores for each condition were re-assigned using odds ratios (CCI) or beta coefficients (ECI). The modified models were evaluated in the validation cohort.Results: The original CCI/ECI had good discriminatory power for hospital death: C statistics (95% confidence interval) for individual comorbidities and score models were 0.845 (0.835-0.855) and 0.823 (0.813-0.834) for CCI, and 0.839 (0.828-0.850) and 0.801 (0.790-0.812) for ECI, respectively. Modified CCI and ECI had reduced numbers of comorbidities (17 to 10 and 30 to 21, respectively) but maintained comparable discriminatory abilities: C statistics for modified individual comorbidities and score models were 0.843 (0.833-0.854) and 0.838 (0.827-0.848) for CCI, and 0.840 (0.828-0.852) and 0.839 (0.827-0.851) for ECI, respectively.Conclusions: The original and modified models showed comparable discriminatory abilities and both can be used in future studies using insurance claims databases.
著者
荒西 利彦 池田 俊也
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.91-99, 2015-02-20 (Released:2015-03-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

医療経済評価の結果はパラメータの不確実性の影響を大きく受けることから,感度分析による医療経済評価の頑健性の分析が重要となる.複数のパラメータの不確実性を同時に評価するため,それらのパラメータが従う同時分布に基づき評価を行うことを確率的感度分析 (PSA; Probabilistic Sensitivity Analysis) と呼び,今日では各国のガイドラインで使用が推奨されている.本稿では,PSA の手法としてモンテカルロシミュレーションとブートストラップ法を紹介し,また PSA の結果の解釈について説明を行い,各国ガイドラインにおける PSA に関する記述をまとめた.その後 PSA の本邦での利用状況を,邦文にて論文が出版された研究のレビューにより示した.各国ガイドラインでの PSA の扱いは,2008年までに出版されたガイドラインにおいては感度分析を行うことは推奨されていたものの,方法については任意であった.2011年以降に出版されたフランス,米国AMCP,イギリスのガイドラインでは,いずれも PSA を推奨している.日本においては 2013年に発行された医療経済評価研究における分析手法に関するガイドラインで PSA について「可能であれば確率的感度分析もあわせておこなうこと」,とされている.邦文での医療経済評価研究のレビューを行った結果,質調整生存年に基づく医療経済評価を行った 49件のうちで PSA を行った研究は 6件(12.2%) にとどまることから,PSA が国内で広く使われているとは言いがたい.一方で PSA でない感度分析を行った研究は 35件(71.4%) あることから,感度分析自体は多くの研究で用いられている.よって PSA が感度分析のよりよい方法論として受け入れられるようになれば,利用は促進されると考えら れる.このためには PSA を行うためのガイドラインなどの作成が望ましい.
著者
久保田 潔 小出 大介 古閑 晃 景山 茂 植田 真一郎 木村 通男 豊田 建 大橋 靖雄 大津 洋 青木 事成 小宮山 靖 庄本 幸司 平河 威 篠田 英範 佐藤 嗣道
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.65-71, 2013-08-31 (Released:2013-10-08)
参考文献数
11

Standardized Structured Medical record Information eXchange(SS-MIX)は 2006 年に厚生労働省標準的医療情報交換推進事業として開始されたプロジェクトである.病院情報システムから HL7 形式で出力される処方,臨床検査の結果,診断,患者情報のデータを受信・蓄積するためのソフトウエアは無償で提供されている.我々は SS-MIX 標準ストレージの市販後調査や臨床研究への利用を推奨する.提言は以下の 7 つから構成される. [1]調査や臨床研究において,SS-MIX 標準ストレージの薬や臨床検査の結果に関する情報は電子的調査票に直接取り込むことができ,研究者は高い精度と粒度の情報を得ることができる. [2]SS-MIX 標準ストレージは地震や突然のネットワーク障害などの災害時において診療に必須の最低限の情報を提供することができ,医療情報の喪失を最小限にとどめるためのツールとして機能しうる.[3]SS-MIX 標準ストレージは,ストレージ内の情報の効率的取得とともに,ある薬を特定期間非使用後に開始した “new users” の特定を可能とし,良質の薬剤疫学研究を実施するために利用することができる.“new users” デザインはバイアスのない結果を得るためにはしばしば必須である. [4]製薬企業が規制にしたがって市販後の調査を実施する際に,SS-MIX 標準ストレージはデータの迅速で効率的な収集を促し,時宜にかなったリスク最小化のための方策を講ずることを可能とする.また,SS-MIX 標準ストレージによって,複数のタイプの研究デザインの利用やデータの質の向上が期待される. [5]SS-MIX 標準ストレージは,リスク最小化計画実施前後の処方パターンや問題となる有害事象の発生を比較することによるリスク最小化計画の評価にも利用可能である. [6]臨床試験の計画にあたって,SS-MIX 標準ストレージは適格患者数の推定に用いることができる.疾患や薬物治療の特徴を知るための断面研究に用いることもできる.さらに,冠動脈造影を実施した患者,薬の新規使用者や稀少疾患患者のコホート特定が可能である.そのようなコホートを用いて,コホート内の症例対照研究,ファーマコゲノミックス研究,治療法の有効性/有用性を比較する研究が可能になる. [7]SS-MIX 標準ストレージは,将来いくつかの条件が満たされれば臨床研究における正規のデータソースとして利用することができる.たとえば,標準化したデータ構造規格(例:Clinical Data Interchange Standards Consortium(CDISC))の利活用,およびコンピュータ化システムバリデーション(Computerized System Validation,CSV)に関する取扱いについて,産官学での合意形成ができること,である.
著者
駒嶺 真希 長谷川 知章 安藤 孝 宇山 佳明
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
pp.28.e1, (Released:2022-11-10)
参考文献数
21

目的: MID-NET®はこれまでにさまざまな薬剤疫学的な解析を通じて市販後の医薬品安全性評価に貢献している.適切な活用を促進する一助とするため,MID-NET®の特徴把握のための二つの調査を実施した.本稿では,これらの調査結果を述べ,今後の調査における留意点等を考察する.調査デザイン: 医療情報データベースの二次利用によるコホート調査方法: 一つ目の調査では,検体検査の結果値の特徴を把握し,肝機能障害のリスク評価法を検討するため,肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害の発現状況を全例調査の結果と比較考察した.また,二つ目の調査では,関連薬剤の処方選択や切替え時の特徴を把握するため,先行バイオ医薬品とバイオ後続品(以下「BS」という)の処方実態について検討した.結果: 肝機能障害のリスク評価法の検討において,肺動脈性肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害発現状況は,アウトカム定義として設定した重症度のグレードにより異なるものの,重症度を一定程度考慮した基準を用いることで,全例調査における副作用と同程度の発現状況を確認できる可能性が示唆され,各検査項目を組み合わせた定義など,異なる基準での結果と合わせて検討しその頑健性などを確認することで,適切な評価が可能になるものと考えられた.BS の処方実態の検討において,BS の処方は全体的に経時的に増加する傾向が認められたが,その程度は有効成分ごとに異なっていた.また,先行バイオ医薬品からBS またはBS から先行バイオ医薬品へ切替え処方が行われた症例,切替えることなく先行バイオ医薬品またはBS を継続的に処方された症例が一定程度確認され,その処方動向には年齢等により異なる傾向が認められたことから,今後の調査にあたっては,先行バイオ医薬品とBS の処方状況を考慮することが重要であることが示された.結論: これら二つの調査結果は,MID-NET®データの特性を理解するために有用であり,MID-NET®の利用可能性の検討促進に寄与するものと考えられた.
著者
松田 真一 深田 信幸 大石 昌仁 岡 宏明 原 良介 小島 愛 中野 駿 元吉 克明 五十嵐 繁樹 佐々木 裕子 亀山 菜つ子 窪田 和寛
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.41-54, 2021-06-20 (Released:2021-07-26)
参考文献数
17

保険請求データベース(DB)や電子カルテ DB 等,日常診療の情報が記録されたリアルワールドデータ(real-world data:RWD)は,薬剤疫学研究における重要なデータ源の一つである.日本において,2018年4月より製造販売後調査の新たなカテゴリーとして,医薬品の製造販売後データベース(製販後 DB)調査が追加された.以降,医薬品リスク管理計画(risk management plan:RMP)において製販後 DB 調査が計画され,製販後 DB 調査の実践が期待されているが,現時点で結果公表まで至ったものはほとんどない.一方,海外においては RWD を用いた DB 研究成果は現時点で多数報告されている.海外と日本では,DB 自体の特性(項目・構造等)の違い,医療環境・慣習の違い等を念頭におく必要はあるが,そのような前提を踏まえて海外 DB 調査論文を精読し,研究仮説,研究デザイン,手法等を吟味することは,日本における製販後 DB 調査の計画・実行・結果の解釈を実践するうえで参考価値があると考えた.本報告の目的は,海外 DB 調査論文の批判的吟味を通じて,DB 調査の特徴や注意点を考察すること,そして,日本における製販後DB 調査の実践に役立つ提言を行うことである.本稿が,今後の製販後 DB 調査を計画・実施するうえでの一助になれば幸いである.