著者
伊東 哲代 安藤 孝雄 市川 邦介
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.170-173, 1968-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

甘藷の加熱処理法と糖生成量との関係を求めるため、甘藷の擂砕物、搾汁および粗酵素を用いて検討した結果は次のごとくであった。1 甘藷の擂砕物および搾汁においては、基質でんぷんのα化とも関連して、80℃附近において糖生成量が最大となった。またその糖化は、100℃に達するまでの時間が10~20分間あれば十分である。2 予め、基質をα化した場合、糖化は60℃附近において最も大であった。
著者
安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. III, 社会科学 (ISSN:13444638)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-10, 2008-02

急速な人口の高齢化にともない、わが国においても高齢者とペットとの関係が注目され、ペットが高齢者の心身の健康に良い影響を及ぼすという報告を目にするようになってきた。しかし、これらの多くは事例報告であり、規模の大きな調査研究はごくわずかしかない。他方、欧米では、20年ほど前から社会老年学の新しい研究テーマとしてペットに関する調査研究が行われ、高齢者のペット飼育状況とペット飼育に関連する要因、ペットが高齢者の対人関係に及ぼす影響、ペットが高齢者の心身の健康に及ぼす影響などについて、その成果が蓄積されてきている。ペットが人の心身の健康に及ぼす影響を検討する研究では、人とペットとの関係性をどのように評価するかが結果を左右する重要な要因であるといわれている。これまでの研究をみると、ペットを飼っているかどうかという単純な質問で評価している研究から、多面的に関係性を把握する尺度を開発して評価している研究まである。安藤・児玉は、この問題を検討するために、都市部に居住する50〜79歳の中高年1,098人を対象に調査を実施し、ペットの有無と抑うつ状態との間には有意な関連が認められなかったが、ペットとの情緒的交流と抑うつ状態との間には有意な関連が認められたと報告している。この結果は、人とペットとの関係性を適切に評価する必要があることを示唆するものであったが、この研究で試作された尺度は十分に検討されたものではなかった。そこで本研究では、ペットを飼っている都市部の高齢者を対象とした調査データに基づいて、人とペットとの間で取り交わされる情緒的な交流を量的に把握する尺度を新たに作成し、これらの結果をふまえて、ペットとの情緒的交流が高齢者の精神的健康に及ぼす影響について検討することを目的とした。
著者
駒嶺 真希 長谷川 知章 安藤 孝 宇山 佳明
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
pp.28.e1, (Released:2022-11-10)
参考文献数
21

目的: MID-NET®はこれまでにさまざまな薬剤疫学的な解析を通じて市販後の医薬品安全性評価に貢献している.適切な活用を促進する一助とするため,MID-NET®の特徴把握のための二つの調査を実施した.本稿では,これらの調査結果を述べ,今後の調査における留意点等を考察する.調査デザイン: 医療情報データベースの二次利用によるコホート調査方法: 一つ目の調査では,検体検査の結果値の特徴を把握し,肝機能障害のリスク評価法を検討するため,肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害の発現状況を全例調査の結果と比較考察した.また,二つ目の調査では,関連薬剤の処方選択や切替え時の特徴を把握するため,先行バイオ医薬品とバイオ後続品(以下「BS」という)の処方実態について検討した.結果: 肝機能障害のリスク評価法の検討において,肺動脈性肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害発現状況は,アウトカム定義として設定した重症度のグレードにより異なるものの,重症度を一定程度考慮した基準を用いることで,全例調査における副作用と同程度の発現状況を確認できる可能性が示唆され,各検査項目を組み合わせた定義など,異なる基準での結果と合わせて検討しその頑健性などを確認することで,適切な評価が可能になるものと考えられた.BS の処方実態の検討において,BS の処方は全体的に経時的に増加する傾向が認められたが,その程度は有効成分ごとに異なっていた.また,先行バイオ医薬品からBS またはBS から先行バイオ医薬品へ切替え処方が行われた症例,切替えることなく先行バイオ医薬品またはBS を継続的に処方された症例が一定程度確認され,その処方動向には年齢等により異なる傾向が認められたことから,今後の調査にあたっては,先行バイオ医薬品とBS の処方状況を考慮することが重要であることが示された.結論: これら二つの調査結果は,MID-NET®データの特性を理解するために有用であり,MID-NET®の利用可能性の検討促進に寄与するものと考えられた.
著者
安藤 孝弘 田中 義照 佐久間 正明 遠藤 久芳 Takahiro ANDO Yoshiteru TANAKA Masaaki SAKUMA Hisayoshi ENDO 国土交通省船舶技術研究所構造強度部 国土交通省船舶技術研究所機関動力部 国土交通省船舶技術研究所構造強度部 国土交通省船舶技術研究所構造強度部
雑誌
船舶技術研究所総合報告資料
巻号頁・発行日
vol.平成12年度, pp.85-112, 2001-03-31 (Released:2017-04-14)

Recently, the extensive use of high-tensile steel for ship hull structures has realized the decrease of plate thickness, under the design condition that no members yield for the design loads. However, the post buckling design as well as air planes is required to aim at the further making the most of high-tensile strength. This study had been performed as a designated study of Ship Research Institute for three years, in order to investigate the applicability of the post buckling design for ship structures assembled by welding. The details are as follows: ・Investigation of buckling analysis methods of panel or stiffened panel ・Model tests and numerical analysis of stiffened panel ・fatigue tests of stiffened panel subjected to pulsating compressive and shear load ・Investigation of the applicability of the post buckling design for ship structures
著者
二階堂 千絵 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
no.14, pp.13-22, 2015-03-31

近年我が国では少子高齢化に伴い、ペットは家族の一員として重要な存在となっている。そのような中、ペットとの死別とそれに伴う悲嘆についても注目されるようになった。本稿では、ペットと死別した高齢者への2 つのインタビュー調査から、ペットとの死別による悲嘆の適応を支える要因を抽出することを試みた。研究1 では飼い主の適応の支えとなる要因を抽出し、質的に検討した。その結果、4 名の調査協力者は皆、家族や友人などから社会的支援を受けており、亡くなったペットに対しては火葬・納骨などの儀式を行う、供花する、写真に話しかけるなどの行為が見られた。これらの行為は"継続する絆:Continuing Bond"と呼ばれ、亡くなった対象との分離を目指すグリーフワークモデルとは異なった、新しい形の悲嘆への適応のしかたとして注目されている。そこで研究2 では亡くなったペットと飼い主のあいだの"継続する絆"の詳細について質的に記述・検討した。これら2 つの研究から、今後の課題として、亡くなったペットと飼い主の継続的な絆の特有さ、世代を軸とした調査とペットロスにおける継続する絆の機能についての調査の必要性が示された。In recent years in Japan, with declining birthrates and an aging population, pets have becomeimportant members of the family. Under these circumstances, the grief that accompanies the bereavementof a pet has come to light. In the current research, we conducted interviews of the elderly who had losttheir pets in order to identify factors that support adaptive pet grief. The first study explored the factorssupporting for the adaptive pet grief, with data analyzed qualitatively. The results showed that, all petowners had support from their family and friends. In addition, the bereaved had a relationship with theirlost pet that continued after the death of the pet, in some form, ―pet cremation, the offering of flowersto the deceased, or recalling the lost pet. These actions are characterized as a continuing bond (CB), andCBs have been attracting attention as a new concept for understanding adaptive grief, different to thegrief work model that describes the separation from the departed as a goal. The second study examined and described in more detail the CB between owners and pets. Thepresent research is a novel examination of the role of CBs in the relationship between the owner and thedeceased pet, with a focus on the generation of the owner. Future research is needed to detail the role ofCBs in pet grief.
著者
佐藤 恭子 安藤 孝 西 智弘 狩野 真由美 石黒 浩史 宮森 正
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.201-205, 2010 (Released:2010-05-24)
参考文献数
9

舌下投与は痛みを伴わないため, 内服不能で他の投与経路確保が困難な終末期患者に有用な方法である. われわれは, がん性疼痛に対するブプレノルフィン(0.1~0.2mg/回), フェンタニル(0.05~0.2mg/回)注射剤舌下投与, および不眠時のミダゾラム(0.1mg・kg‾¹)注射剤舌下投与の有効性と安全性について検討した. 3剤は口腔内よりすみやかに吸収され, 約90%の症例に効果があった. 眠気, 嘔気のほか, 嚥下障害を有する例で痰の増加がみられた以外は, 特に大きな副作用はなかった. 注射剤の舌下投与は, 緩和ケアにおける代替投与経路として患者のQOLのために有用な手段である. Palliat Care Res 2010; 5(1): 201-205
著者
大野 善隆 松井 佑樹 須田 陽平 伊藤 貴史 安藤 孝輝 横山 真吾 後藤 勝正
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-147_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】運動量に応じて骨格筋量は変化するが、その分子機構には不明な点が多く残されている。運動時に骨格筋は乳酸を産生し、分泌する。骨格筋には乳酸受容体が存在するため、乳酸は骨格筋にも作用すると考えられる。近年、培養骨格筋細胞を用いた実験において、乳酸によるタンパク合成シグナルの活性化ならびに筋細胞の肥大が報告されている。しかしながら、生体レベルでの骨格筋量に対する乳酸の影響は未解明である。そこで本研究では、乳酸がマウス骨格筋量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 【方法】実験には雄性マウス(C57BL/6J)を用い、足底筋とヒラメ筋を対象筋とした。マウスを実験1:対照群と乳酸投与群、実験2:対照群、筋萎縮群および筋萎縮+乳酸投与群、に分類した。筋萎縮群と筋萎縮+乳酸投与群のマウスには、2週間の後肢懸垂を負荷し、筋萎縮を惹起させた。乳酸投与群と筋萎縮+乳酸投与群のマウスには、乳酸ナトリウム(乳酸)の経口投与(1000mg/kg体重、5回/週)を行った。対照群と筋萎縮群には同量の水を投与した。全てのマウスは気温約23℃、明暗サイクル12時間の環境下で飼育された。なお、実験期間中マウスは自由に餌および水を摂取できるようにした。実験開始後2、3週目(実験1)および1、2週目(実験2)にマウスの体重を測定した後、足底筋とヒラメ筋を摘出した。筋重量測定後、体重あたりの筋重量を算出した。また、乳酸の経口投与が血中乳酸濃度に及ぼす影響を確認するために、乳酸の単回経口投与後にマウスの尾静脈から採血し、簡易血中乳酸測定器を用いて血中乳酸濃度を測定した。実験で得られた値の比較には、一元配置分散分析または二元配置分散分析および多重比較検定を用いた。 【結果】本研究で用いた乳酸の経口投与は、マウスの体重に影響を及ぼさなかった。また、乳酸の単回投与後に血中乳酸濃度の一過性の増加が認められた。実験1において、足底筋ならびにヒラメ筋の重量は乳酸投与により増加した。実験2では後肢懸垂により足底筋とヒラメ筋の重量は減少した。一方、乳酸投与は後肢懸垂による筋重量の減少を一部抑制した。 【考察】乳酸は筋肥大および筋萎縮予防の作用を有すると考えられた。細胞外乳酸濃度の増加が培養骨格筋細胞を肥大させることが報告されていることから、乳酸経口投与による血中乳酸濃度の増加が、筋重量の増加に関与していると考えられた。 【結論】血中乳酸濃度の増加は筋重量の増加に作用することが示唆された。本研究の一部は、日本学術振興会科学研究費(17K01762、18K10796、18H03160)、公益財団法人明治安田厚生事業団研究助成、日本私立学校振興・共済事業団「学術研究振興資金」、公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団「助成金」、豊橋創造大学大学院健康科学研究科「先端研究」を受けて実施された。 【倫理的配慮,説明と同意】本研究の動物実験は、所属機関における実験動物飼育管理研究施設動物実験実施指針に従い、所属機関の動物実験委員会による審査・承認を経て実施された。
著者
安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学教育人間科学部
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. III, 社会科学 = Journal of the Faculty of Education and Human Sciences, Yokohama National University. The social sciences (ISSN:13444638)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-10, 2008-02-28

Importance of pets in old age has been gradually acknowledged. However, a few studies focusing on this issue have been conducted in Japan. The purpose of this study was to examine the effects of emotional interaction with pets on well-being among the elderly. Subjects were pet owners (dog and/or cat), ranging in age from 60 to 74 years, living in Metropolitan area. Mail surveys were carried out in 2000 and completed for 552 persons. The response rate was 92.0%. The demographics of pet ownership and quality of emotional interaction with pets (Human-Animal Bonding Scale) were inquired. Well-being was measured by the Japanese version of Geriatric Depression Scale and AOK Loneliness Scale. Multiple regression analyses showed the emotionally close relationships with pets had significant negative effects on depressive states and loneliness when the effects of socio-demographic variables, health status, and social support network were controlled. The results suggested the importance of emotionally close relationships with pets for quality of life in old age.
著者
小池 高史 西森 利樹 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
no.12, pp.19-26, 2013-03-30

都市部の団地で暮らす高齢者の情報取得状況やタウン紙の利用状況を明らかにすることを目的とし、高島平団地の住民を対象とした質問紙調査を実施した。高島平2丁目団地の全7,741 世帯から乱数表を用いて1,000世帯を無作為抽出した。配布不可であった67世帯を除く933世帯を調査対象とした。回収数は228票(回収率24.4%)であった。回答者の約6 割は高齢者であり、そのうちの半数以上が独居であった。独居高齢者の34.7%が男性、65.3%が女性であり、平均年齢は70.1歳(±4.9)であった。調査結果から、情報の種類によってどのメディアを利用するかが異なっており、孤立の防止に役立つような老人会や町内会、各種講座の情報については、タウン紙から取得している高齢者が多いことが明らかになった。また、高齢者のタウン紙利用に関係する要因の分析から、古くからある地域情報総合紙は、居住年数の長い人により多く読まれていることや、地域のイベントやサークル情報に特化したタウン紙は、女性により多く読まれ、一人暮らしの人にはあまり読まれていないことが明らかになった。高齢者の社会的孤立を防ぐために、タウン紙によって情報を伝達することが有効だと考えられるが、伝えたい情報の種類や伝達の対象を考慮してタウン紙の種類を選択することの重要性が示唆された。
著者
保科 豊巳 安藤 孝浩
出版者
東京藝術大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究では、植物の生体反応において発生する「生物フォトン」を媒体として、人と植物とのリアルタイムな異種間コミュニケーションの実現を目指すべく新たなツールを開発し芸術作品とする。 植物が自然の環境に影響を受け生長をする過程を調査し環境と植物と人を多角的に検証し植物を媒介とする環境メディアコミュニケーションアートという芸術文脈上の新しい概念を開拓する。 生物フォトンは微弱なため、光電子倍増管を活用する。 PMT計測は外光を遮断して行うため自然環境下では使用が制限される。 そこで、地中の根から発生する生物フォトンを測定するなど、コミュニケーション手段の確立を試みる。
著者
山内 正仁 山崎 順一 渡辺 敏英 三橋 政次 安藤 孝 横田 明俊 久保山 智司 油谷 崇志 鈴木 崇弘 岩田 佳之 村上 健
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 25.75 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.27-32, 2001-11-16 (Released:2017-06-23)
参考文献数
10

これまでに、ハイビジョンカメラを宇宙で使用した場合、CCD上に白傷が多数発生することが確認され、映像劣化の観点から、映像素材や科学的データの取得に際して障害となることが報告されている。本報告では、CCDの耐放射線特性を調べる目的で、ハイビジョン用のCCDに対して地上照射実験を実施したので、その結果を報告する。
著者
大原 一興 佐藤 哲 安藤 孝敏 藤岡 泰寛
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.247-258, 2010

社会福祉施設とくに入所施設において,その集団管理的な環境の見直しが進んでいるが,それぞれの施設において「施設らしくない」「ふつうの暮らし」を求めている。しかしその実態は,それぞれの施設によってまちまちである。同様の言葉に「家庭的な環境」「その人らしく」など環境とケアの概念が定着している。職員がこれらの言葉に対してどのようにイメージを持っているのか,職員自ら言葉に対しての写真を撮影し,その写真を分析することで,概念の共通化をはかることを試みた。とくに高齢者施設においては,食事や家事作業などを居住者がおこなっている光景が取り上げられ,職種別にもそのとらえ方に特徴が見られた。
著者
木村 由香 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-19, 2018-03-31

近年、「終活」と呼ばれる、自らの死に備える動きが見られる。終活とは、マス・メディアによって作られた言葉である。2009 年週刊朝日での連載記事によるものとされ、当初は主に葬儀や墓に関する内容を指した。終活という言葉が広がるにつれ、その内容に相続、財産整理、延命治療、介護、認知症、また遺品整理などが含まれるべきとの動きが生じ、現在では辞書でもそのように定義されている。つまり終活とは、マス・メディアによって作られ、世相を取り込み多様な内容を含む広義の言葉として変化したと言える。このことは、終活に関わる人々や企業、団体によってそのとらえ方が異なる可能性も示唆する。そこで本研究では、今一度終活がマス・メディアによって作られた葬儀や墓への備えを中心とした言葉であることに留意しつつ、終活に関するマス・メディアのとらえ方とその変遷を明らかとすることを目的とする。そのために、「終活」の語を含む新聞記事について、テキストマイニングを用いて内容分析を行った。記事数は、2015 年をピークとしつつ2016 年・2017 年ともに同水準で推移し、かつ読者投稿の比率が年々増加しており、終活は一般に浸透していることが伺えた。記事の内容からは、葬儀や墓についての内容を依然としてその中心としつつ、明るい側面を強調する形で報道されてきたことから、終活に取り組むことを肯定する視点でとらえてきたことがわかった。さらに近年では徐々に生活者の視点を取り込みつつあり、その内容はまさに変化の時期あることが示唆された。
著者
高橋 知也 小池 高史 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.20-30, 2018-03-31

独居高齢者の「援助を受けること」に対する認知的枠組み(以下、被援助志向性)を質的に検討することにより、被援助志向性に影響を与えるライフイベントを明らかにすることを目的として、6 名を対象に半構造化インタビュー調査を実施した。インタビューデータからSteps for Coding and Theorization (SCAT) による理論記述を行った結果、現在における被援助志向性がそれまでに個々人が経験してきたライフイベントに影響されることが示唆された。具体的には、(1) 援助職や小売業といった職業経験が肯定的、あるいは否定的な被援助志向性を形成する要因となり得ることや、(2) 身近な人との互助性を伴うつながりが肯定的な被援助志向性を形成する要因となり得ること、(3)自身や家族の健康、あるいは経済上の変化に伴う公的サービス(介護サービスや生活保護、求職支援など)の利用経験が被援助志向性を形成する要因となり得ることなどが示された。
著者
坂本 薫 岩城 啓子 岸田 恵津 池田 ひろ 入江 一恵 平田 由美子 三崎 勝 太田 初子 岡本 佳子 安藤 孝雄 口羽 章子 金谷 昭子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.399-406, 2001-11-20
被引用文献数
1

今後の炊飯方法や炊飯意義を探る研究の一環として,無菌包装米飯に焦点を当て,無菌包装米の利用状況や意識などに関するアンケート調査と代表的な3社の製品に対する食味評価を行なった。アンケート調査では,持ち帰り米飯に対する回答と比較し、以下の結果を得た。1.無菌包装米飯を知っている者は77.2%,そのうち,使用したことがある者は50.8%であった。中高年男性群に無菌包装米飯を知らない者が多い傾向が見られ,若年女性群との間に有意差(p<0.05)が認められた。2.無菌包装米飯と持ち帰り米飯を利用する理由は,両者とも「すぐ食べられるから」を挙げていたのに加え,無菌包装米飯には「保存できるから」が特徴的な理由として挙げられていた。無菌包装米飯の利用後の感想は,「満足」と「まあまあ」をあわせると84.4%となり,8割以上の者がほぼ満足していると考えられた。3.無菌包装米飯を今後利用したいか否かに対しては,「積極的に利用したい」あるいは「ときに利用したい」とした者は40.1%,「できれば利用したくない」は53.9%であった。利用したくない理由としては,「ご飯は家で炊くべきだから」,「おいしくないから」が多かった。4.3社の製品の食味評価は,普段食べている米飯とほとんど差がないと評価された製品もあったが,製品により評価に著しい差が見られた。また,香りに対する評価が,総合評価に影響を及ぼしている可能性が示された。5.テクスチャーについては,B,C社製品はコシヒカリに比較的近いかたさと付着性を示す結果となった。以上,白飯の無菌包装米飯は,製品によりテクスチャーや食味評価に差があり,香りが総合評価に影響を及ぼす要因であると示唆された。よい評価を得た製品は,普段食べている米飯と食味上遜色はなく,常温保存できるという特徴から,今後さらに需要が伸びる可能性があるものと思われる。