- 著者
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高垣 マユミ
田原 裕登志
- 出版者
- 日本理科教育学会
- 雑誌
- 理科教育学研究 (ISSN:13452614)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.2, pp.29-38, 2006-01-31
- 被引用文献数
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5
本研究では,小学校4年理科「水の状態変化」の単元において,子どもたちが水の状態変化に関して強固に保持している既有概念の変容を保す授業及び学習ツールを考案した。授業過程で生成された発話と行為を,TDの質的分析(Transactive Discussion)の類型に基づいて微視発生的に分析・解釈した結果,以下の手だてが,「水の状態変化」の概念の変容に重要な役割を果たすことが示唆された。(1)水以外の物質(ブタン,アルコール等)でも状態変化は起こり得る演示実験を提示し,概念を拡張しながら,水の状態変化のメカニズムを理解していくプロセスにおいて,既有概念と実験結果との間に『認知的葛藤』が生じ,かつ解消されるやりとりが生成されたときに,既有概念の変容が促進される。その際,使用した「学習ツール(タブレットPC,ペイントソフト等)」は,実験結果を自分自身の言葉で表現することを促す「認知的道具立て」として,有用な役割を果たした。(2)水の状態変化を具体的にイメージさせる「動画モデル」を導入し,『思考の根拠が可視化』された文脈で議論が展開されていくプロセスにおいて,暗黙的に表象されていた「既有概念(=水は常に目に見える)」と,「科学的概念(=目に見えない状態の水蒸気が,温度差によってその状態が変化し,目に見える状態になったものが湯気)」が,具体的なイメージをもって対応づけられたときに,その結果として既有概念の変容が促進される。