著者
鍋島 怜和 安武 大輔 北野 雅治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.207-213, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
32

主枝2本仕立ての無摘心栽培を行い,ピーマンの多収要因となる形質を明らかにするために,8品種を用い,収量および生育特性,乾物生産について品種間差異を調査した.果実新鮮重(果実FW)から,本研究で用いた8品種の中では,‘土佐Pレッド’および‘トサヒメ’が高収量品種,‘さらら’および‘グリーン800号’を低収量品種であると判断した.高収量品種は低収量品種に比べて,果実数は同等以上であり,完熟果1果当たりの果実重は,2つの低収量品種の中間程度であった.果実への乾物分配率は,本試験に用いた品種間では大きな差はなく,また果実重(果実FWおよび果実DW)との間に相関は認められなかった.一方,地上部総乾物生産量(TDM)は,果実重(果実FWおよび果実DW)との間に高い正の相関を示し,さらに,高収量品種のTDMは低収量品種に比べて大きい傾向がみられた.これらのことから,多収には果実への乾物分配率より,TDMの増加が大きく貢献していると考えられた.また,生育特性の中では,栽培初期,中期および終了時の主茎径および主枝節数は果実FWとの相関は有意でなかったが,栽培終了時のTDMに対して高い正の相関を示した.
著者
稲本 勝彦 木下 貴文 山崎 博子
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.243-251, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では,ガーベラ(Gerbera jamesonii Bol. ex Adlam.)の地表面に形成され,頂端分裂組織を含む短縮茎(「クラウン」と呼ぶ)部の局所的な加温は花茎発生と伸長を促進することを示した.当年夏季新植株を用いて冬季2回(実験1:品種‘バナナ’および‘キムシー’;実験2:品種‘キムシー’),温水チューブならびにステンレステープヒーターを用いたクラウン部局所加温を行って栽培した.局所加温により,切り花収穫時期が早まり,総切り花収穫本数および切り花長40 cm以上の収穫本数が増加した.局所加温の効果はクラウン部の平均温度が高く保たれた区で大きく室温を低く設定すると明確であった.株当たりの切り花重は無局所加温区と比較して局所加温諸区で増加あるいは有意差がなかった一方で,切り花1本当たりの切り花重,頭花径は無局所加温区と比較して局所加温諸区で小さくなる傾向にあった.ガーベラに対するクラウン部局所加温技術は,暖房コストの低減や収穫時期の調整技術に活用が期待される.
著者
白山 竜次 木戸 君枝
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.281-288, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
22

明期終了時の遠赤色光(EOD-FR)照射がキクの花成に及ぼす影響について調査した.秋ギク‘神馬’の低温期におけるEOD-FR処理は花成を促進した.秋ギクの自然日長における10月開花作型栽培によるEOD-FR処理は,20品種のうち14品種において花芽分化の促進効果が得られた.短日条件下に定植した秋ギクのEOD-FR処理は,20品種のうち11品種において花芽分化の促進効果が得られた.夏秋ギク6月開花作型でのEOD-FR処理では,30品種系統のうち19品種において開花の促進効果が得られた.EOD-FR照射は,秋ギク‘神馬’の限界暗期付近の花芽分化を促進したが,‘神馬’の明期終了から最も暗期中断の効果が高くなる時間までの経過時間(Dusk-NBmax)には影響しなかった.本研究は,EOD-FR処理がキク節間伸長を促進すると同様に栽培条件によっては花成促進に働くことを示した.
著者
今西 弘子 生尾 昌子 稲本 勝彦 土井 元章 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-74, 2002-04-01
参考文献数
10
被引用文献数
12 8

オフィスにおけるインテリアグリーンがそこに働く人々に与える心理的効果を中心に,インテリアグリーンの効果的な使用法を探る目的で,アンケート調査が行われた.その結果,オフィス内にかなりの量の観葉植物があることが望まれ,それが仕事の上にもよい影響を及ぼすと感じられていること,観葉植物としてアートプランツの使用も容認されること,観葉植物に比べ花はより好感をもって受け入れられることが明らかになった.<br>
著者
水田 洋一 川西 孝秀 矢澤 進
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.165-170, 2003

培地を無くし,遮根できる布(底面遮根材)を用いて底面給液することにより,根域を薄層化することで,セル成型育苗システムを軽量化した&ldquo;セルシート&rdquo;育苗法を開発した.底面遮根材および根域を保護する資材(根域保護材)が,苗の接着性,生存率,地上部生体重に及ぼす影響をレタス,ハクサイ,トマトで調査した.底面保護材にテトロン200 lpiまたはテトロン250 lpiを用いると,シートを垂直にぶら下げた程度では苗は全く落下せず,苗を剥がしても根が傷がつかず,適当な苗の接着性があった.底面保護材にテトロン200 lpi,根域保護材に80 ℃で乾燥したピートモス200~400 ml/シートの組み合わせで,対照のセルトレイ区よりも地上部生体重が大きくなった.しかし,レタスではセルシートを根域保護材で被覆した場合,生存率が低下した.<br>
著者
水田 洋一 川西 孝秀 矢澤 進
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.165-170, 2003-09-15
参考文献数
7

培地を無くし,遮根できる布(底面遮板材)を用いて底面給液することにより,根域を薄層化することで,セル成型育苗システムを軽量化しだセルシード育苗法を開発した.底面遮根材および根域を保護する資材(根域保護材)が,苗の接着性,生存率,地上部生体重に及ぼす影響をレタス,ハクサイ,トマトで調査した.底面保護材にテトロン200lpiまたはテトロン250lpiを用いると,シートを垂直にぶら下げた程度では苗は全く落下せず,苗を剥がしても根が傷がつかす,適当な苗の接着性があった.底面保護材にテトロン200lpi,根域保護材に80℃で乾燥したピートモス200~400ml/シートの組み合わせで,対照のセルトレイ区よりも地上部生体重が大きくなった.しかし,レタスではセルシートを根域保護材で被覆した場合,生存率が低下した.
著者
大川 浩司 菅原 眞冶 高市 益行 矢部 和則
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.449-454, 2007-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
3

施設内における高温および低温条件が,単為結果性トマト'ルネッサンス'の着果および果実肥大特性に及ぼす影響について検討した.日最高気温の平均値が39.2℃の高温条件において,'ルネッサンス'は単為結果性の安定した発現により100%着果し,発育不良果の発生もみられなかった.同条件において,非単為結果性トマト'桃太郎ヨーク'は受精できず,4CPA液の処理なしでは果実が正常に肥大しなかった.一方,日最低気温の平均値が5.9℃の低温条件においても,'ルネッサンス'は単為結果性の安定した発現により100%着果し,発育不良果も発生しなかった.同条件における'桃太郎ヨーク'は,受精が不完全となって,発育不良果が61%発生し,果実の正常な肥大には4CPA液の処理が不可欠であった.上述したような高温および低温条件において,'ルネッサンス'は受粉や合成オーキシン処理を省略しても果実は正常に肥大したことから,非単為結果性トマトに比べて栽培適応性か広く,生産性の高い栽培が可能と考えられる.
著者
小野崎 隆 八木 雅史 棚瀬 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.399-405, 2009-10-15

ポットカーネーション42品種の花について、花持ち性、エチレン生成量、エチレン感受性を調査した。ポットカーネーション品種中に、花持ち性やエチレン生成量に関して大きな変異の存在することが明らかになった。'ポラリス'、'カミーユピンク'、'シフォン'、'バンビーノ'、'ニーニャ'は平均花持ち日数9.7日以上と花持ち性に優れていた。これらの花持ち性の優れる品種では、老化時のエチレン生成量が極めて少なく、通常の品種で生じる花弁のインローリング、萎凋を示さずに、花弁の縁から褐変する症状で観賞価値を失った。花持ち性と老化時のエチレン生成量、自己触媒的エチレン生成量との間には有意な負の相関関係が認められた。また、エチレン感受性についても二倍体品種で大きな品種間差異のあることが明らかになったが、エチレン感受性と花持ち日数との間に有意な相関は認められず、エチレン低感受性品種の花持ち性が優れる傾向はみられなかった。倍数性と花持ち性、エチレン感受性との間に関連性は認められなかった。本研究により、ポットカーネーションにおける花持ち性の品種間差異が明らかになり、花持ち性の向上を目指した交雑育種の可能性が示された。
著者
遠藤(飛川) みのり 曽根 一純
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.95-104, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
6

品質保持効果の高いイチゴ果実の輸送方法を確立することを目的に,新型容器およびMA包装を併用してイチゴ2品種を東南アジア2か国へ航空便および船便にて輸送し,品種別に包装資材を検討した.その結果,航空便においては‘福岡S6号’は伸縮性フィルム容器,‘おいCベリー’は宙吊り型容器を用いることで損傷程度の低減効果や果実硬度低下の抑制効果が期待できることが明らかになった.容器による品質保持効果が品種によって異なったことから,イチゴ果実の輸送において,容器および品種選定の必要性が示唆された.また,船便においては,損傷程度は新型容器により概ね低減されるものの,MA包装を併用することにより維管束のにじみなどが防止できることが明らかになり,新型容器に加えてMA包装の使用が推奨された.なお,MA包装の有無や品種,輸送条件を問わず損傷程度は損傷した果実の割合と高い相関を示し,イチゴにおいては損傷した果実の割合を元に損傷程度を評価できると考えられた.また,損傷する果実の割合を低下させるよう容器を改良することで,果実の損傷程度をより低減できる可能性が示唆された.
著者
浜本 浩 嶋津 光鑑 池田 敬
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.307-310, 2003-12-15
被引用文献数
2

1〜2日間隔の時期中断が数種の葉菜類の生育に及ぼす影響について検討した.実験1では,ホウレンソウに対して0.4〜1.2μmol・ m^<-2>・s^<-1>の白熱灯による深夜の時期中断を毎日51分(毎日処理)か,月,水,金曜日に2時間(間隔処理)行った.実験2では,ホウレンソウとコマツナを白熱灯を用い1.0〜1.5μmol・m^<-2>・s^<-1>の強度で間隔処理を行った.実験3では,ホウレンソウ,サラダナ,コマツナに対して,LEDを用いて0.5〜L8μmol・m^<-2>・s^<-1>の強度で間隔処理を行った.実験1では処理26日目で毎日処理区の22%の株に抽だいを確認したが,間隔処理区では確認できなかった.実験2と3では,白熱灯およびLEDによる間隔処理でホウレンソウの生育が抽だいを抑えつつ促進され,無処理の対照区に比べて草丈,葉数,地上部乾物重が大きくなった.しかし,サラダナおよびコマツナに対しては,間隔処理による生育促進はみられなかった.
著者
白山 竜次 郡山 啓作 木戸 君枝
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-78, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

キクの暗期中断における間欠照明の花芽分化抑制に対する有効性を赤色光(以下R光と略す)および赤色光 + 遠赤色光(以下R + FR光と略す)を用いて検証した.同一照射時間帯(22:00~2:00) で連続照明と間欠照明を比較したところ,R光およびR + FR光ともにDuty比が低下するにつれて花芽分化抑制効果が低下した.またR光の連続照明とDuty比0.5で積算の放射照度を連続照明に対して1.0および0.5に設定した間欠照明の効果を比較したところ,1.0区は連続照明と同等であったが,0.5区は連続照明に比較して効果が劣った.このことから,本実験ではキクの同一時間帯での連続照明に対する間欠照明の優位性は確認できなかった.次に,同一積算照射時間において短時間の連続光(18分) と間欠により3時間に照射時間帯を拡張した間欠照明を比較した場合では,R光は間欠照明の効果が認められなかったが,R + FR光では連続照明に比較して間欠照明の花芽分化抑制効果が高くなった.これは短時間照明(18分) の場合,R + FR光の連続照明は,R + FR光によるフィトクロムの低Pfrレベルにより,暗期中断の効果が低下することによると考えられた.また,連続照明の時間帯を変えることで暗期中断の効果が変化したことから,同一積算照射時間の場合は,キクの暗期中断に対する感度が時間帯で変化することに注意する必要があると考えられた.実際のキク電照栽培では,暗期中断の時間がR + FR光での低Pfrによる花芽分化抑制効果の低下が発現する時間よりも比較的長時間であるために,間欠電照の優位性はほとんどないと考えられた.
著者
久保 隆 深澤(赤田) 朝子 藤村 泰樹 山道 和子 神田 由起
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.379-384, 2014 (Released:2014-12-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

大果で高品質なオウトウ品種を育成するため,種子親を‘紅秀峰’,‘サミット’を花粉親として交雑を行い,新品種‘ジュノハート’を育成した.本品種は1998年に交配後,2004年に35個体の実生のなかから選抜された.成熟期は育成地で満開57日以後の7月上旬で‘佐藤錦’の約5日後である.果実は大きく,果重は約11 gである.果形は短心臓形で,果皮色は濃赤である.果肉は硬く,糖度は19.1°で甘味が多く,酸含量は0.53%で酸味は少ない.核は大きいが,離れやすく食べやすい.S遺伝子型はS1S6で,‘佐藤錦’,‘紅秀峰’,‘南陽’および‘サミット’と交雑和合性で,紅さやか’および‘北光’と交雑不和合性である.‘佐藤錦’の受粉樹としての利用が可能である.‘ジュノハート’は見栄えが良く食味も優れることから,贈答用あるいは観光果樹園での普及が期待される.
著者
住田 敦 加屋 隆士 畠中 誠
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-4, 2008 (Released:2008-01-25)
参考文献数
14
被引用文献数
5 8
著者
安藤 敏夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.213-218, 2002-09-15
参考文献数
40

ペチュニア属遺伝資源の評価に関連する筆者らの研究経過を取りまとめた.広義のペチュニア属には, 互いに交雑できない3群が存在し, その3群は種子表面形態・核DNA量などで識別できた.ウルグアイには花器構造の異なるP.axillarisの2亜種がすみわけており, 中間型の分布する地域を特定し, 園芸的に重要な形質をもつ群落を抽出した.野生種の花に新規物質11を含む, 30種類のアントシアニンを確認し, 遺伝資源としての可能性が議論された.ペチュニア属とカリブラコア属の全種に関して自家(不)和合性が調査され, 自家和合種が降水量の少ない地域に分布する実体を示した.基本的に自家不和合であるP.axillarisの亜種axillarisには自家和合個体を希に交える群落があり, 自家不和合性の崩壊現象を研究する素材として使われた.このほか園芸学と植物学の学際領域としての園芸遺伝資源学の研究領域を紹介した.
著者
宮城 淳 家壽多 正樹 日坂 弘行 本居 聡子 若生 忠幸
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.101-107, 2011
被引用文献数
5

ネギの食味品質に関する化学的,物理的分析法を確立するため,「辛み」,「甘み」,「硬さ」の観点から,調理法を考慮した官能評価と生ネギの化学的成分および物性値の関係を明らかにした.生ネギの「辛み」評価とピルビン酸生成量には,強い正の相関関係(<i>r</i> = 0.94**)が認められた.加熱ネギの「甘み」評価と糖度との間には正の相関が得られなかったが,ブドウ糖含量,果糖含量,遊離糖総量および甘味度との間にはそれぞれ強い正の相関関係(<i>r</i> = 0.98**~0.99**)が認められた.焼きネギおよび煮ネギの「硬さ」評価は,円柱プランジャー(&Phi;3 mm)を用いた貫入抵抗値と,強い正の相関関係(<i>r</i> = 0.90*~0.99**)が認められた.以上,ネギの「辛み」および「硬さ」はそれぞれ,ピルビン酸生成量および貫入抵抗値で表現できた.「甘み」は,屈折糖度計で測定することは適切でなく,ブドウ糖含量,果糖含量,遊離糖総量および甘味度で測定することが適していた.<br>
著者
艾乃吐拉 木合塔尓 壽松木 章 小森 貞男
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.439-443, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2 10

エチレン作用阻害剤の1-MCPが我が国のリンゴ果実の貯蔵性に及ぼす影響について, 早生品種の'さんさ', 中生品種の'ジョナゴールド'および晩生品種の'ふじ'の収穫適期の果実を用いて検討した.その結果, 3品種とも1-MCP曝露処理により果実のエチレン生成は顕著に抑制されたが, 貯蔵品質に及ぼす効果は品種により異なった.早生品種の'さんさ'では, リンゴ酸含量の低下はやや抑制したものの, 果肉硬度の低下は抑制せず, 鮮度保持効果は処理後1か月程度であった.また, 1-MCP処理は収穫後3日以内に行わないと効果が認められなかった.それに対し, 中生品種の'ジョナゴールド'では収穫当日処理から収穫後7日目処理まで, 果肉硬度, リンゴ酸含量とも処理後2か月まで保持効果が認められた.特に, 果皮の油あがりが顕著に抑制された.晩生品種の'ふじ'では, 'ジョナゴールド'と同様, 1-MCP処理果実は貯蔵後2か月目まで収穫時の硬度を維持しており, また, みつ入りも当日処理では2か月後まで, 収穫後3日目および7日目処理でも対照区より多く維持する傾向にあり, 鮮度保持効果が認められた.この結果は, 従来CA貯蔵など長期貯蔵が困難であった暖地型の完熟'ふじ'果実の長期鮮度保持が可能になることを示しており, 今後の貯蔵技術に大きな影響を及ぼすことが示唆された.
著者
山根 京子 小林 恵子 清水 祐美
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.219-229, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

若者のワサビ離れの実態は不明であり,ワサビや辛味の嗜好性との関係も調べられたことはなかった.そこで全国の農業高等学校15校と老人介護施設3施設を対象に郵送でアンケート用紙を送付し,高校生594人および高齢者65人から有効回答を得て辛味に関する嗜好性を分析した.その結果,高齢者より高校生で,高校生男子より高校生女子で「ワサビ嫌い」が有意に多くみられることがわかった.辛い食べ物やトウガラシでは世代,性別間で有意な差はみられなかった.嫌いな理由として「鼻にツンとくるから」が72%と最も高かった.ワサビ好きと「回転寿司の利用頻度」と「肉の嗜好性」とは無関係であり,「魚の嗜好性」と 「生ワサビの経験値」 と有意な関係性がみられた.一方,「家族のワサビの経験値」とも有意な関係性がみられ, ワサビの嗜好性には家庭環境が影響を与えている可能性がある.今回の結果から,若い人たちが本当のワサビの味を知らず,身近な食材としてトウガラシをより好む傾向になりつつある現状が浮かびあがった.より多くの人たちに生ワサビを食する機会を設けるなど何等かの対策を講じる必要があるだろう.
著者
東出 忠桐 後藤 一郎 鈴木 克己 安場 健一郎 塚澤 和憲 安 東赫 岩崎 泰永
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.523-529, 2012-10-15

キュウリ短期栽培においてつる下ろし法および摘心法が乾物生産や収量に及ぼす影響を収量構成要素から解析した。太陽光利用型植物工場内で噴霧耕方式の養液栽培により,3品種のキュウリについて,4本の側枝を伸ばしてつる下ろしを行う場合と,主枝を第20節および側枝を第2節で摘心する場合とを比較した。2011年7~10月に比較実験を行ったところ,果実生体収量は,すべての品種でつる下ろし区に比べて摘心区の方が多かった。収量の多少の原因について収量構成要素から解析すると,果実生体収量が多かった摘心区および品種では果実乾物収量が多かった。果実乾物収量が多い理由は,果実への乾物分配率およびTDMがともに多いためであった。実験期間全体のTDMの違いは光利用効率の違いに関係していた。ただし,定植後40日までは積算受光量の違いがTDMや収量に影響していた。
著者
杉浦 広幸 河野 圭助 香山 雪彦 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.135-141, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
23

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う福島市のシラカシ果実と葉における放射性セシウム濃度を定量し,汚染状況と汚染経路を検討した.2010年以前に展開し事故時に存在していたと推定される古い葉の放射性セシウム濃度は非常に高く12,000 Bq・kg-1(生体におけるCs-137とCs-134の合計)を超えていた.しかし,2012年度に展開した若葉は300 Bq・kg-1未満であり,大きく減少していた.2012年に採取した果実の放射性セシウム濃度は,最大で305 ± 8 Bq・kg-1であった.果実の汚染は表面を洗浄しても低下せず,また洗浄後の殻と種子(内部)に差がなく,表面汚染ではなかった.古い葉と新しい葉の放射性セシウム濃度は,ある程度の相関がみられた.また,新しい葉と果実の放射性セシウム濃度にも相関がみられ,果実/葉の比は約0.85であった.果実における放射性セシウム濃度と,株の周囲で舗装されていない部分(根圏域が露出している面積)の割合との間にも比較的高い相関がみられた.以上の結果から,果実と若葉の放射性セシウム汚染は,転流以外にも表層に張る根からの吸収経路の寄与が示唆された.
著者
竹岡 賢二 福島 啓吾 伊藤 純樹 毛利 晃
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.273-278, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
19

発泡ガラスの園芸用培地としての利用可能性を明らかにするため,粒径別の理化学性およびコマツナの栽培特性を調査した.有効水分は,粒径4 mm未満で確保でき,4 mm未満に4~15 mmを25~75%混合すると制御できた.発泡ガラスの化学性は,pHおよび交換性マグネシウムが高く,CECが低かった.発泡ガラスを流水洗浄することで交換性マグネシウムは低下したが,pHは調整が必要であった.コマツナの生育および窒素吸収量から,発泡ガラス培地は,pHを6に調整するとマサ土とバーク堆肥を混合した慣行培地と同程度の生育を示したが,ゼオライトの添加による生育差は見られなかった.以上のことから,発泡ガラスは,粒径4 mm未満に4~15 mmを25~75%混合し,pHを6に調整することで,園芸用培地として利用できる可能性が示唆された.