著者
執行 みさと 竹馬 昂平 國武 久登 小松 春喜
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.335-342, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

キイチゴ(Rubus spp.)は,果実中に含有されるフェノール化合物が健康維持に効果的と考えられることから注目されつつある果樹である.我が国にも多くの野生種が自生しているが,栽培されている品種のほとんどは欧米で改良されたものである.本研究では,野生種を園芸的に利用するための基礎的な知見を得るため,九州地方に自生するいくつかの野生種を収集し,育種素材としての評価を行った.栽培種はいずれも二倍体であったが,野生種はゲノムサイズの異なる二倍体と少数の六倍体であった.シマバライチゴを除く野生種の集合果は,栽培種と比較して小さくなかった.野生種の中にはクマイチゴ,カジイチゴおよびナガバモミジイチゴのように栽培種に比べ果実中の糖含量が高く,有機酸含量が低いものがあった.また,クマイチゴ,ナガバモミジイチゴおよびシマバライチゴは栽培種に比べ果実中の総ポリフェノール含量あるいは抗酸化活性が高かった.我が国自生の野生種のいくつかは,栽培し易く,果実品質が優れかつ機能性の高い品種を育成するための育種素材となり得るものと思われた.
著者
斎藤 岳士 福田 直也 西村 繁夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.415-419, 2006 (Released:2006-12-27)
参考文献数
20
被引用文献数
2 9

NFTにおける2段摘心トマト栽培において,塩ストレス処理時期,栽植密度および果房直下の側枝利用を総合的に組み合わせた実験を行い,収量ならびに品質に及ぼす影響について評価した.塩ストレス処理は,開花期から行なうと,果実糖度は増加するものの平均果実重量が40%程度減少した.一方,第1花房開花20日後の果実肥大中後期から行うことにより,果実糖度は9.0前後に増加するが,果実肥大抑制は30%程度に抑えられた.高栽植密度条件下(約950株・a−1)では,低栽植密度(約670株・a−1)と比較して,果実品質に大きな影響を及ぼさずに果実収量が34%増加した.果房直下の側枝利用によって,塩ストレス処理下においても,栽植密度にかかわらず糖度を向上させる効果があることが示された.以上の結果から,NFTにおける2段摘心トマトでこれらの栽培技術を総合的に組み合わせることが高糖度トマト生産に有効であることが示された.
著者
細川 卓也 小松 秀雄 前田 幸二 中村 和洋 吉田 徹志 福元 康文
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.39-44, 2006 (Released:2006-04-11)
参考文献数
15
被引用文献数
4 6

有機質成型培地を用いたトマトの長段どり栽培での高糖度果実の多収生産を目的とし,有機質成型培地の水分保持特性を調査し,日射比例給液制御装置を試作してこれを用いた場合の給液量の違いが収量・品質に及ぼす影響を検討した.スギ樹皮やヤシガラとバーク堆肥の混合資材からなる有機質成型培地ではロックウールスラブに比べて排水性が優れ,高pFでの水分率が高い水分保持特性を示した.長段どり栽培では,長期間にわたって葉面積の変動が小さく,積算日射と蒸発散量の間には高い正の相関関係が認められた.ヤシガラ・バーク培地を用い積算日射で1.71 MJ・m−2,1.93 MJ・m−2,2.13 MJ・m−2(第2果房下の葉を除去するまではそれぞれ1.50 MJ・m−2,1.71 MJ・m−2,1.93 MJ・m−2)ごとに100 ml・株−1を給液する3区を設けて収量・品質を比較した結果,可販果収量は給液量の多い区ほど多く,平均糖度は給液量の少ない区ほど高かった.高糖度果実(Brix 8%以上)の収量は,1.93 MJ・m−2(第2果房下の葉を除去するまで1.71 MJ・m−2)ごとに給液する区で最も多かった.
著者
長谷 暢一 松浦 誠司 山口 雅篤
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.125-129, 2005 (Released:2005-10-28)
参考文献数
15
被引用文献数
4 7

パンジーにおけるHPLCを用いたフラボノイド分析を行った. その結果, それぞれ6種類のアントシアニンおよびフラボノール類が検出された. そのうち, 4種類のアントシアニンはDp3RG, Cy3RG, Dp3pCRG5G(ナスニン)およびCy3pCRG5Gであり, また1種類のフラボノール類はQu3RG(ルチン)であった. 黄色および白色系統においてアントシアニンは検出されなかった. 青色系統はナスニンおよび6種類全てのフラボノール類が主要色素として存在し, 系統間でその含量の違いが認められたことから, コピグメントによる花色幅の拡大の可能性が示唆された. 赤色系統はアントシアニンのCy3RGおよびルチンを含む3種類のフラボノール類が主要色素であり, また赤紫系統では特異的なアントシアニン(Cy3pCRG5G)が多く含まれ, 赤色系統および赤紫系統はアントシアニンの違いにより花色が異なることが示唆された. これらのことから, パンジーの新規花色品種育種におけるHPLC分析の有効性が示された.
著者
村松 嘉幸 河野 寿紀 窪田 聡 腰岡 政二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.267-272, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
3

夏季の高温により生育と開花が抑制されるミニシクラメンを用いて,根域冷却が生育・開花に及ぼす影響について検討した.根域温度を20°C,23°C,26°Cに調節した区と冷却を行わない無冷却区を設けた.各区の根域温度は設定温度の±1~2°Cの範囲に制御され,無冷却区の平均最低温度と最高温度はそれぞれ約25°Cと28°Cであった.栄養生長は無冷却区と比較して23°Cで促進された.20°Cの開花は10月中旬から始まり,花数は20日後には約7輪/株となった.開花は根域温度の上昇とともに遅れ,20°C,23°C,26°Cおよび無冷却区の開花株率は,それぞれ82,60,44および20%となった.しかし,花蕾数は23°Cで約65個/株と最も多くなり,20°Cおよび無冷却区に比べて,それぞれ25個および10個増加した.これらのことから,根域を23°Cまで冷却すると栄養成長および花芽形成が促進され,20°Cまで冷却すると開花が促進された.
著者
松尾 英輔
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.373-378, 2005-12-15
被引用文献数
1
著者
斎藤 秀幸 斎藤 隆
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.79-83, 2004-04-01
被引用文献数
3 2

カブ'ひかり'の花房形成に及ぼす24時間の日長処理期間の影響について調査するとともに,ジベレリンあるいはウニコナゾール施与の影響について調査し,長日によるカブの花房形成に対するジベレリンの作用について花成強度(斎藤・斎藤,2001)を求めて検討した.24時間の日長処理を0, 10, 20, 30, 40および75日間行った結果,頂花房の形成株率は処理期間の長くなるにつれて順次高くなり,側花房の形成節数は多くなり,花成強度も処理期間の長くなるにつれて高くなった.24時間日長による花成誘導の作用は徐々に累積され,低温に比べて小さいものと考えられた.ジベレリン施与によって,頂花房の形成は全株で認められ,頂花房までの節数は減少し,側花房の形成節数は増加した.花成強度はジベレリン施与によって高くなり,花房形成が助長された.一方,ウニコナゾール施与によって,花房の形成は著しく抑制され,花成強度は著しく低下した.ジベレリンは長日による花房形成の助長作用を代替するが,その助長作用は低温に比べて小さく,あまり大きくないものと考えられた.
著者
間藤 正美 工藤 寛子 山形 敦子 佐藤 孝夫 柴田 浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.201-208, 2009-04-15

7月下旬咲き小ギク'小雨'、'みちのく'、'やよい'の生育に及ぼす気温とエセフォン処理の影響について調査した。開花期は、各年の気温によって大きく変動した。変動の要因は、花芽分化期の低温や花芽発達期の高温であり、特に後者の影響が大きかった。'小雨'は、これらの時期の高温や低温によって発蕾後の花芽発達が抑制されて、開花が遅延しやすい品種であった。'みちのく'は、花芽分化期の低温により花芽分化および発蕾前の花芽発達のみが抑制され、開花の年次変動の小さい品種であった。'やよい'は、花芽発達期の高温で発蕾後の花芽発達が抑制され、開花の年次変動が供試3品種中で中位の品種であった。7月下旬咲き小ギクの開花は、エセフォン処理によって遅くなるが、その程度も品種間差があった。供試3品種において、エセフォン処理は、主に花芽分化および発蕾前の花芽発達を抑制した。しかし、'小雨'および'やよい'に対するエセフォン処理では、気温によって発蕾後の花芽発達の抑制程度に大きな変動が見られた。7月下旬咲き品種のエセフォン散布処理による盆出荷作型の開発において、'みちのく'の様に気温による開花の年次変動が小さい有望な品種があることが判明した。今後、適応する品種を選抜して、盆出荷のための適正な散布方法を開発する必要があると考えられた。
著者
野崎 香樹 村本 智香 高村 武二郎 深井 誠一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.123-128, 2006-06-15
被引用文献数
1 6

アプリコット色花系および覆輪花スプレーギクにおける花色が作期または栽培温度により変化する様相を明らかにするため,各作期または各温度下で開花した花色を測定し,舌状花のアントシアニンおよびカロテノイド量を測定した.アプリコット色花系品種では6/30作期または30℃処理区で黄色味の花色を呈し,a値が減少し,bおよびh値が増加した.覆輪花品種は,高温下で赤色部位が淡色化または消失し,作期または温度間で覆輪割合が変動した.覆輪の発現には(1)高温下で赤色部位が減退することで花弁先端に白色部位が出現する品種(2)涼温下で赤色部位が増加することで明瞭な覆輪が出現する品種の2つのパターンが見られた.いずれの品種においても赤色花キクの主要花色素であるCy3-6"-MMGおよびCy3-3",6"-DMGが主要アントシアニンとしてHPLCにより検出された.また,多くの品種ではカロテノイド量は温度による影響は少なく,2つの主要アントシアニンの増減によってアプリコット色花系品種の花色および覆輪花系品種の覆輪割合の変動が生じるものと考えられた.
著者
稲葉 善太郎 大塚 寿夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.263-267, 2002-12-10
被引用文献数
7

冬期の夜温がキンギョソウの開花特性に及ぼす影響を明らかにするために, 摘心栽培および無摘心栽培で検討した.摘心栽培においては, 夜温が高いほど'初春'と'ライトピンクバタフライII'は第1節以下分枝, 'ヴェルン'では第2節分枝の開花が早まった.採花本数は'初春'と'ヴェルン'は夜温16℃で最も多くなり, 'ライトピンクバタフライII'の採花本数には夜温の影響はみられなかった.無摘心栽培の'ライトピンクバタフライII'では, 夜温が高いほど開花が促進された.供試品種に好適な冬期夜温は, '初春'では6∿11℃, 'ライトピンクバタフライII'では11℃, 'ヴェルン'では16℃と考えられた.
著者
稲葉 善太郎 大城 美由紀
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.303-306, 2003-12-15
被引用文献数
6 3

キンギョソウ品種'メリーランドピンク'と'ライトピンクバタフライII'を10月に播種し,定植後から加温開始時期と夜温を組み合わせて栽培した.'メリーランドピンク'では同一夜温において加温開始を早めることで開花が早くなった.切り花品質からみて,'メリーランドピンク'では11月中旬からの夜温11℃が適していた.'ライトピンクバタフライII'では11月中旬から加温を開始して夜温16℃とすることで開花が早くなった.いずれの品種も夜温が高いほど開花が早くなった.'メリーランドピンク'と'ライトピンクバタフライII'ともに夜温が低いほど開花時の草丈が高くなった.
著者
田尾 龍太郎 難波 梓 山根 久代 冬廣 吉朗 渡邊 毅 羽生 剛 杉浦 明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.237-240, 2003 (Released:2008-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 5 1

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNaseが関与する配偶体型自家不和合性を示す.ウメには,自家和合性品種も存在しており,これらの自家和合性品種は自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(Sf-RNase遺伝子)を持つことが報告されている.本研究では,このSf-RNase遺伝子を特異的にPCR増幅するためのプライマーセットを開発した.‘剣先’からSf-RNase遺伝子の部分配列をPCRクローニングし,その塩基配列を決定した.Sf-RNase遺伝子のイントロン部位の塩基配列よりセンスプライマー(Ken2)およびアンチセンスプライマー(PM-R)を設計し,いくつかのウメ品種を用いてその有効性を検討したところ,Sf-RNase遺伝子をもつ品種でのみ増幅がみられた.今後このプライマーセットをウメの自家和合性品種の育種に利用することによって,育種にかかる時間と労力を大幅に軽減できると思われる.
著者
工藤 陽史 山口 茂 福田 直子 菊池 竜也 佐渡 旭 深井 誠一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.343-349, 2012-07-15

西南暖地におけるトルコギキョウの冬出し栽培では,開花の遅延回避と草丈の確保が問題となる。西南暖地の冬出し栽培では,定植後の一定期間に加温を必要としないことに着目し,高昼温管理による生育促進技術を検討した。夜温を15℃一定とし,昼温25または30℃に設定した自然光型ファイトトロンで,中早生品種'ボレロホワイト'を定植~切り花収穫まで栽培した。昼温25℃区に比べて昼温30℃区で主茎伸長が促進され,早期に発蕾して開花した。定植60日後までの茎葉の乾物重は,昼温30℃で重い傾向にあった。また,下位節の節間伸長は,定植40日後までに決定されていた。これらの効果を実際の栽培で確認するため,施設の換気温度を25と30℃に設定したガラス温室で,初期生育と発蕾日に及ぼす影響を検討した結果,30℃が25℃と比較して生育は促進したが発蕾日に差はなかった。さらに,9月22日定植と9月29日定植の2回の栽培で,定植から約40日程度の施設の換気温度を30℃に設定した高昼温管理が,収穫日と切り花品質に及ぼす影響の検討を行った結果,初期生育が促進し,9月22日定植で2月上旬,9月29日定植で2月中旬に切り花長80cm以上,切り花重40g以上確保された切り花が得られることが明らかとなった。
著者
土橋 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.87-91, 2009-01-15

栽培期間中の上白糖(スクロース98%以上含有)葉面散布が切り花用トルコギキョウおよびキンギョソウ花壇苗の品質に及ぼす影響を検討した.0.1%上白糖の4回葉面散布により,トルコギキョウの花数が有意に増加するとともに,切り花長と花数に基づく階級別品質指数が増加した.一方,0.1%上白糖の2回葉面散布により,キンギョソウ花壇苗の暗黒条件下の葉色の退色の軽減,および無加温ガラスハウスの開花数の増加が認められた.以上の結果,栽培期間中の上白糖葉面散布処理は,両植物の品質保持,または向上に有効であることが明らかになった.
著者
車 敬愛 鈴木 栄 石川 駿二 小池 洋男 荻原 勲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.257-265, 2009-07 (Released:2011-03-05)

3種のブルーベリーの栽培が可能な東京において、64品種・系統について生育と果実の成熟・品質の特性を3年間調査した。主成分分析の結果から、5倍体のサザンハイブッシュブルーベリー(SHB)‘Pearl River’を除いて、ラビットアイブルーベリー(RB)だけのグループとノーザンハイブッシュブルーベリー(NHB)とSHBの混合のグループに分類された。主成分分析のNHBとSHBの混合グループの下方に分布したSHBの品種は、果実が小さく、クエン酸含量が少なく、糖酸比は高く、リンゴ酸の割合が高い特徴を示した。また、収穫日と開花日および収穫日と着色開始日との間に正の相関関係が認められ、NHBについては、収穫日と1果重、収穫日と全有機酸含量、収穫日とクエン酸含量との間に正の相関関係が、収穫日と糖酸比との間に負の相関関係が認められた。さらに、考察ではブルーベリー育種において交配親として有用と予想される各品種の特徴を評価した。
著者
矢野 隆 井上 久雄 清水 康雄 新開 志帆 越智 政勝
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.53-58, 2002-04-01
被引用文献数
3 1

ユスラウメ台木栽培に適した品種を探索するため, モモ15品種を試作し, 収量, 乾物分配および枝幹横断面の性状について調査した.年平均収量は'千曲白鳳', 'あかつき', 'よしひめ', '川中島白桃'で多く'武井白鳳', '八幡白鳳', 'やまなし白鳳', '瀬戸内白桃'で少なかった.果実生産性の高い品種は他の部位の乾物重量も多かったのに対して, 生産性の低かった'八幡白鳳', 'やまなし白鳳', '竜鳳'は総乾物重も低く, 純生産量が少ないと考えられた.一方, '武井白鳳', '瀬戸内白桃'は果実生産量は少なかったが穂木部の幹への分配は多く, 総乾物重において高生産性品種との有意な差はなかった.穂木部における幹の性状と乾物生産についてみると, 皮部の面積割合の高い品種はおおむね穂木部乾物重が少なかった.衰弱しやすいとされる'川中島白桃'はF/L比が極めて高く, 果実への分配が特異的に多くなった.この物質分配の不均衡は, 樹勢衰弱を誘発させる一要因と考えられた.
著者
加藤 一幾 植田 稔宏 松本 英一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.345-350, 2008-07-15

黒ボク土地域の施設栽培において,コマツナ'夏楽天'の3作連続栽培試験(夏作(1),夏作(2),秋作)を行い,施肥前上策中(深さ0〜15cm)の硝酸態窒素量を基準量からさし引いた窒素診断施肥を行い,高温期の可食部硝酸イオン濃度を低減することを目的とした.夏作の可食部硝酸イオン濃度は標準区(N7kg・10a^<-1>)と診断施肥区(診断N7,診断N5kg・10a^<-1>)の間にはほとんど差がなく,診断施肥による低減効果はほとんどなかったが,秋作では診断施肥による低減効果が顕著にあらわれた.一方,窒素を施肥しない無窒素区では全ての栽培季節で著しい低減効果が認められた.また,夏作(2)の無窒素区では栽培期間を5日間延長することで標準区と同等の収量を得ることができた.土壌から無機化した推定窒素量は夏作におけるコマツナの窒素同化量を上回った.以上のことから高温期のコマツナ施設栽培では,より詳細に植物の窒素同化量を推定することで,収穫までに必須な窒素量を明らかにし土壌からの無機化窒素量を考慮した診断施肥の窒素基準量を設定することで,収量を維持しつつ可食部硝酸イオン濃度をさらに低減できると考えられた.
著者
井上 勝広 重松 武 尾崎 行生
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.547-551, 2007-10-15
被引用文献数
3

アスパラガスの半促成長期どり栽培において,立茎開始時期と親茎の太さが若茎の階級別収量に及ぼす影響について検討した.立茎開始時期が遅いほど春芽の収量は高かったが,夏芽の収量は減少した.全期間の収量性は春芽の収穫開始50〜60日後に立茎した区で最も高かった.また,直径10〜14mmの親茎を立茎した場合に,夏芽,翌年の春芽,年間収量およびL級の収量が最も高かった.
著者
白山 竜次 郡山 啓作
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.427-432, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
15
被引用文献数
7

キク電照栽培における効果的な電照技術を確立するために,電照時間帯が花芽分化抑制効果に及ぼす影響を,限界日長の異なる夏秋ギクおよび秋ギクを用いて調査した.夏秋ギク‘岩の白扇’を用いて電照時間帯と花芽分化抑制効果を調べた結果,電照の効果が高い時間帯は暗期の中心ではなく,後夜半であった.そこでシェードを用いて‘岩の白扇’の暗期開始時刻を早めたところ,電照効果の高い時間帯が早くなった.次に秋ギク‘神馬’を用いて,暗期の中心を0:00に固定した日長12,10および8時間の3区で電照効果の高い時間帯を検討したところ,日長の長い区ほど電照効果の高い時間帯が後夜半にずれる傾向が認められた.このことから,電照効果の高い時間帯は暗期開始からの経過時間と関係があり,‘神馬’の場合は,暗期開始から9~10時後が電照効果の高い時間帯であると考えられる.また‘岩の白扇’と‘神馬’の電照効果の高い時間帯を比較した結果,‘岩の白扇’は,暗期開始から電照効果の高い時間帯までの時間が短い傾向にあり,品種ごとの限界日長との関連性が示唆された.
著者
栁下 良美 原 靖英 中山 真義
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.125-130, 2013 (Released:2013-07-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

日本で施設切り花栽培に用いられる日長反応が中性のスイートピーの冬咲き性品種は,花色などの多様性がヨーロッパで利用されている長日性の夏咲き性品種に比較して小さい.我々は冬咲き性品種の多様性を拡大するために,夏咲き性品種に特有の花弁に斑の入る形質の導入を試みた.最初のステップとして斑入り形質の遺伝様式と着色性や開花習性との連鎖について検討した.斑入り花と全着色花,全白色花との交雑による後代での花弁着色の表現型の分離比から,斑入り形質は劣性の1遺伝子により制御されており,斑入りの表現型は着色性を制御する遺伝子により劣性上位で抑制されていることを明らかにした.また既存の報告と同様に,現在日本で栽培されている冬咲き性も1つの劣性遺伝子により制御されていることを明らかにした.さらに斑入り形質,着色性および開花習性は互いに独立して分離していることを示した.これらのことから,冬咲き性は表現型が発現した世代で固定が完了する一方で,斑入り形質はその自殖後代で全白色花が現れない世代で固定が完了すると考えられる.