- 著者
-
半澤 誠司
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.10, pp.607-633, 2005-09-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 78
- 被引用文献数
-
5
7
本稿の目的は,日本の家庭用ビデオゲーム産業について,分業形態を明確化した上で,主に労働市場と取引関係の視点から,その地理的特性を明らかにすることにある.当該産業において,労働者の離職率は全般的に高く,採用では中途者が好まれる.そして,中途者は新卒者よりも,就業先として都区部を好む傾向が強い.一方,多層的取引階層は存在しないが,外注の利用は一般的である.特に一部外注に際しては,迅速な対応が必要となるため,外注先との近接性が重要となる.こうした特性から,地域労働市場の厚みと,一部外注における対面接触の利便性を要因として,産業集積が形成された.しかるに,産業集積を主導する立場にある企業が存在しない上に,企業間の取引階層は浅く,取引関係が固定的なため,集積地域内には互いに独立した取引グループが多数存在している.こうした地理的特性の多くは,ゲーム産業固有の分業形態に規定されているといえる.