著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.691-696, 2011-10-25
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

番匠谷堯二の時代以来、シリアの首都ダマスカスでは日本の国際協力が継続されてきた。現在の最新のプロジェクトであるダマスカス首都圏都市計画・管理能力向上プロジェクトでは、都市保全が主題の一つとされ、カスル・ル=ハッジャージュ通りの歴史的ファサードの改善に焦点が当てられている。本稿は、ファサードの現地調査を実施して、歴史的正統性とイスラームに根差した空間構成に基づく、原状復旧型ファサード改善のあり方を考察する。土地利用計画図およびファサード立面図の分析に基づき、この地区は住宅地であり伝統的なまちづくりの材料がまだ生きていることがわかった。結論として、派手な観光開発ではなく、穏健な改善方針がこの静かな地区のために提案された。
著者
鈴木 勉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.421-426, 2011-10-25
参考文献数
10
被引用文献数
1

本論文では、施設数の増設・廃止の両方に対応することのできる既存施設を活用した施設再配置モデルを提案する。p-メディアンモデルと最大被覆モデルを基礎として、メディアン型および最大カバリング型の2つの再配置モデルの定式化を行った。小学校および投票所の統廃合を例としてケーススタディを行い、再配置を許す施設数の増加に応じて、施設までの移動距離の減少、あるいは施設から一定距離でカバーする需要量の増大を定量的に評価できるなど、モデルの有効性・有用性が確認された。また、少数の施設の再配置だけで施設までの移動距離や需要のカバー率を大きく改善することができることが明らかとなった。
著者
劉 暢 赤崎 弘平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.133, 2005

本研究は北京緑化隔離帯の計画及びその実現可能性に着目した。具体的には、計画策定の流れ、計画内容及び緑化隔離帯として指定された地域の実態を把握した。そして形状、計画内容、実現手法についてロンドン、東京のグリーンベルトとの比較により、北京緑化隔離帯の問題点及びその実現に向けて、ロンドンと東京の事例から参考すべき点を探り出す。本研究から得られた結論は以下の通りである。1、ロンドングリーンベルトと北京第二緑化隔離帯は「都市構造」のひとつであることに対して、ロンドンのグリーン・ガードル、東京の環状緑地、北京の第一緑化隔離帯は形状、位置から見れば「都市基盤施設」として位置づけることができ、道路、公園などと同じレベルの都市施設であり、レクリエーション機能が重要でる2、北京では、「第一緑化隔離帯」は都市構造としてのグリーンベルトと認識されたため、レクリエーション機能が重視されず、林地の建設と農地・農村の保全が行われた。3、しかし実際に建設された林地は景観・レクリエーション機能が果たせずに孤立し、農地・農村の保全は後追い的な関連法は効果がなく、市街地化及びスラム化が進行した。
著者
高橋 知里 岡崎 篤行 梅宮 路子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.57, 2005

公共施設計画の設計者選定において、最も多く用いられている方法は入札である。しかし、より優れた公共施設を計画するためには、設計者選定段階においても市民参加を取り入れることが重要である。そこで、本研究では、新潟駅駅舎・駅前広場計画提案競技における運営体制と参加の経緯、市民参加システムの実態を明らかにする。結論は次のとおりである。1)JR東日本は消極的な姿勢であった。2)設計者選定において市民参加組織の積極的な働きにより2回の提案前と最終審査時の3段階で参加の場が確保された。3)市民は公開審査と応募要項別冊の作成によって満足を得られた。4)事業者の積極的な市民参加への取り組み、第二段階作品提案前での市民と提案者のより具体的な議論の場が必要である。
著者
大村 謙二郎 有田 智一 小俣 元美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.58, 2003 (Released:2003-12-11)

本稿では、長い地方自治の伝統があり、基礎自治体である市町村の都市計画権限が大きく、自治体毎に独自性を持った計画文化を維持してきたドイツを対象として、自治体都市計画プランナーの職能形成の実態を明らかにすることを目的とする。ボッフム、ドルトムント、デュイスブルグ、ミュンスター及びハノーバーの5都市を対象とし、都市計画行政を実際に担当する職員を対象として実施したアンケート及びヒアリングの結果に基づき、(a)ドイツの自治体都市計画プランナーの組織と人事システム、(b)自治体都市計画プランナー職能形成の実態、(c) 今後の自治体都市計画行政の方向性と都市計画プランナーの関わりについて明らかにした。
著者
古山 周太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.141, 2003 (Released:2003-12-11)

本研究は、明治・大正期において精神病院が都市的施設として位置付けられた側面を、その立地・配置論から明らかにすることを目的とする。本研究では、精神病院が医療的機能と社会的機能を持つことに着目し、この2つの機能との関係から立地・配置論をみる。それによって精神病院が都市的な施設と設定しうることを明らかにする。対象時期は、明治以降から1919年(T7)の精神病院法制定時までとする。研究の方法は、対象時期における精神医学関連の著作・論文や、法律制定時の議事録等の文献調査を主とする。論文の構成は、まず2章では精神病学教科書を対象とし精神病院の医療的機能を整理し、それらが収斂した精神病院モデルの立地論を取り上げる。3章では精神病学者の論説から精神病院の社会的機能と配置論をまとめ、4章では精神病院法制定時における精神病院の必要論と概要計画をみる。2章では精神病の病因論や治療法から精神病院の医療的機能をまとめ、立地論との関係をみる。さらに当代の精神病院論の集大成でもあり、欧州の影響も受けた、呉秀三の「精神病学集要 第二版」の第7巻治療通論中の精神病院に関する部分を詳細にとりあげる。資料は、対象時期に刊行された精神病教科書7冊を対象とし、社会的原因と都市環境を問題化した部分の引用、理学療法と精神療法、精神病院論部の引用をまとめた。3章では雑誌の掲載論文で精神病学者が主張した精神病院論をとりあげる。これらの論文では、著者は雑誌の社会影響力も考慮し、病院論を展開すると考えられる。対象論文は、当時の医学界で主要な論文誌であった国家医学会雑誌(国家医学)と医界時報に掲載された精神病院に関する論文と、呉秀三著作集に掲載された論文である。これらの論文は全て公立の精神病院の設置を求める内容であり、各精神病院論を、医療的理由、社会的理由、病院の立地論の3点に着目して整理した。4章では法制度制定の下での精神病院論をみるために、帝国議会での審議過程でみられた精神病院論に着目する。法案の提出理由から病院の必要性を整理し、審議過程での精神病院の機能や立地に関して議論の論点を整理する。なお対象とする資料は、精神病院法案について審議された貴族院の委員会の速記録である。5章では、以上のまとめとして次の3点が明らかになった。1)精神病院の医療的機能は、治療設備の完備、医師による管理、都市的環境からの隔離であった。呉の精神病院モデルは2種類の病院が想定され、分類の基準には都市と村落といった立地が重要な意味をもっていた。2)精神病院は、様々な社会的機能からも設置が要請された。特に公共的な施設として都市への立地が要請された。3)精神病院法審議過程での概要計画では社会的機能を果たすため、精神病院は人口規模により種別され、都市内で、環境が良好で利便的な立地が目指された。
著者
雨宮 護 樋野 公宏 小島 隆矢 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.116, 2007

防犯まちづくりが各地で急速に推進されるなか、それに対する批判的な言説も発表されるようになってきた。防犯まちづくりが今後もまちづくりの一種として定着していくためには、こうした批判論とも向き合いつつ、その考え方を再構築することが求められる。本研究では、既存の学術雑誌や評論誌のレビューをもとに、わが国の防犯まちづくりへの批判論を体系的に整理すること、アンケートの分析をもとに、批判論に対する一般市民の態度を明らかにすることを目的とした。まず、121の文献から抽出された142の批判論を分類した結果、それらは 3つの大カテゴリのもとで、「警察国家論」、「監視社会論」、「要塞都市論」などの10の論点で整理された。次に、各論点への賛否を尋ねたアンケートの分析の結果、批判論には、市民の賛同を得ているものとそうでないものがあること、犯罪不安の高まりに伴って、今後賛同を得ることが予測されるものと逆に軽視されるようになっていくものがあることが明らかとなった。今後の防犯まちづくりにおいては、市民の賛同を得る批判論に応えるだけでなく、とくに軽視される批判論に対して一定の配慮が加えられる必要があると考えられた。
著者
北崎 朋希
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.583-588, 2011-10-25
参考文献数
7
被引用文献数
3

本研究は、都市再生特別地区による公共貢献と規制緩和の実態と課題を明らかにしたものである。都市再生特別地区は、2010年12月末時点で全国51件指定されており、約7割が東京都、大阪市、名古屋市において活用されている。事業者から提案された公共貢献には、制度創設初期は従来の規制緩和手法で用いられていた「広場・通路」などのハード面の取組みが中心であった。しかし近年では、「防災、環境・景観」などの社会的要請の高まりに対応した取組みが増加しており、さらに「地域貢献施設」のようにソフト面の取組みを重視するものが増加している。一方、規制緩和によって同水準の不動産価値が付与された事業の公共貢献を比較すると、公共貢献と不動産価値との間には一定の関係性がみられなかった。この公共貢献の評価と規制緩和の決定は、非公開の事前協議において実質的な審査が行われており、第三者が審査経緯を把握することは困難となっている。そのため、正式提案後の審査手続きである都議会都市整備委員会や都市計画審議会においても、事前協議の審査内容は公開されておらず、規制緩和の公平性及び公正性の担保不足が指摘されている。
著者
大村 謙二郎 有田 智一 小俣 元美
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.58-58, 2003

本稿では、長い地方自治の伝統があり、基礎自治体である市町村の都市計画権限が大きく、自治体毎に独自性を持った計画文化を維持してきたドイツを対象として、自治体都市計画プランナーの職能形成の実態を明らかにすることを目的とする。ボッフム、ドルトムント、デュイスブルグ、ミュンスター及びハノーバーの5都市を対象とし、都市計画行政を実際に担当する職員を対象として実施したアンケート及びヒアリングの結果に基づき、(a)ドイツの自治体都市計画プランナーの組織と人事システム、(b)自治体都市計画プランナー職能形成の実態、(c) 今後の自治体都市計画行政の方向性と都市計画プランナーの関わりについて明らかにした。
著者
依藤 光代 松村 暢彦 澤田 廉路
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.487-492, 2011-10-25

地方都市の商店街ではにぎわいを喪失しており、商業の活性化が課題となっている。長期間にわたる商店街活性化に関する活動や組織の変化を追跡するだけではなく、まちづくりの担い手間の関係に着目することにより、まちづくり活動の担い手の継承の要因について考察した結果、次のように考えられた。(1)1993年以降、担い手となるセクターは、行政組織、地元市民組織、新規市民組織、広域市民組織の順に変遷してきた。(2)担い手が継承されるための要因は、地縁・志縁の担い手間のネットワークや、問題意識および課題解決の方向性が担い手間で共有されること、課題を解決するためのスキルを担い手が提供できること、活動の場としての組織の存続が担保されていること、の4つが考えられた。共通して重要であるのは、志縁の関係が行われるような、実践的な活動が積み重ねられることである。
著者
小林 陽一郎 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.757-762, 2011-10-25

わが国の高齢化社会は着実に進み、街と自動車の接続点であり乗換口でもある駐車場では、今まで以上に高齢者を含めた移動制約者に配慮することが求められている。2006年にバリアフリー新法が施行され、移動制約者用の駐車スペース設置に関しては、路外駐車場は1台以上、建築物特定施設に関しては、200台以下は全体の2%、200台以上の場合は全体の1%+2台以上という基準となっている。しかし、駐車場の新築または増築時に適用されるため、既存の駐車場にはあてはまらない。そのため、現状では移動制約者用駐車スペースの設置数は極めて少ない状況にある。そこで本研究は、移動制約者を障がい者手帳を所持している人のみならず、妊婦や高齢者、一時的な病気・怪我人まで含めた広い概念として捉えた上で、実際に運用されている移動制約者用駐車スペースに関する設置基準を概観し、東京と横浜の駐車場においてアンケート調査を実施し、移動制約者が乗車している自動車の駐車ニーズと課題認識を明らかにする。あわせて移動制約者駐車マスの利用実態を現地で確認し、こうした利用状況から得られた結果を基に、移動制約者用駐車スペースの設置のあり方を提案する。
著者
植野 和文
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.76-76, 2003

本稿では明石海峡大橋の開通(平成10年4月)が津名町民の余暇活動に及ぼした影響を分析した。ここでの影響とは、本州への交通がより便利な陸上ルートに切り替わったことに住民の余暇活動がどのように反応したか、そしてその結果を彼らはどのように評価したのか、ということである。 調査は開通の4ヶ月前の平成9年12月と、開通の1年9ヶ月後の平成12年1月に、いずれも20歳以上の住民400人を対象に郵送調査法で行われた。設問では余暇活動の場所として提示した23地区から活動の領域ごとに重要な地区を複数(最多3つ)選ばせたうえで、それらを地理的条件、交通条件、余暇活動機会などを考慮して7地域(津名町、津名町を除く淡路地域、神戸・阪神、京阪地域、西・北地域、徳島県、その他全国)にグループ化した。活動の9領域における回答を地域ごとに合算し、それらをいずれかの領域で余暇活動を行っている有効回答者数で除した値を余暇活動水準とした。得られた知見は以下のとおりである。 第一に開通後の活動水準の変化でみる限り、大橋の影響はあまり大きくはない。それでも開通後に余暇活動が「神戸・阪神」「その他全国」で活発になり、「津名町」「京阪地域」を除く地域では活動水準の個人差が広がった。さらに余暇活動環境(神戸・大阪へのアクセス、公共交通サービス、余暇活動の利便性、余暇生活)のすべてにおいて満足水準が上昇した。ただし活動圏が地域的に分散する傾向はみられなかった。 第二に大橋を多用する人はそうでない人に比べると、島外での余暇活動が活発で、かつ活動水準の個人差も大きく、さらに活動圏が一層地域的に分散している。そのうえ余暇生活の満足水準が高い。 第三に大橋を多用する人でも活動圏が拡大した人はそうでない人に比べると、本州の一部地域で余暇活動が活発で、かつ活動の個人差も大きいが、活動圏の地域的な分散では差はみられなかった。さらに余暇活動環境のすべてにおいて満足水準が高い。 第四に余暇活動が本州で活発になっても、島内での活動水準と活動の地域分布は安定しており、活動が島外に流出して島内の活動が低迷するという現象はみられなかった。最 後に大橋は多くの地域で余暇活動水準の個人差を広げたが、このことは影響が住民均等に及ぶのではなく、余暇活動に対する彼らの態度や生活状件に依存することを示している。 同時にいくつかの課題も残された。第一に今回の分析では9領域の余暇活動を統合したデータを用いたが、余暇活動の領域によって活動圏や大橋利用の必要性が異なるため、余暇領域ごとの実践者を対象にした分析が必要である。 第二に今回の知見の一つは大橋が余暇活動の個人差を拡大することであった。これが住民一般を対象にした開通前後の影響分析で明瞭な結果が得られなかった理由の一つと考えられる。属性、生活条件、大橋の利用パターンなどをもとに調査対象を選別して影響分析を行う必要がある。 第三に余暇活動への影響には大橋の出現が活動を誘発する側面と、開通にともなって整備された島内外の余暇資源が活動を誘発する側面がある。いずれも長期的な観察が必要であるが、今回は開通後2年足らずの短期的な影響を分析したに過ぎない。得られた知見を仮説として継続的な調査と研究が必要である。 第四に調査で得られたデータの数が少なかったことが、いくつかの統計的検定を難しくし、影響分析の結果に曖昧さを残したことは否めない。上記の課題に応えるためには、十分なデータの確保に努める必要がある。
著者
山口 敬太 西野 康弘
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.128-139, 2014-04

This paper aims to explore the formation process of riverside parks in Kobe city and its planning thought. The concept of riverside parks was proposed for disaster-resistant after the Great Hanshin Flood that occurred in 1938. Minoru Kouda asserted the concept of building green belts that is 100 meters wide along rivers in the discussion of the reconstruction committee of Kobe city. This idea was not adopted because of a difficulty of acquiring a govermment subsidy, but adopted in the postwar reconstruction policy. Before the great flood occurred, Kouda showed interest not only in disaster prevention and aerial defense but also urban greening. He was appointed chief of a professional sectional meeting of postwar reconstruction of Kobe city. The greenbelt plan has implemented by a land readjustment execution, and realized with a little reduction of the original plan.
著者
吉田 葵 片桐 由希子 石川 幹子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.637-642, 2011-10-25

本研究の目的は、都市内の崖線上に存在する緑地について、その歴史的背景、保全に至る経緯とその考え方を踏まえた上で、現況における緑地の生態的な質を明らかにし、その持続的な質、つまり生態系機能の向上に対する保全・管理に繋がる基礎的な知見を得ることである。対象地は落合崖線とその崖線上に存在する緑地である新宿区おとめ山公園である。その結果、以下の2点が明らかになった。1)崖線緑地の多くは明治期における邸宅の存在が緑の継承に大きな役割を担っていることがわかった。またおとめ山公園は、江戸期から現在に至るまで、所有者や利用目的がさまざまに変わりながらも、守られてきた貴重な緑地であった。2)崖線上の緑地の質は、種構成において常緑樹の割合が高く、遷移が進行しているという一様な状態であった。また、おとめ山公園の緑地の質を明らかにするために、落葉樹二次林から生態遷移が進行し常緑樹が優占している状態までの植生遷移の段階に着目したビオトープタイプ区分を行った。上層木における常緑樹の割合が高くなるほど裸地化しており、その裸地化した区域の7割が急斜面地であった。また、上層木に落葉樹の割合が高いと更新が起きていた。
著者
清家 剛 三牧 浩也 原 裕介 小田原 亨 永田 智大 寺田 雅之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.451-456, 2011-10-25
参考文献数
5
被引用文献数
9

急速な人口減少や高齢化に直面し、我が国では詳細な人口変動分析に基づく都市の再構築が必要になっている。しかし、国勢調査などの既存の基幹統計では、都市内部における人口変動を十分に捉えることができない。NTTドコモのモバイル空間統計は、携帯電話サービスを提供するために必要な運用データから時間毎に変化する人口の地理的分布を推計した統計情報であり、都市解析の新たな手段となることが期待される。本稿では、千葉県柏市におけるケーススタディを通じて、モバイル空間統計の信頼性の検証並びに、まちづくりにおける活用可能性の検討を行った。