著者
岐部 智恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.2.1, (Released:2019-07-03)
参考文献数
42
被引用文献数
6

本研究の目的は日本語版青年前期用敏感性尺度(HSCS-A)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。本尺度の原版は感受性反応理論の枠組みに立脚し児童期から青年期の感覚処理感受性を測定するものとして開発されている。本研究では青年前期版作成を目的として中学1年生から高校1年生までの942名(女子44%,男子56%)を対象に研究を行った。探索的因子分析の結果,原版同様の易興奮性(EOE),美的感受性(AES),低感覚閾(LST)から成る3因子構造が見出され,直交する一般性因子を含むbifactorモデルが適していることが示された。さらに,パーソナリティ,情動性尺度との関連から構成概念妥当性を検討し弁別性を示す結果が得られ,内的一貫性も許容範囲であることが確認された。これらの結果から,HSCS-Aは感覚処理感受性を測定するおおむね妥当な尺度であることが示された。
著者
吉住 隆弘
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.249-251, 2019-03-01 (Released:2019-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The purpose of the study was to focus on the prejudice toward people receiving welfare and to identify the psychological factors related to such prejudice. Participants included 193 university students (104 male and 89 female, M = 19.5 years). Links among the participants’ self-esteem, nationalism, perspective taking, and prejudice toward people receiving welfare were examined. Multiple regression analysis revealed that prejudice was positively related to nationalism and negatively related to perspective taking. Implications for mitigating criticism toward people receiving welfare are discussed.
著者
片岡 祥 園田 直子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.13-28, 2014-07-30 (Released:2014-08-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究は恋人の行動を制限する行為を“恋人支配行動”と定義し,恋人支配行動の生起メカニズムの解明を試みた。研究1では,恋愛関係において生じる状態不安を測定するために,恋人分離不安尺度の作成を行った。調査は2回にわたって行った。1回目の調査対象者は大学生291名,2回目の調査対象者は大学生370名であった。分析の結果,十分な信頼性と妥当性を持った恋人分離不安尺度が開発された。研究2ではまず,さまざまな種類の恋人支配行動を測定する尺度の開発を試みた。調査対象者は大学生586名であった。収集した項目を元に因子分析を行ったところ,“暴力的支配行動”因子と“束縛的支配行動”因子が見出された。次に,恋人分離不安,愛情の3因子,交際期間と恋人支配行動の各因子との関連について検討した。その結果,恋人分離不安と交際期間の交互作用が2つの支配行動において重要であるという知見がえられた。
著者
髙坂 康雅
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.144-156, 2009
被引用文献数
2

本研究の目的は,大学生における恋愛関係の影響を明らかにすることである。大学生340名を対象に,予備調査をもとに作成した恋愛関係の影響に関する項目75項目について回答を求めた.因子分析の結果,「自己拡大」,「充足的気分」,「拘束感」,「関係不安」,「経済的負担」,「生活習慣の乱れ」,「他者評価の上昇」という7因子が抽出され,いずれも恋愛関係にある者の方がない者よりも強く感じていたことから,これら7因子が恋愛関係の影響であることが確認された。恋愛関係の影響と交際期間との関連はあまりみられなかったが,「拘束感」と「他者評価の上昇」は男子の方が,「生活習慣の乱れ」は女子の方が,強く感じていることが明らかとなった。また,女子では,関係満足度と「自己拡大」,「充足的気分」,「拘束感」,「関係不安」,「生活習慣の乱れ」が関連し,関係関与度と「充足的気分」が関連していたが,男子では,関係満足度と「充足的気分」との関連がみられただけであった。
著者
丹野 宏昭 児玉 健
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.88-90, 2015

This study examined the relationship between werewolf-game experience and beliefs about lie clues. The participants included 203 undergraduates with no werewolf-game experience, and 42 werewolf-game fans, and 24 werewolf-game stage actors (Jinrou TLPT actors). They were asked to respond to a questionnaire. Two main results were observed. First, there were no significant differences between the three groups regarding their confidence in lie detection. Second, with respect to beliefs regarding the reaction to lying, werewolf-game fans and Jinrou TLPT actors believed that changes were likely to occur in remarks, while undergraduates believed that changes were likely to occur in bodily reactions.
著者
相馬 敏彦 西村 太志 高垣 小夏
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-37, 2017-07-01 (Released:2017-04-10)
参考文献数
34

攻撃性の強い人はどのような相互作用状況でも攻撃的に振る舞うだろうか。先行研究は,親密な関係を対象に,攻撃性と攻撃行動との関連が,挑発的な行為がありかつ自己制御資源に乏しい場合に顕著となることを示している。そこで大学生64名を対象とする相互作用実験を行った。参加者は攻撃性に関するアンケートに回答後,協調的もしくは非協調的な相手とテレビゲームを行った。その後注意資源を要する計数課題を行い,最後にゲームの相手に与えられることになる嫌悪的飲料の個数を選択した。階層的二項ロジスティック回帰分析の結果,制御資源が枯渇しやすく(制御課題に時間を要し),かつ相手から挑発的行為(非協調的な相手)があった場合に,攻撃性は嫌悪的飲料の個数を予測した。これらの結果は,先行研究の知見が,親密な関係からそうでない関係へと一般化可能であることを示している。
著者
徳岡 大 佐藤 深雪 森田 愛子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.7, (Released:2018-05-18)
参考文献数
4

This study aimed to demonstrate experimentally that other-oriented motivation increases the amount of work. We reproduced a scene in which college students participate in part-time work in the laboratory and examined whether other-oriented motivation would lead to an increase in the amount of work in part-time jobs outside the specified time using Bayesian estimation. Findings revealed that participants with conditions that evoked other-oriented motivation would engage in more overtime part-time work than would participants in the control condition. It was suggested that other-oriented motivation increases the amount of work.
著者
松本 昇 望月 聡
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.77-87, 2015-07-31 (Released:2015-08-07)
参考文献数
26
被引用文献数
2 4

反すうは抑うつ状態の発症や維持を予測する要因であるといわれている。本研究では,反すうの原因分析,理解,制御不能の3つの側面を測定するLeuven Adaptation of the Rumination on Sadness Scale (LARSS)の日本語版を作成した。信頼性と妥当性を検証するために,大学生319名を対象として日本語版LARSS,抑うつ,マインドフルネス,反すうの各尺度を実施した。さらに,59名の大学生を対象としてLARSSを2度実施し,再検査信頼性の検討を行った。日本語版LARSSは原版と同様に,原因分析,理解,制御不能性の3因子構造を示した。これらの3因子はいずれも高い内的一貫性および再検査信頼性を示した。また,先行研究と一致して,LARSSの他の2因子を統制すると,制御不能性反すうのみが抑うつと関連し,マインドフルネススキルと負の関連を示した。これらの結果は日本語版LARSSの信頼性および妥当性を示すものである。
著者
高岡 しの 松見 淳子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.26.2.2, (Released:2017-06-19)
参考文献数
11
被引用文献数
2

The Humor Styles Questionnaire (HSQ: Martin et al., 2003) is a self-report measure to evaluate individual differences in the use of humor styles. The present study investigated the reliability and validity of the Japanese version of the HSQ (HSQ-J: Yoshida, 2012). The results of confirmatory factor analysis and internal consistency demonstrated adequate fit for a four-factor structure with reliability for each factor. Validity assessment of the HSQ-J indicated that the four humor styles related significantly as predicted to measures of self-esteem, aggression, social skills, and Japanese-derived humor scales. Based on the results, additional cultural considerations were discussed.
著者
佐藤 広英
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.127-129, 2021-12-17 (Released:2021-12-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

In recent years, with the widespread use of smartphones, many people have begun to take selfies and embellish them to be more attractive using smartphone applications. The present study examined the effects of embellishment of facial selfies on self-esteem and positive mood. Sixty-two university students participated in the experiment and were assigned to one of two conditions (embellishing condition or control condition). The participants took facial selfies, embellished them, and then measured their self-esteem and positive mood. The results showed that self-esteem increased more in the embellishing condition than in the control condition. The positive mood was slightly higher in the embellishing condition than in the control condition only for the group with high facial self-evaluation.
著者
平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.94-106, 2010-11-20 (Released:2011-02-15)
参考文献数
37
被引用文献数
46 59

レジリエンスは誰もが身につけられる精神的回復力であると言われているが,レジリエンスを導く多様な要因の中には後天的に身につけやすいものと,そうでないものがあると考えられる。本研究では,それらの資質的・獲得的な要因を分けて捉えるために,Cloningerの気質–性格理論(TCI)を用いて二次元レジリエンス要因尺度(BRS)を作成することを目的とした。大学生ら246名を対象に調査を行い,TCIとの関連性から選出された項目の探索的因子分析により,資質的レジリエンス要因として「楽観性」「統御力」「社交性」「行動力」,獲得的レジリエンス要因として「問題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」の7因子が見出された。さらに759名へ調査を行い,確認的高次因子分析および既存尺度との関連から,BRSの二次元構造と妥当性が確認された。また,TCIの気質・性格との関連性から,下位尺度の基準関連妥当性が確認された。
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-59, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
34
被引用文献数
3 3

反社会性人格障害(ASPD)は,違法行為の反復,人をだます傾向,衝動性,無責任性,良心の呵責の欠如によって特徴づけられる。本研究は,2つの行動選択課題を用いて,ASPD傾向者が高い衝動性を示すかを検討した。遅延価値割引課題では,参加者は,即時小報酬と遅延大報酬の間で選択を行う。衝動性は即時小報酬への選好と定義される。他方,確率価値割引課題では確実な小報酬と不確実な大報酬との間で選択を行う。衝動性は不確実な大報酬への選好と定義される。16名のASPD傾向者と19名の健常者が両課題を行った結果,まず,遅延価値割引課題ではASPD傾向者は健常者より急激に遅延報酬の価値を割り引くことが示された。確率価値割引課題では両群の差はなかった。遅延価値割引は,「反社会的行為の反復」ならびに「性的関係における無責任性・搾取性」と有意に関連していた。本結果から,長期的な結果の価値を切り下げることがいくつかのASPD症状の根底にあることが示唆された。
著者
上出 寛子 高嶋 和毅 新井 健生
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.218-225, 2016-03-01 (Released:2017-01-07)
参考文献数
26
被引用文献数
13

本研究の目的は,ロボットに対する擬人化に注目し,擬人化の程度を定量化する日本語版の尺度を作成することである。従来,欧米の研究で用いられている擬人化の程度を測定する二種類の尺度を翻訳して用いた。一つ目は心の帰属を行為の主体性/感覚の経験性の二次元で評価するものであり,もう一つは人間の本質を人間の独自性/人間の本質性の二次元で評価する尺度である。1200人の日本人が,6種類のロボットと2人の人間の写真刺激に対しこれらの尺度で擬人化の程度を評価した。その結果,日本においては,欧米での先行研究と同様の因子が明らかとなると同時に,それらの因子がポジティブな内容の因子とネガティブな内容の因子に分かれることが明らかとなった。日本においては,ロボットの人間らしさについて,ポジティブな側面とネガティブな側面を分けて考える傾向があることが示唆された。尺度の内定信頼性は十分に高いことから,今後の尺度の利用可能性について議論した。
著者
齋藤 路子 沢崎 達夫 今野 裕之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.60-71, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
29
被引用文献数
5 2

本研究では,自己志向的完全主義(完全欲求,高目標設定,失敗過敏,行動疑念)と攻撃性(身体的攻撃,短気,敵意,言語的攻撃)および自己への攻撃性(自己への身体的攻撃傾向,自己への敵意)の関連を検討するために,大学生444名に対して,質問紙調査を行った。その結果,高目標設定は言語的攻撃と,失敗過敏は短気,敵意,自己への身体的攻撃傾向,自己への敵意と,行動疑念は敵意,自己への敵意と,それぞれ有意な相関があった。さらに,自己志向的完全主義が攻撃性,自己への攻撃性に至るプロセスに関するモデルを構成し,共分散構造分析による検討をしたところ,(a)不適応的完全主義が強いほど,認知・情動的攻撃性が強まり,認知・情動的攻撃性が強いほど,自己への敵意が強まること,(b)不適応的完全主義が強いほど,ネガティブな反すうが強まり,ネガティブな反すうが強まるほど抑うつが強まり,抑うつが強まるほど,認知・情動的攻撃性,自己への攻撃性に影響を与えることが示唆された。最後に,自己志向的完全主義が攻撃性および自己への攻撃性に至る認知プロセスについて議論した。
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-24, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
46
被引用文献数
3 4 3

自己注目には適応的な「省察」と不適応的な「反芻」があることが知られている。Papageorgiou & Wells (2001a) は,反芻の原因として,「反芻に対する肯定的信念」という概念を提案し,自己注目は問題解決のために有効な手段であるという信念が反芻を促進するとした。本研究では,この信念を測定する尺度Positive Beliefs about Rumination Scaleの日本語版を作成し,信頼性と妥当性を確認した(研究1)。さらに,この肯定的信念と抑うつ,反芻,そして省察との関連を検討した(研究2)。大学生を対象とした質問紙調査の結果,肯定的信念は反芻,省察の双方と正の関連がみられたが,反芻は抑うつと正の関連が,省察は抑うつと負の関連がみられた。自己注目を行う背景として肯定的信念が存在しているが,抑うつに陥るのは反芻を行った場合だけであり,省察を行った場合には適応的に働くことが示唆された。
著者
星 かおり
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.123-134, 2016-11-01 (Released:2016-09-13)
参考文献数
43
被引用文献数
1

本研究の目的は,若年フルタイム就労者の仕事満足に対するプロアクティブ行動の7つの方略の効果を検討することであった。質問紙調査を行い,学卒後5年以内のフルタイム就労者168名を分析対象とした。重回帰分析の結果,仕事満足に対して,プロアクティブ行動の7つの下位尺度のうちポジティブフレームのみが有意な効果を示した。若年フルタイム就労者は,他者や環境への働きかけを行うより,自己焦点型の方略であるポジティブフレームを選択しており,与えられた状況をポジティブに捉えることが仕事の満足感に影響を与えることが示唆された。しかし,プロアクティブ行動は先を見越した行動であることから,一時点のプロアクティブ行動についての効果については,ある程度の期間が経過してから効果を測定し検討することが今後は必要であろう。
著者
三田村 仰 横田 正夫
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.55-57, 2006

This study examined the relationship of assertive behavior and taijin-kyofu, which is a social phobic tendency. Three hundred sixty six (366) undergraduates answered a questionnaire that included Rathus assertiveness schedule and scales of taijin-kyofu and praise seeking and rejection avoidance needs. Results of path analysis were consistent with the model that taijin-kyofu was strongly associated with less frequent assertive behavior, and that rejection avoidance was weakly associated with it. On the other hand, praise seeking was associated with more assertive behavior. Clinical implications of the results were discussed.
著者
藤野 正寛 梶村 昇吾 野村 理朗
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.61-76, 2015-07-31 (Released:2015-08-07)
参考文献数
55
被引用文献数
6 32

Mindful Attention Awareness Scaleは,気づきと注意の程度に注目して開発された,マインドフルネスを測定する尺度である。本研究では,この日本語版MAASを開発し,18歳から84歳の377名の日本人を対象として信頼性と妥当性を検討した。探索的因子分析で,原版と同様に1因子構造で内的整合性が高いことが確認された。また,気づきと注意について検討するために用いた開放性尺度・反芻尺度・アクションスリップ尺度や,Well-Beingに関連する複数の尺度との相関分析で,原版と同様の傾向が確認された。さらに,従来から指摘されていたマインドフルネスの非常に低い群で測定精度が低下するという問題点に関して,項目反応理論を用いた分析を実施した結果,測定精度が低下していないことが確認された。以上より,本研究で作成された日本語版MAASは,原版と同様の特質を測定しているとともに,マインドフルネスに関するWell-Beingの関連性検討や介入効果検討に資する尺度となると考えられる。
著者
麻生 奈央子 坂元 章 沼崎 誠
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.156-170, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
25

本研究は,ロマンティック幻想(romantic fantasy:RF)の潜在測度と顕在測度の乖離について検討した。大学の女子学部学生65名(研究1)と73名(研究2)が参加し,IATで潜在RF(恋人と王子様の連合),質問紙で顕在RF(自分の恋人と王子様の連合)と理想RF(理想の恋人と王子様の連合)を測定した。その結果,(a)潜在RFは,顕在RFと有意に相関せず,理想RFと有意に正相関した。(b)潜在RFと理想RFは間接的勢力志向と有意に正相関する一方,顕在RFはそれに負相関した。(c)顕在RFは社会的望ましさと相関しなかった。これらのことから,(a)潜在RFにおいて評価されている対象は,実在する自分の恋人よりも,理想の恋人に近いこと,(b)RFの潜在・顕在測度の乖離は,顕在測度の妥当性の問題よりも,測定概念の相違に起因することなどが示唆された。