著者
岡田 努
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.135-148, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
44
被引用文献数
18 7

本研究は大学生の友人関係の特徴と適応および自己像の関係を検討したものである。本研究では以下の変数について調査が行われた。友人関係,自己愛傾向,境界性人格障害傾向,自尊感情,現実自己像,理想自己像である。青年の友人関係のパターンを見出すためクラスタ分析により回答者を分類した。その結果,以下のような結果が得られた。1) 内面的な友人関係を取る青年群は,病理的自己愛や境界性人格障害傾向が低く,自尊感情得点が高いなど適応的であり,また社会的側面における現実・理想自己像間の差得点と自尊感情得点の間に負の相関関係が見られた。2) 現代的な友人関係を取る青年群は,不適応的で,身体的,活動的,社会的側面について,現実自己像と理想自己像の差得点と自尊感情の間に負の相関関係が見られたが,心理的側面との間では相関関係は見られなかった。
著者
岐部 智恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.8-10, 2020-04-21 (Released:2020-04-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 4

This study developed the Japanese version of the Highly Sensitive Child Scale for Childhood (HSCS-C) and tested its validity and reliability. Data were collected from 400 dyads of primary school children (third to sixth grades: Mage = 9.75 years, SD = 1.22; male = 48.5%) and their mothers (Mage = 41.00 years, SD = 5.05). Two factors were found: the first was the conjunction of Ease of Excitation and Low Sensory Threshold, and the second was Aesthetic Sensitivity. A bivariate correlation analysis indicated that children’s sensory processing sensitivity, measured with HSCS-C, was associated with self-reported empathy and mother-reported temperaments, with both forms being distinct. The internal consistency was found to be satisfactory.
著者
中山 真 橋本 剛 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-75, 2017

<p>本研究の目的は,恋愛関係崩壊後のストレス関連成長に影響を及ぼす個人差・状況要因として,愛着スタイルと崩壊形態の影響を検討することであった。参加者である大学生・短大生184名(男性86名,女性98名)は,過去5年以内の恋愛関係崩壊経験について想起し,成長感尺度,愛着スタイルの各尺度へ回答した。まず,崩壊形態については,片思いよりも交際していた関係の破局(離愛)で,拒絶者の立場については,拒絶者があいまいな場合よりも,相手に拒絶された場合に,それぞれ高い成長が見られた。愛着スタイルについては,関係性不安が低いほど高い成長が見られた。</p>
著者
小塩 真司 西野 拓朗 速水 敏彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.250-260, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
26
被引用文献数
7 3 6

本研究の目的は,他者軽視および顕在的自尊感情と,潜在連合テスト (Implicit Association Test; IAT) によって測定された潜在的自尊感情との関連を検討することによって,仮想的有能感の特徴を明らかにすることであった。研究1では大学生119名に対し,紙筆版の潜在連合テストによって潜在的自尊感情を測定し,顕在的自尊感情尺度,他者軽視に基づく仮想的有能感尺度を実施した。また研究2では,大学生155名を対象に,パーソナルコンピュータ上の潜在連合テストによって潜在的自尊感情を測定し,顕在的自尊感情尺度,仮想的有能感尺度を実施した。2つの研究ではほぼ同じ結果が再現された。まず第1に,仮想的有能感は顕在的自尊感情とは有意な関連がみられないが,潜在的自尊感情とは有意な正の相関関係にあった。また第2に,顕在的自尊感情が低く潜在的自尊感情が高い者が,もっとも他者軽視を行う傾向にあることが示された。
著者
国里 愛彦 山口 陽弘 鈴木 伸一
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.324-334, 2008-03-31
被引用文献数
3

現在盛んに研究がなされているパーソナリティモデルにCloningerの気質・性格モデルとBig Fiveモデルの2つのモデルがある。しかし,2つのモデル間の関連性についての研究は少ない。そこで,本研究は,気質・性格モデルとBig Fiveモデルとの関連を検討することを目的とした。大学生457名を対象にTemperament and Character lnventory(TCI)とBig Five尺度を実施した。その結果,TCIとBig Five尺度は強い関連を示し,気質・性格モデルはBig Fiveモデルの説明を行うことが可能であることが示唆された。また,外向性を除くBig Fiveモデルの各因子の説明には,気質だけでなく性格が必要であることが示唆された。最後に,気質・性格モデルの観点からBig Fiveモデルの各因子の特徴について論議された。
著者
松木 祐馬 下司 忠大
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.47-49, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
8

The purpose of this study is to develop the General Group Identification Tendency (GGIT) scale that measures individual tendency to identify with ingroups regardless of the type of group and examine its reliability and validity. Results of questionnaire surveys that were conducted with university students showed sufficient internal consistency and validity, which was estimated in terms of the relationship with contextualism, degree of identification with the university, collective self-esteem, and allocentric tendency. These results indicated that the GGIT scale is valid.
著者
上地 雄一郎 宮下 一博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.80-91, 2005 (Released:2005-11-11)
参考文献数
47
被引用文献数
9 6

本研究の目的は,Kohutの自己心理学の視点から自己愛的脆弱性を測定する尺度を作成することであった.自己愛的脆弱性は,承認・賞賛への過敏さ,潜在的特権意識,自己顕示抑制,自己緩和不全,目的感の希薄さという5つの指標を通して測定できると想定した.用意された52項目を因子分析した結果,上記の指標に相当する因子が確認された.因子分析により選択された40項目が5つの下位尺度に分類され,これらの全体が自己愛的脆弱性尺度(Narcissistic Vulnerability Scale: NVS)と命名された.NVSで測定される自己愛的脆弱性は,過敏型の自己愛と正の相関を示した.NVSの全下位尺度において,高得点者は低得点者よりも高い不安やうつ傾向を示した.精神症状をもつ患者は,NVSの全下位尺度において健常者より高い得点を示した.
著者
友野 隆成 橋本 宰
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.220-230, 2005-03-31
被引用文献数
4

本研究では, 改訂版対人場面におけるあいまいさへの非寛容尺度(Revised Interpersonal Intolerance of Ambiguity Scale; IIAS-R)を作成し, その信頼性および妥当性の検討を行った.研究1では, 自由記述調査の結果をもとに項目を作成し, 確認的因子分析により初対面の関係におけるあいまいさへの非寛容, 半見知りの関係におけるあいまいさへの非寛容, 友人関係におけるあいまいさへの非寛容の3つの下位尺度を構成した.また, 得点分布や記述統計量の確認を行った.そして, 内的整合性を検討し, ほぼ十分な信頼性(α=.65&acd;.77)を得ることができた.研究2では, IIAS-Rの各下位尺度と対人不安尺度, 独断主義尺度との相関を検討し, ある程度の構成概念妥当性(r=.22&acd;.52)を確認することができた.研究3では, IIAS-Rの3ヶ月間の再検査信頼性を検討し, ほぼ十分な安定性(r=.66&acd;.73)を確認することができた.以上より, IIAS-Rは信頼性および妥当性を兼ね備えた尺度であることが示唆された.
著者
速水 敏彦 小平 英志
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.171-180, 2006-01-31
被引用文献数
1 7

これまで,他者軽視に基づく仮想的有能感に関して,感情経験との関連を中心とした検討が行われてきた(速水ほか,2003).本研究では,低い自尊感情を補償しようと,他者軽視を行う典型的なタイプを抽出するために有能感の類型論的アプローチを用い,学習観と学習に対する動機づけとの関連を検討した.高校生395名に対して他者軽視,自尊感情,学習観(学習量,環境,方略志向),および自己決定理論に基づく動機づけ(外的,取り入れ的,同一化的,内発的動機づけ)の尺度が実施された.相関関係からは,他者軽視に基づく仮想的有能感は学習量志向と負の関連にあることが示された.また各類型の特徴を整理した結果,仮想型では,自尊型と比べて,外的動機づけおよび取り入れ的動機づけが高く,同一化的動機づけと内発的動機づけが低い傾向にあった.萎縮型では,いずれの動機づけも低い傾向にあった.
著者
河野 和明 羽成 隆司 伊藤 君男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.95-101, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

恋愛対象者に対する接触回避がどのように生じているかを分析した。大学生334名(男性126名,女性208名)が質問紙調査に参加した。調査では,恋愛対象者,同性友人,異性友人各1名を想起させ,8つの身体接触場面において,各人物との接触をどの程度回避したいかについて尋ねた。男女とも恋愛対象者に対しては,異性友人に比べて接触回避の程度を下げたが,この傾向は女性で顕著であった。女性は,異性友人に対して接触回避を高く保っているが,恋愛対象者に対しては大幅に回避を下げると考えられた。しかし,たとえ恋愛対象者であっても,恋愛対象者への接触回避は,同性友人への接触回避よりも低くならなかった。一方,男性は,同性友人,異性友人よりも,恋愛対象者への接触回避は低かった。接触回避が性的防衛の機能をもつ可能性が考察された。
著者
木戸 彩恵 やまだ ようこ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.244-253, 2013-03-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究では,ナラティヴ・アプローチを用いて化粧をする行為者にとっての場所性と化粧行為の対話性について検討する試みを行った。4名の美容職従事者(23~61歳)を対象に,複数回のライフ・ストーリー・インタビューを行い,各々の場所性と化粧行為の連関をモデル化した。第一段階では,調査協力者の語りから,宛先となる場所と化粧プロセスの相違をモデル化し,次に,宛先となる場所を人生の年輪モデル(やまだ・山田,2009)を用いてモデル化した。結果として,1)化粧行為のプロセスと宛先となる場所のあり方は他者との複合的な関係において多重に構成されること,2)化粧行為の意味は個別の経験に基づき組織化され、行為者のあり方とともに変容していくことを明らかにした。これらの結果から,化粧行為の重要な役割は行為者のあり方に変容をもたらすことであるという新たな化粧研究への示唆が得られた。
著者
太幡 直也 佐藤 広英
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.235-245, 2019-03-01 (Released:2019-03-12)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究では,Twitter上での他者情報公開を規定する心理的要因を検討した。Twitterを利用する高校生,大学生を対象に,web調査にて,Twitter上での最近1か月の友人,知人に関する他者情報公開や,プライバシー意識などの心理的要因に関する尺度に回答するように求めた。その結果,自己のプライバシーを意識せず,プライバシーを維持する行動をとりにくい者ほど,他者情報公開数が多かった。加えて,人気希求,犯罪被害リスク認知が高い者ほど,他者情報公開数が多かった。一方,他者のプライバシーの意識しやすさ,他者のプライバシーを維持する行動のとりやすさは,他者情報公開数とはほとんど関連はみられなかった。上記の結果は,高校生,大学生ともにみられた。
著者
嘉瀬 貴祥 上野 雄己 下司 忠大
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.10, (Released:2019-01-25)
参考文献数
14

This study aimed to investigate the relationships of the antisocial personality traits called the Dark Triad, which includes Machiavellianism, narcissism, and psychopathy, with life skills including the ability to adapt to society (i.e., decision-making, interpersonal relationships, effective communication, and coping with emotions). A total of 272 university students completed the Japanese version of the Short Dark Triad and Life Skills Scale for Adolescents and Adults. Multivariate multiple regression analysis showed that Machiavellianism, narcissism, and psychopathy related to life skills in different ways. These results support the findings of previous studies suggesting the link between the Dark Triad and social adjustment.
著者
田中 圭介 神村 栄一 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.108-116, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
36
被引用文献数
4

近年,マインドフルネス・トレーニング(MT)は,全般性不安障害や心配への介入法として注目されている。MTは,マインドフルネス傾向や脱中心化,注意の制御を媒介して,不安や抑うつに作用することが示唆されている。しかし,これらの媒介変数が,心配に作用する過程については,いまだ検討されていない。本研究では大学生を対象に質問紙調査(N=376)を行い,心配に対する注意の制御,マインドフルネス傾向,脱中心化の影響について検討を行った。共分散構造分析の結果,注意の制御を外生変数とした場合に最もモデル適合度が高いことが示された。さらに,注意の制御は,マインドフルネス傾向と脱中心化を媒介して,心配の緩和に繫がることが明らかとなった。これらの結果から,MTが心配に作用する際には,注意の制御の増加が体験との関わり方(マインドフルネス傾向,脱中心化)を改善し,心配を低減させる作用プロセスが想定される。
著者
亀倉 大地 安保 英勇
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.4, (Released:2018-11-22)
参考文献数
35

自己愛傾向と恥・屈辱感の関連が理論的に指摘されているが,我が国における検討は少ないのが現状である。本研究では大学生および大学院生199名が病理的自己愛傾向,屈辱感・恥,ストレス反応の項目から構成される質問紙に回答した。共分散構造分析を用いて,二種類の自己愛傾向が恥・屈辱感を媒介してストレス反応に及ぼす影響を検討した。その結果,一対一の場面でネガティブな評価を受けた場合,過敏型自己愛傾向は恥および屈辱感を媒介してストレス反応に正の影響を及ぼすことが示された。
著者
古賀 佳樹 川島 大輔
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.2.10, (Released:2018-09-27)
参考文献数
8
被引用文献数
6

The aim of this study was to develop a Japanese version of the Game Addiction Scale (GAS7-J) and investigate its validity and reliability. The GAS7-J was translated using back translation. In the study, 352 Japanese adolescents responded to a questionnaire which included the GAS7-J. Factor analysis revealed a factor structure similar to the original scale, with higher internal consistency. Additionally, the GAS7-J correlated with both time spent on games and loneliness to a similar degree as in a previous study. In conclusion, the GAS7-J has an acceptable level of validity and reliability.
著者
酒井 恵子 西岡 美和 向山 泰代 小松 孝至
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.163-166, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
3
被引用文献数
1

The Gitaigo Personality Scale (GPS; Komatsu et al., 2012) consists of 60 mimetic words comprising six subscales, and is used for measuring self and others' personality. In this study we developed a short form of the GPS, the GPSsf which consists of 30 words, by selecting the five words that exhibited the highest loadings for each of the GPS six factors. A factor analysis showed that the GPSsf consisted of six factors consistent with the six subscales of the GPS. The GPSsf had relatively high test-retest reliability, internal consistency, and sufficient validity. Because of the reduced number of items, the GPSsf is now more accessible for use in assessment situations.
著者
長谷川 晃 服部 陽介 西村 春輝 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.162-165, 2016-11-01 (Released:2016-09-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The characteristics of social problem solving and rumination in formerly depressed people were investigated. Based on the results of a self-report measure, the participants were divided into a formerly depressed group that had experienced an episode that met the criteria for major depression (n=14), and a never-depressed group (n=92). The formerly depressed group had higher scores on the Rational Problem-Solving subscale of the Social Problem-Solving Inventory-Revised Short Version and the Brooding and Reflective Pondering subscales of the Ruminative Responses Scale, after controlling for gender and the current depression level. It is possible that these factors increase the vulnerability to depression.
著者
上村 晃弘 サトウ タツヤ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-47, 2006-08-30
被引用文献数
2

血液型性格関連説は日本で人気のある疑似性格理論の1つで,1920年代の古川竹二の仮説に由来する。現在では多くの提唱者がこの仮説を様々に解釈している。したがってこの説には多様性がある。本研究では,最近の「血液型ブーム」においてTV放送された説を伝統的説明,生物学的媒介,枠組利用,剰余特性付加の4つの型に分類した。伝統的説明型は古川の仮説の後継である。生物学的媒介型は,血液型と性格の関係を進化論や脳科学などの新しい学術的知識を用いて説明する。枠組利用型は単に占いに用いている。剰余特性付加型は提唱者の専門分野で見出された特性を追加した程度である。すべての提唱者の説は論理的妥当性をもたない。
著者
井合 真海子 矢澤 美香子 根建 金男
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.81-93, 2010
被引用文献数
1

本研究では,境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder: BPD)周辺群を対象として,認知行動理論的視点から,見捨てられスキーマとBPD周辺群が示すBPDの徴候との関連を調べることを目的とした。調査1・2では,大学生452名を対象に質問紙調査を実施し,見捨てられスキーマ尺度(the Abandonment Schema Questionnaire: ASQ)を作成した。その結果,ASQは「恒常的な見捨てられ・孤独」,「親密な関係に対するしがみつき・同一視」,「他者からの好意に対するあきらめ」の3因子構造であることが示され,信頼性・妥当性も確認された。調査3においては,大学生253名を対象に,BPD周辺群の徴候と見捨てられスキーマの関連を調べた。パス解析の結果,見捨てられスキーマは,感情の不安定性を介してBPD周辺群に顕著にみられる様々な行動化に影響を与えている,という因果モデルが導かれた。今後は,ASQの大学生以外の適応可能性を検討することが求められる。