著者
池田 めぐみ 城戸 楓 鈴木 智之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.69-71, 2022-07-06 (Released:2022-07-06)
参考文献数
10

This study examined the internal consistency and convergent validity of the Japanese version of an Employee Agility and Resiliency Scale (EARS-J), a job domain-specific resilience scale. The analysis was conducted using Internet survey data collected from 20–29. The results confirmed that EARS-J had a one-factor structure similar to the original scale. Furthermore, we confirmed certain convergent validity of the EARS-J by examining its relationships with employee engagement, task performance, and K6.
著者
西村 佐彩子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.183-194, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
26
被引用文献数
4 5 3

曖昧さに対する態度は,これまで曖昧性耐性の低さという,否定的態度を中心とした一次元的な観点から論じられてきた。本研究は,曖昧さへの態度を多側面から測定する尺度の作成を行い,適応との関連を検討した。研究1では,曖昧さへの態度尺度の因子分析を行った結果,曖昧さへの態度は,肯定的態度と否定的態度を含んだ,複数の側面(曖昧さの“享受”,“不安”,“受容”,“統制”,“排除”)から構成されることが示唆された。研究2では,曖昧さへの態度と適応の関連を検討するため,適応の指標として,強迫傾向,抑うつ傾向,愛着スタイルを取り上げた。その結果,強迫傾向,抑うつ傾向,愛着スタイルの不安定型はそれぞれ曖昧さへの否定的態度との関連がみられたが,愛着スタイルの安定型は曖昧さへの肯定的態度との関連がみられた。曖昧さへの態度の各側面によって,適応との関連の仕方が異なることが示された。
著者
金井 嘉宏 入戸野 宏
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.131-141, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
22
被引用文献数
2 6

本研究の目的は,人間や動物の赤ちゃん,およびキャラクターやモノに対する“かわいい”感情を共感性や親和動機によって予測するモデルを構築することであった。582名の大学生に対して,多次元的共感性尺度,親和動機尺度,各対象に対する“かわいい”感情の評定尺度で構成される質問紙調査を行った。モデルに性差が見られるか検討するために多母集団同時分析を行った結果,人間や動物の赤ちゃんだけではなく,モノに対する“かわいい”感情も共感性が予測することが示された。モデルに性差はなく,共感性が高いほど,これらの対象に対しては“かわいい”感情を抱きやすいことがわかった。親和動機は人間の赤ちゃんに対する“かわいい”感情のみ予測した。一方,キャラクターに対する“かわいい”感情は共感性,親和動機のいずれによっても予測されなかった。社会的動機としての親和動機に加えて接近動機を測定し,共感性や“かわいい”感情との関係を調べる必要性が議論された。
著者
上田 皐介 稲垣 勉 山形 伸二 加藤 弘通
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.57-68, 2023-07-18 (Released:2023-07-18)
参考文献数
16

本研究は,外向性・内向性を印象づける自己呈示の前後で呈示者の顕在的・潜在的外向性に変化が生じるか,および公的状況(隣室に他者がいて,その人に個人情報を伝えたうえで自己呈示する)と私的状況(録音のみで個人情報も明かさずに自己呈示する)でその変化の大きさが異なるかを検討した。62名の参加者を2(呈示特性:外向性・内向性)×2(状況:公的・私的)の4条件に無作為に割り当てた。顕在的・潜在的外向性のそれぞれについて,測定時点(自己呈示前・後)を個人内要因とする3要因の分散分析を行った。その結果,潜在的外向性についての測定時点の主効果のみが有意であり,自己呈示は呈示特性,状況にかかわらず潜在的外向性を高める一方,顕在的外向性には影響しないことが示された。潜在的外向性に変化が生じたメカニズムや先行研究との結果の不一致が生じた理由,特に直前の測定が顕在的外向性の変化を抑制した可能性について考察した。
著者
浅野 良輔 浦上 萌 徳田 智代 園田 直子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.125-136, 2020-12-03 (Released:2020-12-03)
参考文献数
38
被引用文献数
1

社会的関心の高さにもかかわらず,モバイル端末利用と子どもの自己制御をめぐるエビデンスは乏しい。本研究では,幼少期におけるスマートフォン・タブレット利用とエフォートフル・コントロール(EC)の関連を検証した。研究1では,2–6歳の長子をもつ養育者183名にインターネット調査を行った。スマートフォン・タブレット利用用途尺度,利用場面尺度,利用規則尺度が作成され,いずれも1次元性と高い信頼性が示された。研究2では,2–6歳の長子をもつ夫婦カップル455組にインターネット調査を行った。共通運命モデルによる分析の結果,人口統計学的特性を統制してもなお,スマートフォン利用頻度,タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用用途,スマートフォン・タブレット利用場面はECと関連していなかった一方で,スマートフォン・タブレット利用規則がECの高さと関連していた。子どもの年齢に基づく下位集団分析でも,同様の結果が得られた。
著者
清水 陽香 中島 健一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.4, (Released:2018-04-05)
参考文献数
38

防衛的悲観主義者(DP者)は,方略的楽観主義者(SO者)に比べて自尊心が低く不安が高い一方で,パフォーマンス前の準備を入念に行い,その結果SO者と同程度に高いパフォーマンスを示すとされている。一般に高い不安や低い自尊心は準備およびパフォーマンスを阻害するにもかかわらず,DP者が課題の事前準備に取り組むことができる理由はいまだ明らかになっていない。本研究では,その理由としてDP者には潜在的自尊心の高さがあると考え,DP者の顕在的自尊心と潜在的自尊心に着目した検討を行った。研究1では,質問紙調査によって認知的方略による顕在的自尊心の差異を検討した。また研究2では,Name Letter Taskを用いて潜在的自尊心の差異を検討した。研究1, 2の結果,DP者はSO者に比べて顕在的自尊心は低いものの,潜在的自尊心はSO者と同程度に高いことが示された。
著者
荘島 幸子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.265-278, 2008-03-31
被引用文献数
3

本研究では,約3年に及ぶ縦断的インタビューで得られた性同一性障害者1名の語りから,当事者であったAが医療における「成功物語」から離脱し,自らを「性同一性障害者」と語らなくなっていく変容プロセスを質的に検討した。分析の視点は,(1)治療へのモチベーション及び身体の捉え方の変化,(2)Aを取り巻く社会的関係の変化,(3)病いの意味づけの変化であった。結果では,それぞれ(1)身体違和感及び治療へのモチベーションの相対的低下,(2)Aを取り巻く社会的関係の拡大及び私的関係における摩擦と他者との折り合い,(3)他者との関係性の中で生きることの重視が明らかになった。考察では,Aが「GID当事者である」と語らなくなっていた過程を,「成功物語」と「私物語」の間に齟齬が生じる過程として捉え返し,それを悪魔物語の解体と物語の再組織化過程という観点から述べた。
著者
渡邊 芳之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.178-181, 2016-11-01 (Released:2016-09-13)

2015年から2016年にかけてのごく短い間に,私たちの学会は3人の偉大な先達を相次いで失いました。大村政男先生(1925年10月4日生,2015年10月31日逝去),星野命先生(1927年8月24日生,2015年11月7日逝去),藤永保先生(1926年10月2日生,2016年1月21日逝去)です。3人の先生はいずれも日本パーソナリティ心理学会の前身である日本性格心理学会(1992年6月設立)の設立発起人,初代の理事として学会の設立に参加され,とくに大村先生は初代の副理事長,2代目理事長として初期の学会運営に大きく貢献されました。先生方のパーソナリティ心理学への思いは,『性格心理学研究』(現在の『パーソナリティ研究』)の第1巻第1号(1993年3月)に掲載された論文やシンポジウム記録を読むと,いまも強く伝わってくるものがあります。先生方はつねに,パーソナリティとはなにか,パーソナリティをどう捉えるか,パーソナリティ研究の意義はなにか,という根本的な問題を考え続けておられました。私たちも忘れずにそうした根本的,原理的な問題を考え続けることで,先生方の功績を引き継いでいきたいと思います。『パーソナリティ研究』では追悼特集として,3人の先生方にゆかりのあった会員から,各先生の思い出を語っていただくことで,先生方への追悼に代えることとし,会員の皆様とともに先生方を偲びたいと思います。
著者
小山内 秀和 楠見 孝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.50-61, 2016-07-01 (Released:2016-06-04)
参考文献数
35
被引用文献数
4

物語を読むときに読者が体験する「物語に入り込む」現象を示す概念として,近年「物語への移入」が注目されている。本研究では,Green & Brock(2000)が作成した物語への移入尺度と,さらにそれを元にAppel, Gnambs, Richter, & Green(2015)の提案した短縮版の日本語版をそれぞれ作成し,信頼性と妥当性の検討を行った。調査1(920名)および調査2(275名)の結果,日本語版移入尺度は高い信頼性を持つことが示され,並行して測定したイメージへの没頭尺度や文学反応質問紙(LRQ)との間に正の相関を示し,基準関連妥当性を有することが示唆された。しかしながら,予測された1因子モデルによって確証的因子分析を行った結果,オリジナルの移入尺度の適合度は低いものとなる一方,短縮版尺度の適合度は許容できる結果となった。二つの日本語版尺度は,因子構造についてさらに検討する余地があるものの,今後の心理学,文学研究への応用が期待できるツールと考えられる。
著者
高橋 雄介 山形 伸二 木島 伸彦 繁桝 算男 大野 裕 安藤 寿康
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.276-289, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
42
被引用文献数
53 60

本研究は,Grayの強化感受性理論 (Reinforcement Sensitivity Theory) に基づいた2つの気質次元,行動抑制系 (Behavioral Inhibition System) と行動賦活系 (Behavioral Activation System) について,日本語版尺度の信頼性・妥当性の検討(研究1),生物学的基盤との対応関係の検討(研究2)を行った。研究1では,大学生446名を対象に質問紙調査を行い,Carver & White (1994) が作成した尺度の日本語版の信頼性を確認した。また,因子的妥当性,構成概念妥当性の検討を行い,十分な結果を得た。研究2では,慶應義塾双生児プロジェクトによって集められた双生児を対象に質問紙調査を実施し,293組から有効な回答を得た。行動遺伝学的解析の結果,BISとBASは遺伝要因によって部分的に説明され,お互いに独立な遺伝因子から寄与を受けていることが分かった。
著者
後藤 崇志 石橋 優也
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.187-197, 2020-03-01 (Released:2020-03-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1

これまでの研究において,親の持つ学習観が子の学業達成に果たす役割についてはあまり関心を向けられていなかった。本研究では,親の年収,学歴,学習観,子の学歴への期待,および子への関わり行動の関連を検討した。インターネット調査により,小・中学生の子どもを持つ親400名からデータを収集した。因子分析の結果,親の持つ学習観は,情報処理の深い・浅いの軸で多様なものであることが示された。さらに,パス解析の結果から,深い学習観は,子の学歴への期待と並んで,学歴の高さと効果的な関わり行動のとりやすさの関連を媒介していた。こうした学習観の違いが,学業達成の文化的再生産とどのように関わっているかを論じる。
著者
井川 純一 中西 大輔
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.6, (Released:2018-12-11)
参考文献数
29
被引用文献数
2

本研究では,グリット(Grit:根気・一貫性)とバーンアウト傾向(情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成化の低下)及び社会的地位との関係について,対人援助専門職(医師,看護師,介護福祉士(男性233名,女性217名))を対象に検討した。Gritと社会的地位に関連が認められるのであれば,職業威信スコアの最も高い医師のGrit得点が最も高くなると予測したが,Gritの間に職種間の差異は認められなかった。一方,管理職と非管理職を比較したところ,一貫性において管理職のほうが高い値を示した。また,Gritがバーンアウト傾向に与える影響について検討したところ,根気は脱人格化及び個人的達成感の低下,一貫性は情緒的消耗感及び脱人格化を抑制していた。分位点回帰分析を用いた検討では,これらのGritのバーンアウト傾向抑制パタンは症状の増悪に伴って変化するものの,どのパーセンタイルでもバーンアウトを増加させる要因にはならないことが明らかとなった。
著者
赤松 大輔 中谷 素之 小泉 隆平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.2.9, (Released:2018-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3

The purpose of this study was to examine the reciprocal causal relationships between beliefs about learning and learning strategies, which, although suggested by previous research, have been lacking sufficient empirical evidence. Undergraduates (N=105) completed self-reported questionnaires to indicate beliefs about learning including strategy orientation, and learning strategy use consisted of meta-cognitive strategy, deep-processing strategy, and autonomous help-seeking. Cross-lagged structural equation analyses revealed cross-lagged effects between strategy orientation and learning strategies. Results suggest that beliefs about learning and learning strategy use have reciprocal causal relationships.
著者
松木 祐馬 向井 智哉 近藤 文哉 金 信遇 木村 真利子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-19, 2020-04-27 (Released:2020-04-27)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

This study examined the relationship between images of religious believers and tolerant attitudes toward them. A questionnaire was administered to 220 respondents via a web survey. Exploratory factor analysis revealed that images of religious believers consisted of three factors: “mentally vulnerable,” “pious,” and “virtuous.” Furthermore, hierarchical multiple regression analysis indicated that, regardless of whether the respondents were themselves religious or not, virtuous images were associated with tolerant attitude toward them. In contrast, the relationship between mentally vulnerable and pious images and a tolerant attitude was different, depending on respondents’ religiousness.
著者
喜入 暁 松本 昇
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.112-121, 2022-10-06 (Released:2022-10-06)
参考文献数
50
被引用文献数
2

短縮版多次元衝動的行動尺度日本語版(the Japanese version of Short UPPS-P Impulsive Behavior Scale: SUPPS-P-J)は,多次元的な衝動性,特に情動喚起下における衝動性をも含めて測定する包括的な尺度である。しかし,その妥当性は大学生でしか検証されていない。そこで本研究では,SUPPS-P-Jの対象を一般成人に拡張するため,一般成人サンプルを対象に調査を実施した。428名(女性221名,男性207名,Mage=43.3, SD=8.91)がSUPPS-P-Jに加え,Dark Triad,リスク行動,抑うつ症状,躁症状,全般性不安症状,Grit,セルフコントロール,ビッグ・ファイブ・パーソナリティを測定する尺度に回答した。その結果,仮説と異なる相関も認められたものの,一般サンプルにおけるSUPPS-P-Jの因子的妥当性および基準連関妥当性は総じて示された。最後に,本研究の限界と今後の研究の方向性について議論した。
著者
桑村 幸恵
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.311-313, 2009
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine empathic embarrassment toward others of different psychological distances, and to compare those high on chronic susceptibility to embarrassment and those low. Participants were seventy-five female technical-college students. They completed a questionnaire that used six situations and four actors: oneself, family member, friend, and stranger. They indicated how much embarrassment they felt toward each actor in each situation. Results showed that empathic embarrassment occurred more frequently toward the person of close psychological distance, and those high on chronic susceptibility experienced empathic embarrassment more often.
著者
田村 紋女 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.38-48, 2017-07-01 (Released:2017-04-10)
参考文献数
39
被引用文献数
1

サイコパシーは向社会的行動の低さや攻撃性の高さと関連する。共感性の欠如は一次性サイコパシーの特徴である。共感性は向社会的行動と攻撃性の双方を予測する要因として知られており,情動的共感性と認知的共感性にわけられる。しかし,サイコパシーと向社会的行動,攻撃性の関連に対して,共感性の下位次元が特異的に与える影響は不明確である。本研究では,一次性サイコパシーと向社会的行動の関連を情動的共感性が媒介し,一次性サイコパシーと身体的攻撃の関連を認知的共感性が媒介することを検討した。大学生132名が,サイコパシー,共感性,向社会的行動,攻撃性の指標で構成される質問紙に回答した。その結果,予想された媒介効果は双方とも有意であり,一次性サイコパシーの向社会的行動と身体的攻撃は共感性の異なる側面によって媒介されることが示された。本研究の結果は,サイコパシーの向社会性や反社会性のメカニズムの解明に寄与するだろう。
著者
上田 皐介 山形 伸二
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-41, 2023-06-07 (Released:2023-06-07)
参考文献数
6

We examined whether people’s trait increases when asked to impress others with that trait. Participants (N=422) reported their extraversion/introversion and social desirability of extraversion and introversion. After 7 to 10 days, we asked them to write a self-introduction that gave either an extraverted or introverted impression, depending on their condition. Their extraversion/introversion was measured before the self-introduction. Results indicated that (1) only extraversion was rated desirable, (2) a trait to be presented increased in both conditions, and (3) there was a greater effect on extraversion, suggesting that internalization of self-presentation occurred even without self-presentation, especially for socially desirable traits.
著者
林田 太郎 佐藤 純
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-11, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

本研究の目的は,これまで我が国の心理学において取り上げられることがなかった自己憐憫について,過去の事例研究や自由記述の結果をもとに概念を整理し,その結果に基づいた尺度を作成して実証的に検討することであった。研究1では,大学生に自己憐憫の経験を尋ね,自己憐憫とは日常的な場面でも生じるもので,その内容としては他者を意識した感情や反応があることが明らかにされた。研究2では,その結果をもとに自己憐憫尺度を新たに作成し,322名の学生を対象に質問紙調査を実施した。確認的因子分析の結果から,3因子モデルが妥当であることが確認された。また,α係数や再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。妥当性を検討するために統制感,孤独感,怒りの表出との相関を検討した結果,ある程度予想通りの結果が得られ,妥当性を確認することができた。
著者
浅野 良輔 堀毛 裕子 大坊 郁夫
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.129-139, 2010-01-31 (Released:2010-02-28)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1 2

本研究の目的は,失恋に対するコーピング(未練型,拒絶型,回避型)が,失恋相手からの心理的離脱を介して,成熟性としての首尾一貫感覚(Antonovsky, 1979, 1987)を予測するという仮説を検証することであった。過去1年以内に失恋を経験した大学生114名(男性60名,女性54名)を分析対象とした。対象者は,最近経験した失恋に対するコーピング,失恋相手からの心理的離脱,人生の志向性に関する質問票(首尾一貫感覚)の各尺度に回答した。構造方程式モデリングによる分析の結果,(a) 心理的離脱は首尾一貫感覚を直接的に向上させ,(b) 心理的離脱を介して,未練型コーピングは首尾一貫感覚を低下させる一方,回避型コーピングは首尾一貫感覚を向上させ,(c) 拒絶型コーピングは首尾一貫感覚を直接的に低下させることが示された。以上の結果から,失恋および継続中の恋愛関係と,成熟性としての首尾一貫感覚との関連性が議論された。