著者
渡辺 哲矢 西尾 修一 小川 浩平 石黒 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.86-93, 2011-01-01
被引用文献数
2

遠隔操作型アンドロイドロボットを操作する際,触覚フィードバックがないにもかかわらず,ロボットの身体に触られると自分に触られたように感じることがある.類似の現象として,身体への触覚刺激に同期して身体以外への物体に触覚刺激を与えている様子を観察させると,身体感覚の転移が生ずる「Rubber Hand Illusion」が知られているが,触覚刺激を伴わない身体感覚の転移についての研究事例は少なく,特に対象物を遠隔操作する際の転移に関する報告はこれまでない.本論文ではアンドロイドの遠隔操作時に身体感覚の転移が実際に生じているのかを検証した.その結果,アンドロイドと操作者の動きが同期した場合に,触覚刺激を与えなくても,身体感覚の転移が生ずることが分かった.
著者
伴野 明 勝山 一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.214-224, 2015-01-01

最近,映像に香りを付加する研究が進展している.香りの付加で重要となるのは,香りの知覚である.映像と一体的に香りを提示しても利用者が香りを知覚しなければ香り付き映像コンテンツの価値は高くない.そこで,香りの知覚率を高める研究が幾つか行われてきた.しかし,利用者へ吸気センサや香り提示装置を装着するなどの従来法では,香り知覚率が高くても装着感があるため自然さに問題がある.現実空間では香りは風に乗って運ばれる.香りは環境を知る重要な手掛かりを与えるため,人は風を知覚したとき,それまでの呼吸パターンを変化させ,効率的に香りを嗅ごうと吸気している可能性がある.そこで,本研究では,顔に空気触覚を提示し,これに連動して香りを提示すれば香りの知覚率は向上すると言う仮説を設定し,これを検証する実験,及び,そよ風が吹く映像コンテンツと空気触覚の連動による香り提示実験を行った.その結果,空気触覚を提示すると,条件反射的に吸気動作が生じる場合があること,このタイミングで香りを提示すると香りは高い頻度で知覚されることを明らかにした.
著者
三井 相和 藤吉 弘亘 秋田 時彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.1135-1144, 2011-07-01

本論文では,textonに用いられるフィルタをボックスフィルタ(平均化フィルタ)の組合せで近似した,近似texton特徴量による高速な人検出法を提案する.textonによる特徴抽出は処理が容易であることから,テクスチャ解析やパターン認識,一般物体認識など多岐の分野で多く用いられる.しかし,単純なフィルタリング処理では,フィルタ内の1ピクセルごとにアクセスし演算しなければならないため,特徴抽出の処理コストが非常に高い.そこで,本論文では特徴抽出の処理コストを削減するために,textonに用いられるフィルタを近似することで高速な人検出を実現する.textonの近似には処理が簡易なボックスフィルタを用いる.このボックスフィルタをピラミッド上に組み合わせることで,擬似的にtextonのフィルタの形状を構築する.また,ボックスフィルタの応答値の算出には,方形領域の画素値の合計を一括算出することが可能なIntegral Imageを用いる.これらを組み合わせることで,近似フィルタの応答値を高速に求めることが可能となる.評価実験より,提案手法は人検出の特徴量として有効であるHistograms of Oriented Gradients(HOG特徴量)と同精度であり,2.3倍高速な識別が可能であることを確認した.
著者
大野 健彦 中谷 桃子 中根 愛 セン ユージン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.94-106, 2011-01-01

情報家電の利用時,ユーザが「作業にうんざりする」と感じる場面がしばしば登場する.このような状態を検出し,その発生原因を特定,解消することは情報家電の使いやすさを向上させる上で重要な役割を果たす.特に利用開始前に必要な接続・設定作業には,うんざりしやすい様々な要因が含まれる.本研究では情報家電の接続作業におけるうんざり状態の要因を明らかにすることを目的として,ビー玉評価法と呼ぶ「うんざり」状態を検出する簡易な方法を考案し,情報家電の配線作業に適用した実験について述べる.実験の結果,うんざりする程度は人によって大きく異なること,またユーザがマニュアル読解時,特に適切なページにたどりつけない場合にうんざりする場合が多いことが示された.またビー玉評価法がこのような作業の評価に適切であることが示された.
著者
住元 宗一朗 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1800-1811, 2011-11-01

近年増加したコンテンツ投稿型SNSでは日々膨大にコンテンツが増え続けるため,嗜好には合っているもののユーザが見逃してしまうようなコンテンツは少なくない.また,多くの推薦技術では精度を重視するあまり,その推薦結果に面白みがないという課題がある.本論文では,主に音楽,イラスト,詩等の創作者向けであるコンテンツ投稿型SNSにおける未知性,意外性を考慮した推薦手法について述べる.未知性に関しては,質の高いコンテンツを投稿する投稿者(有力投稿者)に注目し,コンテンツの質を確保しつつもロングテールのテール部分に属する,ユーザがまだ知らないコンテンツを推薦する.意外性に関しては,多くのコンテンツ投稿型SNSで利用されているFolksonomyを利用する.以上の二つの推薦部からなる推薦エージェントを提案し,イラスト投稿型SNSであるPixivの実データを用い,未知性,意外性に関する評価実験を実施した.その結果,推薦リストの6割に未知性,意外性のあるコンテンツが含まれ,本研究の有効性が確かめられた.
著者
川久保 秀敏 柳井 啓司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1417-1428, 2010-08-01

本研究の目的は,単語概念と画像特徴量の関係性をWeb上の大量の画像データを用いて定量的に分析することである.具体的には, (1)Bag-of-Features表現を用いた画像領域エントロピーによる単語の視覚性の分析, (2)位置情報付きの画像の分布を表すジオエントロピーによる単語概念の地理的分布の分析, (3)画像領域エントロピーとジオエントロピーによる単語の視覚性と地理的分布の関連性の分析,を行った.単語の視覚性と地理的分布の両方を分析した研究は,本研究が初めてである.本研究では,230語の名詞と,100語の形容詞について,Webからそれぞれ対応する画像を500枚ずつ収集し,これらの分析を行った.分析の結果, "sun" や "rainbow" など空に関する名詞は,他の単語に比べて画像領域エントロピーが小さく,ジオエントロピーが大きい傾向が分かった.一方,地名・地域名や偉人名に関する単語は,ジオエントロピーが小さく,画像領域エントロピーが大きい傾向にあった.
著者
松田 友輔 大町 真一郎 阿曽 弘具
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.336-344, 2010-03-01
被引用文献数
3

本論文ではNAT(Noise Attribute Thresholding)法と色情報を用いた2値化及びエッジ情報を利用した情景画像からの高精度な文字列検出手法を提案する.NAT法はノイズの特性を利用した文書画像の2値化手法である.NAT法と色情報を用いて文字列検出を行う従来手法は照明変化等による色の変化に脆弱で誤検出が多いという問題があった.それに対して提案手法では,色コントラストを考慮した濃淡画像にNAT法を適用して2値化することにより従来手法よりも高い精度の2値化を実現し,高精度な文字列の検出を可能としている.また照明変化などにより文字の単色性が損なわれている場合を考慮して色情報を処理することにより照明変化に対応し,誤検出数を抑制している.更にエッジ情報を利用した手法を導入することにより,従来手法では不可能であった接触文字の検出を可能としている.実験により提案手法の有効性を示す.
著者
山田 一郎 佐野 雅規 住吉 英樹 柴田 正啓 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.2328-2337, 2006-10-01
被引用文献数
2

番組内容を詳細に説明するセグメントメタデータは,視聴者による番組選択やダイジェスト視聴,更には放送局における番組管理に重要な役割を果たす.しかし,生放送のスポーツ番組などに対してこのようなセグメントメタデータを付与する作業には大変な労力を要する.そこで本論文では,アナウンサーや解説者がサッカー中継番組で発した言葉であるコメントを利用して,サッカー中継番組に対して,イベントなどの内容を時間ごとに説明するセグメントメタデータを自動付与する手法を提案する.アナウンサーや解説者が発したコメントには,ボールタッチしている選手を中心に試合の流れを実況する試合記述文と,試合の流れとは直接関係しない補足的な解説文が存在する.本手法では,各コメントがどちらの種類に属するかを統計的に判定することにより,サッカーの試合からイベントが発生した区間を抽出し,更に抽出された区間で起きたイベントやそのイベントの主関与者(以後,イベント動作主)を抽出する.実験により,コメントを高精度に分類できることを確認し,イベント抽出においてもキーワードマッチングを利用した従来手法に比べて有効であることを確認した.
著者
嶌田 聡 宮川 和 東 正造 森本 正志 奥 雅博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1231-1242, 2008-05-01
被引用文献数
17

本論文では,興味や関心の高い映像シーンの検索・ナビゲーション機能を実現するために,視聴者発信情報から映像シーンの内容を表す特徴ワードや概要などの高次のメタデータを自動抽出する方法を提案する.一般に,視聴者発信情報からメタデータを抽出する場合にはノイズが含まれることが問題となる.そこで,映像シーンを視聴しながらコメントを付与していく視聴連動型のコミュニケーション機能をファンコミュニティに提供することにより視聴者コミュニティの協調行動を誘導させることで視聴者発信情報の品質を向上させる方法を提案する.まず,視聴連動型の掲示板コミュニケーション機能を実在するファンコミュニティに導入し,視聴者コミュニティの協調行動が誘導されたことを検証した.次に,得られた視聴者コメントからTF-IDF法でシーンを代表する特徴ワードを求め,更に,映像シーンに対して視聴者が付与したコメントの中で特徴ワードを含む"文"を集約したシーン代表コメントを生成し,これらを映像シーンのメタデータとして抽出した.被験者16人による評価実験を行い,抽出したメタデータが,未視聴映像の検索については約半数のシーン,再視聴映像についてはほぼ全部のシーンに対して重要な手掛りになることを確認した.
著者
石川 彰夫 パナヒプル テヘラニ メヒルダド 内藤 整 酒澤 茂之 小池 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.854-867, 2009-06-01
被引用文献数
16

仮想視点が空間の中に入り物体群の間を通り抜ける(ウォークスルー),新たな画像ベースレンダリング方式を研究している.はじめに,筆者らは,被写体空間を取り囲み撮影した多視点映像を用いて"ウォークスルー"を実現するための技術的な要件を示す.従来の画像ベースレンダリング方式には,カメラ配置の制約と視点位置の制限があった.筆者らは,それらの課題を解決するために,空間を多数の小領域に分割し各々に局所的な光線空間を設定するという,新しいフレームワークを提案する.また,新フレームワークにおけるウォークスルーの中で必然的に生じるオクルージョンの新たな処理方法も提案する.計算機シミュレーションにより,提案手法がウォークスルーを実現しているとともに,正確な視差を生成し,オクルージョン問題も適切に解決していることが分かった.
著者
小久保 燎太 福永 修一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.12, pp.492-500, 2023-12-01

ポートハミルトン系の強化学習は方策の探索空間を限定することにより学習の高速化を目指した手法である.しかしながらこの方法は,学習が局所解に捕まりにくくなることを期待して制御入力に人為的なノイズを加えた確率的方策を用いている.このノイズがシステムの意図しない動作を引き起こす可能性がある.本研究では,強化学習の手法の一つであるPolicy Gradient with Parameter-based Exploration (PGPE)をポートハミルトン系の強化学習に適用することで,決定論的な方策を用いて制御則を学習できる手法を提案する.PGPEでは決定論的方策におけるパラメータに対して推定分布を仮定し,期待割引報酬和を最大化する推定分布のパラメータを勾配法により学習する.ポートハミルトン系の強化学習は2種類の方策パラメータをもつ.提案手法では,ポートハミルトン系の強化学習における2種類のパラメータに対して推定分布を仮定し,期待割引報酬和を最大化するように推定分布のパラメータを学習する.強化学習のベンチマークである倒立振子の制御問題に対して提案手法を適用し,倒立振子を振り上げ頂点で安定化させる制御則を獲得できることを示した.
著者
香川 璃奈 原 悠輔 姜 志勲 山肩 洋子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.12, pp.736-746, 2022-12-01

料理レシピのような創作や操作手順の説明文書では,なぜそれをするのかといった,手順にとどまらない付加的な情報が文書の有用性を向上させる.しかし,そのような文書を書く経験に乏しい著者にとっては何を書くべきか考えることすら難しい.そこで本論文では自然言語処理技術により,調理手順そのものではない付加的説明文を自動生成する手法を検討する.我々は先行研究で,料理レシピの読者に役に立つ付加的情報が「代替品・アレンジ・調理工程の理由・適した材料・注意点・盛り付け」に類別されることを実験的に明らかにした.本研究ではユーザが入力した文に対し,クックパッドデータセットで学習したGPT-2モデルにより文を生成し,それらにBERTに基づく分類モデルを適用して上記の6種類に属する文を選出し,提案する仕組みを構築した.更にユーザビリティ評価として,100名の実験参加者に実際のレシピにおける冒頭の2文を提示し,それらに続く実際の文と,それらから提案手法により生成された後続文のどちらを採用するか選ばせる実験を行った.その結果48.2%で生成文が選択され,提案手法の生成文が実際の文と同等程度に利用されることが示された.
著者
加茂 文吉 松下 宗一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.2, pp.123-131, 2023-02-01

一般的に10人程度といったグループでのレッスンが行われているエレクトリックギターの授業クラスでは,個々の学習者の状況を正確に把握し,的確なアドバイスを与えることは容易ではない.授業内における録画あるいは録音では事後の評価に時間を要することに加え,機材の管理コストが授業運営における大きな負担となってしまう.そこで本研究では個々の学習者に腕時計型運動センサデバイスを装着させることで,レッスン内の演奏運動を全て記録し,演奏技量獲得の様子を可視化するシステムの開発実験を行った.ギター演奏技巧としては,音楽表現における重要な基礎技巧の一つであるアクセント付きコードストローク奏法を取り上げ,学習者の利き腕側での運動信号から演奏リズムの正確さ,アクセントの鋭さ,及び演奏運動の形態をPC画面におけるシンプルな操作にて評価することができる.音楽系専門学校における各1時間計5回にわたるギターレッスンクラスへの適用実験を行った結果,17名の学習者における技量獲得の状況を客観的に可視化することができた.また,数値データによる振り返りにより教育者と学習者が演奏技量に関する情報を共有することにつながった.
著者
鵜飼 祐生 藤吉 弘亘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.3, pp.195-206, 2023-03-01

人物再同定は,異なるカメラで撮影された同一人物の画像を検索するタスクである.人物再同定はその応用上の重要性から注目を集めており,ラベル付けされた大規模データセットを用いて深層学習モデルにより学習することで大きな進展を遂げてきた.また,あるラベル付けされたソースドメインで学習したモデルを他のドメインに適用した場合,推論精度が大きく低下する実用上の課題に対しても,数多くの教師なしドメイン適応手法が提案され,大きく改善されてきた.これらの手法の多くは,Global Average Poolingによる出力のみをもつモデルを用いており,画像特徴の平均的な特性のみを考慮している.そのため,例えばFine-Grainedな問題設定で重要とされる局所的な情報は十分考慮されていない,という課題がある.そこで本論文では,上記の課題を解決するため,Global Average Pooling(GAP)及びGlobal Max Pooling(GMP)により出力される,異なる特性をもつ二つの出力間の違いを考慮しながら,その両方を利用する新たな教師なしドメイン適応手法を提案する.公開された複数の人物再同定を対象とするデータセットにおける実験により,提案手法の人物再同定における教師なしドメイン適応における有効性を確認した.
著者
柴田 拓海 宇都 雅輝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.1, pp.47-56, 2023-01-01

近年,受検者の多面的な能力を測定する手段の一つとして小論文試験が注目されている.一方で,小論文試験では,採点にかかる人的・時間的なコストが大きいことが問題となる.この問題を解決する手段の一つとして,自動採点のニーズが高まっている.近年では,深層学習を用いた自動採点手法が多数提案され,高い精度を達成している.そのような深層学習自動採点手法の多くは,各小論文に対して単一の全体得点のみを予測するように設計されている.しかし,主に学習評価場面などで自動採点を活用する場合には,受検者に詳細なフィードバックを与えるために,全体得点だけでなく,複数の評価観点別得点も予測したい場合がある.このようなニーズに対応するため,全体得点に加えて複数評価観点に対応する細目得点も同時に予測できるモデルが近年提案されている.しかし,従来モデルは評価観点固有の複雑なニューラルネットワーク層を有しており,得点予測の根拠について解釈性が低いという問題がある.この問題を解決するために,本研究では,多次元項目反応理論を用いて予測根拠の解釈性を高めた複数観点同時自動採点モデルを提案する.
著者
池川 航史 西島 直
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.11, pp.653-656, 2022-11-01

本論文における提案手法は,機密データを外部に出すことなく他の組織に利活用させることを可能とする.また,提案手法は秘匿機能をもつスマートコントラクトを活用し,機密データ利活用時の手続き情報に関しても秘匿化を実現する.
著者
三宅 悠介 峯 恒憲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.11, pp.641-652, 2022-11-01

ECサイトで扱う商品種類増大に伴う情報過多問題を解決するため,効果的な推薦手法を選択することが重要である.推薦手法の有効性は様々な要因や時間の経過によって左右されるため,最適な推薦手法の選択には実環境での継続的な評価が不可欠である.しかしながら,実環境での評価では機会損失が課題となる.本研究では,この実環境での評価を,文脈と時間の経過を考慮した多腕バンディット問題とみなして解くことで,機会損失を抑えながら最適な推薦手法を自動かつ継続的に選択するメタ推薦システムを提案する.評価では,実際のECサイトから取得したデータを用いて最適な推薦手法を選択するシミュレーションを実施した.実験の結果,提案システムが,評価時に生じる機会損失を抑え,文脈と時間の経過を考慮しない場合と比較して累積クリック数を約9.7%増加させる効果があることを確認した.
著者
熊木 武志 下村 優太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.8, pp.499-503, 2022-08-01

本研究は,近年大きな社会問題となっている,スマートフォンを用いた盗撮行為に対して,新しい抑止技術を提案するものである.具体的には,LED照明を利用して,CMOSイメージセンサで撮影された動画に対し,ムービースタンプと呼ぶフリッカを埋め込み,画質を劣化させる.それとともに,このスタンプから動画が撮影された日時や場所等の情報を抽出することで,盗撮行為の抑止につなげる.更には,盗撮動画がインターネットにアップロードされる2次被害も抑えることが可能となる.一般にフリッカは,ノイズとみなされ,いかに低減するかが重要であったが,本研究はこれを積極的に活用することで,社会問題の解決へとつなげる,他に類を見ない技術である.
著者
土井 猛 辻 裕之 木村 誠聡
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.7, pp.480-484, 2022-07-01

書籍をデータ化する際に様々なスキャナやスマートフォンのカメラを用いて撮影した画像には湾曲するひずみが確認されている.これは綴じている文書に対し上部から撮影を行った場合に確認される現象で,綴じた辺に向け湾曲したひずみが生じる.このひずみを補正する方法は種々存在するが,一つのアルゴリズムでさまざまなひずみを補正する方法は存在しない.本論文では最小2乗法とAICによる次数選択を行い,文書画像のひずみ形状を限定しない補正手法を提案する.結果としてOCR機能による認識実験において,提案手法は93%の認識成功率を示すことを確認した.