著者
山崎 俊彦 アンドリュー ギャラガー ツーハン チェン 相澤 清晴
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.9, pp.1437-1444, 2014-09-01

近年,SNSにアップロードされた大量のジオタグ(位置情報)を用いた処理が盛んに研究されている.旅行推薦はその代表的なものであり,特に都市内旅行推薦の研究が数多く進められてきた.都市内推薦とは,ある都市で旅行しているとき,その時点までの旅行履歴を元に今後の訪問地を推薦するものである.これまで,トピックモデルを用いた推薦や年齢・性別・人種などの属性に応じた推薦などが提案されている.本論文では,季節・時間帯を考慮にいれた都市内旅行推薦方式を提案する.推薦では,ベイズの定理を用いて季節と時間帯による旅行ルートの人気の違いを表現し,マルコフモデルに組み入れることにより高精度な推薦を実現する.ベイズの定理に基づく旅行推薦手法は,これまでも幾つか提案されており,本手法はそれらの手法と組み合わせて用いることが原理的に可能である.提案手法の妥当性は,世界21の都市・公園で撮られた620万枚のジオタグ付き写真を用いた実験により確認した.
著者
野本 済央 小橋川 哲 田本 真詞 政瀧 浩和 吉岡 理 高橋 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.15-24, 2013-01-01
参考文献数
38

対話音声に対し怒りの感情を高精度に推定するための新しい特徴量について提案する.怒りの種類は,怒鳴った怒り(hot-anger)と静かな怒り(cold-anger)の二つに分類される.hot-angerの推定には従来研究により韻律的特徴の有効性が示されてきたが,cold-angerの推定はこれまで困難であった.本論文では,2話者による対話を前提とし,韻律的特徴以外に対話特有の特徴も捉えることでcold-angerの推定も可能とする.一方の話者が怒っており,もう一方の話者が怒られている対話状況に現れる顕現的な特徴を捉えるため,各話者の発話区間の時間的関係性から"対話的特徴"(発話時間,相づち回数,発話権交替時間,発話時同比)を提案する.コールセンタ対話音声に対し分析を行い,提案する対話的特徴がhot-anger,cold-angerによらず怒り対話音声の推定に有効であることを明らかにした.更にSVMを用いた実験により,韻律的特徴と併用することでcold-angerにおいてF値で24.4pt,hot-angerにおいて8.8ptの精度向上を確認し,提案する対話的特徴量の有効性を示した.
著者
徳永 弘子 武川 直樹 木村 敦 湯浅 将英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.3-14, 2013-01-01

複数人が集って共にする食事(共食)は,人のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているが,共食の場の構造を定量的データに基づき分析した研究例は少ない.本研究では,3人が食事をしながら会話をする映像から,参与者の視線,発話の行動を定量的に調査し,共食会話の構造を分析した.特に,視線持続時間と参与の役割ごとの発話行為,会話の順番交替直前の視線先と順番交替の関係を詳細に調べた.その結果,共食会話は食事のない会話に比べ,人に向ける視線持続時間が短く,会話は話者発話-聞き手発話-話者発話の隣接で構造化されること,更に話者発話による会話の順番交替では,会話者同士が視線を合わすことなく発話が遷移するケースが多いことが明らかになった.これにより,共食中は会話への参加の義務が緩く,話し手の発話は場に投げられ,次の発話は誰が開始してもよい場として形成されていることが示唆された.
著者
西川 嘉人 辻 俊明 金子 裕良 阿部 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.1-11, 2009-01-01

GPS等の位置情報取得技術と移動体通信技術の進歩に伴い,車や電車,人といった時々刻々位置の変化する物体(以下,移動オブジェクトと呼ぶ)の位置情報の継続的な入手が容易となってきた.これに伴い移動オブジェクトの運行効率の向上,セキュリティ管理,位置に基づく情報提供などの応用が検討され,移動オブジェクトに適したデータ管理構造の研究が行われている.研究は目的により大きく,(1)最新位置管理,(2)未来位置予測,(3)軌跡管理,の三つに分けられる.本論文では(1)の最新位置管理を扱う.最新位置管理では,一般に1万以上の移動オブジェクトの最新位置を,秒や分単位で更新する必要があり,この頻繁な更新による処理コストがデータ管理構造の大きな問題となる.筆者らはこの解決のためには,(1)領域分割形の多次元データ管理構造が適している,(2)データの削除と挿入が同時に起こるためデータ削除の負荷が小さい構造が必要である,と考えた.本論文ではこれらを備えたバランスM分木kdm-tree (k-d tree for moving objects)を提案する.本文ではkdm-treeのアルゴリズムと特徴を述べ,他の木構造との性能比較実験を行い, kdm-treeが更新性能に優れ,メモリコストや検索性能も同等以上であることを示す.
著者
境 くりま 港 隆史 石井 カルロス寿憲 石黒 浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.3, pp.310-320, 2017-03-01

人間はわずかな感情や態度の変化を細かな動作の変化で表現することにより,対話相手に様々な感情や態度を伝達することができる.更にそれらが場の雰囲気を形成し,対話しやすさの促進などの効果をもたらす.人間に酷似したアンドロイドで人間同様に感情や態度を伝達するためには,感情の連続的な変化に対応するように動作特徴(動作の振幅や速度など)を変化させることができる動作生成手法が必要となる.人間では感情が身体の筋系に影響を及ぼして身体動作を変化させていることを踏まえると,筋系の振る舞いをモデル化した動作生成手法において,筋系のパラメータと感情状態を対応づけることで,上記のような動作生成手法が構築できると考えられる.本論文では,対話において常時現れる発話動作に着目し,著者らがこれまでに提案した音声駆動頭部動作生成システムのパラメータ空間と感情空間の対応関係を実験により明らかにした.このマッピングを用いて,感情の細かな変化を表現するように動作を変調することができる発話動作生成システムを提案する.
著者
吉澤 貴拓 善甫 啓一 中林 紀彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.4, pp.510-519, 2017-04-01

アパレル業界における販売予測は,機会損失や在庫コストを減らすために重要な役割を担っており,今までも多く研究がなされてきたが,実際のアパレル業界の現場においては人の「経験と勘」に従ってオペレーションが行われている.高精度な予測手法であっても現場の人々にとって予測結果をオペレーションへ活用させづらいことがある.そこで本研究では,現場における意思決定をサポートするための予測アルゴリズムの開発を目指しており,その中で本論文では,現場でも着目をされている売上の周期性に着目し,フーリエ変換を用いた販売予測アルゴリズム提案と精度検証を行った.結果として,提案したアルゴリズムがSARIMAモデルと比較して良い予測が可能であることを確認し,周波数成分を特徴量として用いた予測アルゴリズムの有用性を示した.
著者
福田 直樹 伊藤 孝行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.2324-2335, 2007-09-01
被引用文献数
5

本論文では,10,000〜100,000を超えるような多数の入札がある組合せオークションに対して,勝者決定の近似解法を提案し,その特性を評価する.提案アルゴリズムでは,従来手法のLehmannアルゴリズムにおける入札ソート順位の決定因子に着目し,更に山登り法及びシミュレーテッドアニーリング(SA)による解の洗練を行うことで,安定して高い最適性を持った解を得る.入札数が1000程度の場合に,本提案手法では最適解に対して平均して0.997程度の総落札額が得られる解を見つけられることを示す.更に,従来の最適解探索手法と比較して十分に高速に動作し,10,000を超える入札数をもつオークションに対して数秒(入札数10,000)から数分程度(入札数100,000)の実用的な時間で計算が行えることを示す.本近似解法の限界点の一つとして,本近似解法を用いた組合せオークションが一般には真実申告最良とはならないことを,Monotonicityという条件が成り立たないことから示す.一方で,真実申告最良とはならないものの,本近似解法の一部では,解探索の過程におけるランダム性を排除し順序性を保存することで,近似解に対して特定の好ましい性質を満たすことを示す.
著者
東田 正信 奥 雅博 村上 仁一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2249-2261, 2013-10-01

PB(プッシュボタン)電話機から利用者が検索条件を入力して電話番号を検索できる自動電話番号案内システムを開発した.検索キーワード入力には,情報機器に不慣れな利用者でも,簡単に操作方法を学習でき,短時間で入力できる文字情報縮退入力方式を採用した.本方式では,ひらがな5文字を一つの数字キーに縮退させて割り付けたPB電話機の数字キーを使い,検索キーワードをその「よみがな」に従って逐次数字キーを押下することで入力する.同様の文字割付に従い数字列化された情報を付加した電話帳DBを数字列化されたキーワードで検索する.本論文では,文字情報の縮退度情報を用いて利用者からの入力回数を最少化するための入力情報数最少化技術,採用した入力方式に起因する曖昧性を複数の曖昧さを含む情報の相互接続可能性を用いて解消する相乗的曖昧性解消技術などの知的対話誘導技術,及びこれらの技術を実装した自動電話番号案内システムの構築と評価について述べる.このシステムは「あんないジョーズ」という名称で公衆サービスとして提供された.1998年から2007年までのサービス期間中に,約1300万呼に対して検索処理を実行し,正しく電話番号を案内できた呼は約1000万呼であった.表示機能がないことによる入力内容のミスやキータッチのミスなどに起因して,番号が案内できなかった呼を除いて,「あんないジョーズ」が利用者に対してオペレータと同等の応対を提供できた呼の数は呼全体の約85%であった.
著者
北森 詩織 酒井 浩之 坂地 泰紀
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.2, pp.150-161, 2017-02-01

本論文では,企業の決算短信PDFから,今後の業績に関する記述がある文を抽出する手法を提案する.近年,証券市場における個人投資家の比重が増大しており,個人投資家に対して投資判断の支援をおこなう技術の必要性が高まっている.そのため,人工知能分野の手法や技術を,金融市場における様々な場面に応用することが期待されており,例えば,膨大な金融情報を分析して投資判断の支援を行う技術が注目されている.ここで,投資の際,投資家にとって重要なのは,企業の今後の業績予測を知ることである.なぜなら,現在の業績が赤字であったとしても,今後の業績が回復することが企業側から示されれば,株価は上昇する場合がある.そこで,本研究では,企業の決算短信PDFから,業績予測文(企業の今後の業績予測を示す文)を抽出する手法を提案する.本手法では,業績予測文の文頭と文末に特徴的に出現する表現を用いることで,業績予測文を抽出する.加えて,これらの特徴的な表現を,半自動的に収集することが可能な手法となっており,業績予測文を幅広く網羅できる.
著者
角野 皓平 向川 康博 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.1930-1937, 2007-08-01
被引用文献数
4

物体表面の反射特性を表す双方向反射率分布関数を密に計測するためには,様々な角度から照明した場合の反射光を様々な角度から計測する必要があるため,膨大な時間が必要であった.本研究では,楕円鏡とプロジェクタを組み合わせることで,高速に反射率を計測する手法を提案する.楕円鏡の一方の焦点に試料を配置し,もう一方の焦点にカメラとプロジェクタをハーフミラーを用いて配置する.これにより,投影画像を変えるだけで光源方向を自由に制御できる.また,試料のあらゆる角度への反射光は,カメラで一度に計測できるため,高速な反射率計測が可能となる.実際に計測装置を試作し,異方性反射特性をもつベルベットとサテンの反射率を計測したところ,光源のサンプリング間隔をそれぞれ1度とした場合でも,約50分で計測できた.
著者
藤田 和之 高嶋 和毅 伊藤 雄一 大崎 博之 小野 直亮 香川 景一郎 津川 翔 中島 康祐 林 勇介 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.120-132, 2013-01-01
被引用文献数
1

我々は多人数でのコミュニケーションを支援するための情報環境Ambient Suiteを提案し,検討を進めている.Ambient Suiteは部屋全体が入出力機能をもったシステムであり,様々なセンサにより会話の状態を推定し,また,この状態に応じて,床や壁に配置されたディスプレイ群を連携させて様々な情報を表示することで会話の活性化を目指す.本研究では,Ambient Suiteを立食パーティの場面に適用したAmbient Party Roomを実装し,これを用いた初対面の男女6人による会話実験を行った.この結果,本システムが会話の状況を十分に推定可能な性能を有し,情報提示により会話を活性化させられることが分かった.
著者
橋本 健二 石原 靖哲 藤原 融
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.990-1004, 2007-04-01
被引用文献数
5

スキーマ進化においては,もとのスキーマに従う文書の情報を,新たなスキーマに従う文書により表現できることが重要である.また,スキーマ進化後には,もとのスキーマに従う文書を新しいスキーマに従うように変換する作業が必要となり,そのためにスキーマがどのように変更されたかに関する情報が必要である.そこで,本論文では,まず"スキーマ表現能力保存"についての一つの定式化を与える.具体的には,XML文書に新たな要素を追加して得られる文書はもとの文書の情報を保存すると定義する.そして,スキーマG_1の表現能力をG_2が保存するということを,G_1に従う各文書に対して,上の意味で情報を保存するような,G_2に従う文書が存在することと定義する.次にスキーマがどのように変更されたかを表す道具立てとして,更新能力が異なる2種類のスキーマ更新操作群A,Bを提案する.これらの操作群は表現能力保存に関する健全性と完全性を満たしていることが望まれる.そのため,本論文では,表現能力保存に関する各更新操作群の健全性と完全性について検討する.また,表現能力保存の定義に高さ制約という制約を与えた場合についても同様の検討を行う.
著者
矢野 友加里 川原崎 雅敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.265-281, 2010-03-01

本研究では,日本音楽著作権協会(JASRAC)等を訪問し,音楽利用に関する著作権使用料徴収・分配の現状について調査を行った.その結果,インタラクティブ配信の領域において,楽曲利用の報告が不十分なために著作権使用料の徴収・分配精度が低く,決定的な対策がとられていないことが分かった.本論文では,インタラクティブ配信の中で違法な楽曲流通が多いP2P(Peer-to-Peer)ネットワークによるユーザ間の音楽共有に対して,現在行われている不正流通の監視ではなく,著作権処理を行わせた上で,合法的にP2Pネットワークで楽曲を流通させる方式を提案する.提案方式では,P2Pネットワークでの楽曲流通を管理するために,著作権管理サーバと呼ぶサーバを置く.また,ユーザが流通させる楽曲の特定に,放送番組の利用楽曲特定に実用化されつつあるオーディオフィンガープリント(AFP)を利用する.各種のP2Pネットワークで流通する楽曲について,AFP技術を用いた著作権処理の所要機能を明らかにし,諸機能をユーザPCとサーバの連携によって実現する著作権処理プラットホームの提案と評価を行う.更に,AFPによる楽曲特定をリアルタイムで行うためのAFP照合システムについて,各種サーバ分散処理方式の性能解析を行い,AFP照合に伴うユーザ待ち時間を合理的な範囲内に抑える分散形態を明らかにする.
著者
尾崎 晃 草川 高志 西脇 由博 マルタ ルーカス 宮島 千代美 西野 隆典 北岡 教英 伊藤 克亘 武田 一哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.2118-2128, 2010-10-01
被引用文献数
3

人間の行動を真に理解するためには,行動を記録すると同時に心的状態を知る術も同時に記録する必要がある.更にこのようなデータが大量に必要となる.そのような研究のための第一歩として,自動車実走行環境における自動車挙動を含む運転操作信号,生体信号などのデータを同期測定・記録する機器を作成した.様々な運転環境の負荷を調査するため,平静の運転をはじめ,標識や看板などを見る,イヤホンを通じて英数字を聞いて発音する,携帯電話でナビゲータと会話をする,そしてコンピュータと音声対話を行う4種類のタスクを自動車走行中に実施している.運転行動を測定するため,アクセルペダル踏力,ブレーキペダル踏力,ステアリング操作角,走行位置,車速,加速度,車間距離を収録する.また生体信号を測定するため,心拍数,皮膚電位,発汗量のセンサを搭載している.運転手と交通状況は,四つのビデオカメラと全方位カメラによって動画として記録する.運転手とナビゲータの声は,携帯電話と車内に配置されたマイクロホンで計12チャネル録音する.これらのマルチモーダルデータは同期して収録できる,2008年末までに,357名の被験者を募集して実験走行を行った.走行環境,運転行動,発話内容などに応じて詳細なラベルを定義し,実験後に運転データへ手作業で付与した.更に,このデータベースを用いた研究例を挙げ,データベース活用による今後の人間行動理解の可能性を示した.
著者
猪村 元 田中 譲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.2022-2032, 2009-11-01
被引用文献数
1

近年,電子図書館やディジタルアーカイブと呼ばれる電子的な文書管理において歴史的文書をはじめとした手書き文書の電子化が重要視されている.これらの文書に対して,文字列検索の手法を提供することは,文書の活用という観点から意義が大きい.本論文では,毛筆の手書き文書画像を対象に,文字の図形としての形状特徴をもとに生成した,擬似的な文字コードを文書の内部表現として用いることで高速な全文検索を実現する手法について述べる.この手法は統計的な画像特徴量による画像検索の手法を応用したものであるため,特定のフォントや言語に依存せずに統一的な手法で適用可能である.提案手法ではまず,文書画像を文字領域を含んだ等しい大きさの方形領域に分割し,各領域から文字の形状特徴量を抽出する.更に,この特徴量に基づいた擬似コードを各領域に付加することによって通常のテキスト文書と同等の文字列検索を画像上で実現する.また,実際に手書きの草書体古文書を対象にした文字列の検索評価実験を行い,3-gramの場合に再現率0.8において適合率0.53の結果を得た.また,文書画像検索に適した形状特徴量,擬似コード生成手法の評価と考察も行った.
著者
中野 聡子 牧原 功 金澤 貴之 中野 泰志 新井 哲也 黒木 速人 井野 秀一 伊福部 達
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.3, pp.808-814, 2007-03-01

我々は,音声認識技術を用いた「音声同時字幕システム」の運用を行う中で,聴覚障害者が感じている字幕の読みにくさは,漢字等の誤認識だけではなく,言い誤りや会話的な表現など話し言葉固有の性質にも原因があるのではないかと考えるに至った.そこで本研究では,話し言葉固有の性質による読みにくさを含む字幕を読んでいるときの眼球運動を測定し,読返しの多さを定量的に調べると同時に,どのような表現部分の文章認知が困難であったかについて,被験者への聞き取りデータと合わせて実証的に明らかにすることを試みた.
著者
山内 悠嗣 山下 隆義 藤吉 弘亘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1125-1134, 2009-08-01
被引用文献数
5 12

本論文では,Boostingに基づく特徴量の共起表現による人検出法を提案する.既に,特徴量間の共起を表現する手法としてAdaBoostにより2値に識別した符号を複数組み合わせる手法が提案され,顔検出においてその有効性が確認されている.しかし,入力特徴がオクルージョンなどの影響によって,どちらのクラスとも言いがたい場合にも2値に識別して共起を表現するため,間違えた符号を組み合わせる問題がある.そこで,弱識別器の出力が連続値であるReal AdaBoostを用いて,出力を演算子によって結合した共起表現による人検出法を提案する.提案手法は,オクルージョンなどの影響を抑制することができるため,高精度な検出が期待できる.評価実験により,従来法と比較して誤検出率5.0%において検出率を約6.8%向上させることができた.
著者
高橋 朝英 田口 元貴 小林 良太郎 加藤 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.2058-2068, 2011-12-01

現在,ウェブサービスは広く一般に利用され,日常生活を行う上で欠かせないものとなっている.それに伴い,ウェブサービスが停止した際の社会的影響も大きくなっている.一方,攻撃対象のシステムのサービス提供を不能にするサービス妨害(DoS)攻撃が存在し,問題となっている.手動によるDoS攻撃では,サーバ側で攻撃と思われる通信を単純にブロックしていることが攻撃者に気づかれると,攻撃者は攻撃を別の手段に切り換えて対策を回避し攻撃を行ってくる場合がある.本研究ではこの点に着目し,DoS攻撃の一種であるHTTP-GET Flood攻撃に焦点を当て,この攻撃に対して一般利用者の通信をできるだけ生かしつつ,対策を行っていることが攻撃者に気づかれにくくなるようウェブサービス提供側で可能な対策の提案を行う.本対策手法では,仮想マシンを複数台使用することで資源の分離を行い,攻撃者と通常利用者の使用する資源を分ける.また,攻撃者が利用する資源の操作を行うことで,攻撃が成功しつつあるかのように見せる.更に,提案手法の実装を行い,実験を行うことで本提案手法の有効性を確認する.
著者
望月 貴裕 藤井 真人 篠田 浩一 酒井 善則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.1009-1023, 2010-06-01
被引用文献数
2

スポーツ映像から特定シーンを効率良く検索する技術の実現が強く望まれている.我々は,シンボル列化したシーンの離散HMMを用いた学習による,野球映像の各シーンのプレイ種識別手法を提案した.しかし,出塁及びアウトカウント増加の起こる7種の「打席完了」プレイ種のみを識別対象としていたため,打席の完了しないプレイ種(投球のみ,ファウル,牽制及び盗塁)を識別対象に加えた場合,十分な識別精度が得られなかった.そこで本論文では,我々の従来手法に対し,新しく2種の「プレイ種相関度」を識別尺度として加えた野球映像のプレイ種識別手法を提案する.プレイ種相関度の一つは,シンボル列を構成するシンボルの中の「代表シンボル」の出現頻度に関するものであり,シンボル列全体ではなく個々のシンボルに注視した特定プレイ種との相関の強さを表す.もう一つは,投球ショット間隔に関するものであり,投球ショット間隔の長さのプレイ種との相関の強さを表す.学習用シーンのシンボル列を学習したHMMによるプレイ種ごとの出力ゆう度と,2種のプレイ種相関度を重み指数を付加して掛け合わせて各プレイ種の総合的なゆう度を算出し,識別を行う.そして本論文では,MLB放送映像を用いた実験により,打席完了プレイ種だけでなく,打席の完了しないプレイ種を含めた11のプレイ種を従来手法よりも高い精度で識別可能であることを示す.
著者
宮本 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.2281-2291, 2010-10-01
被引用文献数
1

ディジタルカメラによって撮影された点字を認識し,普通の文字(墨字)で表示するためのプロトタイプシステムを提案し,それを評価する.今までに実用化された点字認識システムは,スキャナを使ったものに限られており,駅などに設置されている大量の手すり点字プレートを,スキャナでは読み込めないため,この確認作業はすべて人手に頼っている.提案システムはこの確認作業を補助することを目的としている.カメラの収差を「点字文字ピッチの局所的な伸縮」としてとらえ,動的計画法によるマッチングを行うことによって点字の正確な位置を推定している.実験を行った結果,点字1文字単位での認識率99.37%を得た.