著者
近藤 恵 兒嶋 朋貴 大川 智章 入部 百合絵
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.3, pp.208-216, 2022-03-01

近年,農業従事者数の減少により少人数で多頭数の家畜を管理するためのモニタリング技術が求められている.本研究では非接触に収集可能な牛の鳴き声を用いたモニタリング技術の構築を目的に,本論文ではモニタリング技術に必要な鳴き声からの個体識別手法について提案する.鳴き声を用いた個体識別の先行研究では,識別率が十分でないことや月齢による鳴き声の音響特性の違いを考慮していない点が課題として挙げられる.本研究では,月齢の異なる雌のホルスタイン種成牛5頭,育成牛9頭と子牛4頭の計18頭から鳴き声を採取し,声帯波長や声道長に関連のある基本周波数やパワー,線形予測残差波形のMFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)などの音響的特徴量を抽出した.これらの特徴量を利用して,SVM(Support Vector Machine)による個体識別を行った結果,先行研究よりも識別率が35%以上向上した.これにより,牛も人と同様に声帯波長や声道長に個体性が含まれていることが明らかとなった.加えて,話者認識に用いられる相対位相を上記の音響的特徴量に加えることで個体識別の向上が確認された.
著者
石井 カルロス寿憲 榊原 健一 石黒 浩 萩田 紀博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.2679-2687, 2006-12-01
参考文献数
20

Vocal fry(フライ)は,声帯振動の様式に起因する声質の一種であり,気分的にテンションが低くリラックスしている場合や,強い感情や態度の表現の際に喉頭を力んだ場合に生じ,バラ言語や非言語情報を伝達する役割をもっている.本論文は,音声信号からフライ区間を自動的に検出することを目的としている.フライは通常発声よりも低い基本周波数の範囲で生じやすい.ゆえに,典型的な固定フレーム長の短時間処理が問題となるが,その解決策として,本論文では声帯パルスに同期した手法を提案した.具体的には,フライの声帯パルスのインパルス的な特性とダンピング特性を考慮し,超短時間処理で求めたパワー軌道から声帯パルスの候補となるパワーピークを検出する.検出されたパワーピークにおいて,周期性とパルス間類似度を用いて,フライであるか,それともインパルス的な雑音であるかを判定する.評価実験として,パワーピーク検出・周期性・パルス間類似度に関連するしきい値パラメータを様々な条件で分析した.その結果,73%の高い検出率と4%の低い挿入誤り率により,自動的にフライ区間が検出可能であることが示された.
著者
青見 樹 堤 瑛美子 宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J104-D, no.11, pp.784-795, 2021-11-01

小論文自動採点は,人間評価者に代わって自動採点モデルが小論文の採点を行う自然言語処理におけるタスクの一つである.近年では多くの自動採点モデルが提案されており,それぞれに異なった特徴を有している.本研究では,評価者特性を考慮した項目反応理論を用いて自動採点モデルのモデル平均を行う新たな手法を提案する.具体的には自動採点モデルを一人の評価者とみなして評価者特性を考慮した項目反応モデルを適用することで,それぞれの自動採点モデルの特徴を考慮した統合を行う.実験を通して,提案手法が単体の自動採点モデルや,単純な予測スコアの平均化手法と比べて予測精度を向上させることを示す.更に,提案手法が統合した自動採点モデルの特徴を捉え,安定したスコアの予測を行うことができることを示す.
著者
岡野 将士 宇都 雅輝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J104-D, no.8, pp.650-662, 2021-08-01

近年,大規模な記述・論述式試験のニーズの高まりに伴い自動採点に注目が集まっている.自動採点手法として深層学習に基づくモデルが近年多数提案され,高精度を達成している.深層学習自動採点モデルを利用するためには,大量の採点済み答案データを用いてモデルの学習を行う必要がある.大量の答案の採点作業は一般に多数の評価者で分担して行われるが,そのような場合,個々の答案に与えられる得点が評価者の特性に強く依存してしまう問題が知られている.このような評価者バイアスの影響を受けたデータから自動採点モデルを学習すると,評価者バイアスの影響がモデルにも反映されてしまい,予測性能が著しく低下する.他方で,教育・心理測定の分野において,評価者バイアスの影響を考慮して得点を推定できる項目反応モデルが近年多数提案されている.そこで本研究では,この項目反応モデルを組み込んだ,評価者バイアスに頑健な深層学習自動採点手法を提案する.提案手法は,これまで等閑視されてきた学習データ中の評価者バイアスの問題に着目した初めての手法である.また,特定の自動採点モデルに依存する手法ではなく,様々な自動採点モデルにおいて評価者バイアスに頑健なモデル学習と得点予測が期待できる.
著者
三宅 悠介 峯 恒憲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.11, pp.764-775, 2020-11-01

ECサイトには商品種類増大に伴う情報過多問題を解決するため,商品の自動提案機能が導入されている.この機能に用いられる推薦手法は数多く提案されていることから,ECサイトの運営者にとっては効果的な推薦手法を選択することが重要となる.推薦手法の有効性は様々な文脈に左右されるため,実環境での継続的な評価なしに最適な推薦手法を選択することは困難である.本研究では,推薦手法の選択を自動的かつ継続的に最適化する推薦システムを提案する.提案システムでは,最善な推薦手法の選択を多腕バンディット問題とみなして解く.また,時間の経過並びに商品特性の差異を文脈として考慮することで推薦手法の選択を最適化する.提案システムの有効性を評価するために,ECサイトから収集した実際のデータを使用して実験を行った.評価実験の結果,ECサイトにおいて時間の経過並びに商品特性の差異により有効な推薦手法が異なること,そのため時間による推薦手法の有効性の変化並びに閲覧中の商品カテゴリーを文脈とみなした最適化手法が,文脈を考慮しない場合と比較して累積クリック数を約2%増加させる効果があることを確認した.
著者
熊本 忠彦 河合 由起子 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.540-548, 2011-03-01
被引用文献数
6

筆者らは,コンテンツを見たり聞いたりしたときに人々が感じる印象をコンテンツそのものから抽出する手法の研究開発を行っている.本論文では,新聞記事を例として取り上げ,記事を読んだ人々が感じる印象を記事そのものから抽出するテキスト印象マイニング手法を提案する.具体的には,新聞記事データベースを解析し,記事に現れる各単語が記事の印象に及ぼす影響を数値化した印象辞書を構築するとともに,この印象辞書を用いて記事の印象値を算出する手法(算出法)を開発する.更に,この算出法が記事から算出する印象値と人々がその記事を読んだときに感じる印象値との対応関係を回帰分析により調べ,その結果得られる回帰式を用いて算出した印象値を補正するという方法で高精度なテキスト印象マイニングを実現する.ただし,提案手法により抽出される印象は,「楽しい⇔悲しい」,「うれしい⇔怒り」,「のどか⇔緊迫」の3種類であり,それぞれの印象に対し7段階の評価尺度(印象尺度)を設定している.提案手法の有効性を検証するために行った被験者実験では,それぞれの印象尺度における平均誤差が0.69, 0.49, 0.64となり,特に「うれしい⇔怒り」に対しては高い精度を得ている.
著者
上瀧 剛 井尻 善久
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.8, pp.1126-1141, 2015-08-01

物体検出は,画像処理の基礎技術の一つである.物体検出の性能は処理時間と検出率・位置精度で記述することができる.処理時間と検出率を追求した物体検出に関する文献は非常に多い.一方,位置精度を追求した文献も増えつつあるが,実応用上の重要性に比べ,学術界における注目度は低いように思われる.本解説論文においては,実応用上の重要性を述べるとともに,既存研究を総括し,幾つかの手法に対するベンチマーク評価を行った後に,今後の展望についても触れる.
著者
小川 樹 森勢 将雅
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.205-214, 2020-04-01

音声合成や声質変換に関する技術は幅広く提案され,既にいくつもの製品が多岐にわたって利用されるようになった.声質変換技術の普及により,音声の加工も誰でも手軽に行えるようになった.音声の加工には,音の3要素と呼ばれる「大きさ」,「高さ」,「音色」をそれぞれ加工する方法が広く用いられている.大きさや高さは,音圧レベルや基本周波数を加工するため,加工の結果の予測が容易である.しかし,音色の加工は,加工に伴う劣化の予測が困難という問題点がある.本研究では,音声の音色加工に伴う劣化を計測する知覚モデルによりこの問題の解決を図る.様々なスペクトル尺度と距離関数の組み合わせと音質の関係を調査し,その結果を用いて知覚モデルを開発した.主観評価実験を実施し,従来法と開発した知覚モデルの間に,主観評価結果との相関係数の有意差があるかの検定を行った.検定の結果,p<0.001で有意な差があり,従来法より開発した知覚モデルが優れていることを示した.
著者
松永 悟行 大谷 大和 平原 達也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.10, pp.721-729, 2019-10-01

Deep Neural Network(DNN)を用いた音声合成の基本的な構成は,文章を構成する情報を数値で表現した言語特徴量を入力して音声を合成するための特徴量を出力するものである.これらの入出力特徴量は,DNNに適するように学習データを用いて正規化や標準化することが多い.しかし,自由文章から音声を合成する場合には,この正規化の範囲や標準化の分布から外れる値が言語特徴量に含まれる可能性がある.そして,この外れ値はDNNの外挿能力が十分でないために適切に補間されないまま伝搬して出力特徴量に誤差を生じさせる.本論文では,言語特徴量の外れ値の問題を解決するために,一発話内の閉じた条件における正規化手法を提案し,日本語の音声合成で重要な要素の一つである基本周波数について,予測誤差と合成音声の聴取による評価を行った.その結果,提案した正規化手法では,従来の正規化手法で発生していた外れ値は発生しないこと,正規化した値が基本周波数に適したものになったことにより少量の学習データでも予測誤差は従来よりも小さくなり,安定した予測が可能になることがわかった.
著者
羽山 徹彩 難波 英嗣 國藤 進
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.9, pp.1483-1494, 2009-09-01

近年の電子化プレゼンテーションの普及により,講義や会議などの多くの場面で電子的なプレゼンテーション資料(スライド)が利用され,蓄積されてきた.蓄積されたスライドデータは知識資源として膨大となりつつあるため,その高い利活用性が求められている.その有用な方法のひとつとして,レイアウトや視覚的効果など人間の理解を促すための有意な構造情報を利用することが挙げられる.しかしながら,そのような構造情報は,スライドデータの中で明確に定義されていないため,計算機で直接的に扱うことが困難である.そこで,本研究ではスライドに含まれる情報からその構造を抽出する手法を提案する.提案手法は,まずスライド上のオブジェクトを“タイトル”,“図”,“表”,“本文”,“装飾”といった機能的な属性の纏まりに組織化し,それら纏まりをトップダウン的に木構造へ組み上げる構造化を行う.評価実験では人手で作成した正解データをもとに,標準的な手法と比較することで,提案手法の有効性を確認した.
著者
品川 政太朗 吉野 幸一郎 サクティ サクリアニ 鈴木 優 中村 哲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.8, pp.514-529, 2019-08-01

自然言語から思い通りの画像を生成するシステムは,コンピュータによるデザイン作成支援に有用であると期待されている.本研究では,自然言語によってインタラクティブな画像編集を行うことを指向して,自然言語の指示によって直前にシステムからユーザへ共有された生成画像を操作することで,より意図に沿った画像を新たに生成するフレームワークを提案する.具体的には,修正元となる画像データをConvolutional neural networks (CNNs)によって埋め込んだベクトルと,画像に対する自然言語の修正指示文をLong short-term memory neural networks (LSTM)によって埋め込んだベクトルを入力とし,敵対的学習によって指示通りに修正された画像の生成を行う枠組みを提案した.実験では,手書き数字操作データセットを用いた単純なタスクにより,提案モデルが学習した画像編集タスクにおける振る舞いについて分析した.また,実際に人手で付与した指示文によってアバター画像を修正し,意図に沿った編集を行うことができることを確認した.
著者
菊地 真人 川上 賢十 吉田 光男 梅村 恭司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.4, pp.289-301, 2019-04-01

データを確率的に取り扱う問題において,統計的尺度の推定は手法の構成やデータ分析の基盤的役割を担う.本論文では統計的尺度の一つであるゆう度比を,離散的な標本空間から得た観測頻度をもとに推定する問題を扱う.素朴な推定方法は,ゆう度比の定義に従い,ゆう度比を構成する二つの確率分布を最ゆう推定して,その比を取ることである.しかし,低頻度からゆう度比を求めるとき,この方法は推定量を不当に高く見積もってしまう場合がある.そこで,ゆう度比の直接推定法uLSIFを応用し,ゆう度比を低めに(保守的に)推定する方法を提案する.提案手法は,最ゆう推定によって求めたゆう度比を正則化パラメータによって調整する枠組みである.実験では提案手法の振る舞いを明らかにし,その有効性を示した.更に,自然言語処理におけるブートストラップ法を利用した実験も行い,提案手法の実用性も示した.
著者
熊谷 匠純 菊地 拓翔 澤 信吾 加藤 菜美絵 関 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.10, pp.1438-1442, 2018-10-01

情報システムのユーザ認証に用いるパスワード等を学生間で共有する事例が散見される.大学生にはISMSによる内部統制が効きにくいことが原因と考えられる.本論文では,質問紙調査により,友人関係が情報セキュリティ行動に与える影響を調査する.
著者
水科 晴樹 阪本 清美 金子 寛彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.10, pp.1640-1651, 2011-10-01

機器使用時のユーザの心理的ストレスを客観的に評価するために,心拍や皮膚導電率等の生体信号を用いる手法が提案されている.しかしそれらの手法には電極の装着等の煩わしさが伴うため,それ自体がストレスの原因となる可能性もある.その点において,眼球運動は非接触で計測可能であるため,ストレスの優れた指標になり得ると考えられる.本論文はそのための基礎的な知見を得ることを目的とし,多様な課題の遂行時における眼球運動を計測した.また,そのときの心理状態の主観評価も併せて行い,眼球運動の特性との対応を検討した.その結果,課題によって時間的な切迫感を与えた場合に,振幅の小さいサッカード眼球運動の分布における振幅の平均値と主観的な「焦り感」との間に正の相関が見られた.このことから,サッカード眼球運動の動特性が心理的ストレスの指標として利用できる可能性が示された.一方,課題の遂行に関連すると考えられる振幅の大きなサッカードの分布においては,眼球運動の動特性と心理状態との間に相関は見られなかった.このことから,心理状態は課題の遂行に関連しない振幅の小さい眼球運動により強く反映されると考えられる.
著者
内田 雄基 大橋 一輝 高橋 桂太 藤井 俊彰
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.9, pp.823-835, 2016-09-01

本論文では,代表的なlight field cameraの一つであるLytro Illumを対象とし,カメラの物理的な画素配列を考慮した超解像手法を提案する.Lytro Illumでは,イメージセンサの手前に挿入されたマイクロレンズアレーの働きにより,多視点画像の同等のデータ(light fieldデータ)がイメージセンサ上に多重化されるため,一度の撮影で三次元情報を取得できる.取得データ(RAW画像)に逆多重化を施すことで,多視点画像(sub-aperture image)を取り出せるが,個々の画像の解像度は限られる.そこで,多視点画像を相互に位置合わせして超解像を行い,解像度を向上させる方法が考えられる.しかしながら,従来の手法では,Lytro Illumのようなカメラに特有のRAW画像の画素配列の扱い方に問題がある.RAW画像では,各画素はRGBのうち一つの色情報をもち,かつ,マイクロレンズが六角格子状に並んでいる.従来の手法では,デモザイキングにより色情報を復元し,レンズ配列が正方格子状になるように画素をリサンプリングする.これらの過程には重みづけ和のような演算を伴うデータの補間が含まれるため,RAW画像のもつオリジナルの情報が損なわれ,超解像の効果を妨げると考えられる.それに対して我々は,演算を伴う補間処理を行わず,RAW画像の画素配列を維持したsub-aperture imageを用いて超解像を行う手法を提案する.また,幾つかの実写画像を用いた実験により,提案手法の有効性を示す.
著者
宇都 雅輝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.6, pp.895-908, 2018-06-01

近年,受験者の実践的かつ高次の能力を測定する手法の一つとしてパフォーマンス評価が注目されている.一方で,パフォーマンス評価の問題として,能力測定の精度が評価者とパフォーマンス課題の特性に強く依存する点が指摘されてきた.この問題を解決する手法として,近年,評価者と課題の特性を表すパラメータを付与した項目反応モデルが多数提案され,その有効性が示されている.他方,現実の評価場面では,複数回の異なるパフォーマンステストの結果を比較するニーズがしばしば生じる.このような場合に項目反応モデルを適用するためには,個々のテスト結果から推定されるモデルパラメータを同一尺度上に位置付ける「等化」が必要となる.一般に,パフォーマンステストの等化を行うためには,テスト間で課題と評価者の一部が共通するように個々のテストを設計する必要がある.このとき,等化の精度は,共通課題や共通評価者の数,各テストにおける受験者の能力特性分布,受験者数・評価者数・課題数などの様々な条件に依存すると考えられる.しかし,これまで,これらの要因が等化精度に与える影響は明らかにされておらず,テストをどのように設計すれば高精度な等化が可能となるかは示されてこなかった.そこで本研究では,項目反応モデルをパフォーマンス評価に適用して等化を行う場合に,その精度に影響を与える要因を実験により明らかにし,その結果に基づき,高い等化精度を達成するために必要なテストのデザインについて基準を示す.
著者
横山 拓 鈴木 宏昭
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.2, pp.294-305, 2018-02-01

本論文は,不確実性が高く,事前のプランが立てにくい環境に置かれたマネジャーが,断片的で無計画に見える日常活動を送りながらも,周囲の職場環境が提供する様々な認知資源をたよりに組織運営にあたっていることを示す.具体的には,非定型的な業務に従事する2人のマネジャーに対して各3日間の観察調査を行い,時間配分,計画やコミュニケーションの特徴を分析した.その結果,マネジャーの日常活動が断片化していること,マネジャー自身と周囲の環境とに計画が分散されていること,周囲との偶発的かつ頻繁なコミュニケーションによって仕事が調整されていることが確認された.この結果を分散認知,拡張された心の観点から検討した.
著者
町澤 朗彦 青木 哲郎 岩間 司 鳥山 裕史 今村 國康 土屋 茂 金子 明弘 前野 英生 高橋 幸雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2308-2318, 2013-10-01

時刻情報は重要な社会基盤となっている.そこで,日本標準時システムに直結した信頼性の高い時刻配信システムを開発し,NTPサーバntp. nict. jpとしてインターネットを介して公開したので報告する.本システムは,インターネットにおける標準的な時刻同期プロトコルであるNTPを利用しているが,安定して時刻を配信するために,耐障害性,過負荷対策,将来にわたるサービスの維持,セキュリティ対策,Stratum 1の提供,GPS非依存などの特徴を有している.また,実運用から得られた利用統計情報を解析した.2012年末現在,1日当りのリクエスト数は約1億7千万,クライアントは約1500万IPアドレスであり,世界230の国と地域に広がっている.更に,ピーク時には1秒間に約13万リクエストの利用があることが明らかになった.一方,1日のポーリング頻度が1回以下のクライアントが約8割であること,並びに,1台の時刻サーバしか参照していないクライアントが約9割であることなど,クライアントの時刻維持が不十分であることが推測される.更に,クライアントのネットワーク距離分布から,インターネットの直径が従来の推定値よりも大きいことを示した.
著者
河津 宏美 長島 大介 大野 澄雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1811-1819, 2006-08-01
参考文献数
20
被引用文献数
1

複数の種類及び程度の感情情報を含む音声を対象として,感情が表現された発話の感情の程度と音声の基本周波数パターンとの関係を,その生成過程モデルに基づいて分析した.その結果をもとに,感情制御規則の導出を行った.基底周波数は感情によらず,感情の程度が大きくなるに従って,増加傾向で変化した.フレーズ指令の大きさは,感情によって異なる傾向が見られ,喜びでは,感情の程度の影響を受けずほぼ一定,悲しみでは,感情の程度が大きくなるに従って,減少の変化傾向があった.また,アクセント指令の大きさは感情や文中に現れる位置によって異なる傾向が見られることが分かった.ここで導出した規則を適用した合成音声を作成し,聴取実験により感情の伝達性を評価した.