著者
金井 遵 須崎 有康 八木 豊志樹 並木 美太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.1383-1393, 2007-06-01
被引用文献数
4

本論文では,モバイル環境をはじめとしたCPUやメモリなどのハードウェア資源が制限された環境でHTTP-FUSE-KNOPPIXによる実用的なシンクライアント環境を実現するために,高速化・負荷分散機構,耐故障性機構を実装したモバイルシンクライアントサーバHTTP-FUSE-KNOPPIX-BOXを開発した.キャッシュサーバはネットワークの遅延やバンド幅を隠ぺいし,高速化するとともに,ブロックファイルを取得する一次サーバがWAN側にあり,インターネット接続がない環境でもOSを起動可能にする。また,ソフトウェアRAIDを導入し,ファイル入出力性能自体を向上させるとともに,RAIDの冗長性により耐故障性を向上させた.更に,DNSであるDNS-Balanceを改良し,サーバの負荷分散を行うとともに,サーバの障害を自動的に検知し,動的にクライアントの接続サーバを切り換えることで耐故障性を確保した.評価により,CPUやメモリなどのハードウェア制限があるサーバ環境においても,従来のシンクライアントと遜色ない性能を実現でき,障害発生時にもユーザが意識することなくシステムの正常動作が継続できることを確認した.
著者
野本 済央 小橋川 哲 田本 真詞 政瀧 浩和 吉岡 理 高橋 敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.15-24, 2013-01-01

対話音声に対し怒りの感情を高精度に推定するための新しい特徴量について提案する.怒りの種類は,怒鳴った怒り(hot-anger)と静かな怒り(cold-anger)の二つに分類される.hot-angerの推定には従来研究により韻律的特徴の有効性が示されてきたが,cold-angerの推定はこれまで困難であった.本論文では,2話者による対話を前提とし,韻律的特徴以外に対話特有の特徴も捉えることでcold-angerの推定も可能とする.一方の話者が怒っており,もう一方の話者が怒られている対話状況に現れる顕現的な特徴を捉えるため,各話者の発話区間の時間的関係性から“対話的特徴”(発話時間,相づち回数,発話権交替時間,発話時間比)を提案する.コールセンタ対話音声に対し分析を行い,提案する対話的特徴がhot-anger,cold-angerによらず怒り対話音声の推定に有効であることを明らかにした.更にSVMを用いた実験により,韻律的特徴と併用することでcold-angerにおいてF値で24.4 pt,hot-angerにおいて8.8 ptの精度向上を確認し,提案する対話的特徴量の有効性を示した.
著者
佐々木 智樹 松原 崇充 野崎 康 木戸出 正繼
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.1622-1630, 2011-10-01

本研究では,近年活発に研究が行われている"ロボットによる卓球タスク"において,打球の予測問題に焦点を当て,多様なスピン(回転速度と方向)を伴う打球について高精度な打球予測を実現することを目的とする.卓球の球は非常に軽く,スピンによる影響を受けやすいため,高精度な打球の予測のためには,スピンの状態を知る必要があると考えられる.しかしながら,卓球の球は通常無地の球形をしており,状態の変化を表す画像特徴が検出されないため,カメラなどによるスピンの計測は困難である.そこで,本研究では,プレイヤーのスイング動作に着目し,スイング動作に含まれるスピン関連情報を抽出し,打球予測に利用するアプローチを提案する.具体的には,各プレイヤーについて,モーションキャプチャによって計測されるスイング動作と,ステレオビジョンによって計測される打球の位置を多数取得し,これらのデータを用いて,スイング動作からスピン関連情報への特徴変換を求める.そして,多様なスピンを伴う打球について,カメラから得られる球の位置と,スイング動作の特徴変換により求まるスピン関連情報を用いることで,高精度な予測を実現する.
著者
中川 優里 泉井 透 伊勢川 暁 荒井 健太郎 其田 雅徳 成田 雅彦 小木 哲朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.825-833, 2012-04-01

高度情報通信社会の進展に伴い,購買情報や行動履歴などの個人に関わる情報は,日々膨大に生み出され,社会の様々な場所に分散して記録されている.これらの情報は,マーケティング等に用いられるなど,企業にとって大きな興味の対象となる一方で,情報を生み出している個人がこれらの情報を把握し,一元的に管理することは困難であり,また,企業に対して自分の思いどおりに自分の情報を利用させて対価を得るといった運用手段もない.本論文では,これらの課題を解決するために,より重要性を増してきた個人に関わる情報を日々生成する個人が,自身の情報を自分自身で利用し,そして,その情報を利用したい第三者に適切な対価と引き換えに利用させることを実現するためのフレームワークを提案する.そして,個人に関わる情報の中でも,運用になじみやすい購買情報に着目し,これらの課題に対する解決案を提示し,その実現性を検証する.
著者
塩見 昌裕 神田 崇行 ミラレス ニコラス 宮下 敬宏 ファーセル イアン モベラン ハビア 石黒 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-13, 2006-01-01
被引用文献数
2

本論文では, ヒューマノイドロボットが人間と対面コミュニケーションを行うための中心視と周辺視を統合した顔追跡機能の実現について報告する. 我々のアプローチでは中心視と周辺視をパーティクルフィルタを用いて統合することでロバストに顔追跡, 注視を行う機能を実現した. 特にロボットが意図伝達のジェスチャのために人の顔以外の物体を見ている際は周辺視を利用し, 顔を注視する際には中心視と周辺視を統合することで常にロバストな顔注視が可能になった. また, ロバストな顔追跡を行うことで, 対面コミュニケーション時においても従来の表情認識や発話検出の技術を適用可能になった.
著者
辻 裕之 依田 拓郎 徳増 眞司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.7, pp.1686-1689, 2007-07-01
被引用文献数
2

本論文では,ポアソン画像合成による良好な結果を保証するために,ユーザが指定したオブジェクト境界線をChan-Veseの動的輪郭モデルに基づき最適化する手法を提案する.
著者
橋本 和幸 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.1762-1772, 2011-11-01
被引用文献数
1

近年,政策やサービスなどの評判を調査するためにアンケート形式による調査が増加しているが,回収率が低落傾向にあることや,人的コストが増加するなどの問題が生じている.一方,Web上にはユーザの意見を含む評価情報が多数存在している.そこで本研究では,評判傾向予測システムの構築を目的として評判傾向の時間的変化とその原因をマイクロブログから抽出する評判傾向抽出エージェントの実現を目指す.特に本論文では,評判傾向の抽出と評判傾向が変化した原因の抽出に注力する.評価情報の感情を抽出するセンチメント分析に着目し,回帰式から評判傾向の変化点を抽出した後に,変化点におけるトピックをチャンキングにより抽出する手法を提案する.本手法は,従来の評価判定法であるp/n判定にセンチメント分析を組み合わせることで,p/n判定単体よりも人手による調査と相関の高い時系列変化を抽出できる点が特徴であり,政治及びテレビドラマに関するコンテンツを対象に実際の支持率,視聴率に対する評価実験を実施した結果,政治(自由度調整済決定係数R'^2(p/n判定単体:0.22,提案手法:0.60)),テレビドラマ(自由度調整済決定係数R'^2(p/n判定単体:0.26,提案手法:0.56))ともに相関の高い時系列変化を抽出できることが確認できた.
著者
麻生 英樹 高崎 晴夫 小野 智弘 土生 由希子 竹中 毅 本村 陽一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.846-854, 2012-04-01

推薦などの個人化サービスでは,ユーザの購買履歴やWeb閲覧履歴等のライフログ情報を利用してユーザの嗜好等を推定し,個々のユーザに適応したサービスを実現している.システムが自分の購買履歴等の情報を収集・利用することについて,漠然とした懸念を感じているユーザも多く,米国を中心とした調査では,インターネット上のプライバシーに関する懸念がサービスの利用意向に負の影響を与えることが示されている.我々は,ライフログ等のパーソナルな情報を利用する個人化情報サービスの利用意向とパーソナル情報の二次利用の受容性に関する大規模なインターネット調査を実施した.調査においては,様々な属性をもつ模擬サービスを60種類構築し,4,000名を超える被験者に対してサービスを体験してもらった後にアンケートを行った.本論文では,そこで得られたデータに構造方程式モデリングを適用して,推薦サービスの利用意向に影響を与える因子の分析を行った結果について報告する.
著者
小林 哲郎 一藤 裕 曽根原 登
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.834-845, 2012-04-01

提供されたライフログの管理や匿名化に関する情報セキュリティ的研究が進む一方,ライフログ提供者の心理的抵抗や提供を促進するインセンティブや制度に関する研究は不足している.そこで本研究は,ライフログ提供を促進する有効な制度設計のための基礎的な知見を提供することを目的に,ライフログ調査研究への参加依頼を実験刺激として,収集するライフログの種類,金銭的謝礼の金額,対価として提供されるライフログ活用サービスを要因操作した無作為配置被験者実験を行った.その結果,コミュニケーション履歴を提供することへの心理的抵抗が最も強く,GPS位置情報を提供することへの心理的抵抗は比較的弱いことが明らかになった.また,金銭的謝礼はライフログ提供を促進するがその効果は非線形であることが示唆された.一方で,レコメンデーションサービスやライフログ可視化サービスはライフログの提供を促進するインセンティブとしての効果が見られなかった.これらの知見を総合することで,できるだけ潜在的提供者の心理的抵抗を緩和しながらライフログの提供を促進する方法について考察を行った.
著者
伊藤 則之 安永 守利
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.12, pp.2004-2030, 2011-12-01

プロセッサの設計では,高い動作周波数を実現するために様々な設計手法が研究され,そして適用されている.このような高性能実現のためには,アーキテクチャ設計や論理設計だけでなく,半導体上で実現する回路設計や物理設計も重要となる.プロセッサの回路設計や物理設計では,高い動作周波数をできるだけ短い期間で実現するために,マニュアル設計と自動設計が選択的に適用される.この両者を組み合わせて適用するために,すべてが自動設計であるASIC設計とは異なり,設計手法に多様性が生まれる.本論文では,実際のプロセッサ設計に適用された設計手法をサーベイし,高性能化を実現するための回路設計及び物理設計の設計フローとCADシステムをまとめる.また,最後に,今後のプロセッサ設計における設計手法の展望について述べる.
著者
白鳥 貴亮 中澤 篤志 池内 克史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.2242-2252, 2007-08-01
被引用文献数
6

近年コンピュータグラフィックスの分野では,自然なキャラクタのアニメーションを生成する手法が数多く提案されてきている.しかし,人間の振舞いの印象を大きく左右する表現を考慮した手法はほとんど提案されていない.そこで本論文では,表現が重要な要因となる舞踊動作を対象として,入力される音楽信号から舞踊の表現に関係する音楽情景を解析し,その結果に合った舞踊動作を生成する手法を提案する.これにより従来手法では不可能であった,音楽に合った豊かな表現をもつ舞踊動作を生成することを目的とする.動きデータからは動きのリズムと盛り上がりの特徴量を,音楽データからは楽曲構造解析によってセグメント分割し,特徴量としてリズム,盛り上がりを抽出する.舞踊動作生成時は,まず構造解析によって得られる音楽セグメント内のリズム成分と高い相関を示す動きの候補セグメントをすべて抽出する.そして最後に盛り上がり成分の相関を求めることで最適な動きセグメントを選択し,連結することで舞踊動作が生成される.様々な楽曲や動きデータに適用して実験を行い,その有効性を示す.
著者
秋間 雄太 川久保 秀敏 柳井 啓司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1248-1259, 2011-08-01

近年,Folksonomyの出現により,データベースにタグなどによって意味的な価値を付与することが進められてきたが,階層構造のような概念間の関係を組み込んでいるデータベースは少ない.そこで,本研究では,意味的な階層構造を考慮した画像データベースの作成方法を提案する.階層構造の構築方法は,大量の画像データの各概念のノイズを除去した後に,各概念を視覚特徴を用いたベクトル表現,タグを用いたベクトル表現,視覚特徴とタグを統合したベクトル表現の3種類のベクトル表現で,JSダイバージェンスによる距離尺度を用いて概念間の距離関係を推定し,更に概念エントロピーを作成することで,概念の広がりから上下関係を推測する.最終的には,作成した階層構造を,視覚的な特徴のみで作成した場合とタグ特徴のみで作成した場合,そしてタグと視覚特徴を結合した場合での表現結果を考察した.結果として,視覚特徴での階層構造,タグ情報による階層構造のそれぞれにおいて特有の階層構造を確認することができ,また,統合した階層構造は両方の階層構造を加味し,それぞれの特徴を内包した新しい階層構造を作り出すことに成功した.構築された階層構造には人手での発見が難しい概念間の関係が含まれ,画像検索へ役立つ可能性を示す.
著者
坂地 泰紀 増山 繁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1496-1506, 2011-08-01

本論文では,新聞記事から因果関係を含む文を自動的に抽出する手法を提案する.現在,ウェブページや新聞記事を含む大規模な機械可読文書が入手可能であり,その中には実アプリケーションに役立つ様々な情報が存在し,テキストマイニング技術を用いることで獲得することが可能である.そのような情報の一つに因果関係があり,本研究では因果関係の存在を示す手掛りとなる表現に基づいた因果関係を含む文の抽出を行った.その結果,人手により作られた辞書やパターンを用いず,自動的に因果関係を含む文を抽出することができた.本手法は,素性として構文的な素性と,意味的な素性を用いた.また,追加学習データを自動的に獲得することができる.その結果,性能が向上し,F値0.797を達成した.
著者
川西 康友 満上 育久 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1359-1367, 2011-08-01

本論文では屋外に設置された固定カメラを対象とし,太陽の動きによる日照の変動と看板やベンチなどの置かれ方に起因する構造の変動を再現した背景画像生成手法を提案する.この手法では,長期間観測して得た大量の画像を観測日と観測時刻という二つの観点で整理し,複数日・同時刻の観測画像に注目することで画像の日照成分を推定し,同日・複数時刻の観測画像に注目することで画像の構造成分を推定する.これにより,従来うまく背景画像を生成することができなかった日照の変化と構造の変化の両方を含むシーンにおいて,この二つの変化を同時に再現した背景画像生成を実現する.実験では従来手法と提案手法によって,様々な定点カメラによって得た画像に対して生成した背景画像を比較することで,本手法による背景画像生成の有効性を示した.
著者
山添 大丈 内海 章 米澤 朋子 安部 伸治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.998-1006, 2011-06-01

従来の視線推定手法のもつ制約を緩和した単眼カメラによる視線推定手法を提案する.これまでに多くの視線推定手法が提案されているが,キャリブレーションが必要,計測範囲が狭いなどの問題があり,その応用範囲はHCIにおける視線計測や視線を用いたインタフェースなどに限られてきた.提案手法では,虹彩と白目のアピアランスをもった三次元眼球モデルを用い,バンドル調整法のように複数フレームにおける観測画像とモデル投影画像の間の投影誤差が最小とすることにより,眼球モデルパラメータを推定する.従来の視線推定手法とは異なり,ユーザが決まった参照点を注視するといった特殊なキャリブレーション動作が必要ない.そのためユーザに視線推定を意識させることなく,自動的にキャリブレーション処理が完了できる.視線推定においても同様に,投影誤差を最小化することにより,視線方向を推定する.実験により,解像度QVGA (320 × 240)の画像で,約6度の推定精度が得られることを確認した.
著者
松田 俊広 伊野 文彦 萩原 兼一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.5, pp.852-861, 2011-05-01

本論文では,実時間の画像ノイズ除去を目的として,GPU(GraphicsProcessing Unit)に基づく高速な全変動最小化手法を提案する.既存手法と異なり,提案手法はカーネルを二つに分割する.この分割はGPU内の同期を増加させるが,メモリアクセスパターンを簡素化し,メモリアクセスに起因する分岐を削減できる.更に,オフチップメモリの実効バンド幅を最大化し,その読み書き量を最小化するために,スレッドブロックの大きさや形状を適切に定める.実験の結果,提案手法は単一カーネルに基づく既存手法よりも30%ほど高速であった.また,スレッドブロックの形状に応じて,性能が4%ほど向上した.1024 × 1024画素からなる時系列臨床画像に対し,秒間46フレームの実時間ノイズ除去及び可視化を実現できた.
著者
三木 光範 加來 史也 廣安 知之 吉見 真聡 田中 慎吾 谷澤 淳一 西本 龍生
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.4, pp.637-645, 2011-04-01

オフィスワーカが個人ごとに設定した照度をできるだけ少ない消費電力量で提供する知的照明システムを実際のオフィス環境において構築した.システムの構築場所は,東京都千代田区大手町にある大手町ビル内の三菱地所(株)都市計画事業室である.構築エリアの面積は約240平方メートルであり,26台の照明器具及び22台の照度センサを設置した.1台の照明器具は昼白色蛍光灯及び電球色蛍光灯からなり,器具ごとに色温度を変化させることが可能である.これらの機器は,制御用コンピュータと接続され,Simulated Annealingを応用した制御アルゴリズムにより動作する.システムの実働実験により,各オフィスワーカに個別の照度環境を提供できるとともに,従来の照明システムよりも消費電力量の削減効果があることを確認した.
著者
富永 英之 石北 朋宏 有坂 有紀子 樋口 徹也 織内 昇 遠藤 啓吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.1708-1714, 2008-07-01

分子イメージングとは,生体内で起こる様々な生命現象を外部から分子レベルでとらえて画像化することであり,様々な画像装置が開発されている.最近,分子イメージングに最も適した手技として,社会的にも注目を集めているのはPETといえよう.PETとは放射性物質で標識した薬剤(トレーサー)を投与し,細胞及び組織の機能をイメージングする方法である.日本では2002年に[^<18>F]FDG(2-deoxy-2-[^<18>F]fluoro-D-glucose)というトレーサーが腫瘍に対して保険適用ができるようになり,これまでごく一部の施設で使われていたものが,多くの病院で利用されるようになった.またPETは[^<18>F]FDG注射液を静注することだけで検査ができる低侵襲な(患者の痛みなどの負担の少ない)方法であり,ほぼ全身を診断できるということでがん検診にも利用されるなど急速に普及している.PETはFDGという薬剤を注射することでほぼ全身の腫瘍が分かり,苦痛の少ない方法と注目されている.PETは生体内の機能をイメージングすることができるため,腫瘍に対して様々な角度から研究されている.
著者
鳴海 真里子 梅澤 猛 今井 倫太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.37-50, 2008-01-01

本研究では,環境中に存在する物体に付加したセンサデバイスからの情報に基づき,人間・ロボット間のインタラクションの演出を選択する演出選択システムi-Director+を提案する.人間同士のインタラクションでは「今日は暖かいですね」といった実世界の情報に基づく対話により話者間の親密度が増し,会話がはずむ.しかし,多くの人間はロボットが感覚や感情をもつと想定していないので,実世界情報に基づくインタラクションを人間・ロボット間で実現することは困難である.i-Director+は人間とロボットのインタラクションを積極的に演出するために,演出と呼ばれる行動ルールをもつ.演出はセンサ情報に基づき選択される.また,i-Director+はShynessという概念を用いて演出を分類しており,演出に対する人間の応対のしやすさも考慮して演出選択を行う.更にロボットの存在する環境が人間の介入やロボットの移動により動的に変化するので,センサ情報の変化に迅速に応じて演出を選択し,人間の注目度の高い事象に対する演出を行う.本論文では,i-Director+をコミュニケーションロボットRobovie上に実装した.センサにはCrossbow社のMOTEを用いた.実際にi-Director+を動作させた結果,環境の動的な変化に基づいた演出の変更や適切な難易度の演出を選択できることが確認できた.
著者
小野口 一則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.1998-2008, 2007-08-01

本論文では,雪や霧による視界不良時においても有効な移動体検出手法を提案する.降雪時や霧が濃い場合,視界は短時間で大きく変動する.また,吹雪など降雪量が多い場合には,各画素の輝度値がフレームごとに激しく変化するため,画素単位で輝度の変化を比較する手法では誤検出が多発する.これらの問題点を解決するため,画像を一定サイズの格子ブロックに分け,各ブロック内で蓄積フレーム数が異なる二つの輝度ヒストグラムを求め,その間の相関を算出することで移動体を検出する手法を提案する.雪が激しく降っている状況において実験を行った結果,本手法が視界不良時においても有効であることが確認できた.