著者
和歌崎 修平 北越 大輔 鈴木 雅人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2716-2727, 2013-11-01

複数の確率変数間の依存関係を視覚的に表現可能な確率モデルの一つであるベイジアンネット(Bayesian Network: BN)は,その結合構造を活用した確率推論が可能であり,データマイニングや意思決定システム等,多様な分野への適用例が報告されている.本論文では,BNの結合構造簡略化処理によって計算量抑制と推論精度向上を実現した上で,精度保証処理を通じて利用者の要求に応じた信頼性の高い推論値を出力可能な近似確率推論アルゴリズムExtended-LBPCを提案した.確率的,構造的な特徴を有する複数のBNを対象に計算機実験を実施し,既存アルゴリズムとの比較を通して提案アルゴリズムの基本的特性,及び推論性能について評価する.
著者
藤原 一毅 鯉渕 道紘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.8, pp.1903-1912, 2013-08-01

スーパコンピュータの大規模化が進むにつれ,通信遅延が並列アプリケーションの性能に及ぼす影響が無視できなくなっている.このため,高次数スイッチを前提とした低遅延なネットワークトポロジーの活用が注目されている.これまでの研究で我々は,ランダムなショートカットリンクをもつトポロジーが低遅延性の点で優れていることを明らかにした.このようなランダムトポロジーは,一方で,ハイパキューブなどの規則的なトポロジーに比べて配線が非常に長くなるという問題を抱えていた.本研究において我々は,(1)不均一なランダムショートカットリンクを単純なトポロジーに付加し,(2)ラックレイアウトを施設配置問題として最適化することで,低遅延性を維持したまま総配線長を最大29%削減できることを示す.
著者
山添 大丈 内海 章 米澤 朋子 安部 伸治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.998-1006, 2011-06-01
被引用文献数
5

従来の視線推定手法のもつ制約を緩和した単眼カメラによる視線推定手法を提案する.これまでに多くの視線推定手法が提案されているが,キャリブレーションが必要,計測範囲が狭いなどの問題があり,その応用範囲はHCIにおける視線計測や視線を用いたインタフェースなどに限られてきた.提案手法では,虹彩と白目のアピアランスをもった三次元眼球モデルを用い,バンドル調整法のように複数フレームにおける観測画像とモデル投影画像の間の投影誤差が最小とすることにより,眼球モデルパラメータを推定する.従来の視線推定手法とは異なり,ユーザが決まった参照点を注視するといった特殊なキャリブレーション動作が必要ない.そのためユーザに視線推定を意識させることなく,自動的にキャリブレーション処理が完了できる.視線推定においても同様に,投影誤差を最小化することにより,視線方向を推定する.実験により,解像度QVGA(320×240)の画像で,約6度の推定精度が得られることを確認した.
著者
森谷 貴行 日浦 慎作 佐藤 宏介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.1579-1591, 2007-06-01

シーンの三次元モデルから生成したCG画像と入力画像の差の最小化によりシーンに対するカメラの位置・姿勢の変化を追跡し,同時にステレオカメラによりシーンの三次元形状を求めることで,自己位置と環境マップの同時推定(SLAM)を行う手法について述べる.ステレオカメラによる距離画像取得処理計算は濃淡画像入力に比べ著しくCPU負荷が高いため処理サイクルが不均一となりがちで,この間に追跡が不安定になったり,シーンの三次元形状の位置合せ精度が低下するおそれがある.そこで本論文ではモデリングと追跡の2種の処理を並列化し,加えてステレオ計算中の運動追跡処理を改良することによって追跡の安定度と位置合せ精度を向上させる方法について述べる.実験ではシーンモデルの更新の有無にかかわらず高精度に追跡とモデリングが同時実行できることが確認された.
著者
有賀 治樹 西山 乘 橋本 学 長田 典子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.2, pp.328-330, 2015-02-01

複数の指先の追跡を最適経路決定問題として扱い,解析的DPTにより得られた追跡経路から運指を認識する手法を提案する.複数物体の相対的な位置関係の連続性を評価することにより,特徴が似た物体を同時に追跡できる.実験により,運指認識成功率98%を確認した.
著者
千葉 直子 関 良明 橋元 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1714-1718, 2014-12-01

Twitter上で企業の未発表情報や,有名人等の顧客情報が投稿され,問題となる事件が頻発している.本論文では,民間企業に勤務するTwitter投稿者を対象に調査を行い,企業のリスク管理策の有効性について考察・提言した.
著者
岡崎 亮介 毛利 公美 白石 善明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1696-1700, 2014-12-01

使い慣れたGUIでシステムを利用してもらうための複数のSNSと連携する災害時支援システムのアプリケーションの開発では,SNSごとに異なるAPIを把握し,SNSに応じた実装をしなければならない.本論文では,複数のSNSの入出力を統合するフレームワークを提案し,再利用性と拡張性をもつことを示している.
著者
竹中 太一 槇 俊孝 若原 俊彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1693-1695, 2014-12-01

週刊サッカーマガジンなどの雑誌やSoFIFAのWebサイトでは,サッカーの各試合における選手の評価を行っている.本論文では,Webサイト上の試合後の監督や評論家などのコメントや寸評などから簡易にテキストマイニングして選手の評価を行う分析手法を提案し,実験を行ってその結果よりその有効性を示す.
著者
酒井 紗希 関 洋平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.173-176, 2014-01-01

読者どうしの交流の促進を目的として,「レビューを読者が抱いた感性で集約する」という特徴をもつソーシャル付箋を提案する.また,従来の掲示板型インタフェースとの比較実験を行い,本提案により,読者がコメントを通じて盛んに交流することを明らかにした.
著者
荒川 貴紀 三川 健太 後藤 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1956-1959, 2013-08-01

本研究では,学習データ中に全く現れなかった未知のカテゴリー(未観測カテゴリー)の文書が出現するような状況での文書分類問題を対象とし,確率モデルに基づいた新しい分類手法を提案する.
著者
井上 仁 橋本 敦史 中村 和晃 舩冨 卓哉 山肩 洋子 上田 真由美 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.9, pp.1490-1502, 2014-09-01

本論文では,調理中に起きる食材切断行動を利用した食材認識手法を提案する.一般的な物体認識手法の多くは,画像だけを用いている.しかし食材は異種であっても色が似通っていたり,同一種でも形状が大きく異なるために,画像のみでは認識が困難である.本論文では,食材を切断する際に観測できる荷重と切断音を新たな特徴として統合的に利用する.食材切断時にまな板にかかる荷重は,食材の硬さを反映した特徴であり,切断時に発生する振動音は食材内部の構造を反映している.ゆえに,これらの特徴は画像と併せて用いることで,食材の認識精度を向上させることが期待される.三つの特徴を統合した際の認識精度について,23種の食材を用いて検証し,大幅な認識精度の向上を確認した.
著者
三上 弾 紺谷 精一 森本 正志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.526-534, 2007-02-01
被引用文献数
5

本論文では,野球映像からピッチャーによる投球イベントを検出する方法を提案する.提案手法では,(1)映像撮影環境(撮影角度など)の影響を受けにくい音響解析によって,投球後に発生する打球音あるいは捕球音を取得し,投球イベントの候補とする.(2)音響解析により求めた投球イベント候補について,各候補の時刻における動き特徴によりクラスタリングを行うことで,投球イベント候補の中から投球イベントのみを選別する.(3)投球イベントから投球動作テンプレートを作成する.(4)投球動作テンプレートを処理対象映像から自動的に選び,映像全体を再検索する.以上の処理により,音響解析によって検出が不可能であった投球イベントについても検出することが可能となり,高精度な投球イベント検出が実現できる.野球の放送映像及び個人撮影の野球映像を用いて実験を行い,放送映像において,音響解析による投球イベント検出の適合率は約60%,再現率は約81%であったが,提案手法を用いることにより,適合率約90%,再現率約95%(検出漏れはテロップによる投手の遮へいなど)の精度で検出が可能となり,野球映像構造化の第1段階として十分な精度を得ることができた.
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2118-2129, 2013-10-01

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,並列度の爆発に抗する技術の導入,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
中村 友昭 長井 隆行 岩橋 直人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.2507-2518, 2008-10-01
被引用文献数
13

本論文では,ロボットが身体性を利用することで取得する視覚・聴覚・触覚のマルチモーダル情報を用い,総合的に物体のカテゴリー分類を行う計算機構を提案する.ロボットは,複数の情報を利用することにより,今まで画像だけでは分類することができなかった物体であっても分類することができるようになり,より人間の感覚に近いカテゴリーを形成することが可能である.提案するアルゴリズムはグラフィカルモデルに基づいており,物体のカテゴリゼーションはそのパラメータである条件付確率を推定する学習の問題となる.提案手法は教師なし学習であるため,人間が正解を教えることなくロボットの自律的なカテゴリゼーションが可能である.また,学習結果を利用した未知物体のカテゴリー認識や,カテゴリーを通した機瀧の確率的推定も可能となる.本論文では,提案するアルゴリズムを実際のロボットに実装することで,提案手法の有効性を示す.
著者
三好 茂樹 河野 純大 西岡 知之 加藤 伸子 白澤 麻弓 村上 裕史 皆川 洋喜 石原 保志 内藤 一郎 若月 大輔 黒木 速人 小林 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.2236-2246, 2008-09-01
被引用文献数
14

近年,高等教育機関へ進学する聴覚障害学生が増加している.講義中,講師等の発話内容を正確に知らせるために手話通訳やリアルタイム字幕などの情報保障は,それらの学生にとって必要不可欠である.我々は,聴覚障害者のための遠隔地から支援が可能なリアルタイム字幕提示システムを開発している.特殊なキーボードを用いて文字入力を行う速記タイピストがこのシステムを利用することによって遠隔地からリアルタイムに講師の発話内容を字幕化して聴覚障害学生のいる教室へ送り,講義の支援を実施できるようになる.しかしながら,情報科学等の専門性の高い講義内容を正確にリアルタイムで字幕化することには,専門的な知識,特に専門用語の問題があり困難を伴う.そこで本研究では,1台のDVカメラで撮影される講義室側のビデオ映像を数種類用意し,それらの映像を遠隔地にいる字幕作成中の速記タイピストへ提示した.その結果,速記タイピストにとって発話者である講師及び視覚的な提示資料(マイクロソフト社製パワーポイント資料や板書)を含むビデオ映像が,字幕作成者から最も望まれる映像情報であることが分かった.
著者
グエン ミン テイ 川村 隆浩 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2970-2978, 2013-12-01

本論文は,実世界での人々の行動を分析し,状況に応じた適切な情報提示などへ役立てることを目的に,Twitterなどソーシャルメディアから行動ネットワークを構築する研究の一環である.ソーシャルメディアからの行動抽出にあたっては,さまざまな理由から呟かれなかった行動が数多く存在し,結果として行動ネットワークがスパースになってしまうという問題が存在する.そこで,行動の性質とユーザのゴールを考慮した行動ベース協調フィルタリング手法を提案し,欠損行動の推測を試みる.また,協調フィルタリングによる頻度の原理の副作用としての低頻度だが価値のある情報が埋もれてしまう問題に対して,人が成功している人や行動にどのように影響を受けるか,を単純にモデル化し,一定の重み付けを行う方法を提案する.そして,東日本大震災発生時のtweet 337,958件を対象に評価実験を行った結果,提案手法を用いることで行動ネットワーク内の欠損行動ノードを一定程度,補完できることを確認した.
著者
宮部 真衣 吉野 孝 重野 亜久里
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.708-718, 2009-06-01
参考文献数
11
被引用文献数
7

医療の現場では,外国人診療時における患者との対話に大きな課題を抱えている.現在は,医療通訳者同行による対応を行っているものの,その需要は急速に増大しており,24時間対応や緊急時対応などが困難である.情報技術への期待が大きいものの,長期的な利用可能性をもつ実用的なシステムの実現・導入には至っていない.理由としては,(1)医療分野では,極めて高い翻訳精度が要求されており,機械翻訳技術による支援は難しい,(2)異なる言語を用いる利用者間の対面同期環境における対話は,その状況の特殊性からほとんど検討されておらず,更に,医療従事者も情報技術による具体的な支援のイメージをもつことができていない,が挙げられる.そこで我々は上記の問題を解決する多言語医療受付支援システムM^3(エムキューブ)の構築を行った.M^3では,医療分野で利用可能な翻訳精度を実現するために,用例対訳を用いる.本論文では,対面同期環境における多言語対話のためのインタフェースとして,役割に応じたインタフェース及びフローチャート型情報提供機能を提案する.また,システムの試用及び提案機能の実験を行い,M^3は実際の中規模病院への導入を実現した.
著者
田中 秀磨 王 立華 市川 隆一 岩間 司 小山 泰弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.8, pp.1913-1924, 2013-08-01

情報の発信源の特定や物流の経由地点など,位置情報の利用が普及拡大している.またクラウド環境においては,ユーザ認証やアクセス制御にこれまで以上の安全性が要求され,位置情報や時刻など物理的な情報を組み合わせる手法も検討されている.このように位置情報を利用する場面が多々出現している状況であるが,位置情報とは座標であり不変的な情報のため,発信者の主張を信用するのみで信頼性が乏しいという問題がある.更に位置を詐称していることをネットワークプロトコルで見破ることは難しい,という欠点もある.そこで位置情報そのものの正当性を示す認証方式が必要である.本論文では準天頂衛星及び地上放送の電磁波を利用して,準同型暗号による位置情報を認証するプロトコルを2種類提案する.
著者
名生 貴昭 松井 智紀 榎堀 優 西尾 信彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.5, pp.1267-1278, 2013-05-01

スマートフォンなどに搭載されたセンサの観測値を収集・蓄積し,解析する研究がなされている.我々は,この一連の活動をいわゆるライフログになぞらえてライフログセンシングと呼んでいる.本論文は,蓄積されたその観測値を効率的に解析するためのフレームワークであるDwarfstarを提案する.我々は30か月間にわたってライフログを蓄積してきた経験から,(1)センサごとの観測周期の違いをアプリケーション側で吸収する手間と,(2)分散環境において時系列性を維持しつつ断続的に観測値の増分を処理することを課題とした.本論文では,それぞれの課題について(1)ウィンドウスキャンと呼ぶスキャン操作の拡張と,(2)分割インクリメンタル処理と呼ぶ処理モデルとその分散環境における処理系によって解決した.HBase上に実装したプロトタイプを用いた実験から,ウィンドウスキャンその他の拡張による性能低下が15%程度であり,分割インクリメンタル処理は単一ホストでのみ処理する手法に比べて平均4.1倍高速であることを確かめた.更に,サンプルアプリケーションを用いた開発実験では,開発工数を約三分の一に削減でき,Dwarfstarの有効性を確認した.
著者
山口 徳郎 ナセンタ ミゲル 櫻井 智史 伊藤 雄一 北村 喜文 サブラマニアン スリラム グトウィン カール 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.2746-2754, 2008-12-01
参考文献数
24
被引用文献数
1

利用者とディスプレイの位置関係を考慮し,提示する情報を利用者に対して常に正対して(パースペクティブに)表示する手法を提案し,従来の画面にフラットに表示する手法との比較実験を行った結果について報告する.この2種類の表示手法について,テーブル型ディスプレイ,壁面型ディスプレイ,デスクトップモニタの3種類のディスプレイがある複数ディスプレイ環境において,ポインティング,ステアリング,整列,パターンマッチング文章読解の5種類の基礎的なタスクを比較した.その結果,パースペクティブ表示で,8%から60%程度の高い視認性が確認され,ユーザ評価においても,パースペクティブ表示による被験者の作業負荷の上昇は見られなかった.