著者
市原 香織 宮下 光令 福田 かおり 茅根 義和 清原 恵美 森田 達也 田村 恵子 葉山 有香 大石 ふみ子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.149-162, 2012 (Released:2012-05-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】Liverpool Care Pathway (LCP)は, 看取りのクリニカルパスである. LCP日本語版のパイロットスタディを実施し, LCPを看取りのケアに用いる意義と導入可能性を検討する. 【方法】緩和ケア病棟入院患者を対象にLCPを使用し, ケアの目標達成状況を評価した. 対象施設の看護師に, LCPの有用性に関する質問紙調査を行った. 【結果】LCPに示されたケアの目標は, 80%以上の患者・家族において達成されていた. 対象看護師の65%以上が, 看取りの時期の確認, ケアの見直し, 継続的で一貫したケアの促進, 看護師の教育においてLCPを有用だと評価した. 【結論】LCPは緩和ケア病棟での看取りのケアと合致し, 看取りのケアの指標を示したクリニカルパスとして導入可能であることが示された. 看護師の評価では, LCPが看取りのケアの充実や教育における意義をもつことが示唆された.
著者
並木 瑠理江 涌水 理恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.225-234, 2023 (Released:2023-10-25)
参考文献数
30

本研究は,終末期の親の闘病から死別後の子どもとその家族のニーズや体験,看護師や多職種連携による支援について,国内文献から把握し今後の臨床現場で取り組む看護ケアに関する課題を明らかにすることを目的とした.医学中央雑誌Web版を用いて2022年11月の時点で可能な文献を検索した.結果は対象文献18件であり,配偶者と子どもの死別前のニーズ,配偶者と子どもの死別後の生活体験,終末期の親の病や死について子どもへの伝え方/説明,終末期の親をもつ子どもに対する看護師の関わり,終末期の親を看取る子どもへの看護介入,多職種との連携の六つのカテゴリーに分類された.結果,子どもを家族の一員として認識し,年齢や発達段階に応じた病状説明の必要性が示唆された.また子どもへの継続支援に,学校や外部機関との連携が重要であった.さらに看護師は経験や学習を積み,子どもとその家族への具体的な体制整備が課題となる.
著者
坂口 幸弘 宮下 光令 森田 達也 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.203-210, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
29
被引用文献数
13 3

【目的】ホスピス・緩和ケア病棟で家族を亡くした遺族の複雑性悲嘆および抑うつ, 希死念慮の出現率と関連因子について明らかにする. 【方法】全国の緩和ケア病棟100施設を利用した遺族に対して自記式郵送質問紙調査を実施し, 438名(67.1%)からの有効回答を分析対象とした. おもな調査項目は, Inventory of Traumatic Grief (ITG), CES-D短縮版, Care Evaluation Scale (CES), Good Death Inventory (GDI)である. 【結果】複雑性悲嘆と評定された者は2.3%であった. 回答者の43.8%が臨床的に抑うつ状態にあると評定され, 11.9%に希死念慮が認められた. 重回帰分析の結果, ITGと, CESおよびGDIとの有意な関係性が示された. 【結論】緩和ケアや患者のQOLに対する遺族の評価が, 死別後の適応過程に影響を及ぼすことが示唆される.
著者
新城 拓也 岡田 雅邦
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.306-310, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
12

悪性腹水を伴うがん患者に対して, 腹水穿刺は有効な治療法である. 多くの症例は, 腹水の再貯留により頻回の穿刺が必要であり, 処置の苦痛と合併症を軽減する目的にカテーテルを留置する方法がある. 症例は, 73歳男性の膵臓がん患者. 合併した悪性腹水の貯留による症状緩和を目的に, 中心静脈カテーテルを留置した. 留置から死亡まで21日間, 連日1,000mlの腹水をドレナージした. 合併症であるカテーテル閉塞を防止するために複数の穴を加え, 発生した腹水リークに対しては医療用シアノアクリレート系接着剤(アロンアルファA®)を使用し良好な効果を得た. 中心静脈カテーテルを用いた腹水ドレナージは処置の侵襲を軽減させ, 低コストである. またカテーテル留置による合併症に対する工夫を報告した.
著者
石井 瞬 夏迫 歩美 福島 卓矢 神津 玲 宮田 倫明 中野 治郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.181-189, 2022 (Released:2022-12-16)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,入院化学療法中の造血器腫瘍患者の倦怠感に関連する要因を明らかにすることである.【方法】本研究は後方視研究である.対象は入院中に化学療法を実施した造血器腫瘍患者90名とした.総合的,身体的,精神的,認知的倦怠感をそれぞれ従属変数とし,基本情報,ADL, Performance Status,不安・抑うつ,身体症状,栄養状態を独立変数として単回帰分析を実施した.単回帰分析で有意差を認めた項目を独立変数として,重回帰分析を実施した.【結果】総合的倦怠感を従属変数とした重回帰分析では抑うつが関連する要因として抽出された.さらに,身体的倦怠感は痛みの有無と抑うつ,精神的倦怠感はmFIMと抑うつが関連する要因として抽出された.【結論】倦怠感の症状がある造血器腫瘍患者に対しては,抑うつや痛み,ADLなどの倦怠感の原因に着目して対応する必要性が示唆された.
著者
相木 佐代 安部 晴彦 吉村 麻美 柿本 由美子 交久瀬 綾香 田中 奈桜 西薗 博章 河瀬 安紗美 安井 博規
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.105-108, 2022 (Released:2022-09-26)
参考文献数
5

【目的】当院では,心不全患者の病診連携の強化,およびシームレスな支援体制を目指して多職種Webカンファレンスを実施している.この取り組みについて報告する.【方法】Web会議ツールを用いた多職種カンファレンスの開催概要を後ろ向きにデータを収集しその概要を記述する.【結果】主な対象者は,独居で介護力が不十分,かつ,再入院の予防目的に多職種介入ニードの高い症例とした.多職種Webカンファレンスでは,匿名性に配慮し,退院における課題と問題解決のための方策を共有していた.開催時期は退院が具体化する前段階とし,開催頻度と時間は週1回30分とした.参加職種は循環器内科医,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,緩和ケア医,およびプライマリ・ケア医(以下,PC医)である.循環器スタッフは,患者の病態や診療方針を共有しつつ,多面的なチェックシートを用いて,課題の明確化を行う.緩和ケア医は,価値観に基づいた療養計画や意思決定支援について,PC医は,再入院予防に必要な在宅サービス,薬剤調節,生活指導について提案している.【考察】今後は現行の多職種Webカンファレンスの実施方法に改良を加えることや,同カンファレンスの意義についての客観的評価を行うことが課題である.
著者
林 ゑり子 高橋 明里 青山 真帆 升川 研人 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.109-118, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
23

【目的】(1)認知症患者の終末期における積極的治療の選好に関して遺族,医療者間での違い,(2)終末期医療の選好の関連要因を明らかにする.【方法】認知症患者の遺族(618名)と,医師(206名),看護職(206名),介護職(206名)の医療者に2019年10月にインターネット調査した.【結果】認知症患者の遺族は終末期に「食べられなくなった際の胃ろう;49%」(p<0.01),医療者は「大きな病気になった際の手術:39%」(p<0.01)を希望した.多変量解析で代理意思決定者を望む遺族は点滴(OR: 1.62, p=0.02),内服の継続(OR: 1.74, p<0.01)を,医療者はよい看取りの要件で人との関係性が重要な人ほど,手術(OR: 2.15, p<0.01),延命治療(OR: 2.00, p=0.01)を希望した.【結論】医療者と家族の間で,終末期の治療に関する選好が必ずしも一致しないため,治療選択時に配慮する必要がある.
著者
長谷川 素子 吉田 沙蘭
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.77-85, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
16

【目的】意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対する家族の関わり行動とその支援について,医療者と家族の視点から明らかにすることである.【方法】緩和ケアに従事する医療者15名と遺族5名に対して,患者に対して家族が行った関わり行動と医療者が提供した支援について,インタビュー調査を実施した.得られたデータをもとに内容分析を行った.【結果】患者に対する関わり行動は〈従来の患者に対する関わりの継続〉〈患者の安心・安楽への働きかけ〉など三つの大カテゴリーが抽出された.関わり行動に対する支援としては〈関わり方の提案〉〈関わりに対する家族へのフィードバック〉など九つの大カテゴリーが抽出された.【考察】家族に対する支援として,家族自身が関わり方を選択し実行できるよう医療者が働きかける内容が示された.具体的には,関わり方をわかりやすく提案する,家族にフィードバックをする等が挙げられた.
著者
内藤 明美 森田 達也 神谷 浩平 鈴木 尚樹 田上 恵太 本成 登貴和 高橋 秀徳 中西 絵里香 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.255-260, 2021 (Released:2021-08-24)
参考文献数
20

【背景】医療において文化的側面への配慮は重要である.本研究は沖縄・東北を例に首都圏と対比させ国内のがん医療・緩和ケアにおける地域差を調査した.【対象・方法】沖縄,東北,首都圏でがん医療に携わる医師を対象とした質問紙調査を行った.【結果】553名(沖縄187名,東北219名,首都圏147名)から回答を得た.地域差を比較したところ,沖縄では「最期の瞬間に家族全員が立ち会うことが大切」「治療方針について家族の年長者に相談する」「病院で亡くなると魂が戻らないため自宅で亡くなることを望む」などが有意に多く,東北では「特定の時期に入院を希望する」が有意に多かった.東北・沖縄では「がんを近所の人や親せきから隠す」「高齢患者が治療費を子・孫の生活費・教育費にあてるために治療を希望しない」が多かった.【結論】がん医療・緩和ケアのあり方には地域差があり地域での文化や風習を踏まえた医療やケアに気を配る必要がある.
著者
長岡 佳世子 市村 久美子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.289-299, 2021 (Released:2021-10-26)
参考文献数
30
被引用文献数
2

【目的】ICU看護師の終末期ケアの認識と終末期ケアの認識の関連要因を明らかにすることである.【方法】救命救急センターのICU経験3年目以上の看護師650名に,基本属性,終末期ケアへの認識について無記名自記式質問紙を郵送した.終末期ケアへの認識の構成概念を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】有効回答277名を得た.終末期ケアへの認識は三つの構成概念が抽出された.終末期ケアへの認識との関連要因は,「家族ケアへの困難感」は「ICU経験10年以上」「PNS」,「終末期ケアへの否定感」は「30-39歳」「40歳以上」「終末期に関するマニュアル・ガイドライン」,「終末期ケアへの肯定感」は「終末期ケアへの関心」に有意な関連があった.【結論】終末期ケアへの認識を高めるためには,看護師個人の終末期ケアの経験,関心,終末期に関するマニュアルやガイドラインの活用といった要因に働きかける必要がある.
著者
尾関 伸哉 立松 典篤 三石 知佳 石田 亮 吉田 真理 杉浦 英志
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.271-279, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
31

【目的】在宅緩和ケアを受けるがん患者の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハビリ)開始から4週後までの身体的Quality of Life(QOL)およびActivities of Daily Living(ADL)の変化とその特徴を明らかにすること.【方法】対象は在宅がん患者35例とした.身体的QOL評価はQLQ-C15のPhysical Functioning(PF),ADL評価はBarthel Index(BI)およびFIM運動項目(Motor FIM)を用いた.リハビリテーション(以下,リハビリ)開始時から4週後までのPFおよびADLスコアの経時的変化,PFスコア維持・改善群と悪化群でのADLスコアの変化と特徴について検討した.【結果】PFスコアは4週後で有意な改善を認め,PFスコア維持・改善群において4週後でMotor FIMスコアの有意な改善を認めた.【結論】在宅がん患者の身体的QOLは,リハビリ開始時に比べ4週後で維持・改善がみられ,在宅で実際に行っているADL(しているADL)能力を維持することは,身体的QOLの維持・改善につながる可能性が示唆された.
著者
飯野 京子 長岡 波子 野澤 桂子 綿貫 成明 嶋津 多恵子 藤間 勝子 清水 弥生 佐川 美枝子 森 文子 清水 千佳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.127-138, 2019 (Released:2019-06-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

【目的】がん治療を受ける患者に対する看護師のアピアランス支援の実態と課題および研修への要望を明らかにすること.【方法】がん診療連携拠点病院等の看護職2,025名に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は支援94項目,研修への要望等について多肢選択式,自由記述にて回答を求めた.分析は,記述統計量の算出,「支援の種類の多さ」に影響する因子のロジスティック回帰分析を行い,自由記述は質的記述的に分析した.【結果】分析対象は726名(35.9%),平均年齢42.5(24〜62) 歳であった.94項目中93項目の支援を提供していた.支援の種類の多さに影響する因子は,多様な情報収集および支援への自信などであった.アピアランス支援の課題・研修への要望は17項目生成され,「アピアランス支援の標準化」等,多様であった.この結果をもとに,医療従事者の研修プログラムの構築を検討する予定である.
著者
日下部 明彦 馬渡 弘典 平野 和恵 田辺 公一 渡邉 眞理 結束 貴臣 吉見 明香 太田 光泰 稲森 正彦 高橋 都 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.153-162, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
18

【目的】終末期がん患者のセクシュアリティへの支援に対する看護師の現状を明らかにする.【方法】2018年12月に神奈川県内緩和ケア病棟18施設の看護師313名を対象に終末期がん患者の「パートナーとの愛を育む時間」に対する認識,感情,支援への行動意図と実践について質問紙調査を行った.【結果】165名中(回収率52.7%)「パートナーとの愛を育む時間」への支援経験があるのは82名(49.7%)であった.行ったことのある具体的な支援内容は「スキンシップを勧める」,「傾聴」,「ハグを勧める」,「入室の際に,ノックや声掛け後に返事を待つなど十分な時間をとる」が多かった.一方,病棟カンファレンスで「パートナーとの愛を育む時間」について話したことがあるのは11名(6.7%)であった.【結論】現状,「パートナーとの愛を育む時間」への支援は個人に任され,組織的には行われていないことが示唆された.
著者
岡田 雅邦 新城 拓也 向井 美千代 皆本 美喜
出版者
Japanese Society for Palliative Medicine
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.136-141, 2012

一般には動物を病院に連れてくることは許可されないが, 緩和ケア病棟ではペット面会やセラピードッグの訪問を取り入れている施設が多い. 全国の緩和ケア病棟におけるペット面会許可の現状, セラピードッグ導入の現状につき, 2009年2月現在の緩和ケア病棟承認施設193施設を対象に郵送によるアンケート調査を行い, 149施設(77%)より回答を得た. 135施設で病院敷地内でのペット面会を許可し, うち36施設はペットの宿泊を, 121施設は病室での面会が可能であった. セラピードッグは22施設に導入されていたが, 特に宗教を母体とする施設で有意に多かった. 病室にペットが宿泊できるところは宗教を母体とする施設に, 病棟でのペットとの面会は緩和ケア病棟開設年度が古い施設で有意に多かった. しかし, 無宗教の施設や新しく開設された施設でも, 多くの施設でペット面会が行われていた. 昨今の緩和ケア病棟でも癒しや心の温もりが大切にされていることが示された.
著者
佐藤 友亮 新城 拓也 石川 朗宏 五島 正裕 関本 雅子 森本 有里
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.162-167, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1

在宅療養をしていた終末期がん患者の,食事と補完代替療法の現状調査を行った.神戸の5診療所で治療され,自宅で死亡した200名を対象に,患者遺族に質問紙を2014年2月に発送した.回収率は66%,患者の平均年齢は74歳だった.食事や食品の情報入手先を問う質問では,書籍・雑誌・新聞(48%),医療者(46%)という回答が多かった.積極的に摂取した食材は,お茶(64%),乳製品(62%),大豆食品(60%),制限した食材は,アルコール(49%),脂質(31%),塩分(31%)という回答が多かった.補完代替療法を43名(32%)の患者が取り入れており,サプリメント,ビタミン剤(28%)が多かった.がん患者は,一般的に健康に良いと考えられているものを摂取していた.終末期がん患者の食事,補完代替療法には科学的根拠が乏しいため,今後の研究が必要である.
著者
前倉 俊也 相木 佐代 田宮 裕子 久田原 郁夫 櫻井 真知子 吉金 鮎美
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.177-182, 2023 (Released:2023-07-19)
参考文献数
13

【目的】進行がん患者のせん妄に対するアセナピン舌下錠の有用性について評価する.【方法】2019年10月1日から2022年9月30日までに当院に入院し,せん妄に対する治療としてアセナピン舌下錠を投与された進行がん患者を対象に,その有用性に関して電子カルテを用いて後方視的に調査を行った.せん妄による興奮症状の改善度を評価するためにAgitation Distress Scale(ADS)を用いて評価した.【結果】解析対象となった患者は20例であった.対象となった患者の投与前のADS値の平均値(範囲)は12(4–17),投与後の平均値(範囲)は7.9(0–18),p値<0.001であり投与前後で有意な低下が認められた.【結論】アセナピン舌下錠はせん妄に対する薬物治療の選択肢の一つとして有用な可能性が示唆された.
著者
熊谷(木俣) 有美子 田口 奈津子 小川 恵子 岡本 英輝 並木 隆雄
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.781-787, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
33
被引用文献数
1 2

【目的】倦怠感はがん終末期に多くの患者が経験するが,それに対する鍼治療(接触鍼)の有用性につき検討を行った.【方法】2010年8月~2012年3月に当院緩和ケア病棟に入院,あるいは緩和ケアチームに紹介された患者のうち,16例を対象に介入を行った.通常治療に加えて3回/2週の鍼治療が行われ,主要評価項目として研究開始前後のCancer Fatigue Scale(CFS),副次的評価項目として研究開始前後と治療期間中における倦怠感と疼痛のNumerical Rating Scale(NRS),唾液中のアミラーゼ測定を調査した.【結果】13例が鍼治療を完遂し,倦怠感のNRSでは鍼治療後に改善が得られ,唾液中のアミラーゼ測定でも改善が得られたが,CFSでは有意差が得られなかった.副作用は認めなかった.【考察】終末期の倦怠感に対し,鍼治療は安全で有用な可能性のある介入であることが示唆された.
著者
大井 裕子 小穴 正博 林 裕家 相河 明憲 山崎 章郎 石巻 静代 鈴木 道明 近藤 百合子 山本 美和
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.346-350, 2009 (Released:2009-12-30)
参考文献数
12
被引用文献数
13 5

緩和ケア領域で経験する頭頸部がんや各種がんの皮膚転移, 非切除乳がんなどの体表部悪性腫瘍の出血に対しては, 有用な方法がなく止血に難渋していた. 今回われわれは, 中咽頭がん再発病巣から出血を繰り返し, 1日に5回前後の包交を必要としていた患者に対して, Mohsペーストを使用することにより著明な止血効果と滲出液やにおいの軽減が認められた症例を経験したので報告する. Mohsペーストは, 安価な材料を用いて院内調製が可能であり, その作用機序は主成分の塩化亜鉛が潰瘍面の水分によりイオン化し, 亜鉛イオンのタンパク凝集作用によって腫瘍細胞や腫瘍血管, および二次感染した細菌の細胞膜が硬化することによる. 本症例においてMohsペーストは, 予後の限られた患者が出血や滲出液, においに悩まされることなくQOLを維持するために効果的であった. 今後, 製剤の安定性や使用方法が確立され, 本法が普及することが期待される. Palliat Care Res 2009; 4(2): 346-350
著者
古田 弥生 木下 奈穂 杉本 博是 荒木 浩
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.367-371, 2018 (Released:2018-12-28)
参考文献数
19

乳がんの皮膚浸潤は出血や臭気を伴う滲出液のため,患者のQuality of Lifeを低下させる.局所処置療法としてMohsペーストや亜鉛華デンプン外用療法がある.Mohsペーストは正常組織の変性壊死による疼痛の有害作用があること,亜鉛華デンプン外用療法は止血・止臭効果が不十分という問題点がある.その問題点を改善した,紫雲膏・亜鉛華デンプン・メトロニダゾール(MNZ)療法の皮膚浸潤を伴う乳がん患者に対する,出血,臭気の緩和効果について報告する.症例は86歳女性.乳がんの皮膚浸潤に対して紫雲膏・亜鉛華デンプン・MNZ療法を行い,出血,感染兆候,臭気,滲出液,壊死組織が処置により客観的に改善し,ガーゼ交換の頻度は日に1回,処置は簡便であることが確認できた.紫雲膏・亜鉛華デンプン・MNZ療法は皮膚浸潤を伴う乳がん患者に対する,出血,臭気の緩和効果に有用で,従来の方法に加えて局所処置療法の一つになりうる可能性がある.
著者
小田切 拓也 山内 敏宏 白土 明美 今井 堅吾 鄭 陽 森田 達也 井上 聡
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.121-124, 2014 (Released:2014-11-01)
参考文献数
10

セフトリアキソンは, 1日1回の点滴でよく, 腎不全でも使用可能なため, 皮下点滴が可能ならば終末期がん患者に用いやすい. 2013年1月から2014年1月に聖隷三方原病院ホスピス病棟を退院し, セフトリアキソン皮下点滴を使用した患者を, 後ろ向きに抽出した. 主要評価項目は抗菌薬の奏功率(3日以内の症候の改善)で, 二次的評価項目は刺入部の炎症反応と, 他の抗菌薬の奏功率との比較である. 患者から包括的同意を得た. セフトリアキソン皮下点滴を用いたのは10人(尿路4人, 肺4人, 軟部組織2人), 奏功率は0.70 (95%信頼区間0.39~0.89)だった. 全員, 刺入部位に炎症反応を認めなかった. 他の抗菌薬使用者は16人19回, 奏功率は0.74 (同0.51~0.88)で, 両群の効果はおおむね等しかった. セフトリアキソンの皮下点滴は, 血管確保が困難な終末期がん患者の感染症治療において有用である.