著者
山口 乃生子 山岸 直子 會田 みゆき 畔上 光代 河村 ちひろ 星野 純子 浅川 泰宏 佐瀬 恵理子 島田 千穂
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.213-223, 2023 (Released:2023-10-23)
参考文献数
33

【目的】「もしも」のときの医療・ケアにおける話し合い行動意図尺度の信頼性と妥当性を検討した.【方法】計画的行動理論を参考に項目を作成した.Item-Level Content Validity Index(I-CVI)による内容的妥当性の検討,予備テストを経て原案とした.関東地方の20~79歳の一般人(n=860)を対象に横断的調査および1週間後の再テスト(n=665)をWebにて実施した.尺度の項目分析および信頼性係数(級内相関係数,クロンバックα係数)の算出,構成概念妥当性,併存妥当性を検討した.【結果】探索的因子分析にて6因子(結果評価,影響感,コントロール信念,遵守意思,規範信念,行動信念)が確認された.尺度全体のα係数は0.96,既知集団妥当性による効果量,併存妥当性による相関係数は中程度であった.【結論】本尺度の信頼性と妥当性は概ね確認された.
著者
小田切 拓也 森田 達也 山内 敏宏 今井 堅吾 鄭 陽 井上 聡
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.273-279, 2013 (Released:2013-10-22)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

【目的】終末期がん患者において, 短期間・低侵襲で感染症と腫瘍熱を鑑別する方法を開発することは, 症状緩和において有用である. 【方法】2009年4月から2011年8月の聖隷三方原病院ホスピス入院患者において, 腫瘍熱群と感染症群を後ろ向きに12人ずつ同定した. 両群の背景因子, 採血所見, 身体所見, 症状をカルテより抽出し, 比較した. 【結果】以下の項目で有意差を認めた. 平熱時と発熱時のC-reactive protein値の差(p<0.001), 平熱時と発熱時の白血球数の差(p=0.0017), 好中球率(p=0.023), リンパ球率(p=0.011), せん妄(p=0.012). 【結論】一般的採血項目とその時系列変化により, 腫瘍熱と感染症を鑑別できる可能性が示唆された.
著者
伊藤 まどか 松沼 亮 原納 遥 田崎 潤一 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.171-176, 2023 (Released:2023-06-21)
参考文献数
13

【緒言】ロペラミドのみでは難渋する難治性下痢に対して,オクトレオチドやセロトニン受容体拮抗薬の使用が一般に推奨されている.カルチノイド症候群に伴う難治性下痢に対して,オピオイドスイッチングのみで症状が改善した症例を経験した.【症例】28歳,女性.子宮頸がん術後再発に伴い疼痛,水様便を認めるようになった.ロペラミドを内服しても改善しない難治性下痢および骨転移に伴う右下肢痛のため,症状緩和のため緩和ケア病棟に入院となった.下痢の原因は精査の結果,カルチノイド症候群と診断し,増悪していた疼痛への対応も含めてフェンタニル貼付剤からモルヒネにオピオイドスイッチングを行ったところ,疼痛の軽減と下痢回数の明らかな改善を認め,自宅退院となった.【結論】本症例のようにオピオイド鎮痛薬を必要とする症例においては,難治性下痢に対してモルヒネを選択することで,疼痛と下痢の両方に対応できる可能性がある.
著者
餅原 弘樹 山本 泰大 川村 幸子 木下 寛也 古賀 友之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.165-170, 2023 (Released:2023-06-19)
参考文献数
8

Mohsペースト(以下,MP)は,悪性腫瘍による皮膚自壊創の症状を緩和させる.MPの使用は患者のQOLを改善させる一方でさまざまな使用障壁が報告され,とくに在宅医療での使用報告は少ない.われわれはガーゼを支持体としてMPを厚さ約1 mmにシート化する工夫により,在宅医療でMP処置を実践している.本報ではその具体例を,訪問診療を受ける乳がん患者への使用を通して報告する.患者の主な症状は滲出液による痒み,臭気,自壊創そのものによる左上腕の動かしにくさであったが,週1回の処置を3回実施した後,いずれの症状も改善した.MPのシート化により,物性変化や正常皮膚への組織障害リスク,処置時間や人員配置といった使用障壁が下がり,MP処置を在宅医療にて開始できた.MPはシート化により,居宅でも初回導入が可能であり,既存の報告と同様に症状を抑える効果が得られる可能性が示唆された.
著者
石川 彩夏 荒川 さやか 石木 寛人 天野 晃滋 鈴木 由華 池長 奈美 山本 駿 柏原 大朗 吉田 哲彦 里見 絵理子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.159-163, 2023 (Released:2023-06-08)
参考文献数
8

【緒言】緩和的放射線療法などによりがん疼痛が緩和されオピオイドを中止する際,身体依存による興奮,不眠,下痢などの離脱症候群を起こす場合があるため,適切に対処する必要がある.【症例】72歳男性.食道がん術後.経過中,仙骨,右腸骨転移による腰痛,右下肢痛が出現.オキシコドン(以下,OXC)を開始したが緩和せず,メサドン(以下,MDN)に切り替え,並行して緩和的放射線療法を施行した.疼痛は徐々に緩和し,MDNを漸減,OXCに切り替え後20 mg/日で患者の強い希望にて終了した.内服中止後から静座不能,不安,下痢が出現し離脱症候群と診断.OXC速放製剤,フェンタニル貼付剤,スボレキサントを併用し離脱症状の治療を行った.【考察】オピオイド中止時は10%/週より遅い減量が望ましく,最小用量に減量した後の中止が推奨される.離脱症状にはオピオイド速放製剤を用い,症状コントロールと並行して漸減を試みるとよい.
著者
京坂 紅 割田 悦子 中西 京子 太田 池恵 高塚 直能 深澤 義輝 余宮 きのみ
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.185-190, 2021 (Released:2021-05-31)
参考文献数
20

本邦のメサドン適正使用ガイドには,SAG法(先行強オピオイドをすべて中止してメサドンを開始する方法)が記載されている.当センター緩和ケア科では,詳細な評価のもと,メサドンを先行オピオイドに追加で導入した後に,先行オピオイドの漸減・中止する投与法を行っている.今回,この投与法を行った28例について,臨床的意義を考察した.28例中20例(71.4%)でメサドンは至適用量に達し,痛みの増悪や深刻な有害事象なく,メサドンのタイトレーションを安全に行うことができた.ただし,本方法が安全に行われるには,半減期が長いメサドンの薬理学的特性に留意し,メサドン導入後の鎮痛効果と有害事象についての詳細な評価と薬剤調整が必要であると考える.
著者
親川 拓也 村岡 直穂 飯田 圭 楠原 正俊
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.175-182, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【背景/目的】日本人進行がん患者の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)の治療での直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)の報告はこれまでない.【方法】エドキサバン(E群),アピキサバン(A群)で治療を開始した患者をそれぞれワルファリン(W群)で治療した患者と後向きに比較,検討した.【結果】E群とW群の比較では,非大出血はE群で17%,W群で27%(p=0.39),全ての出血はE群で30%,W群で57%(p=0.03),再発はE群が8%,W群で16%であった(p=0.43).A群とW群の比較では,非大出血はA群で10%,W群で27%(p=0.18),全ての出血はA群で26%,W群で57%(p=0.02),再発はA群が3%,W群は16%であった(p=0.17).【結語】DOACはW群と比較し,非大出血および再発が少ない傾向であった.全ての出血はDOACで有意に少なかった.日本人進行がん患者のVTEの治療にもDOACは有用である可能性がある.
著者
飯岡 由紀子 大場 良子 廣田 千穂 森住 美幸 小菅 由美 真鍋 育子 清崎 浩一 馬場 知子 関谷 大輝 小倉 泰憲 儀賀 理暁 黒澤 永
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-10, 2023 (Released:2023-01-24)
参考文献数
32

【目的】「多職種連携におけるコーディネート力尺度(MCAS)」を開発し,がん医療に携わる医療専門職を対象に信頼性と妥当性を検討することである.【方法】MCAS原案を作成し,医療専門職などを対象に内容妥当性・表面妥当性を検討した.さらに,医療機関に勤務しがん医療に携わる医療専門職者を対象に横断的質問紙調査を行った.探索的因子分析,既知グループ法,α係数算出,併存妥当性を検討した.研究倫理審査の承認を得て行った.【結果】MCASは探索的因子分析により4因子([討議を促進する力][基盤となる関係構築][セルフコントロール][課題解決に向けた取り組み])33項目となった.多職種連携研修会参加有,経験年数が長いほうがMCAS得点は有意に高かった.尺度全体および各因子のα係数は.80以上だった.併存妥当性検討は中程度の相関だった.【結論】MCASは尺度開発段階として信頼性と妥当性が概ね確保された.
著者
齋藤 美也子 間宮 敬子 笹田 豊枝 中西 京子 阿部 泰之 岩崎 寛
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.E1-E5, 2015 (Released:2015-04-18)
参考文献数
14

p.505 著書所属 誤:2) 旭川医科大学 教育センター 正:2) 旭川医科大学 教育センター(現 信州大学附属病院 信州がんセンター 緩和部門)p.508 著者所属 誤:2) Education Center, Asahikawa Medical University 正:2) Education Center, Asahikawa Medical University(currently Division of Palliative Medicine, Shinshu University Hospital Shinshu Cancer Center)
著者
丹波 嘉一郎 秋元 哲 村橋 昌樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.159-163, 2022 (Released:2022-11-21)
参考文献数
8

透析中止や緩和ケアに関する透析患者の考えには不明な面が多い.栃木県の透析施設の外来血液透析患者を対象に,透析中止や緩和ケアについてアンケート調査を行った.2170通送付し481名(22.2%)から有効回答を得た.その結果,透析療法を続けるのが大変な状況になった場合,透析中止を希望するかという問いに,「はい」と答えた者が160名(33.3%)だった.その中で118名(73.8%)がその決定は自分で行うと答えた.「現在何らかの苦痛を持っているか」という問いには107名(22.2%)があると答えた.緩和ケアについての認識では,緩和ケアのことを「知っている」と答えた者は60名(12.5%)に過ぎず,一般人へのがんの緩和ケアの認識の調査に比べて明らかに少なかった.今後,透析患者に緩和ケアについて啓発を進める余地が十分にあると考えられた.
著者
高田 慎也 江口 久恵 加藤 則夫 和泉 啓司郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.101-107, 2008 (Released:2008-10-24)
参考文献数
3

経管栄養カテーテルからモルヒネ細粒・顆粒製剤の投与が行われているが, カテーテルの閉塞やカテーテル, シリンジへの付着が問題となっている. そこで, 経管投与可能な4種のモルヒネ製剤(パシーフ®カプセル, カディアン®カプセル, MSツワイスロン®カプセル, モルペス®細粒)と内径が異なる2種類の経管栄養カテーテル(10.5 Fr, 13.5 Fr)と4種の注入剤(精製水, 牛乳, 経腸栄養剤, 嚥下補助ゼリー)にて簡便で正確な投与法を検討した. その結果, パシーフ®カプセルでは, 2種のカテーテルと嚥下補助ゼリー以外の3種の注入剤において, 残存顆粒数にばらつきがあるが有意差は認められず, 嚥下補助ゼリーにおいて有意に少ない結果であった. MSツワイスロン®カプセルは, パシーフ®カプセル同様13.5 Frカテーテルにおいて嚥下補助ゼリー以外の3種の注入剤間での有意差は認められないが, 嚥下補助ゼリーでは有意に少ない結果であった. 一方, 10.5 Frカテーテルと精製水との組み合わせにおいて, カテーテルの閉塞が認められた. この閉塞は, 嚥下補助ゼリーの使用により改善した. カディアン®カプセルでは, 2種のカテーテルと精製水, 牛乳, CZ-Hiのいずれの組み合わせにおいても閉塞を起こすが, 嚥下補助ゼリーでは, 2種のカテーテルで閉塞せずに通過させることが可能であった. モルペス®細粒は, 2種のカテーテルと4種の注入剤のどの組み合わせにおいても, 付着箇所が確認されたが, カゼインを含む注入剤である牛乳, 経腸栄養剤において付着量が少ない傾向にあり, カテーテルの内径の影響より注入剤の影響をより強く受ける結果が得られた. 今回の検討により, 各製剤に合わせた注入剤を選択することで, 医療従事者や患者が在宅で投与する際にも簡便で正確に投与可能な方法を確立できたと考える. Palliat Care Res 2008;3(2):101-107
著者
小髙 桂子 藤田 淳子 佐藤 雄紀
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.179-184, 2021 (Released:2021-05-31)
参考文献数
26

【緒言】筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)の患者の難治性疼痛に対し,フェンタニル貼付剤を導入し,患者の苦痛緩和に有効であった症例を経験したので報告する.【症例】75歳男性.2010年ごろより歩行困難,全身の疼痛を自覚し,2013年にALSと診断された.2019年に胃瘻造設・気管切開となり,全身痛にモルヒネ塩酸塩を1日6回使用していたが効果不十分であったため,フェンタニル貼付剤を導入することで安定した疼痛緩和が可能となった.【考察】ALSの疼痛緩和に対するモルヒネの有効性は確認されている.しかしながら投与経路・投与法の煩雑さや効果の切れ目による苦痛の自覚という問題点もあり,フェンタニル貼付剤はその欠点を改善できる可能性がある.
著者
青木 美和 升谷 英子 畠山 明子 髙尾 鮎美 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-31, 2022 (Released:2022-03-14)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,看護師の進行がん患者への積極的治療の推奨とその関連要因を明らかにすることである.【方法】A県内のがん診療連携病院2施設の看護師383名に無記名自記式質問紙調査を実施.2事例への積極的治療の推奨,推奨を決定づける看護師の価値観を尋ね,単変量および多変量解析を行った.【結果】有効回答の得られた300名(有効回答率78.3%)を分析した.治療の推奨には,患者の予後やPerformance Status(PS)を問わず患者の希望や生存期間の延長を重視する看護師の価値観が,予後1カ月の患者には副作用に伴う不利益の回避を重視する価値観が関わっていた.また,予後6カ月の事例には治療を推奨するが,予後1カ月の事例への治療の推奨は看護師の価値観の違いにより二分された.【結論】看護師の治療の推奨には看護師の価値観が関わっていた.看護師は,患者の治療目標を共有したうえで,治療の意思決定のプロセスに関わる必要性が示された.
著者
清田 貴茂 高田 彰子 松本 陽 大塚 誠 糸谷 真保 足立 徹 大木 玲子 木許 賢一 小副川 敦 杉尾 賢二 西川 和男 西田 陽登 駄阿 勉 浅山 良樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.17-22, 2022 (Released:2022-02-14)
参考文献数
12

眼症状を有する脈絡膜転移に放射線照射を行い,症状緩和の得られた3例を報告する.症例1は71歳女性.右乳がん術後7年目に多発転移を認め化学療法が行われていた.術後16年目に右眼痛と視力障害を伴う右脈絡膜転移が出現し,同部への緩和照射により,右眼痛の軽減と腫瘍の縮小を認めた.症例2は54歳男性.右眼痛および視野異常を自覚し,精査にて右下葉肺がんおよび右脈絡膜を含む全身多発転移と診断された.右脈絡膜転移巣への緩和照射により,眼痛の改善と腫瘍の縮小を認めた.症例3は71歳女性.右上葉肺がん術後1年5カ月で左眼痛が出現し,精査にて左脈絡膜転移の診断となった.同部に対して緩和照射を施行し,照射後は腫瘍の縮小と左眼痛の一時的な消失を認めた.脈絡膜転移に対する緩和的放射線治療は,眼症状の軽減に有効と思われた.
著者
大場 洋子 田中 輝明 佐藤 雅子 横田 勲 瀧川 千鶴子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.307-314, 2021 (Released:2021-12-10)
参考文献数
25

【目的】終末期がん患者の生存期間ががん治療医の経験に基づく予後予測よりも短い患者側の要因,および死亡までの経過との関連を検討する.【方法】KKR札幌医療センター緩和ケア病棟に予後1〜3カ月として紹介され,その後3カ月以内に死亡退院した終末期がん患者を対象に,後方視的検討を行った.【結果】対象患者249例のうち,実際の生存期間が1カ月未満であった患者は102例(OS1, 41%),1カ月以上3カ月以内の患者は147例(OS1–3, 59%)であった.Japan Coma Scale II以上の意識障害,経口摂取量数口以下を呈する患者がOS1–3に比べOS1で有意に多かった.2日以内で死に至る急な容態変化による死亡はOS1で有意に多かった.【結論】上記要因を持つ患者の生存期間は予測予後より短い可能性があるが,予後の不正確性に与える医師側の要因を検討する必要がある.
著者
仲野 宏紀 明石 直子 和田 知未 井出 恭子 井上 敦介 宮部 貴識 山内 一恭
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.261-265, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
15

せん妄は終末期がん患者の30〜40%に合併し,死亡直前は患者の90%がせん妄状態にあるとされるが,治療抵抗性で,嚥下困難や静脈確保困難により薬物投与経路が制限される場合も多い.今回,終末期がん患者のせん妄に対しアセナピン舌下錠の使用を経験したので報告する.緩和ケアチームが介入し,アセナピン舌下錠を投与した患者6名を対象とした.アセナピンは,せん妄による不穏に対し,他の抗精神病薬が無効あるいは使用できないために選択され,明らかな有害事象なく一定の鎮静効果を認めた.全例が嚥下あるいは呼吸機能障害のために,制御困難な呼吸困難や窒息感を合併していた.アセナピン舌下錠は,内服や静脈確保困難な終末期せん妄患者において,せん妄による不穏制御の選択肢の一つになりうると考える.
著者
田中 萌生 野本 優二 土田 恵美子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.247-251, 2021 (Released:2021-07-29)
参考文献数
18

Pancoast腫瘍は比較的稀な疾患であるが,腫瘍が神経叢を侵すためしばしば強い痛みを伴いその疼痛コントロールに苦慮する.またPancoast腫瘍では放射線治療ががんそのものの治療としてだけでなく除痛目的としても選択されることが多い.Pancoast腫瘍の放射線治療は頭部固定具を用いて治療体位の再現性がよいことを確認してから治療を行う.このため安静保持の必要があるが,その強い痛みで安静保持ができない場合は治療困難となる.今回Pancoast腫瘍による強い上肢痛があり,安静仰臥位を保つことが困難であった患者に対して持続頸部硬膜外ブロックで疼痛コントロールを行い,放射線治療を完遂できた症例を経験した.硬膜外カテーテル留置による感染や出血のリスクとの兼ね合いはあるが,本疾患で疼痛コントロールに苦慮する場合は持続頸部硬膜外ブロックの併用が提案される.
著者
辻川 真弓 犬丸 杏里 坂口 美和 船尾 浩貴 武田 佳子 玉木 朋子 竹内 佐智恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.215-224, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
37

【目的】保健医療福祉職を対象にAdvance Care Planning(ACP)を促すworkshop(WS)を行い,今後ACPを行いたいと思う人の割合,および参加者の死生観変化から,WSがACPの動機づけとなるかを明らかにする.【方法】WS後に家族や大切な人とACPを行う意思の有無により参加者を2群に分け,死生観およびWSの感想をWS前と比較した.【結果】分析対象は91名,ACPを行いたいと思う群は42名(46.2%)であった.死生観はWS前に比して,両群ともに,「死後の世界観」「死への恐怖・不安」が有意に低下した.ACPを行いたいと思う群では,「死からの回避」(効果量−0.42)「人生における目的意識」(効果量0.51)が有意に肯定的に変化した.【結論】WSによりACPを行おうとする人は半数程度であり,人生における目的意識の高まり,死を回避しない姿勢の関与が示唆された.
著者
天野 晃滋 木内 大祐 石木 寛人 松岡 弘道 里見 絵理子 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.147-152, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
27

人は生きるために食べるが,食事は社会的存在である人にとってそれ以上の意味をもつ.進行がん患者は,腫瘍・治療の副作用・がん悪液質のため「食べないといけないが食べられない」「食べるようにしているが痩せてしまう」というような食欲不振・体重減少を主因とする食に関することで苦悩し,生活をともにする家族も患者とは異なる苦悩を有することが近年の研究でわかってきた.これらを踏まえ,われわれは患者と家族の食に関する苦悩のような心理社会的苦痛における緩和ケア・サポーティブケア・栄養ケアを統合した多職種連携ケアの重要性を指摘し,患者と家族の食に関する苦悩の評価尺度を作成している.現時点では,患者と家族の食に関する苦悩のケアは世界的に確立されておらず,これら苦悩の多職種による統合ケアを開発すること,さらにこの統合ケアの効果を検証すること,また将来的には,本邦のがんセンター・がん診療拠点病院での実践・普及を目指す.
著者
大津 秀一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.317-322, 2010 (Released:2010-08-10)
参考文献数
13

【目的】ケタミンを在宅で長期間にわたって使用して, 前立腺がんの難治性骨転移痛を緩和している症例について報告する.【症例】50歳代, 男性. 前立腺がん, 骨盤骨転移. 硬膜外カテーテルからの塩酸モルヒネ80mg/dayの投与, 2度の放射線療法などの集学的治療によっても骨転移痛, 特に体動時痛が顕著だった. ケタミンが著効して疼痛が大幅に軽減し, 長期在宅療養が可能となった.【結論】オピオイド抵抗性の難治性骨転移痛の緩和において, ケタミンは重要な役割を担っていると考えられる. ケタミンは在宅でも使用継続可能なことから, 在宅における難治性疼痛緩和の選択肢の1つとして考慮されてよい治療法であると考えられる. Palliat Care Res 2010; 5(2): 317-322