著者
熊谷 有記 田渕 康子 室屋 和子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.139-145, 2021 (Released:2021-05-10)
参考文献数
13

【目的】がん患者の家族と非がん患者の家族に対する看取りのパンフレットの使用実態を明らかにする.【方法】全国の訪問看護ステーション2,000カ所に質問紙調査を行い,看取りのパンフレット使用経験を有する224カ所の回答を分析対象とした.【結果】パンフレット使用頻度は,がん患者の家族(95.1%)が非がん患者の家族(76.8%)よりも高かった.使用時に「家族の心配や不安の程度」「家族の在宅死の希望」「患者の在宅死の希望」が,両家族ともに84%以上考慮された.渡す時期では「(最期の)1週間から1カ月」が最も多く,その割合は,がん患者の家族で56.8%,非がん患者の家族で63.4%であった.渡す時期の決定に難しさを感じている割合は,がん患者の家族で59.6%,非がん患者の家族で69.7%であった.【結論】パンフレットを渡す適切な時期を明らかにすることで,パンフレットの使用が広がると考える.
著者
吉岡 大樹 河野 祐輔 福田 富滋余 碇 秀樹 國崎 忠臣
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.301-304, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
16

【目的】モルヒネ投与により, 排便コントロールが困難な患者に対してミソプロストールを投与したところ, 排便状態の改善が得られた症例を経験した. 【症例】70歳代, 男性, 膀胱がん術後再発, 右骨盤転移. 右骨盤の疼痛に対して, 放射線治療および硫酸モルヒネ徐放剤の投与で安静時の疼痛緩和が得られた. モルヒネ投与による排便困難と腹部膨満の症状があり, 複数の緩下剤を併用投与しても高度便秘と水様便を交互に繰り返すという状態が続いていた. ミソプロストール800μg/日を投与したところ, 定期的な自力排便がみられるなどの排便状態の改善が得られた. 【考察】ミソプロストールは小腸の蠕動運動を亢進させ, 水およびナトリウムの吸収を阻害する. 本症例は, この作用機序により排便状態の改善が得られたと考えられる. ミソプロストールはオピオイド投与による難治性の便秘に対する治療薬の選択肢の1つとして有用であると考える. Palliat Care Res 2008:3(1);301-304
著者
廣田 真由美 表 志津子 岡本 理恵 中田(市森) 明恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.345-353, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
20

退院支援看護師の,積極的治療が困難になったがん患者への退院支援実践能力を明らかにすることを目的とした.全国のがん診療連携拠点病院120施設の退院支援看護師(以下,DPN) 477名に質問紙調査を行い,198名から有効回答を得た(有効回答率41.5%).対象者のDPN経験年数の中央値は2.5年で,90.2%が看護師経験10年以上であった.退院支援実践能力のうち,退院後のケアバランスの調整力は看護師経験とDPN経験の長い群で有意に高く,退院後のケアバランスの見積もり力と療養場所の移行準備力はDPN経験の長い群と在宅・地域ケアの勤務経験のある群で有意に高かったが,患者家族との合意形成力には経験による有意な差が認められなかった.退院支援の質向上のために,個々の経験を生かした人員配置やベテランDPNの経験知を共有できる仕組みづくりが必要であることが示唆された.
著者
添田 遼 三橋 麻菜 岡野 清音 横澤 愛子 奥津 輝男
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.167-174, 2020 (Released:2020-07-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【目的】機能的自立度評価法(FIM)を使用し,死亡前6週のがん患者のADLの項目別の推移を検討すること.【方法】研究デザインは後方視的観察研究である.鶴巻温泉病院 緩和ケア病棟を死亡退院した18歳以上のがん患者55名を対象とし,FIMデータは診療録等から死亡直前(0週)から遡って6週間分を収集した.【結果】FIM合計点は死亡前6週55点から0週25点へ低下した.運動項目では食事・整容・排尿管理,認知項目では社会的交流・表出が死亡直前まで他の項目よりも自立度の高い項目であった.【考察】ADLへの支援は,死亡前2週までは,徐々に低下するベッド外での動作を安全かつ安楽に行えるように支援を行い,ベッド上での動作は死亡直前まで自立を続けられるように支援を行うことが望ましいと考える.
著者
大音 三枝子 薩摩 由香里 梅田 節子 新城 拓也 西本 哲郎 池末 裕明 室井 延之 橋田 亨
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.147-151, 2020 (Released:2020-06-11)
参考文献数
14

がん疼痛に対して,ヒドロモルフォン注射剤から投与を開始し鎮痛効果を評価した研究は少なく,注射剤と経口剤の換算比を検討した研究もほとんどない.そこで,中等度から高度のがん疼痛を有する患者において,ヒドロモルフォン注射剤から経口剤に変更する際の換算比の検討を目的とし,症例集積調査を行った.2018年7月から2019年12月に,ヒドロモルフォン注射剤から経口剤へ変更した入院がん患者を対象とし,1:5の換算比で変更した後の鎮痛効果と副作用の発現状況を調査した.対象患者6例のうち3例では適切な鎮痛効果が得られたが,1例で鎮痛効果が不十分で増量を要し,2例で有害事象の眠気が出現し減量を要した.この結果より,ヒドロモルフォン注射剤から経口剤に変更するときは,症例ごとに変更後の鎮痛効果と有害事象を慎重に観察し,投与量を調節する必要性が示唆された.
著者
坂下 美彦 長島 律子 藤里 正視
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.111-116, 2020 (Released:2020-05-30)
参考文献数
17

【緒言】スピリチュアルケアは緩和ケアの課題の一つであるが,構造化された介入法は限られている.スピリチュアルケアのためにディグニティセラピー(DT)の要素を取り入れたディグニティ個別音楽療法プログラム(DMT)を独自に開発したので報告する.【プログラム】DTの経験などをもとに,音楽療法士を含めた研究グループで開発した.【手順】最初に「あなたが人生で最も生き生きとしていたのはいつごろですか? そのころを思い出させてくれる曲は何かありますか?」などの質問をもとに患者が大切な曲を選ぶ.次にその曲を病室で音楽療法士が電子ピアノ演奏する(個別音楽会).演奏後に患者が思いや人生のエピソードなどを自由に語れるように促す.【考察】DMTを実施した患者からは大変好評を得ている.構造化されたプログラムであるため,いろいろな所で実施できる可能性がある.スピリチュアルケアとしての有用性および実施可能性を調査予定である.
著者
工藤 朋子 古瀬 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.128-136, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

【目的】訪問看護ステーションにおける遺族ケアの実施状況と今後の課題を明らかにする.【方法】全国の訪問看護事業所1,000件を対象に質問紙郵送調査を行った.【結果】有効回答296件(29.8%),遺族ケアは,積極的に実施6.1%,必要時実施73.1%,ほとんど行っていない20.7%だった.自宅訪問は91.4%が実施,常に行っているケアは,ねぎらいの言葉が73.6%と最も多かった.関係機関へ連絡している事業所は32.4%で,認知症を抱え独居となる遺族の見守りなどを依頼していた.連絡していない理由は,どのような場合に連絡するかわからない17.5%だった.【結論】約9割が自宅訪問を実施していたが,情緒的サポートが主だった.訪問看護師には,介護保険以外に利用できる保健福祉サービスなど,生活の立て直しを図る情報を遺族に提供し,継続的な関わりを要する遺族を早期に見極め,関係機関へ引き継ぐ力が求められる.
著者
大濱 悦子 福井 小紀子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.269-279, 2019 (Released:2019-12-17)
参考文献数
106
被引用文献数
5

【目的】国内外のアドバンスケアプランニング(ACP)を比較し,わが国で今後求められる知見について検討する.【方法】医中誌およびMEDLINEで検索可能で2019年6月までに発行された日本語または英語の論文を対象に文献検討を行った.前者ではシソーラス「アドバンスケア計画」で検索可能な原著論文,後者ではMeSH「ACP」で検索可能なレビューを対象とした.【結果】MEDILINEで849本のレビュー(約500本が米国での執筆),医中誌では186本の原著論文が検索された.日本のACP研究の数・エビデンスレベルは米国に比べ遅れを取っていること,行政および学会等で共通したACPの定義が設定されていないこと,在宅療養者を対象とした介入研究の知見はほとんどないことが明らかとなった.【結論】日本の文化的・社会的背景を考慮したACPの定義設定とともにとくに在宅療養者への効果的な介入についてのエビデンスの構築が求められる.
著者
佐竹 陽子 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.201-208, 2018 (Released:2018-06-14)
参考文献数
23
被引用文献数
3

研究目的は,救急領域で終末期ケアを実践する看護師の葛藤を明らかにすることである.救急看護に従事する看護師11名を対象に半構造化面接を実施し,内容分析を行った.その結果,[救命と看取りの混在][患者や家族のニーズの捉えにくさ][看護の目標の不確かさ]という救急領域の特徴が看護師の葛藤を引き起こしていた.葛藤には,[終末期ケアを実践する環境への葛藤][倫理原則に関する葛藤][家族や医療チームとの関係性から生じる葛藤][確信がもてないまま実践する看護ケアへの葛藤]という看護の役割を果たせないと感じる葛藤や,[看護師としての死生観がうむ葛藤]という看護師の心理的負担があった.救急という特殊な状況での終末期ケアとして看護の役割を検討すること,看護の目標は経過に応じて検討し医療チームや家族と共有すること,看護師への心理的支援としてデブリーフィングの機会をもつことの必要性が示唆された.
著者
市原 香織 宮下 光令 福田 かおり 茅根 義和 清原 恵美 森田 達也 田村 恵子 葉山 有香 大石 ふみ子
出版者
Japanese Society for Palliative Medicine
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.149-162, 2012
被引用文献数
1

【目的】Liverpool Care Pathway (LCP)は, 看取りのクリニカルパスである. LCP日本語版のパイロットスタディを実施し, LCPを看取りのケアに用いる意義と導入可能性を検討する. 【方法】緩和ケア病棟入院患者を対象にLCPを使用し, ケアの目標達成状況を評価した. 対象施設の看護師に, LCPの有用性に関する質問紙調査を行った. 【結果】LCPに示されたケアの目標は, 80%以上の患者・家族において達成されていた. 対象看護師の65%以上が, 看取りの時期の確認, ケアの見直し, 継続的で一貫したケアの促進, 看護師の教育においてLCPを有用だと評価した. 【結論】LCPは緩和ケア病棟での看取りのケアと合致し, 看取りのケアの指標を示したクリニカルパスとして導入可能であることが示された. 看護師の評価では, LCPが看取りのケアの充実や教育における意義をもつことが示唆された.
著者
小川 真生 道渕 路子 我妻 孝則 西川 美香子 川﨑 康弘 土田 英昭 寺口 奏子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.501-505, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
18

【緒言】終末期の難治性せん妄が数日間の持続的な深い鎮静後に改善した事例を経験した.【症例】脳実質浸潤を伴った57歳女性の頭頸部がん患者の異常行動を伴ったせん妄が,急激に悪化した.オピオイドスイッチや薬物治療などを行ったが,異常行動は改善しなかった.難治性の終末期せん妄と診断され,家族は鎮静を希望した.ミダゾラムによる間欠的鎮静を開始し,さらに持続的鎮静へと移行した.その数日後,家族の鎮静継続への葛藤を認め,10日後に鎮静を中止した.覚醒後,患者の異常行動は消失し,軽度の意識障害はあったが,家族とのコミュニケーションを保ちながら2カ月後に死亡した.【考察】鎮静に伴う多種類の薬剤の中止はせん妄改善の原因の一つと考えられる.緩和医療学会のガイドラインにおいて家族の気持ちの確認以外の持続鎮静中止の基準は明確ではなく,よりエビデンスレベルの高い鎮静中止の基準が必要であると考えられる.
著者
上林 孝豊 中務 博信 本井 真樹 加藤 直子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.301-306, 2014 (Released:2014-06-24)
参考文献数
10

【目的】当院, 緩和ケア病棟入院中のがん患者に生じた感染症に対する抗菌薬治療の現状と, その効果を明らかにすること. 【方法】2012年5月1日から2013年4月30日までの期間に, 当院緩和ケア病棟入院中に注射用抗菌薬治療が行われた感染症症例を対象とし, 電子カルテによる後ろ向き調査で行った. 【結果】当病棟に入院した症例のうち, 44.3%に注射用抗菌薬が投与されていた. 感染症の内訳としては, 肺炎が最多(63.6%)で, 次いで尿路感染が多かった(18.2%). 抗菌薬の効果に関しては, 「有効」59.1%, 「不変」9.1%, 「無効」13.6%, 「不明」18.2%であった. 抗菌薬治療の効果は, 尿路感染症で得られやすい一方, 死期が近いタイミングでは得られにくい可能性が示唆された. 【結論】感染症に対する抗菌薬治療は, 緩和ケア病棟においても, よく行われている現状と, 一定効果のあることが明らかとなった.
著者
阿部 泰之 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.114-120, 2014 (Released:2014-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

【目的】本研究は, 地域における医療介護福祉の連携の良さを評価する尺度の信頼性・妥当性を検証することを目的に行われた. 【方法】在宅で過ごす患者に関わる医療福祉従事者を対象とした「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」(森田ら, 2013)を広範な職種, 疾患に適応可能となるよう改変し, 26項目からなる「医療介護福祉の地域連携尺度」を作成した. 362名の医療介護福祉従事者を対象として, 信頼性・妥当性を検証した. 【結果】内的一貫性は良好であった. 探索的因子分析でもともとの尺度と同じ因子構造が抽出された. Palliative care Difficulties Scaleの地域連携に関する困難感と有意な逆相関が認められた. 地域連携の全般的評価, 多施設多職種対象の集まりへの参加回数, 困った時に助けになってくれる人の数との間に有意な関連があった. 【結論】「医療介護福祉の地域連携尺度」は, 地域の医療介護福祉の包括的な連携を表す指標として有用である.
著者
佐藤 将之 宮森 正 小柳 純子 村瀬 樹太郎 坂 祥平 石井 信朗 西 智弘 山岸 正 石黒 浩史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.515-522, 2013 (Released:2013-06-07)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

【目的】脊髄圧迫症状は, がん患者のQOLを大きく低下させる合併症である. 脊髄圧迫症状を合併した患者に対するデキサメタゾン大量療法の有効性や副作用についてレ卜口スペクティブに検討し, 報告した. 【症例】2009年5月から2011年9月までに当院でデキサメタゾン大量療法のみを, 脊髄圧迫症状を合併した8症例に対して行った. 【結果】放射線照射や外科的治療を併用できずデキサメタゾン大量療法のみを行った患者8例のうち, 徒手筋力テストの改善を4例(50.0%)に, 改良Frankel分類の改善を5例(62.5%)に認めた. デキサメタゾン大量療法のみで, 歩行不可能であった7例のうち1例(14.3%)が自力歩行での退院となった. 自験例では重篤な副作用はなかった. 【考察】放射線照射や外科的治療を受けることができない脊髄圧迫症状に対してのデキサメタゾン大量療法が神経症状を改善する選択肢として有用である可能性が示唆された.
著者
黒田 佑次郎 岩満 優美 轟 慶子 石黒 理加 延藤 麻子 松原 芽衣 岡崎 賀美 山田 祐司 宮岡 等
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.306-313, 2012 (Released:2012-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
3

【目的】緩和ケア病棟(以下, PCU)入院中の患者とその家族を対象に, 入院前後のPCUに対する認識と印象の変化を質的に検討した. 【方法】PCUの入院患者5名と家族9名に半構造化面接を実施し, 要約的内容分析を行った. 【結果】入院前の印象は, 患者では“想像がつかない”など「特に印象がない」を含む2カテゴリー, 家族では“最期を迎えるところ”や“穏やかに過ごす場所”など「PCUの環境」を含む5カテゴリーが得られた. 入院後の印象は, 患者では“心のケアが重要”など「PCUでのケア」を含む3カテゴリー, 家族では“個室でプライベートがある”など「PCUの環境」を含む7カテゴリーが得られた. 【結論】PCU入転院に際し, 家族は“安心が得られる”と“最期を迎えるところ”という気持ちが併存していることが示された. また, 入転院前に比し入転院後は, 患者と家族ともにPCUに対して好意的な印象をもっている可能性が示唆された.
著者
森田 達也 野末 よし子 宮下 光令 小野 宏志 藤島 百合子 白髭 豊 川越 正平
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.317-322, 2012 (Released:2012-04-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は, 在宅特化型診療所とドクターネットの両方が存在する1都市におけるがん患者の自宅死亡率の推移を明らかにすることを通じて, 在宅特化型診療所とドクターネットの地域緩和ケアにおける役割についての洞察を得ることである. 緩和ケアの地域介入研究が行われた1地域でがん患者の自宅死亡率を2007年から2010年まで取得した. 自宅死亡率は, 2007年の7.0%から2010年には13.0%に増加した. 自宅死亡総数に占める在宅特化型診療所の患者の割合は49%から70%に増加したが, 在宅特化型診療所以外の診療所が診療したがん患者の自宅死亡数も63名から77名と減少しなかった. 在宅特化型診療所と一般の診療所のドクターネットは排他的に機能するものではなく, 両方のシステムが地域に存在することにより自宅で過ごすがん患者の緩和ケアの向上に寄与する可能性が示唆された.
著者
石井 容子 伊藤 奈央 松村 優子 横山 孝子 青山 真帆 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.283-291, 2023 (Released:2023-12-27)
参考文献数
16

【目的】緩和ケアの包括的な評価尺度であるIntegrated Palliative care Outcome Scale(IPOS)の非がん患者への適用を検討する.【方法】非がん患者と患者をケアする医療者, 各20名にIPOSの調査票へ回答してもらい,その調査票に対するコグニティブインタビューを行った.インタビュー内容は,質的分析手法である内容分析を用いて分析した.【結果】患者・医療者ともに約半数から9割がIPOSの全17項目に対して答えづらさやわかりにくさを感じなかったと回答し,表面的妥当性が確認された.また,分析結果を専門家で検討し,IPOSの内容的妥当性が確認され,非がん患者に特徴的なIPOSの項目も明らかになった.【結論】非がん患者に対するIPOSの表面的・内容的妥当性が確認され,IPOSは非がん患者の緩和ケアの包括的な評価ツールとして活用できることが明らかになった.
著者
奥田 有香 栗山 俊之 月山 淑 松田 能宣 山口 崇 森 雅紀 下川 敏雄 川股 知之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.247-252, 2023 (Released:2023-11-24)
参考文献数
12

【目的】終末期がん患者の呼吸困難に対してオピオイドのみではコントロールが難しくミダゾラムの併用を必要とした要因を検討した.【方法】2019年4月から2021年7月に当院で呼吸困難緩和目的にオピオイド注射剤を導入したがん患者を抽出し,オピオイドのみ投与したオピオイド単独群,オピオイドにミダゾラムを併用したミダゾラム併用群に分類し後方視的に検討した.【結果】適格患者は107人で,オピオイド単独群85人(79.4%),ミダゾラム併用群22人(20.6%)であった.単変量解析では60歳未満(p=0.004)と男性(p=0.034),多変量解析では60歳未満(OR=5.34, 95%CI: 1.66–17.21; p=0.005)がミダゾラム併用と有意に関連していた.【結論】呼吸困難に対してオピオイドを使用したがん患者において60歳未満がミダゾラム併用に関連する因子であった.
著者
山本 泰大 渡邊 紘章 櫻井 愛菜 近藤 綾子 浅井 泰行 木原 里香 小田切 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.55-58, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
11

【緒言】終末期がん患者に対して,痙攣発作の治療を目的とした抗痙攣薬の使用は臨床現場において稀でなく,経口および静脈投与不可能な症例への治療選択が求められることは少なくない.われわれは終末期がん患者で末梢血管の確保ができない症例に対してレベチラセタム(LEV)注を皮下注射した症例を3例経験したため報告する.【症例】3症例の年齢は83,75,82歳で,LEV皮下注射の投与時期は予後1カ月程度であった.3例ともLEVを点滴静脈から皮下へ投与経路変更した事例である.LEV皮下注射の実施後,痙攣の増悪や注射部位反応,その他の有害事象は確認できなかった.【考察】末梢血管確保の不可能な終末期がん患者においてLEVの皮下注射は痙攣発作の治療の選択肢の一つとなり得ると考える.