著者
稲葉 通将 大畠 菜央実 高橋 健一 鳥海 不二夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2392-2402, 2016-11-15

本研究では,人狼ゲームにおけるプレイヤの発話内容を表現するタグを設計し,それらのタグを人狼BBSにおけるプレイヤの発話に付与し分析を行った.分析では,襲撃対象,および処刑対象の決定にプレイヤごとの発話の傾向がどのように影響するのか,また,ゲーム全体のコミュニケーションの傾向とゲームの勝敗の関係について調査した.分析の結果,人間側,人狼側の各プレイヤが自陣営の勝利のために効果的なコミュニケーション戦略,および特定のコミュニケーションとプレイヤの行動の関係が明らかとなった.
著者
粕川 正充 角田 博保 森 裕子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1198-1205, 1993-05-15
参考文献数
3
被引用文献数
10

R.JoyceとG.Guptaは個人認証を行う場合に、個人ごとの特徴をあるキーが打たれてから次のキーを打つまでの時間(以下、これを打鍵間時間と呼ぷ)に求め、その個人差を判定の基準とした個人認証手法を提案した。また筆者らはこの手法を改良し、新JG手法と呼ぷ別方式を提案した。さらに解析を進めて打鍵間時間の分布を調べるうちに、筆者らは連続多打鍵間の打鍵間時間の変動が、それを構成する個々の打鍵間時間の変動よりも小さくなる場合があることを見いだした。以下、この現象をアルペジオ打鍵と名付ける。このアルペジオ打鍵を利用することによって、JoyceとGuptaの提案した方法よりも効率的な個人認証手法を考案することができた。本論文では考案した手法について、JG手法、新JG手法との比較のもとに説明し、実験を通じて新手法の優位性を検証する。
著者
阿部 博 敷田 幹文 篠田 陽一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.1006-1015, 2018-03-15

大規模なイベントネットワークではネットワーク管理手法の1つとしてsyslogを用いた運用監視が行われる.syslogメッセージに含まれるキーワード検知や閾値による異常検知などネットワークの異常が運用者に通知される.マルチベンダ機器によって構築される特殊なイベントネットワークでは,ログの意味解析やキーワードによる異常検知が行えない環境下であることが多い.本論文ではイベントネットワークで収集されるsyslogの総量による分析を行い異常を検知する手法を提案する.株式取引で用いられるボリンジャーバンドアルゴリズムを利用し,Interop Tokyo 2016で構築されたShowNetで収集されたsyslogの実データを用いて統計学的手法において軽量な計算による異常検出を行い,ボリンジャーバンドアルゴリズムの有効性を評価する.
著者
末田 航 味八木 崇 暦本純一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1465-1474, 2011-04-15

モバイル機器では,位置情報を利用したアプリケーションが多用されている.GPSなどの位置測位手段から得られる緯度経度は,数値情報でありそのままでは利用者にとって直感的ではないので,それを住所や番地の表現に変換するリバースジオコーディングが必要である.しかし,現状のリバースジオコーディングでは行政的な地番に基づいて変換を行うため,モバイルアプリケーションを利用する利用者の主観的な空間意識とは必ずしも一致しない(たとえば「表参道」「ハチ公前」のような表現は地番ではないため利用不可能だった).本研究では,インターネット上の緯度経度情報付きの大量の写真とそのタグを実世界での集合知と見なし,それを集積・解析することで,人々の主観的な感覚に合致したリバースジオコーディングを自動的に行う「Social Reverse Geocoding」(SRG)を提案し,その構築の方式と,モバイルアプリケーション応用例を示す.SRGでは,統計学的手法であるカーネル密度推定法とSVMを用いることで,都市生活者としての利用者の空間意識により近い空間語とその範囲を自動推定する一連の方式を提案している.そして各種モバイル使用下での位置情報表現がより自然になり,また位置情報つき写真への自動タグレコメンデーションや,ライフログのサマライズが可能なアプリケーションを提案実装した.また,提案手法の都市計画やマーケティング分野への有効性を検証するために,従来手法による認知地図との比較,今後解決すべき問題と,関連分野への応用について議論する.In this paper, we propose a concept that provides highly legible geographical information using users' tags from Flickr's geotagged photos for mobile user interfaces. Our proposed method, Social Reverse Geocoding, aims to realize visualizing the image of the environments in our mind through the use of an navigation system. In general, people use a number of factors to recognize a place, including landmarks, station names, and famous events. In this study, we utilize tags from geotagged photos as social-tagging from the real world to visualize the image of our city using the folksonomic method.
著者
山田 寛康 工藤 拓 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.44-53, 2002-01-15
参考文献数
16
被引用文献数
39

本稿では,機械学習アルゴリズムSupport Vector Machine(SVM)を用いて日本語固有表現抽出を学習する手法を提案し,抽出実験によりその有効性を検証する.固有表現抽出規則の学習には,単語自身,品詞,文字種などを素性として使用するため,その素性空間は非常に高次元となる.SVMは汎化誤差が素性空間の次元数に依存しないため,固有表現抽出規則の学習においても過学習を起こすことなく汎化性能の高い学習が実現できる.また多項式Kernel関数を適用することで複数の素性の組合せを考慮した学習が計算量を変えることなく実現できる.CRL固有表現データを用いてIREX固有表現抽出タスクに対して実験を行った結果,語彙,品詞,文字種,およびそれら任意の2つの組合せを考慮した場合,交差検定によりF値で約83という高精度の結果が得られた.In this paper, we propose a method for Japanese named entity (NE)extraction using Support Vector Machines (SVM). The generalizationperformance of SVM does not depend on the size of dimensions of thefeature space, even in a high dimensional feature space, such as namedentity extraction task using lexical entries, part-of-speech tags andcharacter types of words as the primitive features. Furthermore, SVMcan induce an optimal classifier which considers the combination offeatures by virtue of polynomial kernel functions. We apply the methodto IREX NE task using CRL Named Entities data. The cross validationresult of the F-value being 83 shows the effectiveness of the method.
著者
工藤 拓 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1834-1842, 2002-06-15
被引用文献数
147 76

本稿では,チャンキングの段階適用による日本語係り受け解析手法を提案し,その評価を行う.従来の係り受け解析は,任意の2文節間の係りやすさを数値化した行列を作成し,そこから動的計画法を用いて文全体を最適にする係り受け関係を求めるというモデルに基づくものが多かった.しかし,解析時に候補となるすべての係り関係の尤度を計算する必要があるため効率が良いとはいえない.本提案手法は,直後の文節に係るか係らないかという観点のみで決定的に解析を行うため,従来方法に比べ,モデル自体が単純で,実装も容易であり,高効率である.さらに,従来法では,個々の係り関係の独立性を前提としているが,本提案手法はその独立性を一部排除することが可能である.本提案手法を用い,京大コーパスを用いて実験を行った結果,従来法と比較して効率面で大幅に改善されるとともに,より高い精度を示した.In this paper, we propose a cascaded chunking method for Japanesedependency structure analysis. Conventional approachesmainly consist of two steps: First, the dependency matrix isconstructed, in which each element represents theprobability of a dependency. Second, an optimal combinationof dependencies are determined from the matrix. However,such a method is not always efficient since it needs tocalculate all the probabilities of candidates. Our proposedmodel is more simple and efficient, since it parses a sentence deterministically only deciding whether the current segment modifies segment on its immediate right hand side.In addition, proposed model does not assume the independence constraintin dependency relation. Experiments using the Kyoto UniversityCorpus show that the method outperforms previous systems as well as improves the parsing and training efficiency.
著者
柴田 和祈 高田 眞吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.647-658, 2013-02-15

Webアプリケーションの高速化の一技術としてプリフェッチがある.プリフェッチとは,Webページをサーバ側からクライアント側へと先取りすることによって,ページ遷移にかかる時間を短縮する機能である.プリフェッチには様々な手法がある.従来の手法はWebページの遷移が固定である静的なWebアプリケーションにのみ対応しており,ユーザの入力によって遷移先のWebページが変化する動的なWebアプリケーションには対応していない.しかし,現在,静的なページのみで構成されているWebアプリケーションはごく少数であり,動的なWebアプリケーションのためのプリフェッチ手法はない.その最大の原因は,ユーザのクリック先は予測できても,ユーザがフォームなどにおいて入力する内容まで予測することができないからである.本研究では動的なWebアプリケーション(PHPアプリケーション)のためのプリフェッチ機構を提案する.提案機構の基本コンセプトは,Webページを静的なコンテンツと動的なコンテンツに分離することである.分離後,静的コンテンツはリンクプリフェッチを用いてあらかじめ取得し,動的コンテンツはAjaxを用いて後から補完することで,動的なWebアプリケーションにおけるプリフェッチを可能にする.
著者
松本 亮介 川原 将司 松岡 輝夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1077-1086, 2013-03-15

近年,AmazonEC2に代表されるクラウドの台頭にともない,ホスティングサービスの低価格化が進んでいる.そこで,我々はリソースを必要最小限に抑えるために,アクセスのあったホスト名でコンテンツを区別し,単一のプロセスで複数のホストを処理する方式であるApacheのVirtualHost機能を用いて,ホスト高集積型のWebホスティング基盤を構築した.しかし,その基盤運用は困難で,運用技術の改善とパフォーマンス劣化の少ないセキュリティ機構の設計が課題であった.本稿では,VirtualHost採用と大規模対応にともなって生じる運用面とセキュリティ上の課題を明確化し,新しいApacheモジュールの開発とsuEXECの改修によって,それらを解決する手法を提案する.本手法によって,信頼性と運用性の高い大規模Webホスティング基盤を構築できる.As the recent deployment of Cloud Computing like AmazonEC2, the price of hosting services is falling rapidly. Therefore, we had developed the Web based hosting system to handle huge number of hosts (about 2,000 hosts by a server) using Apache VirtualHost that single process manages multiple hosts and distinguish contents by the hostname with the access for minimizing the use of resources. However, it was difficult to manage the Web based hosting system, and the problems of the system were improvement of operation technology and designing the security mechanism with little performance degradation. In this paper, we clarify the problems of security and operation technology with installing VirtualHost for building a large-scale system, and we propose the approach solving them by developing the new Apache modules and enhancing suEXEC. This approach is help to building a large-scale, reliable and operationally-effective Web based hosting system.
著者
永田 昌明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.3373-3386, 1999-09-15
被引用文献数
5

本論文では 未知語の確率モデルと単語の出現頻度の期待値に基づいて日本語テキストから未知語を収集する方法を提案する. 本手法の特徴は 単語を構成する文字の種類ごとに異なる未知語モデルを使用することによりひらがな語や複数の字種から構成される単語を収集できること および 単語の出現頻度の期待値を文字列の単語らしさの尺度とすることにより出現頻度が低い単語を収集できることである. 人手により単語分割された EDRコーパスから無作為に選択した10万文(246万語)を用いて語彙数11 521の統計的言語モデルを学習し EDRコーパスの残りの部分から無作為に選択した10万文(247万語 未知語率7.72%)をプレーンテキストと見なして語彙獲得実験を行ったところ 本手法による語彙獲得の精度は再現率61.5%適合率67.2%であった.We present a novel lexical acquisition method from Japanese texts based on a probabilistic model for unknown words and expected word frequency. The benefit of the proposed method is that it can collect hiragana words and words which consist of more than one character types by using a different unknown word model for the character type configuration of a word, and that it can collect low frequency words by using the expected word frequency as the likelihood measure of a word hypothesis. We trained a statistical language model with 11,521 vocabulary from 100 thousand manually word segmented sentences (2.46 million words) which were randomly selected from the EDR corpus, and extracted new words from another 100 thousand unsegmented sentences (2.47 million words) which were randomly selected from the rest of the EDR corpus, and whose out-of-vocabulary rate was 2.1%. The lexical acquisition accuracy of the proposed method was 61.5% recall and 67.2% precision.
著者
小堀 紀子 岩切 宗利 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.595-604, 2001-03-15
被引用文献数
7

電子出版の普及にともない,書籍をパソコンや携帯端末上で読む時代となってきた.これにともない,著作権保護の問題が発生するが,漫画の特長を生かした電子透かし技術は見当たらない.そこで,この論文では,インターネットを介して電子的に取り引きされるデジタル漫画に注目し,漫画を2値画像としてとらえ,そこに電子透かしを埋め込む一方式を提案する.本方式は,漫画の特徴である線画を利用し,線分や絵を構成する黒画素の領域を従来法とはまったく異なる面積としてとらえて透かし情報を埋め込む方法である.この方法によれば,画像の黒画素領域のエッジ部分を一様に拡大または縮小しながら利用するため,視覚的にも画像への影響が少なく,各種の攻撃にも耐えられることを示す.Recent developments of electronic publication enable us toread books on a personal terminal and bring a serious problemof copyright protection on World Wide Web or Internet at the same time.This paper pays attention to a digital comic book in such a style.More robust techniques for comic pictures are not presented toembed the copyright data,yet.We propose a simple scheme of comic watermarking,which expands or shrinks the area of black pixels uniformly so as torepresent a digit of copyright data with pixel distribution.The watermarked comic resists unintentional attacks of JBIG/JPEGprocessing and is robust for intentional attacks such as StirMark,also.
著者
Hayato Kimura Keita Emura Takanori Isobe Ryoma Ito Kazuto Ogawa Toshihiro Ohigashi
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, 2023-09-15

Cryptanalysis in a blackbox setting using deep learning is powerful because it does not require the attacker to have knowledge about the internal structure of the cryptographic algorithm. Thus, it is necessary to design a symmetric key cipher that is secure against cryptanalysis using deep learning. Kimura et al. (AIoTS 2022) investigated deep learning-based attacks on the small PRESENT-[4] block cipher with limited component changes, identifying characteristics specific to these attacks which remain unaffected by linear/differential cryptanalysis. Finding such characteristics is important because exploiting such characteristics can make the target cipher vulnerable to deep learning-based attacks. Thus, this paper extends a previous method to explore clues for designing symmetric-key cryptographic algorithms that are secure against deep learning-based attacks. We employ small PRESENT-[4] with two weak S-boxes, which are known to be weak against differential/linear attacks, to clarify the relationship between classical and deep learning-based attacks. As a result, we demonstrated the success probability of our deep learning-based whitebox analysis tends to be affected by the success probability of classical cryptanalysis methods. And we showed our whitebox analysis achieved the same attack capability as traditional methods even when the S-box of the target cipher was changed to a weak one.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.31(2023) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.31.550------------------------------
著者
小谷 善行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.973-984, 1993-05-15

一般人の扱いやすい、日本語表現の論理型プログラミング言語の仕様を設計した。Prologなどの論理型書語は、表現が非日本語的であるだけでなく、述語の引数に存在する変数の間の対応をよく理解するには数学的素養が必要であり、なじみやすくはない。そこで単なるワープロ使用者にも利用可能とすることを想定し、自然な日本語の文構造や語藁体系を素直に反映したプログラミング言語の仕様を設計した。本言語仕様は、述語の引数は陽には記述しないという特徴をもつ。データは、入力と出力の2ポートに区分して述語に与えられる。プログラミングは、メタ述語と呼ばれる演算子で述語間の結びつきを指定することで行う。述語は主としてユーザが定義し、通常、日本語の名詞を用いると読みやすい設計となっている。メタ述語は主としてシステム組込みであり、助詞や接頭語で表される。メタ述語は日本文としての理解と一致するように、語義に基づき選定されている。プログラムは分かち書せず、「祖母とは親の母」のように、ほとんど日本語そのままのプログラム表現となる。本言語によるプログラムは、Plologプログラムを日本語で自然に読み下した文に非常に近い。さらに意味ネットワークなどの知識を記述する観点からも、本仕様はその意味を自然に表現した形になっている。また、本仕様に対しその意味定義を与え、プログラム例による可読性および、システムを試作し効率を調査した。
著者
越後 宏紀 呉 健朗 新井 貴紘 富永 詩音 小林 稔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.86-95, 2023-01-15

CG技術の発達により,配信者は顔出しをせずに2D CGまたは3D CGのアバタを利用して配信を行うことが可能となっている.アバタを利用した配信者,すなわちVTuberはCG技術の発達とともに活動の幅が広がっており,顔を出して配信しているYouTuberと遜色がなくなってきている.動画配信サイトでは様々な動画カテゴリが存在するが,動画カテゴリ別によるYouTuberとVTuberの配信スタイルに対する視聴者の印象の違いについてはこれまでほとんど調査されてきていない.そこで本論文では,実写の顔出しの動画と2D CGアバタ,3D CGアバタを利用した動画を用意し,視聴者の印象の違いを調査した.比較実験を行い,動画カテゴリによって配信スタイルに対する視聴者の印象が異なることを確認した.
著者
長谷川 晶一 志築 文太郎 小坂 崇之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-11, 2021-01-15

本稿は,新型コロナウイルスの感染予防対応のため,2月26日に急遽現地開催を中止し,オンライン開催に移行したインタラクション2020の舞台裏とこれにより分かったことを報告する.インタラクションは,情報処理学会のHCI,GN,UBI,EC,DCCの5つの研究会の共催による参加人数600人規模,3日間の国内シンポジウムであり,シングルトラックの登壇発表と200件を越えるインタラクティブ発表(デモ,ポスター発表)を中心としている.2020年は日程は当初どおり3月9日~11日に,現地開催は中止としオンライン開催をほぼ当初の予定どおりのスケジュールで行った.この結果,登壇発表では,質疑応答を含めて例年と大きく変わらずに行うことができ,インタラクティブセッションや懇親会では,様々な課題が見えた.本稿ではオンライン開催の決定からその後の運用と,そこで見えたことを報告する.
著者
栗原 拓也 木下 尚洋 山口 竜之介 横溝 有希子 竹腰 美夏 馬場 哲晃 北原 鉄朗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1073-1092, 2017-05-15

本稿では,カラオケにおいて歌ってない人に対してタンバリンの演奏を促すことで,歌ってない人もカラオケを楽しみ,盛り上げることができるシステムを提案する.カラオケに行った際に,歌われている曲を知らなかったり,どのようにして一緒に盛り上げてよいか分からず,ただ曲を聴いているだけで退屈をしてしまう人は少なくない.そのような場合に対して,カラオケ店に置いてあるタンバリンの使用を促すため,どのようにタンバリンを演奏するか自動で生成・表示し,ゲーム風の画面により正しく叩けているかをフィードバックする.しかし,これだけではタンバリン演奏者が1人でタンバリンの演奏をゲーム感覚で楽しんでしまい,歌唱者や他の人と一体になってカラオケを楽しむ目的からは外れてしまう可能性がある.そこで,歌唱者も含めて全員がタンバリン演奏に参加するようにする.システムを実装し,実際にカラオケ店で実験したところ,次の可能性が示唆された.(I)本システムによりワンパターンなタンバリン演奏を防ぐことができる.(II)タンバリン奏者が知らない楽曲に対しては,譜面の表示によりタンバリンを演奏しやすくなる.(III)カラオケの一体感を高めるには,全員がタンバリン演奏に参加することが効果的である.一方,次のような課題も明らかになった.(i)生成されるタンバリン譜の難度が高く,正確なリズムで演奏できない場合があり,その場合むしろ歌いにくくなる.(ii)タンバリン演奏がうるさく感じられる場合がある.(iii)歌い手がタンバリンを叩く際に,歌いながらタンバリンを叩くのが難しい場合がある.
著者
角野 為耶 荒井 ひろみ 中川 裕志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2244-2252, 2015-12-15

個人の情報を保護したデータ開示法の1つにk-匿名化がある.k-匿名化されたデータを人間が閲覧した際に,データに含まれた人間に対して不利益を生ずるような推測がなされる場合がある.本研究ではこの現象をk-匿名化が誘発する濡れ衣と呼び,濡れ衣を発生させうる属性を持つ機微なレコードに着目し,濡れ衣の発生を軽減させるk-匿名化法を提案する.実データに対して濡れ衣を発生させうる機微属性を付与したデータセットを用いて実験を行い,提案手法を用いると濡れ衣を軽減させたk-匿名化を実現できることを確認した.
著者
越後 宏紀 小林 稔 五十嵐 悠紀
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-10, 2022-01-15

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により,国内会議および国際会議においてオンラインによる学会発表が急増している.オンラインによる学会発表が定着したことで,感染症の感染が収束した後も,オンラインによる学会発表は1つの選択肢として残っていくと考える.オンラインによる学会発表の課題として,身振り手振りや目線,表情といったノンバーバル情報が伝わりにくいことがあげられる.本論文では,発表者の腰から上を投影した発表手法と2D CGのアバタを用いた発表手法を提案し,発表者のノンバーバル情報の有無が,聴講者にとってどれほど影響があるのかを調査した.比較実験を行い,発表者の腰から上を投影した発表手法が聴講者にとって印象が良い発表手法であることを確認した.
著者
柴田 博仁 高野 健太郎 田野 俊一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.2131-2141, 2016-09-15

本稿では,タッチ操作可能なタブレット端末での読みの評価をとおして,テキストをポインティングしたりなぞったりする行為(テキストタッチと呼ぶ)が,読みに与える影響を分析する.特に,文書内容を批判的に考察するアクティブリーディングにおけるテキストタッチの効果を検討する.最初の実験では,紙文書とタブレット端末での校正読みのパフォーマンスを比較する.結果として,タブレット端末よりも紙文書で読むほうが多くの誤りが検出された.ビデオ分析の結果,参加者は紙で読む際に頻繁にテキストタッチを行っており,テキストタッチの頻度と誤り検出率に正の相関が観察された.このことから,テキストタッチは校正読みを効果的に支援しており,タブレット端末ではテキストタッチが促進されないために誤り検出率が低下したことが考えられる.この仮説を検証するため,第2の実験では,紙文書へのインタラクションを制限して文書校正を行う実験を行った.結果として,文書に自由に触りながら読むことが許される条件に比べて,文書に触らずに読む条件で有意に誤り検出率が低下し,テキストタッチは読みのパフォーマンスに影響を与える重要な要因であることが分かった.この結果をふまえ,タッチ操作可能なタブレット端末でのアクティブリーディングの支援方法を議論する.
著者
金子 知適
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2525-2532, 2012-11-15

コンピュータ将棋の強さは,プロ棋士の強さに達しつつあると評価されている.そこで,本稿ではこのコンピュータ将棋の強さを活かして,プロ棋士の将棋の対局における現在の局面の形勢等を,自動でリアルタイムに解説するシステムを提案する.オープンソースプログラムのGPS将棋と,twitter.com等の情報基盤を利用したシステムを構築・公開し,実際にユーザから好評を得た.本稿で分析した27の対局について,プロ棋士の指手の過半数を正しく予測し,また形勢判断もおおむね対局の流れを表していた.統計と具体的な局面の分析の両方の側面から,十分に観戦の参考になる形勢判断と読み筋を,現在のコンピュータ将棋によって提供することが可能であることが示された.It is widely recognized that the strength of state-of-the-art computer Shogi programs is approaching to that of professional players. This paper presents a real-time commentary system of Shogi games, based on the analyses by computer programs. The presented system was implemented by using an opensource shogi program and twitter.com, and have been received favorable comments by users. In the experimental results, statistical and detailed analyses on 27 game records are discussed. It has been observed that the presented system correctly predicted more than fifty percents of the moves selected by experts, and that the evaluation of positions were almost compatible with comments given by professional players.
著者
畑 元 小池 英樹 佐藤 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1152-1161, 2015-04-15

本研究では,ユーザに気づかれない視線誘導を目的とした手法の提案を行う.人の視覚の特性から画像の動的な解像度制御を提案する.具体的には,誘導したい領域を高解像度,それ以外の領域を人が気づかない範囲で低解像度にすることで,高解像度領域へと視線の誘導を行う.2つの被験者実験を通して提案手法がユーザに気づかれないで視線誘導を行える可能性が示唆された.This paper proposes a method for guiding viewers' attention without being recognized by viewers. By focusing on a characteristic of human visual system, we proposes a dynamic resolution control method. In brief, our method gradually decreases the resolution of the display to the threshold at which viewers are aware of the modulation of the display,while the resolution of the region where viewers' attention should be guided is remained as in high resolution. Two subjective experiments were conducted to show that have a possibility of viewers attention can be guided without being recognized by them.