著者
小野 芳彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.404-414, 1990-03-15

2ストロークコード入力であるTコードの使い勝手を良くし また実務に就くまでの練習期間を短くするために 二つの補助入力方式を開発した.一つは字単位の合成を行うもので Tコードで入力した2文字の字形を組み合わせてその字形をもつ漢字を入力フロントエンドが探索することによってコード化されていない文字でも入力できるようにしたものである.JIS X 0208の全漢字について字形を二つの部品に分ける試みを行い 2文字から直接 あるいはその部品から間接に合成を行って目的の漢字を検索するアルゴリズムを実現した.これは 従来の字形入力がもつコードの重なりを極端に低くしている.もう一つはコード化入力方式に熟語のカナ漢字変換機能を融合したもので 被変換表記にTコードで入力できる漢字を交ぜるようにした方式である.これによってカナ漢字変換の欠点である同音語の選択の濃度を低くでき 変換結果を目視しないで打鍵を続ける可能性を高くした.通常の設計では辞書の大きさが数倍にふくれるのを コードの習得グレード別の辞書を作るという方式で押さえている.
著者
保坂 大樹 河部 瞭太 山下 遥 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1390-1402, 2019-08-15

近年,消費者のWebサイト閲覧行動は重要なマーケティング分析の対象となっている.サイトの閲覧行動を分析することで,サイト間の関係性やユーザの嗜好を把握し,Web広告の掲載やメールの配信などのマーケティング施策の最適化や効率化が可能となるためである.しかし,蓄積されたWeb閲覧履歴データ中のサイトやユーザの関係性は複雑であり,サイト単位やユーザ単位の分析が困難となる場合が多い.したがって,そのような状況においても適用可能,かつ有効な分析手法が望まれている.本研究では,単語の意味分析において良い性能を示しているWord2vecとその拡張モデルに基づき,各サイトや各ユーザをそれぞれ意味空間上の多次元正規分布として表現するとともに,意味空間上のサイトやユーザの関係性に基づいて分析を行うための手法を提案する.学習された意味空間上の表現を用いた分析により,単純な閲覧,被閲覧の関係ではなく,閲覧行動の背後に存在するサイトやユーザの潜在的な特性や関係性を把握することが可能となる.また,提案手法では,サイトやユーザが持つ性質の広がりが多次元正規分布の分散行列として学習される.最後に,提案手法の有効性を検証するために,実際の閲覧履歴データ分析に適用し,得られる結果に関する考察を与える.さらに,分散行列をサイトの閲覧者の多様性,またはユーザの嗜好の多様性として解釈し,より詳細な分析が行えることを示す.
著者
安部 城一 坂村 健 坂前 和市 相磯 秀夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.306-313, 1979-07-15

この論文はソフトウェア作成プロジェクトの管理破綻を防止することを目的とし プログラムテスト項目数 検出バグ数 作業日の間の関係を示すPB曲線図により総合デバグ時の進捗度を把握する方法を示している.さらにPB曲線に現れるプロジェクトの性質について論じ 管理破綻の検出方法を提案している.ソフトウェア作成をプランニング期 プログラミング期総合デバグ期と大きく三段階に時分割した場合 プロジェクトの管理が破綻すると判明するのは総合デバグ期であるという実態に注目し 総合デバグ期におけるテスト項目数 検出バグ数 および時間の間の関係は一般的にモデルにより取扱うことができることを示している.このモデルの上の特性値が示す傾向からプロジェクトの破綻を判定する方法を提案し さらに総合デバグ期を初期 中期 終期の三段階に分け 期間 テスト項目数およびバグ数の間の性質10件を示すことによりプロジェクトの最終段階における工程計画ならびに進捗度管理の信頼度を向上する材料を提供している.またこの結果はソフトウェアの分野や規模によらずある程度の普遍性があることを述べている.判定方法の提案と共に過去の破綻例の原因について分類行い 原因の偏りと性質を分析し 一部の原因について対策が可能であるとしている.
著者
市川 裕介 小林 透
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1195-1203, 2011-03-15

我々は,レコメンデーションなどでの利用を目的としたサイコグラフィック属性として,ユーザの多様性受容度をユーザ個々のWebアクセス履歴のべき乗則を利用して推定する手法の提案を行った.実履歴を用いた検証の結果,ユーザ個々のサイトアクセス傾向がべき乗分布を示すこと,べき指数が観測期間によらずユーザ固有の特性値であること,べき指数がユーザの多様性受容度に相関があることから,提案手法が有効であることを示した.
著者
柴田 博仁
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1204-1213, 2009-03-15
被引用文献数
3

本稿は,ディスプレイ構成の違いが業務にもたらす影響を定量的に測定することを狙いとするものである.知的財産管理業務を行う8人の被験者を対象に,17インチのシングルディスプレイ環境(Small条件)から,24インチの大画面ディスプレイ環境(Large条件),あるいは2つの17インチディスプレイを並置する多画面ディスプレイ環境(Dual条件)へと移行した前後で,およそ2週間ずつ実業務でのウィンドウ操作ログを取得した.ディスプレイ構成の違いによる業務効率化の程度は,ウィンドウ操作に要する時間の総和でとらえることができるという考えに基づき,ウィンドウの切替え,移動,サイズ変更というウィンドウ操作に要する時間を条件間で比較した.結果として,Small条件では,コンピュータ操作を行っている時間のうち8.5%をウィンドウ操作に費やしていることが分かった.これは,現状のウィンドウシステムにおける改善の必要性を示唆するものである.さらに,Small条件に対して,Large条件ではウィンドウ操作のコスト削減は見られなかったが,Dual条件では13.5%のコスト削減が見られた.これは,ウィンドウ操作に要するコストという観点から,大画面ディスプレイに対する多画面ディスプレイの優位性を示すものである.The purpose of this paper is to quantitatively measure the efficiency of computer operations in several display environments that differ in the size and configuration of displays. The subjects were eight persons who engaged in intellectual property management activities. They replaced their display environments from single 17-inch displays (Small condition) to single 24-inch displays (Large condition) or dual 17-inch displays (Dual condition). We gathered their action logs for about two weeks before and after the change of their display environments. Based on the hypothesis that the efficiency for different display configurations can be explained as the time consumed for window operations, we compared the cost of window operations, that is, the total time required for activating, moving, and resizing of windows. As a result, in the small condition the subjects consumed much as 8.5% of the time for the window operations. This suggests the necessity of improvements in current window systems. Furthermore the cost of window operations was not reduced in the large condition in comparison with the small condition, but 13.5% of the cost reduction was observed in the dual condition. This suggests that dual display environments superior to single large display environments from the perspective of the cost of window operations.
著者
野下浩平 飯田 崇仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.708-713, 2002-03-15

本論文は,ゲームにおける解手順の定義を一般化し,その応用としてある形の詰将棋問題をすべて数え上げた結果を示す.この問題は,$3?times 3$ の矩形の中に玉のほか金と銀の8枚を配置した「金銀図式」である.これは,詰将棋の専門家によって長年数え上げの対象として研究されてきたが,その完成にはほど遠い状態にあった.ここで提示した方法に基づいて数え上げを実行し,その結果,詰手数の長い問題を含む多くの新しい問題を発見することができた.ここで最も難しい点として,解手順の標準的な定義を用いると,人間(専門家)がほぼ正しいと認める問題が数え上げの中で捨てられることがある.そこで,解手順の定義を一般化して,軽微な不完全さを持つ問題も許すようにする.金銀図式の数え上げは次のように進む.将棋盤で可能な28個の位置における問題図をすべて数え上げる.その中から王手でない図,玉が詰む図を選択し,さらにその中から,別解(余詰)のないという意味で完全な図を求める.最後に,完全でない図の中から,不完全さが軽微な問題で,専門家が正しいと見なすようなものを選ぶ.
著者
堀田 創 野澤 貴 萩原 将文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1491-1501, 2007-03-15
被引用文献数
2

本論文では感性ルールベースを用いた日本語フォント自動作成システムを提案する.提案手法は様々なデザインのフォントを自動生成することを目的としている.フォントは,各文字の骨格情報に,太さなどのパラメータによる肉付けが行われることで生成される仕組みとなっている.また,ユーザの入力には感性語を用いる.感性語とフォントデザインの対応は,各フォントに対する印象がファジィルールとして保存されている.これらはアンケートによって得られた感性情報を解析することで構築される.感性の反映には,遺伝的アルゴリズムを用いている.これにより,フォントは世代が進むにつれてユーザの入力した感性語に合った形状となり,ユーザは要求したイメージに近いフォントを手軽に作成することが可能となっている.本システムは従来のシステムを大幅に改良したものである.まず使用可能な漢字の文字数が72 文字から6 355 文字へ拡張されている.また感性の反映に感性ルールベースが適用され,ユーザの入力に対してより適切なフォントが出力されるようになった.ユーザインタフェースは従来のようなスタンドアローンアプリケーションからWEB アプリケーションへと移行され,通常のブラウザから使用可能となっている.被験者による評価実験により,提案システムと従来システムとの,出力されたフォントに対する感性反映度および多様性の比較を行った.その結果,提案システムの有効性が確認されている.In this paper, we propose a Japanese font designing system using fuzzy-logic-based Kansei rule base. With this system, a user can easily create favorite fonts by inputting some words. A main idea of the proposed font design method is the addition of various effects to basic font skeleton data. In order to determine the design effects, the proposed system employs fuzzylogic- based Kansei database and it derives the desired design effects from the input impression words. The following three points is the improvement from the conventional system. First, the number of Kanji characters is increased from 72 to 6,355. Second, a Kansei database is prepared using the automatic rule creating method for Kansei data. Third, a user interface is improved. According to the experimental results, we confirmed that the new system excels the conventional one in respect of reflection of desired impression and the variety of the created fonts.
著者
鈴木 啓太 横山 正典 吉田 成朗 望月 崇由 布引 純史 鳴海 拓志 谷川 智洋 廣瀬 通孝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.52-60, 2018-01-15

本研究では,カスタマーセンタや,遠隔授業などの遠隔コミュニケーションにおいて,対話相手との同調的な感情表出を支援するビデオチャットシステムを提案する.他者の表情を模倣する「ミラーリング」は,他者と友好な関係を築くうえで有効である.しかし,継続的な感情の表出と抑制には本人の意識的な努力を必要とする場合があり,感情労働による消耗を助長させる恐れがある.他方,遠隔コミュニケーションにおいては,ビデオチャットのような情報メディアを介する段階でコミュニケーションに関する要素に情報的変調を加え,感情表出を補助することで対話者間の共感を深めて,コミュニケーションを拡張することができると考えた.本研究では,表情認識センサによって取得した自身の表情と同調するように,対話相手の表情を画像処理によって変化させることで,疑似的なミラーリングを発生させる.提案システムを用いた評価実験として,表情変形が施される模倣者と,自身の表情と同調した表情変形を観測する被模倣者のペアで会話してもらった.その結果,模倣者と被模倣者の両者に対して,会話の円滑さや,共感度の指標が向上することが示唆された.疑似的なミラーリングの効果が,被模倣者だけでなく,模倣者に対しても影響していることが分かった.
著者
宮部 真衣 梅島 彩奈 灘本 明代 荒牧 英治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.223-236, 2013-01-15

FacebookやTwitterなど,マイクロブログの普及により,ユーザは様々な情報を瞬時に取得することができるようになった.一方,マイクロブログでは流言も拡散されやすい.流言は適切な情報共有を阻害し,場合によっては深刻な問題を引き起こす.これまで,マイクロブログ上の流言拡散に関する分析は十分に行われていない.本論文では,マイクロブログ上で拡散された流言の特徴について分析した.分析対象はTwitterとし,平常時の流言と災害時の流言を用いた.分析の結果,まず,(1)マイクロブログにおける流言の特徴として,以下の3点を明らかにした.(a)マイクロブログにおける流言の発信は,不特定多数に向けたリツイートをインフラとしており,口伝えでの流言の拡散と比較して,流言内容の変容が起こりにくい可能性がある.(b)マイクロブログ上では,流言に関するツイートを複数回投稿するユーザは少なく,また流言情報を投稿したユーザが,自身の発言を訂正することも少ない.(c)流言に関する訂正ツイートが発信されても,流言ツイートはすぐには収束しない.また,(2)マイクロブログにおける,災害時と平常時の流言の違いとして,平常時は連鎖的に流言が広がり,災害時は1つのツイートが連鎖することなく爆発的に広がる傾向があることを明らかにした.これらは,今後マイクロブログ上での流言拡散への対策を講じるうえでの重要な知見となる.
著者
梶並 知記 松村 瞬 辻 裕之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1747-1755, 2017-11-15

本稿では,テトリス®のプレイにおける,HOLD機能の使用傾向について4つの観点から分析した結果を報告する.テトリス®は,盤面に上方から落下してくる4つの正方形を組み合わせたテトリミノと呼ばれる7種類のブロックを用いてプレイするパズルゲームである.プレイヤは,落下中のテトリミノに回転操作を加えて横1ライン隙間なく埋め,そのラインを消す.テトリス®には,落下中のテトリミノを,後で使うために一時的に保持するHOLD機能を備えている.従来,テトリス®を対象にした研究には,AIを用いた自動プレイに関するものや,テトリス®が人間に与える影響に関するものがある.それらの従来研究に対し,本研究は,人間であるプレイヤのテトリス®のプレイ技能向上を長期目標とした研究の1ステップである.本稿では,テトリス®のプレイヤをプレイ技能に応じて熟練者と非熟練者の2つに分類し,プレイヤのプレイ技能に応じてHOLD機能の使用傾向について分析する.Tetris Online Polandから操作ログファイルを収集し,(1) HOLD機能を使用する頻度,(2) HOLDするテトリミノの種類,(3) HOLDするテトリミノの順序,(4) HOLDミスの頻度が,プレイ技能に応じて異なることを示す.
著者
鈴木 聡 山田 誠二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.1093-1100, 2005-04-15
参考文献数
20
被引用文献数
5

新たな情報技術がその受け手に与える影響について近年様々な議論がなされている.特に擬人化エージェントは,社会的インタラクションを通してユーザの自発的な態度変容を促す.つまり,擬人化エージェントはユーザを「説得する」メディアとしてユーザに対して強い影響力を持つと考えられる.なかでも,被説得エージェントを説得する説得エージェントをユーザに提示する擬人化エージェントによるオーバハードコミュニケーション(OC)はユーザの態度に影響を与えるとみられる.本研究では,オンラインショッピングサイトにおいて説得エージェントと被説得エージェントによるOCと説得エージェントがユーザに直接情報を提示するレギュラーコミュニケーション(RC)について情報提示後のユーザの態度としての購買意欲を心理実験により比較した.実験の結果,擬人化エージェントによるOCの方が,RCと比べユーザの態度変容に大きな影響を与える現象がみられた.さらに,擬人化エージェントのアピアランスに由来すると考えられるユーザの説得する擬人化エージェントに対する魅力がユーザの購買意欲と正相関することも観察された.この結果から,擬人化エージェントがユーザに与える社会的影響,特にOCの要因となっているプレゼンス,視線,アピアランスといった擬人化エージェントの身体表現がユーザに与える影響という視点からの新たな研究の可能性が示唆されている.It is important to investigate influence of novel information and communication technologies, such as life-like agents, toward receivers of the information since some studies reveal that such novel technology can "persuade" people, in other words, they have strong power to change people's attitude and behavior. In this study, the influence of overheard communication (OC) by life-like agents toward online shopping Web site users was examined, since the OC by people often changes attitude of receivers. An experiment to compare the effect of OC by two life-like agents (a persuader agent and a persuadee agent) with regular communication (RC) by one persuader agent were conducted. The result of this experiment implied that even the OC by life-like agents could promote Web site users' online shopping purchase likelihood more than the RC by them. Moreover, attractiveness toward a persuader agent evaluated by participants was positively correlated with their purchase likelihood. This result suggests a new direction of studies of social influence from life-like agents, especially from a viewpoint of body expression of life-like agents, such as presence, gaze, appearance, and so on.
著者
長光 左千男 野田 真樹子 山肩洋子 中村 裕一 美濃導彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.701-710, 2007-02-15

家電機器が音声によりアドバイスする際,教示内容に加え,教示内容の根拠となる情報をユーザの性格に基づき選定して提示することにより,ユーザに気に入ってもらえるアドバイス文章を構成する手法を提案する.まず,ユーザがどのような情報を教示内容の根拠として期待するかは,ユーザの性格に応じて異なることを明らかにする.交渉学に基づく説得方法について,ユーザが好ましいとした説得方法と,そのユーザの性格分類とは相関があることをアンケート実験により示した.さらにこの結果に基づき,各ユーザが好むと推定される説得項目を性格分類に応じて選んだ調理アドバイスを提示した方が,性格に合わない調理アドバイスを提示するよりも,ユーザに好ましく思ってもらえるシステムとなることを示した.
著者
佐藤 円 佐藤理史 篠田 陽一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2371-2379, 1995-10-15
参考文献数
6
被引用文献数
40

現在、電子ニュースを通じて多くの情報が流通し、多くの人々がその情報を利用している。この電子ニュースは、新しいマスメデイアであり、従来のテキスト情報マスメデイアにはない、優れた特徴を持っている。しかしながら、現在のニュースリーダは、その特徴や利用者の要求に合致した、適切な機能を提供しておらず、読者にとっては、必ずしも利用しやすい情報メディアとはなっていない。我々は、電子ニュースを利用しやすい情報メデイアにするためには、そのダイジェストを提供することが不可欠であると考える。ダイジェストとは、元になる情報をコンパクトにまとめ編集したものであり、情報全体の俯瞰やエッセンスの把握、情報の取捨選択の際に、優秀なナビゲータとして機能する。本研究では、電子ニュースに対して、このようなダイジェストを自動生成することを提案し、その一つのプロトタイプとして、会告記事用ニュースグループfj.meetingsダイジェストを自動生成する方法を示す。ダイジェストの自動生成を実現する中心的な技術は、サマリーの自動摘出技術であり、会告記事にみられるスタイル上の特徴、言語表現バターンを利用することにより、実用に十分な精度でサマリーを抽出できることを示す。本方武で自動生成されたダイジェストは、WWWのクライアントプログラムで読むことができる。
著者
鮫島 充 ランディゴメス 李晃伸 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.2295-2304, 2006-07-15
被引用文献数
2

子供の音声は,声道長や基本周波数が成人音声と異なるだけでなく,発声スタイルが自発的で年齢や個人による声の変動も大きいため,通常の成人用音韻モデルでは認識精度が著しく劣化する.また,子供が正確に文章を読み上げることは多大な労力が必要であり,大規模な整った音声データベースの作成が難しい.本研究では,子供の自発的な発話の高精度な認識を目指して,音声情報案内システムによる子供の実音声の大規模収集,年齢層別子供用音韻モデルの構築と評価,および教師なし話者適応の検討を行った.大語彙連続音声認識実験より,実環境で収集した子供音声を用いることで,単語認識精度が71.1%と既存の読み上げ音声モデルに比べて絶対値で23.9%の改善が得られた.また,年齢層別の傾向では,特に幼児の音声において年齢層依存モデルによる大幅な精度改善が見られた.次に,自動収集した話者ラベルなしの大量データに対する,自動話者クラスタリングを用いた十分統計量に基づく教師なし話者適応を提案した.提案法により59 966個の発話データをクラスタリングし,近傍話者クラスタを用いて音韻モデルを適応することで,クラスタ数200の条件において,年齢層依存モデルに対してさらに幼児で2.2%,低学年子供で1.7%,高学年子供で0.5%の認識性能の改善が得られた.Child's utterance has totally different property from adult's speech, not only by their acoustic property, but by their incorrect pronunciation and totally ill-formed speaking style. The rapid physiological changes during the growth also prevent accurate speech recognition using a single model. However, collection of child's read speech is difficult in natural, since forcing them to read a sentence precisely will make the utterances far from spontaneous one. In this research, we evaluated acoustic models and an unsupervised adaptation method based on a large number of real spontaneous child speech automatically collected through an actual spoken dialogue system. Acoustic model trained by an actual spontaneous speech achieves the word accuracy of 71.1%, which outperforms one trained by read speech by 23.9%. Detailed investigation is carried out for child's ages (infant pupils, lower-grade elementary schoolers and higher-grade elementary schoolers), and accuracy of the infant pupils was greatly improved by using the age-dependent model. Then a speaker clustering method is proposed to perform unsupervised speaker adaptation based on HMM Sufficient Statistics on automatically collected database where no user tag is available. Clustering the 59,966 utterances to 200 speaker clusters, and selecting the neighbor one for each input to construct the adapted model has resulted in a further improvement of recognition accuracy by 1.5% as compared with age-class dependent models.
著者
平山 直樹 吉野 幸一郎 糸山 克寿 森 信介 奥乃 博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.1681-1694, 2014-07-15

本論文では,様々な方言の混合に対応する音声認識システムを構築する.まず,単一方言音声認識の言語モデルを,大規模共通語言語コーパスから擬似生成した方言言語コーパスで学習する.擬似生成には,共通語-方言対訳コーパスからWFST(重み付き有限状態トランスデューサ)によって学習されたルールを用いる.次に,構築された各方言言語モデルを混合し,発話ごとに最適な混合比を推定しながら認識を行う.これは,実際に話される方言が純粋な単一方言ではなく,人の移動やテレビ,ラジオなどの放送の影響を受けた様々な方言の混合であると考えられるからである.この推定には,音声認識用言語モデルにおける対数尤度の値を用いる.実験により,方言音声認識用言語モデルを用いて方言音声の認識精度が向上することを確認した.また,対数尤度と音声認識精度に強い相関があること,対数尤度を最大化する混合比を発話ごとに選択することで,固定混合比の場合と比較して音声認識精度が向上することを確認した.
著者
勝山 光太郎 佐藤 文明 中川路 哲男 水野 忠則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.234-241, 1989-02-15
被引用文献数
1

情報通信システムの発展に伴い 各種通信ソフトウェアの開発機会が増大するとともに その規模も拡大し 通信ソフトウェアを効率的に開発することが課題となってきている.このため我々は 近年注目を集めているオブジェクト指向言語によるソフトウェアの高い生産性に着目した.また 情報通信システムおよび通信ソフトウェアの論理構造と オブジェクト指向モデルとの類似性が高いことから オブジェクト指向言語によるこれらの設計開発を行うこととした。そのために 通信ソフトウェアに要求される実行速度を十分に考慮しつつ オブジェクト指向言語の特徴を生かし かつ汎用的なシステム記述言語であるC言語と親和性のあるオブジェクト指向言語superCを開発した.さらに 本言語をOSI通信ソフトウェアの開発に実際に適用することによって オブジェクト指向による設計・開発の効果を確認し その言語で書かれたプログラムの性能を評価した.その結果 オブジェクト指向言語の利点を生かして 効率的に開発が行えることが確認できた.また オブジェクト指向で問題となっている実行速度に関しては コンパイル時にメソッドの探索・決定を行う静的束縛の機能を導入したことにより 実行時にメソッドの探索を行う動的束縛に比べ2倍以上の速度を得ることができることを確認した.
著者
北 研二 川端 豪 斎藤 博昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.472-480, 1990-03-15
被引用文献数
32

高精度の連続音声認識システムを構築するためには 言語情報の利用が不可欠であり これまでにも 統計的言語モデル 正規文法 文脈自由文法等を用いて音声認識システムの認識率を向上させる方法が提案されている.本論文では これらとは異なる新しい方法HMM-LR法を提案する.HMM-LR法は 拡張LR構文解析法で用いられる構文解析動作表から入力音声データ中の音韻を予測し 予測された音韻の尤度をHMM音韻照合で調べることにより 音声認識と言語処理を同時進行させる.この方式では 音声認識と言語処理の間に音韻ラティス等の中間的なデータを介する必要がなく 高精度のかつ効率的な認識処理系を構成することができる.また HMM-LR法に基づく日本語の文節認識システムを作成し 評価を行った.評価には 日本語の一般的な文節構造を扱うことのできる一般的文法(語彙数約1 000語)と認識対象となるタスクに現れる現象のみを扱うタスク向き文法(語彙数約270語)の2種類の文法を用いた.一般的文法に対する第1位での正答率は72.0% 第5位までで95.3%の正答率を達成した.タスク向き文法に対しては それぞれ79.9% 98.6%の正答率を達成した.
著者
高橋 大介 金田 康正
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.2074-2083, 1998-07-15
参考文献数
26
被引用文献数
6

本論文では,分散メモリ型並列計算機により高精度の円周率を高速に計算する方法について述べる.高精度の円周率は,Gauss?Legendreの公式およびBorweinの4次の収束の公式を用いると効率良く計算できることが知られている.これら2つの公式には平方根や4乗根,そして逆数計算が含まれているが,それらの計算はNewton法を適用することで,多倍長数の加減乗算に帰着させることができる.n桁どうしの多倍長乗算は高速Fourier変換(FFT)を用いればO (nlognloglogn)で行えるが,多倍長乗算の主要部分であるFFTの計算および多倍長数の加減乗算における正規化の部分を並列化した.その結果,1024プロセッサから成る分散メモリ型並列計算機HITACHI SR2201で515億桁余りの円周率の計算が検証時間を含めて66時間11分で終了した.This paper discusses the fast multiple-precision calculation of π on distributed memory parallel processors.It is well knowen that the multiple-precision π can be efficiently computed by the Gauss-Legendre algorithm and the Borweins' quartically convergent algorithm.Although two algorithms include the square root,4th root and reciprocal calculation,these calculations can be reduced to the multiple-precision addition,subtracion and multiplication by using Newton method.Multiple-precision multiplication of n digits numbers can be realized with the computational complexity of O(nlognloglogn)by using fast Fourier transform(FFT).Calculation of FFT which is crucial to the multiple-precision multiplication and normalization of the multiple-precision addition,subtraction and multiplication can be parallelized.More than 51.5 billion decimal digits of π were calculated on the distributed memory parallel processor HITACHI SR2201(1024PEs)within computing elapsed time of 66 hours 11 minutes which includes the time for the verification.
著者
米澤 朋子 ブライアンクラークソン 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.2810-2820, 2002-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
9

本論文では,文脈に応じた音楽表現を用いた,新しいぬいぐるみインタラクションを提案し,その効果を評価するものである.様々なセンサを埋め込んだぬいぐるみとの接触インタラクションにより,あらかじめ与えたぬいぐるみの内部状態を変化させ,その状態に応じた音楽を生成するシステムを実装した.また,人間同士のコミュニケーションにおける,本システムの音楽表現による効果を評価した.We present a sensor-doll capable of music expression as a sympathetic communication device. The doll has a computer and various sensors to recognize its own situation and the activities of the user. It also has the internal ``mind'' states to reflect different situated contexts.The user's multimodal interaction with the passive doll is translated into musical expressions that depend on the state of mind of the doll. Finally we evaluate the effect ofmusic expression to the human communication using the tactile doll.
著者
吉野 孝 吉永 孝文 宗森 純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.297-308, 2003-02-15
被引用文献数
1

携帯電話,PHSおよびPDA(携帯情報端末)など,小型軽量で持ち運びが容易な機器が増えてきた.そのため,位置情報は人と人とのコミュニケーションのための重要な情報のパラメータの1つとなっている.位置情報を携帯電話やPHSとGPSとを組み合わせて知らせるサービスは多数ある.しかし,これらは,相手あるいは目的の位置情報を視覚的な地図として伝達するだけであり,位置情報の表現として,聴覚や触覚を利用して伝達を試みたものはあまりなかった.そこで,PDAとGPSそれに携帯電話とを用い,アウェアネス支援機能を持つ電子鬼ごっこ支援グループウェアを開発した.そして,お互いに離れている遠隔地間で行う鬼ごっこを含む2種類の電子鬼ごっこ実験と,比較のためにアウェアネス支援機能を持たない電子鬼ごっことを2カ所の大学で,30回行った.これらの実験結果から下記のことが分かった.(1)アウェアネス支援機能と地図表示の工夫により,特に面白さに関する評価が向上する.(2)アウェアネス支援の方法はいつも一定ではなく,実験の領域の広さによって,支援の方法を変える必要がある.(3)アウェアネス支援機能は,使う頻度が上がると効果的である可能性が高い.Mobile phone, PHS and PDA (Personal Digital Assistant) are highly portable,and positioning data will become important data for human communication.There are many location-aware services.However,most of services only transmit or display a partner or the position information on target as a map.There was no service using the sense of hearing or touch as expression of position information.Then,we have developed the electronic tag-playing support groupware with awareness support functions.We performed experiments 30 times with the awareness support functions and without the awareness support functions at two universities.The results of the experiments were showd below.(1) We found that the evaluation of interesting was improved by awareness support functions and additional map information.(2) It is necessary to change the method of awareness support corresponding to the size of the place of an experiment.(3) The awareness support functions are more effective by the increase in the number of times used.