著者
宮武 茉子 鳴海 紘也 関谷 勇司 川原 圭博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.752-760, 2022-03-15

フラワーゼリーとは,花の形をしたゼリーが透明なゼリーの中に浮かんでいる芸術的なスイーツであり,食べるのがもったいないと思わせるほどの美しさで見る者を惹きつける.本稿ではこの繊細なスイーツの複雑な制作過程を単純化し既存のデザインスペースを拡張することを目的として,スリットインジェクションプリンティングという造形手法と,設計ソフトウェアを実装し評価を行った.この設計ソフトウェアを用いることで,ユーザはプレビュー画面を見て試行錯誤しながら形状をデザインすることができる.またフラワーゼリーの造形に関しては,柔らかく崩れやすいゼリーのプリントを実現するため,カラーゼリーをベースゼリーに直接注入するスリットインジェクションプリンティング技術を導入したフード3Dプリンタを開発し,様々な形状のゼリーを造形できることを示した.さらに,初心者と経験者に対してユーザスタディを実施して提案手法の効果を評価し,初心者でも簡単にフラワーゼリーを作製できるようになり,経験者はデザインを試行錯誤しながら制作可能であることを示した.
著者
竹野 真帆 高田 明典
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2761-2771, 2009-12-15
被引用文献数
1

コンピュータゲームやアニメーションや映画などの娯楽制作物は,今日では,私たちの生活に深く影響を及ぼしている.私たちはそれらをプレイもしくは視聴することによって価値観を形成し,その価値観とともに生きている.娯楽に関する分析的研究の主たる目的とは,したがって,それによってどのような価値観が,どのようにして形成されるかを知ることにあるといえる.ゲーム研究や物語論の分野において作品の分析手法に関しての多くの議論が行われてきたが,実際にコンピュータゲームの分析に適用可能な手法が提示されている報告は少ない.一方で,物語構造分析の分野には,多くの手法の蓄積が存在している.本研究の目的は,それらの物語構造分析の手法をコンピュータゲームの分析に適用しうる手順を模索することにある.Barthesによって用いられた標準的な構造分析の手順を検討し,そこで用いられている手法に若干の変更を加えた手法を提案している.さらに,RPG "テイルズウィーバー" の分析例を示し,そこで抽出された訴求構造について検討を加えている.Entertainment products such as video games, animations and movies deeply influence our life nowadays. We form sense of values by playing or viewing them and also live by those values. Therefore the primary goal of analytical entertainment studies is to know what those values are and how they are formed. Many arguments about analysis method for video games have been made in the domain of game studies and narrative studies. But there are very few reports that have methods available for video game analysis in actual use. On the other hand there are many methods in structuralism's analysis. The purpose of this study was to improve the methods of structuralism's analysis of narrative so that we can apply them to video game. We examined standard procedures used with structuralism's analysis basically along with Barthes' method, and suggested implementing several changing to those procedures. A sample analysis of RPG "Tales Weaver" was presented and resulted appealing structure was discussed.
著者
小山 謙二 河野 泰人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.2338-2346, 1994-11-15
被引用文献数
8

知性と感性がオーバラップした感性情報の評価モデルとして、精緻な論理性を有する詰将棋問題をとり上げる。日本将棋連盟主催の問題創作コンテストの作品(70問題)に対し、問題の好感度に及ぼす予想要因(詰め手順や図式の特徴)を計測し、得点(好感度の集計値)との相関を分析した。さらに、従来作品(12000問題)との差も定量的に解析した。その結果、問題の新鮮さや問題を解く難しさが好感を持たれ、特に詰め上がり図における玉の開放度の大きさ(解放感)が最も好感度に影響していることが分かった。
著者
斉藤 典明 金井 敦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.295-308, 2013-01-15
被引用文献数
1 3

現在,組織の知識を蓄積するために多くの組織では共有フォルダを用いてボトムアップ的に情報を大量に蓄積している.しかしながら,多くの情報は情報管理の属人化がおこり,組織環境の変化によりどこにどのような情報があるのかが分からなくなった結果,情報が死蔵され,組織知識の忘失がおこる.そこで,長くにわたって情報を継承してきた事例を基に,死蔵することなく組織の知識を継承する手法を検討した.その結果,長期にわたって情報を蓄積するためには,時間(年度),知識分類,案件の順番で情報を管理することが有効である.また,組織知識として蓄積・継承するべき知識の分類には7つの項目があるが,そのうち組織の記録が最も重要であることが分かった.Numerous information are stored in the shared folders for storing organizational knowledge by members, day by day. However, the information management depends on the member's memory, then many stored information are hoarded by changing environment of the organization, at last organizational knowledge is lost. In this paper, we examined the shared folder construction method which can avoid dead-stock, based on the case study of sharing and storing information in the organization between the long-term. As the result, we clarified that the shared folder which was constructed by the layer of time (year), knowledge classification, and matter can avoid hoarding. The knowledge classification had seven types, and the record of organization was the most important classification in those.
著者
長井 歩 今井 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1769-1777, 2002-06-15

詰将棋を解くプログラムの研究はこの10年の間に大きく進歩した.その原動力となったのは,証明数や反証数という概念の導入である.詰将棋に適用すると,直感的にいうと,証明数は玉の逃げ方の総数を,反証数は攻め方の王手の総数を表す.前者は攻め方にとって,後者は玉方にとって非常に重要な値である.証明数・反証数を対等に扱った,最もナイーブなアルゴリズムは,Allisによるpn-searchという最良優先探索法である.我々は近年,df-pnアルゴリズムという,pn-searchと同等の振舞いをする深さ優先探索法を提案している.この論文では,df-pnアルゴリズムを用いて詰将棋を解く強力なプログラムを作成し,その過程で導入した様々な技法を提案する.これらの技法をdf-pnの上に実装することにより,我々のプログラムでは300手以上の詰将棋のすべてを解くことに初めて成功した.しかもそれは,シングルプロセッサのワークステーションで解くなど,解答能力と解答時間の両面で優れた結果を出すことができた.
著者
松村真宏 三浦麻子 柴内康文 大澤幸生 石塚満
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.1053-1061, 2004-03-15

「2ちゃんねる」は日本最大のオンラインコミュニティサイトである.ところが,そこに書き込まれる情報はときとして「便所の落書き」と揶揄されるように,一見すると意味のない言葉や記号にしか見えないものも多い.これは非常に奇妙な現象である.というのも,便所の落書きを見るために毎日数十万人もの人が訪れるとはとても考えられないからである.ではなぜ2ちゃんねるはあれほど盛り上がっているのだろうか.実は傍から見れば意味がないように思える言葉や記号のやりとりが2ちゃんねるのユーザには意味があり,これが2ちゃんねるが盛り上がる要因となっているのかもしれない.このような動機から本稿では,2ちゃんねるにおけるコミュニケーションの特徴に着目して,2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズムを解き明かすことを目指す.特に,コミュニケーションの特徴として,メッセージのサイズや投稿数,返信率,投稿される早さなどの基本的な属性に加え,2ちゃんねるに特徴的な名無しと,2ちゃんねる語やアスキーアート(AA)などの定型的な表現技法に注目する.共分散構造分析により構築した「2ちゃんねるモデル」は,定型的表現傾向が議論発散傾向と議論深化傾向に及ぼす関係などを明らかにしている.
著者
市野 順子 八木 佳子 西野 哲生 小澤 照
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1171-1183, 2019-04-15

本稿では,グループディスカッションを支援するために提示するフィードバックの,モダリティと提示対象者の要因が,グループメンバのコンピュータに対する反応に与える影響を検討する.我々は,企業の実際のブレインストーミングをフィールドとした実験を行い,4つのフィードバック条件――3つは触覚モダリティ(椅子の振動)を使用し,1つは視覚モダリティ(スポットライトの点滅)――を比較した.触覚モダリティを使用した3つのフィードバック条件は,フィードバックの提示対象者が異なる:(1) 参加が期待されるメンバ(潜在的話者)にのみ提示,(2) 現在発言中のメンバ(現行話者)にのみ提示,(3) 全メンバに提示.実験の結果,モダリティの要因に関しては,触覚は視覚よりも,議論への集中を妨げない程度ではあるが議論からメンバの注意を逸らし,フィードバック提示直後のターンテイキングを促した.提示対象者の要因に関しては,全メンバあるいは現行話者に提示する方が,潜在的話者に提示するよりも,ターンテイキングを促した.その一方で,潜在的話者に提示する方が,現行話者に提示するよりも,メンバは,システムの意図がわかりやすく,快適だと感じた.
著者
竹内 章 飯田 弘之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2370-2376, 2014-11-15

柔軟な戦略に基づいた人間らしい思考をコンピュータで実現するため,ゲームにおけるクリティカルな局面の識別は重要である.本研究は,将棋における投了局面の識別に着目する.共謀数や証明数と類似の指標は,投了局面を識別するのに有効である.有利な局面に制限した探索におけるノード数が勝ちの反証数と類似であることから,この探索の有効分岐因子を用いた投了モデルを提案する.提案モデルの妥当性を確認するため,プロ棋士による投了に至る局面を分析する.提案モデルによって,有効分岐因子が減少することをとらえ,プロ特有の投了が説明できる.
著者
小山 謙二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.1923-1936, 2000-07-15
参考文献数
15
被引用文献数
1

盤面の駒が玉1枚の裸玉詰将棋問題は,簡素な配置ゆえそれ自身高度な芸術性を持つ論理ゲームである.裸玉問題を解いたり,創作(発見)するのは人間にもコンピュータにも難しい.すべての裸玉問題を体系的に解明することが課題となっている.まずすでに発表されている裸玉問題を検討した.次に,詰む最小持駒集合の定義と性質を述べ,体系的に新作問題の候補を見つけ出す方法を明らかにした.最後に,詰将棋プログラムとコンピュータを援用して,玉の位置が1八の問題を網羅的に探索した.その結果,完備な詰む最小持駒集合を得るとともに,5つの準完全作と1つの完全作を発見した.A "Shogi" mating problem of nakedking, where only a king is on a board, is highly artistic andlogical puzzle. Both solving andmaking (discovering) such problems are difficult for human beings andcomputers. Systematic evaluations of all nakedking mating problems have not been fully done, and it is an attractive research subject for computer science. At first, previously published naked king mating problems are discussed. We formulated and discussed matable minimum "motikoma"s (droppable pieces in mater's hand) and their complete set. For a case study in which the naked king's position is 18, we searched a matable complete set by a computer-aided method, and discovered six perfect (i.e., unique mating sequences) problems.
著者
中山 浩太郎 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.2917-2928, 2006-10-15
参考文献数
18
被引用文献数
14

シソーラス辞書は,情報検索や自然言語処理,対話エージェントなどの研究領域において幅広くその有用性が実証されてきた.しかし,自然言語処理などによる従来のシソーラス辞書自動構築では,形態素解析や同義語・多義語の処理など,語の関連性を解析する前段階の処理において精度低下を招く要因がいくつかある.また,辞書作成時と利用時のタイムラグにより最新の語や概念への対応が困難であるという問題もある.そこで本論文では,これら2 つの問題を解決するために,ここ数年で急速にコンテンツ量を増加させたWiki ベースの百科辞典である「Wikipedia」に対し,Web マイニングの手法を適用することでシソーラス辞書を自動構築する方法を提案する.Thesauri have been widely used in many applications such as information retrieval, natural language processing (NLP), and interactive agents. However, several problems, such as morphological analysis, treatment of synonymous and multisense words, still remain and degrade accuracy on traditional NLP-based thesaurus construction methods. In addition, adding latest/miner words is also a difficult issue on this research area. In this paper, to solve these problems, we propose a web mining method to automatically construct a thesaurus by extracting relations between words from Wikipedia, a wiki-based huge encyclopedia on WWW.
著者
安藤英由樹 渡邊 淳司 杉本 麻樹 前田 太郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1326-1335, 2007-03-15

人間の平衡感覚(重力感覚や加速度感覚)に人工的に影響を与える方法として前庭電気刺激が知られている.前庭電気刺激は耳の後ろ(頭部乳様突起部)に装着された小型電極から微小電流を流すだけで,装着者に物理的な加速度を与えることなく平衡感覚に対して影響を与えることが可能であり,小型軽量インタフェースとして実装が可能である.本論文では,インタフェースを実装するうえでの設計指針を記すとともに,インタフェースとしての応用について,装着者への情報支援,前庭感覚付与による没入感・臨場感の向上,前庭感覚を含めたコミュニケーション,という3 つの視点から実現例を含めて示す.
著者
村上 征勝 今西 祐一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.774-782, 1999-03-15
参考文献数
5
被引用文献数
9 16

『源氏物語』は 我が国古典の最高峰であるばかりでなく その芸術性の高さゆえに諸外国にも広く翻訳され 古くから数多くの研究がなされてきた. しかしながら現時点においても なお研究課題は数多く存在し たとえば 複数作者説や成立過程等 依然として未解決のまま持ち越されているものも多い。本論文では 微妙な表現価値にかかわる助動詞を取り上げ その『源氏物語』における出現頻度を分析し その結果 巻の成立順序や 後半の10巻 いわゆる「宇治十帖」他作者説が生ずる理由等との関連の可能性について次の結果を得た。源氏物語は話の内容から3部に分けるのが通説となっているが (1) 源氏物語の第1部を構成する紫の上系17巻と玉鬘系16巻は別々に成立した可能性がある. その場合 玉鬘系の16巻は第2部の後に成立した可能性が高い. (2)「宇治十帖」とその前の11巻 (第2部および「匂宮三帖」)との間には助動詞の用い方に差が見られ この差が文体の違いの反映であるならば これが1宇治十帖」他作者説が生ずる原因の1つと考えられる。(3) 各巻の文章を会話文と地の文に分けた場合に 助動詞の用い方に差が出るのは地の文である.Genji Monogatari, the greatest accomplishment in Japanese classical literature, has been the subject of intensive studies for many centuries. In spite of these studies, there are a great number of unsolved problems concerning the time sequence of the writing of the 54 chapters and their author ship. The 54 chapters of the Genji Monogatari are divided into three distinctive parts. We analyzed auxiliary verbs used in these three parts and got the following results. (1) The two stories which constitute the first part may have been written at different times. Tamakazura story of the first part may have been written after the second part. (2) The apparent difference in the use of auxiliary verbs between Uji Jujo (Ten chapters of Uji) and the 11 chapters that precede them throw doubt upon the singular authorship of Genji Monogatari. (3) The differences in use of auxiliary verbs between chapters are irrelevant to the amount of conversation.
著者
古川 善吾 野木 兼六 徳永 健司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.736-744, 1984-09-15

ソフトウェアの機能テストのためのテスト項目を系統的に作成するAGENT技法を提案した.AGENT技法は 機能図式(Function Diagram)という形式的な記法によってソフトウェアの機能仕様を表現した後 機械的にテスト項目を作成する技法である.機能図式は 入力や出力の順序に依存した対応関係を表す状態遷移(状態遷移図で記述する)と 状態遷移の各状態での入力データと出力データや遷移先状態との対応関係を表す論理関係(原因結果グラフあるいは決定表で記述する)とから成っている.AGENT技法では この機能図式から 通過すべき状態の列と各状態での入出力データの条件の組合せとして 以下の条件を満たすテスト項目を機械的に作成する.?各状態での入出力データの条件を確認するのに十分である.?状態遷移を構造化した構造化状態遷移の各遷移を少なくとも1回は辿る.?構造化状態遷移の繰返しは0回と1回の2通りを実現する.このテスト項目作成を自動的に行うためにAGENTプログラムを開発した.本論文では テスト項目作成の考え方 AGENTプログラムの概要について述べた.
著者
吉村 賢治 日高達 吉田 将
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-46, 1983-01-15
被引用文献数
31

文節内における単語間の連接規則を記述した文法規則を用いるべた書き日本語文の形態素解析では 日本語文としては不適当な解析を含む多くの解析結果が生じる.これらの解析結果から正しい解析を効率的に得る方法として ヒューリスティックな構報が利用される.従来 この手法としては最長一致法が用いられているが 根拠が明らかでないうえに解析結果に尤度による優先順位をつけることができないという根本的な欠点がある本論文では 解析結果の文節数によってその尤度を評価する文節数最小法を提案し この手法に適した表方式の形態素解析アルゴリズムを与える.アルゴリズムの能率は 最悪の場合に必要とするステップ数 メモリ数ともに入力文字列の長さnに対してΟ(n^2)である.また 1 000文の入力文に対して解析実験を行い 文節数最小法の有効性を確認した.その結果 960文については文節数が最小となる解析に正解が存在し 残り40文も一つ文節数が多い解析に正解が存在した.その他 能率 最初に出力される解析結果の誤り率 尤度による順位付けの能力についても最長一致法と比較実験を行った.最初に出力される解析結果の誤り率は 文節数最小法で7.0% 最長一致法で12.4%であり このことも文節数最小法の有効を十分示している.
著者
永田 周一 安村 通晃
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1134-1143, 2007-03-15
被引用文献数
1

メールや,メーリングリスト,ウェブログ,SNS などは広範囲で利用されている.それぞれ単体では便利であるが,それらをまたぐ情報を扱うのは容易ではなかった.したがって,それらを統合することが期待される.その際に重要な点は,どこまでの人に情報を公開するかという情報の公開範囲であると考えられる.本研究では,同心円上にアイコンをドラッグするだけで情報の公開範囲を手軽に変更でき,個人的なメモから,1 対1 の対話,グループ内の情報共有,Web への公開までを1 つのインタフェースで扱えるようにした新しいコミュニケーションツールEnzin を提案する.6 カ月間の運用評価実験を行った結果,利用者が情報を公開する相手を文書の進捗状況や他者の要望に応じて柔軟に変えていくなど,これまでにないコミュニケーションの状況に対応できることを確認した.People enjoy online communication with various tools; for example, email for one-to-one communication, mailing lists or groupware for group communication, and weblog for WWW communication. However shifting from one tool to another is not easy. In this paper, we propose a novel communication tool called Enzin in which users can control access permission of documents only by using drag-and-drop of icons. With Enzin, users can communicate with individuals or groups more flexibly by changing permission at any time, even after publishing documents. Enzin system visualizes scope of access permission by concentric circles. For example, users can simply put the "Internet" icon into the access control circle to publish their documents on WWW. Our goal is to integrate interfaces for online communication and to bridge the usability gap between current systems.
著者
長谷川 隆
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.2546-2558, 2014-12-15

本論文では,音楽から受ける作曲家らしさの印象と作曲家の時代/地域の印象を同時に説明し定量的に測定できる工学的手法を目指して,音楽学における様式分析手法の1つであるLaRueらの綜合的様式分析において論じられている様々な定性的特徴の意味を解釈することにより,一般の演奏家による音楽音響から抽出可能な情報を用いた特徴量を提案する.正準判別分析の作曲家推測精度を求めることにより,提案した特徴量群による特徴空間上で同作曲家の楽曲が近接して配置されることが示された.また,同特徴空間上で,作曲家特徴重心点の1座標が作曲家の年代と相関し,他の座標が地域を表すことが示された.さらに作曲家が未知の作品特徴点が,時代/地域が共通した作曲家の特徴点に近接して配置されることが示された.以上から,提案した特徴群は「作曲家らしさ」と作曲家の時代/地域の印象を同時に説明する尺度として妥当性を持つと考えられる.
著者
小野 令美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.399-404, 1979-09-15

高次方程式の数値解法で最近注目されてきたものに全根同時反復型解法Durand-Kerner法とAberth法がある(DKA法と略す).例としてChebyshevの数値積分公式の分点を与える高次方程式をとりあげ 1000次以上におよぶ超高次方程式をこの解法で解いた.さらに低次のものについてはsystem に備えられているsubroutine libraryとも比較してみた.その結果次数が高くなるにつれ従来の解法では得られた解の精度が正しく評価できなかったが DKA法ではGerschgorin circle半径の範囲内で正しく求められた.超高次方程式についてはDKA法でも桁落ちのため必要な桁数の解が得られなくなるので 一部多倍長演算が必要になる.このようにして最高1024次のものまでについてGezschgorin circIe半径が完全に分離した解を得た.その結果解はn→∞極限で根が並ぶと予想されている曲線に近づくことが数値的に確かめられた.これらの結果を述べる.さらにこの数値実験を通して得られたこの種の大規模計算を行う際に注意すべきことがらを述べる.このう3.1問題の特殊性の利用3.2多倍長演算の効果的使用(計算の各段階での必要な計算桁数の解析)3.3計算法の手間の検討などが特に重要な知見である.
著者
岡 照晃 小町 守 小木曽 智信 松本 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1641-1654, 2013-04-15

生の歴史的資料の中には,濁点が期待されるのに濁点の付いていない,濁点無表記の文字が多く含まれている.濁点無表記文字は可読性・検索性を下げるため,歴史コーパス整備の際には濁点付与が行われる.しかし,濁点付与は専門家にしか行えないため,作業人員の確保が大きな課題となっている.また,作業対象が膨大であるため,作業を完了するまでにも時間がかかる.そこで本論文では,濁点付与の自動化について述べる.我々は濁点付与を文字単位のクラス分類問題として定式化した.提案手法は分類を周辺文字列の情報のみで行うため,分類器の学習には形態素解析済みコーパスを必要としない.大規模な近代語のコーパスを学習に使用し,近代の雑誌「国民之友」に適合率96%,再現率98%の濁点付与を達成した.Raw historical texts often include mark-lacking characters, which lack compulsory voiced consonant mark. Since mark-lacking characters degrade readability and retrievability, voiced consonant marks are annotated when creating historical corpus. However, since only experts can perform the labeling procedure for historical texts, getting annotators is a large challenge. Also, it is time-consuming to conduct annotation for large-scale historical texts. In this paper, we propose an approach to automatic labeling of voiced consonant marks for mark-lacking characters. We formulate the task into a character-based classification problem. Since our method uses as its feature set only surface information about the surrounding characters, we do not require corpus annotated with word boundaries and POS-tags for training. We exploited large data sets and achieved 96% precision and 98% recall on a near-modern Japanese magazine, Kokumin-no-Tomo.
著者
田中 哲朗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3470-3476, 2007-11-15

「シンペイ(SIMPEI)」は高橋晋平氏が考案し株式会社バンダイが2005 年7 月に発売したボードゲームである.縦横斜めに駒を並べることを目標とする点は,n 目並べの多くのバリエーションと共通しているが,盤面を「上の世界」と「下の世界」の二つに分けている点や,挟んだ駒を自由に移動できる点に特徴があり,高いゲーム性を有している.この点が評価されて,2006 年のGPCC(Games and Puzzles Competitions on Computers)の課題問題に選ばれた.「シンペイ」は二人完全情報零和ゲームなので,すべての局面の理論値(勝ち,負け,引き分けのいずれか)を決定することが可能である.本論文では,後退解析(Retrograde analysis)をベースにしたプログラムを用いてすべての局面の理論値を求めた.そして,「シンペイ」の公式ルールの初期配置が後手必勝であること,1手目を自由に置くことが許されれば先手必勝であることを確かめた.また,勝ちに要する最長手数が49 手であること,「シンペイ」のゲームにツークツワンク(ZugZwang)が存在することや,単純なサイクルが存在し,その周期は1,3,4 の3 通りしかないことなど,いくつかの興味深い性質を求めることができた.
著者
吉高 淳夫 松井 亮治 平嶋 宗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1696-1707, 2006-06-15
被引用文献数
7

映画やテレビドラマといったコンテンツにおいて,アクセスの柔軟性・多様性を実現するためには,特定の雰囲気や印象を強調する演出,すなわちコンテンツに埋め込まれた感性情報を検出し,それを反映させることが重要である.様々な演出技法を述べた「映画の文法」では,ズームやドリーなどのカメラワークは,ある場面の雰囲気や印象を強調するための重要な演出手法として位置づけられている.カメラワーク検出に関する先行研究では,映像主体の視覚上の変化という観点ではほぼ同様であるが演出意図が大きく異なる,ズームイン?キャラクタドリー,ズームアウト?プルバック間の弁別ならびにそれらの検出を,動物体の存在を前提として十分な精度で検出することは未解決であるため,カメラワークによる演出を検出できない.本論文では,上記カメラワークを区別して検出することにより,カメラワークによる演出効果により映像に込められた感性情報を抽出する手法を提案する.さらに,動物体存在下で上記カメラワークを検出,弁別し,カメラワークに基づく演出,すなわち感性情報を検出するという目的に対する提案手法の有効性を評価した.In order to facilitate flexible access to contents such as movie or drama provided as video data, it is promising to take the sense of atmosphere into account. Film grammar prescribes various types of rendition that are commonly applied in producing movies or dramas. Camera work, such as zooming or dollying is regarded as an important technique which is often applied in order to emphasize a certain atmosphere of a scene. Previous studies that extract camera work did not take separation of zoom-in/out and character dolly/pull back into account, under the circumstance of the existence of moving objects. Therefore, they cannot extract rendition with respect to camera work. This paper proposed a framework of distinguishing zoom-in/out from character dolly/pull back. This distinction is mandatory for extracting emotional rendition by camera work, since situation of applying zoom-in/out is quite different from that of applying character dolly/pull back. The effectiveness of the proposed method is evaluated and the result is also presented in this paper.