著者
斎藤秀紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.1119-1126, 1994-06-15
被引用文献数
2

JIS X 0208には、符号間への文字の挿入機能の欠如や中国・韓国語への拡張機能の問題がある。本研究では、諸橋轍次編「大漢和辞典」の検字番号に墓づく構造化4バイトコードの符号化法と活用法を述ぺた。最初に、4バイトコードの構造を(1)大漢和辞典の検字番号を16進化94進数変換した整数部3バイトと小数部1パイト符号(2)既存の2バイトコードを統合した符号(3)2の8ビット目が'01'である符号を2個結合した3種にまとめ、これらが画数・読み・部首情報の漢和辞書による基準化、多国語の表現、一字体一符号化を実現できることを示した。次に、符号間への文字の追加機能をつかった一字体一符号化法が、文字集合と漢字符号の固定や文字集合間の互換性を維持した文字集合の分割に利用できることを述べた。最後に、4バイトコードの機能をワークステーション(EWS?4800)とパーソナルコンピュータ(PC-9800)間のデータ伝送を通して検証した。その結果、4バイトコードは、JISX0208?1978の見直しで生じたデータ間の互換性を崩す問題を解決でき、異機種間の共通符号にも使用できる見通しをえた。
著者
内田 好弘 谷 貞宏 橋本 昌宜 築山 修治 白川 功
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1665-1673, 2006-06-15

システム・オン・パネルなど配線とグラウンド平面の距離が大きい構造では,配線間の容量結合の割合,影響範囲が大きく,容量の見積りが困難である.これまでに容量抽出の高精度化のためにいくつかの手法が提案されているが,実用的な計算量では十分な精度は得られていない.複雑な計算処理による抽出精度の向上を目指すだけでなく,配線間容量そのものを低減する設計も効果的と考えられる.本稿では,配線間容量低減技術として一般的なグラウンド平面,シールド配線の追加,配線間隔の調整をシステム・オン・パネルに適用して,容量成分と見積もりやすさについて評価を行った.その結果,配線間容量のミラー効果を考慮した実効最悪容量を改善しつつ,抽出を容易にすることが可能であることが分かった.In system on panel circuits, coupling capacitance is much significant since a ground plane locates far away unlike LSI designs. To solve difficulty in capacitance extraction, which comes from wide-range coupling in system on panel circuits, some methods have been proposed, but still their efficiency and accuracy are not sufficient. This work focuses on interconnect design to reduce coupling capacitance instead of improving accuracy and efficiency by complex computation and enhancing algorithm. Using an effective worst-case capacitance which considers mirror effect of coupling capacitance, the effectiveness of adding ground plane and insertion of shield wires are evaluated from the aspect of weakening capacitive coupling and simplifying capacitance extraction. Experimental results reveal that ground plane and shield wires contribute both to reduce the effective worst-case capacitance and to simplify capacitance extraction.
著者
戸田 賢二 西田 健次 高橋 栄一 Nick Michell 山口 喜教
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1619-1629, 1995-07-15
被引用文献数
13

実時間並列計算機用相互結合網の構成要素として用いるルータチップの設計およびその性能について報告する。本ルータはパケット交換型で4入力4出力であり、多段網における優先度逆転現象の発生を抑える方式として我々の提案した「優先度先送り方式」を採用している。優先度は32ビット、入力ポートごとに8パケットの優先度キューを持ち、データ転送レートはポート当たり190メガバイト/秒、パイプラインは25ナノ秒ピッチの2段構成である。この性能は優先度制御を行わない通常の方式のルータと比較し遜色のないものである。
著者
金岡 晃 勝野 恭治 岡本 栄司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.682-690, 2010-03-15

電子メールを通じて感染するマスメール型ワームは数多い種類のワームの中で多くの割合を占め,さらに繁殖性や生存力の強さから社会的な問題になっている.現在ワームに焦点を当てた研究が多く行われているが,マスメール型ワームの感染の特徴であるメーリングリストを経由した感染を扱った研究はほとんど行われていないため,マスメール型ワームの感染プロセスの特徴がいまだ詳細に解析されていない.本論文では,メーリングリストの効果を包含したマスメール型ワームの感染数理モデルを提案する.提案モデルは,メーリングリストの効果に加えて,現実社会に沿った電子メールによる社会ネットワーク構造を反映することが可能である.さらに本論文では提案モデルに基づいてシミュレーションを行い,従来研究では分からなかった,メーリングリストの影響効果が感染初期で強く働いていることを解明することができた.
著者
雨宮 智浩 広田 光一 廣瀬 通孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.1701-1710, 2005-07-15
被引用文献数
4

本稿では,ウェアラブルコンピューティングのための新しい文字情報入力インタフェースとして開発した筒型の点字入力インタフェースOBOEについて述べる.開発した筒型のデバイスは持ち歩くことが容易で,両手で操作する様子が縦笛に類似しており,立ったままの姿勢で入力が可能である.また,明確なクリック感をユーザにフィードバックするメカニカル式のキースイッチを用いるため,ユーザは入力動作を直観的に確認することができる.本インタフェースの評価として,点字未習得者の学習効果の実験,および習熟者モデルと見なせる指点字通訳者の入力速度,誤入力率の計測実験をそれぞれ行った.これらの評価実験の結果から,習熟後には高速な入力が可能であることが判明した.さらに,アンケートの結果も合わせて,従来の点字タイプライタとの比較,最適なキー配列,把持の姿勢について議論する.This paper describes the development of a wearable interface for textual input on the basis of Braille input method. The device, named OBOE, is operated by both hands, which is good for portability and can be used while standing. The users get their input operations confirmed clearly by feeling the click since the buttons of the proposed device are the same mechanical switches as used in keyboards for desktop computers. The results of an experiment of learning effect revealed that the users who had no experience of Braille input could type Japanese phrases at 35.4 Braille codes per minute, and who had experience at 112.4 Braille codes per minute. Thus novices can master the proposed device and experts can input text very fast by using OBOE. Based on the results of questionnaire by the subjects, we discussed the comparison with a Braille typewriter, the optimum layout of keys for OBOE, and the posture of holding.
著者
村尾 和哉 クリストフファンラールホーフェン 寺田 努 西尾 章治郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1068-1077, 2010-03-15

ウェアラブルコンピューティング環境では小型の装着型センサを用いて取得した行動や状況(コンテキスト)を利用するさまざまなアプリケーションが提案されている.装着者のコンテキストを取得する際に,センサの値に対して特徴量抽出と呼ばれる前処理が行われる.この特徴量抽出ではこれまで,判別性能の高さから平均や分散,FFT係数などが多くの研究で採用されてきたが,これらはデータサイズが元のデータよりも大きくなるため,センサは生データの状態でコンピュータに送信し,その後特徴量抽出と認識が行われる.しかし,生データの通信やセンサ内のメモリへの書き込みによって消費する電力は大きく,低消費電力ハードウェアにとって負担となるものであった.本論文では,従来の特徴量と同等の性能を示しつつデータサイズは小さい新たな特徴量として,加速度波形のピークの高さと幅を提案する.提案する特徴量を用いることでセンサ内で特徴量変換を行いデータサイズを削減したうえでメインコンピュータに送信するため,消費電力の削減につながる.
著者
大嶽 能久 新田 克己 前田 茂 小野 昌之 大崎 宏 坂根 清和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.986-996, 1994-06-15
被引用文献数
3 2

法的推論システムHELIC?IIについて述ぺる。法的推論を計算機上で実現するためには、個々の事件の事実関係に解釈を与え、それに法的な概念を対応させる過程をいかに実現するかが大きな問題の一つとなる。HELIC?IIは条文と判例を知識源とするhybridシステムである。条文に基づく推論はルールベース推論によって、判例に基づく推論は事例べ一ス推論によってそれぞれ実現されている。判例に墓づく推論は過去の類似の判例を参照して法的な概念を生成する。条文に基づく推論はこれらの法的な概念を使って罪責を演繹的に求める。両者は相補的に機能し、あらゆる一可能な法的判断を生成する。ルールベース推論エンジンは、並列定理証明器 MGTP(Model Generation Theorem Prover)をべ一スにして、それに幾つかの拡張を施した。事例べ一ス推論エンジンは、推論を類似事例の検索と適用の2段階に分けることにより、事例の記述を容易にすると同時に並列推論の効果を高めた。出カとしては、これらが導かれた過程を表す推論木がユーザに提示される。さらに推論木の理解を容場にするために、自然言語風の詳細説明も提示することができる。HELIC?IIは並列推論マシン上にインプリメントされ、並列推論によって高速に結論を導き出す。例題として刑法を対象とする実験システムを構築し、並列推論の効果を実証した。
著者
松澤 芳昭 大岩 元
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2767-2780, 2007-08-15
被引用文献数
13

人間と調和する情報システムを構築できる創造的な技術者が求められている.我々は,そのような人材を育成する環境として,産学が協同してソフトウエア開発PBL(Project-Based Learning)を遂行する,「コラボレイティブ・マネジメント型情報教育」を提案している.この教育環境は,1) 学生プロジェクトのPM(Project Manager)を若手企業人が務め,企業人もプロジェクトマネジメントの学習をする,2) 実際の顧客・エンドユーザを設定し,実用に耐える製品の開発を目標とする,3) 多様なプロジェクトを並行して進め,成果を共有する,4) 学生が反復して履修できる,5) 成果を産学の第三者が評価する,という特徴を持つ.我々はこの教育環境を大学学部生を対象として構築し,2005 年度秋学期に1 回目を試行し,その成果と課題をふまえて2006 年度春学期に2 回目を試行した.筆者らはアクションリサーチャとしてプロジェクトに介入し,その過程で環境の改善を試みた.その結果,a) 企業人PM のマネジメントが学生プロジェクトの足場組みとして機能すること,b) 顧客満足度を最終評価とすることが重要であること,c) 反復履修が可能なことによって学生は失敗経験とその克服ができ,螺旋的に学習が進んでいくことが分かった.We need creative software engineers who can develop information systems that harmonize with system users and other relevant persons. To develop such engineers, we proposed a PBL (Project-Based Learning) course named "Software Development through Collaborative Management", where university students and young engineers in industry collaboratively learn construction of information systems. This course has following characteristics: (1) an undergraduate students' project is managed by an IT company's engineer who also acquires project management skills through this experience, (2) this project tries to develop a tiny information system for real customers and users, (3) different projects run at the same time in the course, (4) students can take the course repeatedly, (5) projects are evaluated by leaders of IT industry and academia. We have tried the course twice in our university. As a result of an action research, we have found the following three things: (a) a project manager from an IT company scaffolds a students' project, (b) the final evaluation of the project is best done by monitoring customer-satisfaction, (c) students can learn engineering processes spirally, because they can take an opportunity to overcome failures made in the previous project of repeated study.
著者
池田 克夫 大田友一 上野 恵美子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.862-869, 1985-09-15
被引用文献数
6

分かち書きされていない日本文手書き原稿の認識において 文字認識の後処理として 単語および単語間の接続の二つのレベルで検定を行い 文字認識率を向上させることを試みた.文字認識の結果は 各文字位置に対する10個の候補文字として与えられる.この候補文字列中から 語彙辞書を用いて可能性のある単語を抽出する.さらに 単語間の接続条件した接続テーブルを用いて接続検定を行うことにより 文法的に合法な文字列を構成しうる文字のみを拾い上げる.語彙辞書や接続規則の構成は コード入力された文章の構文解析の場合と異なり 欠落や暖昧な文字を多数含む候補文字列との照合を必要とする 手書き文字認識処理の性質を考慮したものとなっている.本処理により 正解文字が第1位に現れる率である第1位認識率が 文字認識段階での第2?3位認識率にまで向上する.また各文字について10個ずつ与えていた候補文字を 1?3個程度に減らすことができるので 文字選択の操作が容易になると考えられる.
著者
赤石 美奈 田中 譲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.791-801, 1992-06-15
被引用文献数
4

北海道大学で開発されているIntelligentPad システムでは あらゆるメディアをコンピュータ上の一枚の紙(パッド)とみなし メディアをパッドというタイナミック・オブジェクトとして扱う.各メデイアに対応し 各パッドが定義さね各パッドはそれぞれ固有の機能を持つさらに パッドの磯能はパッドを貼り合わせることで機能の合成ができる合成されたパッドもまた一枚のパッドとして扱えるこれらのパッドを制御するパッドとしてステージパッドを新たに開発したステージパッドは劇のメタフアを用いている劇は舞台 楽屋 役者 台本 観客などで構成される舞台はステージパッド 楽屋はドレッシングルームパッド 役者は制御対象となるパッド 台本はエディタ用のパッドで実現されるこれらのパッドの合成により劇を実現する劇の構成要素はすべてパッドであり 部品として交換・再利用できる.また 劇自身もパッドであり 劇(パッド)を合成することで劇中劇も実現される本論文ではパッドによる劇の構成と ステージパッドの動作機構について解説するとともに それらの応用例について述べる
著者
宮崎 正弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.970-979, 1984-11-15
被引用文献数
58

漢字 かな 英数字などの各種の文字で構成され 一般語の他に固有名詞も含んだ一般的な複合語に対する新しい自動分割法(係り受け解析法)を提案する.本解析法は次の三つの部分から構成される.第一は すべての可能な分割パターンを効率よく生成する部分 第二は 複合語を構成する単語が意味的にどのように結合しているかを解析するための係り受け解析部分 そして最後は 係り受け解析結果のなかから最適な分割パターンを選択する部分である.新聞記事に含まれる複合語の分割に適用した実験結果によれば 本手法は従来の最長一致法や分割数最小法に比べて精度よく 複合語を分割できることがわかった.
著者
相澤 彰子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.3332-3343, 2000-12-15
参考文献数
40
被引用文献数
10

本論文では語と文書の共起関係に注目し,与えられた文書集合中での語の特徴度の量的表現やその適用について,情報量的な観点から考察を加える.今日,情報検索の分野において広く用いられている ?tfidf (term frequency -inverse document frequency)は,語頻度と対数文書頻度の逆数を乗じた尺度である.ここで $tf$ を語の総出現頻度で正規化した値は,語の出現確率の推定値に対応しており,さらに $idf$ は一種の情報量として解釈できることから,?tfidf ? は確率と情報量をかけあわせた尺度であるといえる.本論文では,このような ?tfidf ? の定義を拡張して,語の特徴度を,「語の出現確率」と「語の持つ情報量」の積の形で一般的に定義し,実際のテキストデータに適用した結果を示す.This paper presents a mathematical definition of the {\it featurequantity}, a measure of specificity of terms in documents which isbased on an information theoretic view of retrieval events. Theproposed feature quantity is expressed as a product of the frequencyof terms and their amouts of information, and has a goodcorrespondence with \tfidf-like measures commonly used in today'sinformation retrieval systems. In the paper, the mathemtaicaldefinition of the feature quantity is shown together with someillustrative examples.
著者
中山 泰一 永松 礼夫 出口光一郎 森下 巖
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.985-993, 1993-05-15
被引用文献数
3

共有メそリ型の汎用高並列計算機において、非常に多数の細粒度の処理単位を並列に実行するための並列実行管理機構として、あらかじめプロセッサの台数と同数の軽量プロセスを用意しておき、これらを繰り返し使用するアクティビティ方式が提唱されている。その利点として、どのような形武の並列プログラムにも適用でき、処理単位の実行中にサスペンドがまったく発生しなげれば高い効率が実現できることが確認されている。しかしながら、ネストしたfork?join形式の並列プログラムにおいて、親処理単位が再帰的に子処理単位を生成していき、しかも、それぞれの親処理単位がそのすべての子処理単位の実行の完了を待って後処理を実行する場合、子処理単位の完了待ち合わぜによる多数のサスペンドが発生し、従来のアクティビティ方式のままでは顕著な効率の向上が得られない。本論文では、上記形式のプログラムの実行効率をも向上させるため、従来のアクティビティ方式に「遺言」とよぷ新しいコンストラクトを追加する方式を提案する、これは、後処理を子処理単位に「遺書」して親処理単位は実行を完了し、最後に処理を終える子処理単位を実行した軽量プロセスがその「遺言」を実行する方式である。この方式に基づいた並列実行管理機構を試作し、シミュレーションにより性能評価した。その結果、アクティビティ方式の利点を活かしつつ、プロセッサ時間とメモリ消費量が大幅に節減されることが示された。
著者
新納 浩幸 井佐原 均
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.32-40, 1995-01-15
被引用文献数
35

本論文では簡易な字面処理によって、助詞に相当する定型表現(助詞的定型表現)をコーパスから自動抽出する手法について述べる。ここで抽出する表現は、例えば「に関して」や「に基づく」のように、助詞的な働きをする定型的な表現である。これらの定型表現は処理上、一単語として扱うのが妥当であり、予め収集しておく必要がある。定型表現を自動抽出する従来の手法の多くは対象言語が英語である。しかし日本語の場合、英語と異なり、単語間の共起の強さを計るには、基本的に文を単語に分割するための形態素解析が必要である。しかも形態素解析には、暖味性、未知語などの問題がついてまわり、単語間の共起の強さを計るのは英語ほど容易ではない・完全な字面処理からのアプローチとしては、「ある文字列が1つのユニットになっていればその文字列の前後には様々な種類の文宇が現れる」というアイデアをもとに、大規模コーパスから得られたNグラムによって定型表現を取り出す手法がある。本手法は墓本的にこの考え方を利用する。ただし、助詞約定型表現の持ついくつかのヒューリスティックスと句読魚情報を活用し、完全なNグラムを作ることを避け、そのサブセットである疑似Nグラムと呼ぷある種の文宇列の頻度情報だけを利用する。結果として、簡易な字面処理だけによって、定型表現の抽出が可能となっている。このため、本手法は、実験の拡大、再現が容易であるという利点も持つ。
著者
竹田 尚彦 大岩 元
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.944-954, 1992-07-15
被引用文献数
12

システム設計をおこなうことを業務とするシステム・エンジニア(いわゆるSE)の育成は 従来プログラマに対して OJT(On the Job Training)の実施によりおこなわれてきたこれはプログラミング教育とシステム設計は別のものであると考えられてきたからであるしかし 小さな練習問題のプログラムでも 独立したシステムとみなすことができるわれわれは プログラムをシステム的にとらえることにより 「よいプログラマは よいSEになる」という立場にたつこうした立場からSE育成を考慮した初級・中級のC言語カリキュラムを作成した本カリキュラムは C言語の文法を教授するだけでなく 1)プログラム書法や例外処理の扱いを徹底する 2)ミニ・プロジェクトにより漸進的なプログラム開発を学習者におこなわせることを主目的に開発した1)では プログラム書法や ユーザにとって使いやすいプログラムについて理解させる.2)では プロジェクトを通じて 実際の開発現場で生ずるようなソフトウェアの進化を体験させることにより 仕様設計 モジュール分割や部品の再利用について理解させる本カリキュラムを 約75時間の講義-演習時間で約50人の全くの初心者に実施したこの結果 ミニ・プロジェクトをうまく纏められることのできる学習者には 短時間でモジュールや仕様に対する認識が確立され 初級アプリケーションSE程度の能力が身に付くことが分ったまた本カリキュラムを教授するためには 教師が十分なシステム構築経験を持っていなければならないことも分った
著者
越後 博之 湯瀬 裕昭 干川剛史 沢野 伸浩 高畑 一夫 柴田 義孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.2340-2350, 2007-07-15
被引用文献数
1

大規模災害発生時,行政・住民・ボランティア間の情報交換・共有の必要性が叫ばれながらも,実際にはうまく行うことができなかった事例が数多く報告されている.災害情報システムが,災害時のシステム障害を考慮した情報基盤上に構築されていないため,災害時に使うことができないことが原因としてあげられる.本研究においては,各地域ごとに災害情報システムが運用されていることに着目し,それらのシステムの資源を共有し,災害情報の分散化と統合化を行うことによりシステムの冗長化を実現するとともに,負荷分散も行うことを想定している.そのうえで,災害時にノードであるサーバや通信リンクに発生しうる障害に対し,障害を検知する機構を組み込むことにより,ネットワークの動的再構成を図ることで回避する仕組みを提案する.筆者らは,災害時に実運用可能なシステムのために,全国分散環境の構築を行い,その情報基盤上に,「広域災害情報共有交換システム(WIDIS:WIde-area Disaster Information Sharing system)」を実装した.本システムのロバストネスを考慮した基盤の有効性を確かめるため,性能評価を行いその有効性を確認した.When a large-scale disaster occurs, the information sharing functionality among the administrators, the residents and volunteers is important. However, there were many cases where information sharing was not actually well functioned because the disaster information network infrastructure did not consider the system failure when the disaster happened. In our research, we focus on the fact that the disaster information systems are operated on each local area. The system redundancy is realized by sharing the system resources and integrating the disaster information into a large disaster system while decentralizing the system and network loads. And, the system failure can be recovered by introducing system failure detection function for server failure and link disconnection and dynamically reconstructing the network system. In order to verify the usefulness of the suggested method, we constructed a nation wide disaster information network prototype system over Japan Gigabit Network (JGN2), implemented Wide-area Disaster Information Sharing system (WIDIS) and evaluated its functionality and performance.
著者
上田 達也 安倍 広多 石橋 勇人 松浦 敏雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1063-1076, 2006-04-15
被引用文献数
8

インターネット上のノードを距離に基づいてクラスタリングすることができると,様々なネットワークアプリケーションで有用である.本論文では,インターネット上のノード集合をP2P 方式を用いて階層的にクラスタリングする手法を提案する.既存の手法と異なり,本手法はインターネットの構造に関する外部からの情報を必要とせず,ノード間の距離が測定できればクラスタリング可能であるため,実用性が高い.またシミュレーション実験によって,信頼性・スケーラビリティが高いこと,妥当なクラスタリング結果が得られることを確認している.Clustering Internet hosts by their network distance is quite useful for many Internet applications. In this paper, we propose a new peer-to-peer algorithm which forms hierarchical clusters of Internet hosts. Our clustering algorithm, which only requires measurability of network distance between any two hosts, is more practical than any other previously proposed one, which requires external information of the underlying Internet structure. In addition, we show simulation results demonstrating that reliability and scalability of our method are high and that our method can generate proper clustering results.
著者
吉田 和幸 矢田 哲二 原山 博文 伊藤哲郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.1035-1040, 2005-04-15
被引用文献数
6

ウィルスを検出・除去するメールゲートウェイを導入以来,宛先不明のspamメールによるDoS(Denial of Service)攻撃をしばしば受けるようになった.そのため,OUNET(Oita University computer Network)の15台のメールサーバのユーザアカウントについてLDAPを用いて集中管理する統合メール管理システムを導入し,メールゲートウェイで,そのLDAPデータベースを参照することにより,宛先不明のメールをメールゲートウェイで拒否することができるようにした.従来,それぞれ独自のポリシで運用してきた各メールサーバのメールアカウントについて,この統合メール管理システムでは,ドメインごとに独立して管理できるように設計した.本論文では,我々が行ってきたspamメール対策,統合メール管理システムの必要性,構成,機能について述べ,さらに,現在までの運用状況について述べる.We often have DoS (Denial of Service) attacks by wrongly addressed spam mail ever since we introduced a mail gateway against computer viruses. Against that attacks, we introduced a mail account management system for 15 mail servers in OUNET (Oita University computer Network). Referring mail account database in that system by LDAP (Lightweight Directory Access Protocol), it is possible to deny the wrongly addressed e-mail on the mail-gateway. We design that system to manage mail account of each sub-domain independently. This paper shows the structure, function and utilization of the system.
著者
山崎 聡 中村 直人 宮寺 庸造 横山 節雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.2364-2372, 2004-10-15

近年,ネットワークを介して制御可能なリモートカメラを用いたインタラクティブなビデオ会議システムが開発されている.このようなシステムにおいて,カメラを操作する参加者が「どこを」「どれぐらい」「なぜ」見たかという視覚的な行動を分析することは,その機能や配置方法を発展させるために有効な手段である.現在,このような分析にはプロトコル分析法に代表される観察的な行動分析手法が一般的に用いられている.しかしながら,これらの手法では,参加者の行動モデルを構築するために記録メディアの中から特徴的な行動を抽出し,その回数や時間を計測・集計する必要があり,分析者にとって大きな負担となっている.そこで本論文では,リモートカメラを利用したビデオ会議システムにおいて参加者がカメラを通して得た映像とカメラの状態の組合せは,参加者の視野と本質的に同一であることを利用し,従来の観察的な行動分析手法に代わる新しい分析手法を提案する.具体的には,カメラの実映像に対してパン,チルト,ズーム率をメタデータとして記録し,分析時にその情報を活用することで参加者行動分析を支援する"Visual Field Record System" を開発する.最後に,開発したシステムを遠隔教育実習指導により評価した.その結果,学生のノートにズームを行うような参加者の特徴的な行動を,従来の手法に比べて円滑に抽出し定量的に計測・集計できた.Recently, interactive video teleconference systems using a camera enabled to control through a computer network are developed. To advance the systems, it is important to analyze what a participant is viewing in a distance place on the system; when, what, how long and why. However, much time is necessary for the analysis with behavior analysis methods generally used. Therefore, the purpose of this paper is to propose and develop a support system for a participant's behavior analysis in the interactive video teleconference. Firstly, observative participant's behavior analysis process and its subject are discussed. After that, the author proposes "Visual Field Record" newly behavior analysis method base on a relationship between remote camera's visual field and participant's its. Secondly, "Visual Field Record System" implements above newly method is designed and developed. It is described that this system composed by two sub-systems: the Record System and the Analyze Support System. Finally, these systems are evaluated by adapting to distance pre-service teacher training. As a result, it became clear that an effective participant's behavior analysis was provided by the Visual Field Record System.
著者
白井 諭 池原 悟 横尾 昭男 木村 淳子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2353-2361, 1995-10-15
被引用文献数
31

従来、述語間の係り受け関係の曖昧さの問題は、長文解析の精度を低下させる大きな要因であった。この問題を解決するため、日本語の意味的な階層的表現構遺に着目した従属節間の係り受け解析方式を提案し、その効果を示した。言語過程説の立場から見ると、日本語述語の間には書き手が対象をとらえて表現していく階層的な過程が反映していると考えられる。そこで、本論文では、日本語表出過程に着目した南不二男の3段階の階層的な従属節分類を、その意味と形式に着目して詳細化し、主節と従属節の述語を基本分類13種、細分類4種に分類した。そして、それらの階層的な順序関係を手がかりに、述語間の係り受け閣係を決定する方法を提案した。新聞記事972文(述語数含計2,327件、そのうち係り先の暖昧な述語は、661件)を対象とした実験結果によれば、従来の方法では、係り先の曖昧な述語が356件残ったのに対して、本論文の方法では、54件に減少し。、その結果、述語問の係り受け関係の解析において、係り先第1侯補の正解率は、92%から98%に向上した。