著者
山村 秀樹 河野 茂勝 大幡 勝也 江田 昭英 川合 満 堀場 通明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.937-942, 1987
被引用文献数
3

アトピー患者白血球および受動的感作ヒト肺切片からのアナフィラキシー性histamineおよびleukotriene (LT) 遊離に及ぼすtranilastの影響について検討した.1.10^<-5>g/mlのtranilastの反応惹起30min前処理は, 末梢血白血球からのhistamine遊離を抑制しなかったが, peptide LTsの遊離を抑制した.2.10^<-5>および10^<-4>g/mlのtranilastの反応惹起30min前処理は, 感作ヒト肺切片からのhistamine遊離のみならず, LTB_4およびpeptide LTsの遊離をも抑制した.以上の成績から, tranilastの抗喘息効果の一端は, histamineおよびLT遊離を抑制する機構によることが示唆された.
著者
丹羽 靱負 柳田 一朗 宗宮 教壹
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.207-215, 1984

各種細胞の膜現象の測定法のうち, リン脂質メチル化反応(phospholipid transmethylation)について, 最近異論が多いので, われわれは, 無刺激あるいは, opsonized zymosan, Con Aなどのstimulantsで刺激した健康人好中球, およびリンパ球のmicrosomal fractionのリン脂質のtransmethylationについて, その手技に再検討を加えて改良した結果, 本検査法の信頼性が再確認されたので報告する.まず, 限定された資料(血液)より, 最大の膜成分の収穫率をあげるには, 超音波24W, 10秒でsonifyし, 1検体につき200μgの蛋白量について実験を行うと, 無刺激の好中球では0.40±0.050, リンパ球では0.74±0.075pmol/min/mg proteinのリン脂質メチル基転移酵素活性が得られた.また, 各種stimulantsで刺激した場合の至適濃度および至適時間については, 好中球・リンパ球共に, ライソゾーム酵素や活性酸素産生の際およびblastogenesisの実験の際使用する量の約1/5-1/10の使用量により, 無刺激より20-40%の値の上昇が得られた.また, 同一資料で並行して行った二次元薄層クロマトグラム(TLC)により, メチル化リン脂質反応産物の産生が確認されたことと, メチル化阻害剤3-deaza-SIBAを前もって添加すると, 上述の活性の低下とアトピー性皮膚炎の重症度との間に相関がみられた.
著者
猪又 直子 大砂 博之 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.38-42, 2006-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

26歳, 女性.カシューナッツを舌にのせた直後より, 舌のしびれ, 咽頭痛, 顔面の〓痒が出現した.既往歴にアトピー性皮膚炎, 気管支喘息はあるが花粉症はなし.検査結果ではカシューナッツについてCAP-FEIAがクラス2, プリックテスト(SPT)は強陽性を示した.カシューナッツと同じウルシ科に属するピスタチオは, 摂取時の症状はなく, CAP-FEIAはクラス2だがSPTは陰性, マンゴは摂取時に上口唇腫脹をみとめたがマンゴ果肉のSPTは陰性であった.以上よりカシューナッツによる口腔アレルギー症候群(OAS)と診断しカシューナッツを除去とした.除去後約1年でカシューナッツのSPTが陰性化したことから, 自験例では花粉抗原などの交差反応性よりむしろカシューナッツによる経口感作によって発症した可能性が高いと推察した.
著者
近藤 哲理 谷垣 俊守 日比野 真 大江 元樹 加藤 さくら子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1325-1329, 2014

ドライパウダー吸入器(DPI)の吸気(内部)抵抗値は患者に即したDPI選択に重要な情報である.我々は過去にDPIと吸入指導器具の内部抵抗値を報告したが,今回は新規DPIと指導器具の内部抵抗測定を行った.方法:デバイスから様々な強度で吸引を行い,吸気圧と通過気流速度から抵抗値を求めた.結果:総てのデバイスで気流と圧に放物線関係を認めた.抵抗値はエリプタ^[○!R]8.44±0.45×10^<-2>(mean±SD),ブリーズヘラー^[○!R]5.53±0.13×10^<-2>,新規ディスクヘラー7.27±0.40×10^<-2>,スイングヘラー^[○!R]12.15±0.40×10^<-2>,ディスカス用新トレーナー7.07±0.24×10^<-2>,エリプタ用トレーナー8.72±0.45×10^<-2>√<cmH_2O>/L/minであった.一方,トレーナーの発音閾値はディスカス用38.1±5.1,エリプタ用39.9L/minであった.結論:ディスカスからエリプタへの変更に吸気速度の指導は不要である.ブリーズヘラーは低肺機能患者に適するが,過大な吸気速度の配慮も必要である.トレーナーは,発音開始より強めの吸気努力が適切である.
著者
久米井 晃子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.116-127, 1995
参考文献数
31
被引用文献数
11

東京周辺のAD患者157名について, methylene blue agar (MBA) 法によって, 患者宅のダニ相とその季節消長を検討した. その結果, ダニはカーペット, 畳及び畳の下に多く検出され, ほとんどの場所では夏季を中心に増加する傾向を示した. しかし, ソファー, 座布団などでは冬季に増加していた. 一方, 防ダニ製品ではダニが少なかった. ダニ相のデータに基づいて集学的ダニ対策を難治のAD患者34名に勧め, 1又は2年後の同じ月±1ヵ月の時期に, 同季節のダニ相と臨床症状の変化を検討した. 34例中17例において十分にダニ対策が実施され, その場合ダニ数が30%以下に減少した率は82%, 臨床症状の改善率(著明改善+改善)は88%であった. 全治に近い症例が7例存在した. ダニ対策が不十分な12例又は, ほとんど実施されなかった5例合計17例では, 臨床症状の改善率は35%であった. 以上から, ADが難治の時, とくにダニアレルギーが明瞭な場合は, ダニ相の検査と十分なダニ対策が有効な原因療法と考えられた.
著者
周東 寛 野口 久 西片 光 滝沢 健司 周東 千鶴 永田 眞 寺師 義典 山口 道也 滝沢 敬夫 渡辺 建介 登坂 薫 岡野 昌彦 小泉 昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.714-720, 2007
被引用文献数
1

吸入ステロイドの副作用の一つとして,口腔・食道カンジダ症の報告がある.点鼻ステロイド長期投与により出現した「嚥下による口腔・食道通過時に不快感」の症状を呈した症例に口腔・食道カンジダ症を発見した.そして点鼻ステロイドを中止したことにより著明に改善した症例を経験したので報告する.症例は69歳女性.嚥下時上胸部に通過障害の違和感を主訴にて来院した.数年前より通年性アレルギー性鼻炎と診断され, 2年前より点鼻用BDPを毎日睡眠前に点鼻していたことを内視鏡検査後の問診でわかった.患者は睡眠中の鼻閉鼻汁の強い症状が, BDP点鼻により改善することで,使用し続けていた.経過:上部消化管内視鏡検査により下咽頭炎及び食道カンジダ症「吸入ステロイドによる食道カンジダ症の分類」のhigh grade(Grade III)を認めた.治療対策として,点鼻BDPを中止し抗真菌剤は使用せずに,毎日うがい・鼻洗を実施, 2週間後に主訴が改善, 1ヵ月半後の内視鏡再検査にてmild grade(Grade I)に改善していた.睡眠前の吸入ステロイド使用と同様に,睡眠前の点鼻も経鼻腔的に食道にステロイドが嚥下され滞留し, 1年以上長期に点鼻ステロイドを使用した結果,食道カンジダ症が発症したと思われた.