著者
浜田 拓 倉本 宣
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.76-82, 1994-08-31
被引用文献数
34 42

コナラ林から採集した土壌をプランターにまきだして埋土種子の発芽試験を約1年間行った。試験開始初期に総発芽個体数の約半数が発芽し,その後は季節ごとに特徴のある発芽がみられた。発芽した個体には耕作地等に生育する草本が多く含まれていたが,同時に管理されたコナラ林に生育する種も含まれていた。また,埋土種子は,同一調査区の試料の間でも不均一な分布をした。これらの結果をもとに,コナラ林の植生管理における埋土種子の役割を検討した。
著者
庄子 康
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.685-690, 2001-03-30
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

近年,自然公園の様々な問題を考える上で,環境の持つ価値を経済的に評価する環境価値評価が利用され始めている。これら手法にはトラベルコスト法(TCM)や仮想評価法(CVM)等があるが,信頼性の点からTCMとCVMの評価額を比較することは有用である。本研究で北海道雨竜沼湿原における野外レクリエーションの価値をゾーントラベルコスト法(ZTCM),個人トラベルコスト法(ITCM), CVMによって評価を行った。ZTCMの評価額は訪問あたりの平均値で1214.9円,ITCMの評価額は1552.6円,同じくCVMの評価額は1687.7円と推定された。これらの推定値を直接比較することはできないが,真の評価額はこれらの値と近い値であると推測できる。
著者
赤坂 信
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.59-65, 2005-08-12
参考文献数
27
被引用文献数
4 5

昭和初期の10年(1930年代)は郷土風景の保存について盛んに議論されていた時代である。当時の造園関連の機関誌,専門誌を中心に議論の流れを整理しつつ考察した。1930年代後半からは郷土風景喪失の危機感を背景に保存の指針や法的な整備に関する論考も現れた。凍結的保存論もあるなかで,郷土風景は人の生活するところであるが故の「進化」のダイナミズムを認め,制御しながらより良いものにしていこうという提言もみられた。一方,こうした高所から,あるいは計画主体からの議論の他に,自らがすむ具体的な東京の「郊外」をとりあげて地元の郷土人による保存論の試みもあった。「都市化」と「昔のまま」の間に宙づりにされた郊外を「郷土風景」としてどのように意味づけ(解釈)するかが保存論の共通の課題であったが,具体策に結実することなく,予想をはるかに超えるスピードで到来した市街化の圧力の前にはほとんど無力であった。社会的な関心がありながら郷土風景が消滅する理由に,第二次世界大戦が後に控えてはいたが,保存論自体が社会的に直接影響を与える(適用が可能な)文化運動になり得なかったことが-因と考える。
著者
本田 裕紀郎 倉本 宣
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.583-588, 2001-03-30
被引用文献数
8 6

絶滅危惧植物力ワラニガナの生育状況を把握するため, 多摩川においてDGPSを用いて局所個体群の分布を記録するとともに, その個体数と個体群間の距離を測定した。その結果, 一つの個体群を除いて他は極めて脆弱な個体群のみであり, 各個体群間の距離は非常に長かった。<BR>また, 休眠・発芽特性を明らかにするため, 3種類の発芽実験を行った。その結果, 変温効果はあるが永続的な埋土種子集団を形成しないこと, 一次休眠は誘導されていないこと, 低温域において若干の相対的休眠が誘導されること, 秋に発芽することが明らかになった。<BR>これらのことから, 個体群の復元が必要であり.それには秋の長雨が訪れる前に種子を散布することが有効であると考えられる。
著者
小野 健吉
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1-4, 1995-03-31

蘆花淺水荘は、近代京都画壇で活躍した日本画家・山元春擧が、郷里滋賀県大津市の琵琶湖畔に営んだ別荘である。庭園は、大正4〜6年ごろを中心に、春擧の指示のもと京都の庭師・本井政五郎らにより作庭された。築造時の記録、築造後間もない時期の写真・図面・文献、関係者の証言などから、この庭園が建築と並行して築造されたこと、風景画にすぐれていた春擧が絵を描く感覚でこの庭園のデザインに取り組んだこと、琵琶湖を視覚的にも利用の上でも主たる構成要素とする傑出したデザインの写実的風景式庭園であったことなどを確認した。
著者
永松 義博 日高 英二 中野 功二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.149-152, 1996-03-29

視覚障害者の友人関係について調査した。盲学校での校内友人数は4〜6人の割合が高い。弱視者,寄宿舎生の友人数は多くなる傾向にある。盲女子は友人数が少ないといった男女差がみられた。同学級,同寮であること等,接触の機会が友人関係成立の大きな要因となる。また同性であること,同級生,同程度の視力者によって友人構成がなされている。健常者の友人をもつものは弱視者,準盲者の男子に多くみられた。その数は1人もしくは2人である。成人の健常者を友人|こもつ機会は男女共にサークル活動の場を通じてが最も多いため健常者との交流の機会や場所の提供が今後の重要課題になる。
著者
加我 宏之 岡田 道一 下村 泰彦 増田 昇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.759-762, 2002-03-30
被引用文献数
2

震災復興住宅を対象に,団地空間分類毎に入居初期段階での居住者による緑化活動状況を把握し,緑化主体に対するアンケート調査を通じて,緑化活動と関連づけた住環境づくりの課題と方向性を探った。その結果,緑化植物は観賞用植物が多く,屋外空間の修景に対する居住者の関心の高さが伺えた。緑化主体は個人による緑化が多いが,入居初期段階でのグループによる緑化も確認でき,ベランダ下は,個人緑化が主体となり,観賞園や菜園としての緑化が多く,遊園や団地出入口は,グループ緑化の活動場所として選択されやすいことが明らかとなった。緑化活性のために屋外空間をハーフメイドに設えることや資金,材料,技術支援の有効性を示唆した。
著者
中江 亮太 包清 博之 中村 久二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.707-710, 2002-03-30
被引用文献数
3 2

本研究では,海浜緑地を対象に,周辺から訪れる住民と遠方から訪れる人々の来園者行動の特性把握を通じて,各々の来園目的に対応した環境諸要素の整備や管理に関する整備視点についての示唆を得ることを目的とした。博多湾の埋立地に設置された「みなと100年公園」を対象に,両者の来園目的や環境諸要素に対する認知特性などを捉えるため,来園状況調査とアンケート調査を計6回実施した。その結果,両者間で平日休日の来園者数や滞在時間に違いはみられず,海に係わらない来園目的が多く指摘され,海に対する認知では両者に違いがみられることなどを把握し,整備視点について検討した。
著者
細野 哲央 三島 孔明 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.489-494, 2005-03-31
被引用文献数
3 3

This research aims at clarifying proper management of planting demanded from a legal viewpoint. First, Article 2 of State Redress Law and Article 717 of Civil Code are set as keywords, and the judicial precedent is searched, using the Internet database "law information database LEX/DB Internet". And then, the examples in connection with roadside planting were taken up out of the searched examples. The acquired judicial precedent was classified, observing the concrete mode of the accident. And five examples that the accident occurred when the victim collided with planting directly were summarized in the table, observing the regarded fact in the decision. Consequently, the relation between the legal responsibility for manager and the contents of planting management on the judicial precedent for the collision with roadside planting could be clarified and expressed to the figure.
著者
大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.513-516, 2002-03-30
被引用文献数
6 6

アカガエル類2種の生息数(概数)を規定する環境要因について解析するため,多摩丘陵中南部〜三浦丘陵北部に点在する7箇所の公園・保全緑地を対象に, 1999年〜2001年にアカガエル類の卵塊数調査を実施した。7地点での3年間の卵塊数の平均はニホンアカガエルが13〜2250卵塊,ヤマアカガエルが15〜165卵塊であった。ニホンアカガエルの卵塊数は過湿田と休耕過湿田の両方の面積(rs=1.00)との,またヤマアカガエルの生息数は耕作されている水田ではなく休耕田の湿地面積(rs=0.94)との関係が強くなっていた。このように両種の卵塊数は,繁殖に使われる植生区分の面積や管理状態により規定されていた。対照に非繁殖期の植生区分は両種の卵塊数との間に関係は見られなかった。
著者
宮本 克己
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.229-232, 1995-03-31
被引用文献数
2 2

東京緑地計画(1939)に端を発するわが国緑地帯構想は,その後,防空空地帯,緑地地域を経て,首都建設計画,首都圏整備計画における近郊地帯へとその形を変え受継がれ,今日まで東京の発展に多大な影響を与え続けている。この間,経済復興にともなう東京への集中が激化する中,緑地帯の実現への努力が種々なされるが,構想に反し地価低廉な緑地帯への分散が進み,諸施策の進捗状況もおもわしくなく,ついに近郊整備地帯へと衣替えすることとなった。本稿は,旧くから特に首都圏において議論されてきた緑地帯構想に関し,それを担保すべく諸制度の,特にその実効性に焦点を当て検討し問題点を指摘したものである。
著者
近藤 哲也 山口 真有美
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.507-510, 1999-03-30
被引用文献数
11 11

海浜植物の保全と海浜地域での景観への利用を目的としてハマエンドウの種子発芽特性を明らかにした。ハマエンドウの種子は硬実種子であることが確認された。濃硫酸に浸漬することで種皮に穴と亀裂を生じ,それによって硬実を打破できた。40分間硫酸処理された種子は10〜20℃の温度範囲で90%以上の発芽率を得ることができた。しかし,25,30℃では発芽率が低下し,発芽速度は遅くなった。硫酸処理後の種子は,乾燥3℃,無乾燥3℃,無乾燥室温のいずれの条件下で貯蔵しても,少なくとも1年間は処理直後の発芽力を維持できた。また,自生地の砂を覆土した実験では,6cmの覆土でも25日目には80%の発芽を見た。
著者
米森 由佳 倉本 宣
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.527-530, 2000-03-30
被引用文献数
7 7

多摩川中流域の河川改修後の低水路護岸3箇所において,1998年8月の増水によって堆積した土砂と植物遺体に含まれる種子を実生発生法により同定したところ,61種の実生が確認され,そのうち28種46%は帰化植物であった。 1999年5月と8月に行った群落調査においても出現種の多くが帰化植物であった。河川改修時の低水路護岸の緑化は,人工的に植栽をしなくても増水時の種子供給により可能であるが,帰化植物の扱いについての十分な検討が必要であることが示唆された。
著者
一ノ瀬 友博 加藤 和弘
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.73-76, 1996-03-29
被引用文献数
19 10

孤立樹林地内部の植生構造が鳥類の分布にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするために,埼玉県所沢市の比較的面積の大きな孤立樹林地において鳥類の分布と植生構造の対応関係を調査した。樹林地を植生によっていくつかの林分に分け,それぞれの林分において点センサス法による鳥類群集調査を行った。既往の研究の多くは鳥類の繁殖期に調査を行っているが,本研究では越冬期に調査を行った。植生構造は各階層の植物体量と胸高断面積によって把握した。その結果,越冬期においても鳥類の種数は植物体量と有意な相関が見られた。鳥類の分布は,全階層の植物体量と低木・草本層の植物体量,枯れ木の胸高断面積と関係があることがわかった。
著者
西嶋 啓一郎 仲間 浩一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.569-572, 2000-03-30
被引用文献数
2 2

景観研究にとって,特定の意味づけが風景イメーシとして実景に投影される過程を明らかにすることは,風景生成の内容を理解する鍵になる。本論では,歴代の通信使の紀行文と漢詩集をテキストにし,瀬戸内海鞆浦での風景生成を考察した。その結果,通信使の風景記述方法には,次のパターン化された図式が確認された。通信使は,過去の通信使の風景記述を受け継ぎ,洞庭湖や瀟湘八景の風景イメージを実景に投影するため,鞆浦の空間の実体的な要件を確認した。そして,その認識により主体の内面に特定の意味づけが行われた結果,「日東第一形勝」という風景が生成された。このことにより,通信使による鞆浦での風景の生成と定着が明らかになった。
著者
西田 正憲
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.407-410, 2005-03-31
被引用文献数
3

The paper considers characteristics of mountain representation that people captured in the gaze upon mountains, through analyses of the descriptions of the travel accounts and so on, in the Edo Era. It surveys first characteristics of mountain representation from ancient times to medieval times, in order to point out characteristics of the Edo Era more clearly. The analyses are done to the next by extracting the descriptions of 5 mountains, Mt. Tateyama, Mt. Daisen, Mt. Unzendake, Mt. Asozan, and Mt. Kirishimayama, from 6 travel accounts and so on, in the Edo Era, and by judging the descriptions from 4 standards of religious representation, historical representation, literary representation, and landscape representation. In consequence of these analyses, the paper shows, as characteristics of mountain representation of the travel accounts and so on in the Edo Era, that sense representation which consisted of religious and historical representation became more than a half, that landscape representation of the Edo Era increased considerably as compared with ancient and medieval times, and that literary representation of the mountains decreased extremely as compared with plain parts and seashore parts.