著者
章 俊華 木村 弘
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.797-800, 1998-03-30
被引用文献数
3 4

本研究では,中国私家庭園における「廊」に着目し,分析対象庭園の「廊」の種類と分布状況により,空間構成の類型化とその特徴を明らかにすることを目的として,蘇州市にある8つの庭園の「廊」に対して実測調査し考察を行った。その結果,8つの私家庭園における空間構成の類型化は4つのグループに分けられた。その特徴は特有な特性を持つグループA,特有,且つ神秘な特性を持つグループB,離水,且つ開放的な特性を持つグループC,隣水,且つ多様な特性を持つグループDをそれぞれの極とする立体構造の分布が把握できた。「廊」形態の変化に基づいた空間の特質から類型化と対応関係が見られた。
著者
深町 加津枝 奥 敬一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.647-652, 2002-03-30
被引用文献数
9 12

薪炭利用などをとおし地域住民と密接な結びつきがあった里山ブナ林の多くは,今日,面積の減少や管理放棄など,保全上の様々な課題を抱えている。本研究では,里山ブナ林の景観を対象とした評価実験を行い,都市住民との比較から里山ブナ林に対する地域住民の景観評価と継承意識の特徴を分析した。レパートリーグリッド法による分析からは,繁茂度,自然性など里山ブナ林の景観に対する印象軸を抽出し,土地利用履歴ごとの景観の評価構造を示した。多元的評価尺度を用いた景観評価では,地域住民と都市住民との里山ブナ林の評価に大きな差異があり,地域住民の継承意識が水土保全機能,身近さ,美しさに規定されることを明らかにした。
著者
日置 佳之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.205-208, 1996-03-29
被引用文献数
7 5

オランダでは,生物多様性を維持する目的で生態ネットワークを形成することが,国土計画における重要な政策として1990年に採用された。生態ネットワーク計画は,動植物のハビタットの分断化を防ぎ,生態系の水平的なつながりを回復しようとするもので,景観生態学的な調査に基づいて立案され,中央政府・地方政府・NGO等の協力のもとに,生態的インフラストラクチャー整備によって実現が図られつつある。本稿では,生態ネットワーク計画の理論的背景,計画内容,実現戦略について文献と現地調査に基づいて整理し,その特徴を考察した。
著者
飛田 範夫
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.56-67, 1998-08-31
参考文献数
57
被引用文献数
1 1

庭園植栽は日本に庭園が誕生する以前の, 人間と植物との長い歴史が存在していたから可能になったといえる。旧石器時代から樹木の幹・枝は薪, 果実は食料となり, 縄文時代には樹木の管理栽培が開始され, 弥生時代には稲作・畑作や果樹栽培がなされている。古墳時代には薬草栽培・植林も行われていたであろう。こうした植物に対しての長い間の知識が, 庭園植栽に応用されたわけである。飛鳥・奈良時代の海洋風景式庭園にはマツが多く植えられ, シダレヤナギ・ウメ・モモなどが愛好されている背景には。中国文化の影響がある。また, 中国本草学の影響を受けて薬草栽培が盛んに行われ, 薬用植物が次第に庭園に利用されるようになったことも見逃せない
著者
浅見 佳世 服部 保 赤松 弘治
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.125-128, 1995-03-31
被引用文献数
6 12

河川堤防植生(河川堤防法面上の植生)の実態を明らかにし植生管理手法を確立するために,高知県仁淀川,兵庫県猪名川,徳島県那賀川の堤防法面で植生と刈り取り頻度との関係について調査を行った。両者の関係については,刈り取り頻度が2年に1回以下の低頻度ではススキが,年1,2回ではチガヤやススキが,年3回ではシバがそれぞれ優占し,また刈り取り頻度に対応して草丈の増減,季節性の有無,種多様性の高低が生じることが認められた。この内堤防管理の安全性および景観性,種多様性などの環境機能についての条件を勘案すると,堤防植生としてはチガヤ型がふさわしくその管理方法としては年2回の刈り取りを行うのが望ましいと考えられる。
著者
鈴木 誠
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.421-424, 1997-03-28

宮澤賢治の残した「装景手記手帳」と『「装景手記」ノート』の詩句草稿を検討対象とし,賢治のとらえた「造園家」と「装景家」の概念について考察した。賢治は広義の「造園」に同じ意である田村剛の用いた「装景(Landscape Architecture)」のもつ意味を認識しつつ,詩「装景手記」の構想を発想したこと。「この国土の装景家たちは/この野の福祉のために/まさしく身をばかけねばならぬ」という一節に感じる,賢治が思ったランドスケープ・アーキテクトという職能の重要性。そして,園芸や造園にも興味を持ち,語感の優れた宮澤賢治でさえ,1927年当時に「造園」「造園家」の役割,職能の重要性を感じつつも適切な呼称に迷っていたことを指摘した。
著者
青木 陽二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.469-474, 2001-03-30
参考文献数
94
被引用文献数
1 3

風景や景観を表題にする著作が近年になって多くなった。これは風景というものに対する興味が人々に現れた結果であると考えられる。明治以降に出版された風景や景観を表題などに含む本について, 風景という現象に対する理解がどのように変遷して来たかについて調べた。その結果最初は人間の外界にある現象だと思われていたが, 次第に人間の心に生ずる特別な現象であることが理解されるようになった。人間の五感を通した大脳の機能による現象であることが指摘されるようになり, これをもたらしている景観体験について, 時間の長さを変えて, また気候や文化などによる影響について明らかにする必要が分かった。
著者
加納 潤吉 小野 良平 熊谷 洋一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.845-850, 2002-03-30
被引用文献数
2 1

本研究は,地域の自然環境をいかしたコミュニティ空間としての河川を対象に,コミュニティ内の生活と信仰からなる「空間構成」の原型を把握し,さらに近代以降の空間構成の変容過程と,その要因としての人為的環境変化を明らかにし,空間構成における河川の役割の変容について考察することを目的とした。そして,目黒川沿いに成立し,地形条件の異なる3神社の氏子のコミュニティにおける空間を対象とし,文献およびヒアリング調査を行った。その結果,河川により形成された地形によって空間の領域が規定される等の,複数の空間構成の形態を見出せ,近代以降における空間の変容をこれら空間軸と河川との関係の変化として捉えることができた。
著者
大出 英子 近藤 三雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.537-540, 2001-03-30
被引用文献数
1 3

室内緑化空間として,鑑賞用温室(約35000lux),明るいアトリウム空間(約6000lux),オフィス空間(約350lux)を想定した実験区を設け,造園樹木4種の栽培実験を行い,葉の陰葉化,光合成速度および生育状態から,室内弱光環境での生育可能性について考察した。その結果,35000lux区では4樹種ともに健全な生育を維持できること,6000lux区ではトウネズミモチは健全に生育するが,イロハモミジとカクレミノは1年目は健全に生育するが2年目以降は生育が低下すること,エゴノキは著しく生育が低下すること,350lux区では4樹種ともに概ね1年以内で枯死することが明らかとなった。
著者
中島 敏博 田代 順孝 古谷 勝則
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.579-584, 2007-03-30
被引用文献数
3 8

Open-space conservation activities are popular in the suburban area. But they have an issue to continue their group. New member, especially young people, have not accessed to them. We should understand way to participate the ordinary people in the open-space conservation activities. The paper aimed to clear the relation to the open-space use and the distance between the open-spaces and citizens' neighborhood. We researched the citizens at Matsudo city in Chiba prefecture by questionnaire survey. They answered using the open-space and their neighborhood extend within 2km from their residence. In the results, if planning to manage the open-space by citizens where is 300-500m away from their neighborhoods, we should brush up the quality of open-space. Because, they only use that several time. We should create the chance they want to manage them. Another hand, the open-space within 300m away from their neighborhood, they use the open-space usually. And this situation has high potential to manage the open-space with them. Finally, we suggest a unit of area for open-space planning with open-space conservation activities by citizens.
著者
大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.495-500, 2000-03-30
被引用文献数
8 9

都市域におけるカエル類の保全を検討するため,多摩丘陵南部においてシュレーゲルアオガエルの鳴き声による個体数把握を行い,各生息地の環境条件との関係を調べた。生息地点は全域で77地点であり,そのうち30個体以上の計数個体数が得られたのは10地点のみであった。水田タイプ毎の個体数密度は過湿田>湿田>乾田の順であり,都市緑地における過湿田・湿田の重要性が示された。また,分散能を考慮した地域個体群としての評価を加えることにより,多くの地点が不安定な状態の個体群であることが示された。得られた結果を基に,本種の生息に必要な整備・管理指針および丘陵全体でのメタ個体群の保全について考察を加えた。
著者
養父 志乃夫 山田 宏之 中島 敦司 中尾 史郎 松本 勝正
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.447-450, 2000-03-30
参考文献数
7
被引用文献数
1 6

従来から行われてきている草本種子を用いた法面緑化工法ではない,自然の表土と,それに含まれる埋土種子を利用する緑化工法に関する研究のため,香川県内において試験施工を行った。樹林内の表土を尾根部,中腹部,谷部の3箇所から1997年3月と6月に採取し,土嚢袋に詰めたて勾配32度の南西斜面に設置し,追跡調査を実施した。施工後2年目の段階で,土壌採取場所の違いにより異なる植生が成立した。いずれの区においてもアカメガシワ,ヌルデ等の先駆性の植物が優先的に成立したが,尾根部から採取した土壌区では特にススキが密生し,最大の被覆量を占めた。ススキも含め,植物被覆量の多い区ほど土壌流亡が少ないことも明らかになった。
著者
森本 淳子 丸山 宏 柴田 昌三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.485-488, 1997-03-28
参考文献数
10
被引用文献数
6 5

美しい花を咲かせる木本植物の観賞を目的とした二次林管理として,光環境の調整による花芽率のコントロールが提唱されている。しかし,花芽率の予測には,植物の生態学的特性を考慮した評価が必要である。そこで,関西地方の二次林に多く自生するコバノミツバツツジの開花のメカニズムを解明することを目的に,連続的に日射量を測定し,花芽率・当年枝の構成・枝の動態を調べた。そ結果,5月〜8月の日射量が410MJ・m^<-2>・month^<-1>以下の生育場所では花芽分化は確認されず,明るいほど当年枝にしめる繁殖枝の割合が高くなること,繁殖枝の腋芽から伸長する栄養枝の数は光環境の影響を受けにくいことなどが明らかになった。
著者
赤坂 信
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.401-404, 1998-03-30
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

ドイツを中心とした郷土保護運動はわが国にもほぼ同時代に紹介されていた。こうした紹介のなかで,何に関心が集中し,制度としての必要性を感じていたのかを明らかにしたい。郷土保護の国際会議に出席した石橋五郎の報告(1912)に寄せて黒板勝美(1913)は郷土保護の有用性(保存による国民の「元気修養の方面」)等について解題するとともにわが国の当時の保存の考え方を批判している。学術上の保存の根拠のほかに「社会人心に感化を及ぼす」伝説の地も保存の対象に加えるべしと黒板の考え(1912)は,後の神武天皇などの聖蹟さがしなどのフィクショナルなものと結びついていった。
著者
一ノ瀬 友博 森田 年則
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.501-506, 2002-03-30
被引用文献数
10 14

淡路島北淡町の農村地域のため池24ヶ所において, 2000年の6月から9月の間,トンボ類の分布を調査した。出現したトンボ類の種数とため池の水域面積の間には明らかな関係が見られなかった。TWINSPANによって,24ヶ所のため池は5つのタイプに分類された。ため池の環境についての変数を説明変数として,分類・回帰樹木を用いて分析を行った結果,ため池の区分には,ため池の位置する標高,隣接する樹林の存在,水域面積,水質が影響を及ぼしていることがわかった。特に,ため池の周囲の約半分以上で樹林と接していれば,林縁や暗い環境を好む種が出現することが明らかになった。