著者
岡村 穣 佐藤 仁志
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.777-780, 1998-03-30
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

名古屋市は,戦災復興計画以来,小学校を地域の防災上の拠点とするため,約半数の113小学校が道路を隔てて公園に隣接している。その中の8校の校庭は,道路を廃して公園と一体化させた学校公園となっている。校長及び教頭への学校公園の管理に関する聞き取り調査では,授業の一環としての利用はあるが住民の利用は少なく,授業時以外の責任の曖昧さや管理の負担を感じており,できれば専用で使いたいという回答が多かった。大森北小学校(守山区)では,学校公園を利用したワークショップに,多くの児童,親,及び学区住民が参加したが,学区連絡協議会長,校長及びPTA会長の3者の参画及び呼びかけが有効であった。
著者
青木 陽二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.53-57, 1999-08-25

江戸時代に来日した欧米人の日記や旅行記を調べることにより,彼らが日本の風景の中で,地形の細やかさ,植生の豊かさ,山上までの耕作,郊外の田園散策路,長崎の入江,富士山,街道の並木を好ましいと記述していることがわかった。記述の中には植物の多様さ,高木の美,新緑,紅葉,熱帯と寒帯の植物なども記していた。彼らはまた,日本人の花好き,旅行好きであること,田畑を庭園のように耕すことなどを記述していた。これらの欧米人の風景記述は,景観評価のデータとして今後分析を試みる価値があると思われる。
著者
村上 修一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.238-245, 2003-01-31
被引用文献数
1

近代の空間成果として注目すべき形態の多重解釈性(暖昧性)という観点から検証すべく、ガレット・エクボ(1910-2000)の初期4事例の図面を調査し分析考察を行った。その結果、樹木列植による囲みを単位空間として、列植の隙間・延長の交差・ずれという空間構造や高木列植の視線透過性による暖昧性が明らかになった。また、その空間構造によって視点移動にともなう空間変化が顕在化することが明らかになった。これらの結果は、近代の空間成果としての暖昧性が、エクボの初期作品に共有されことを示し、成果がいかに空間化されたかを示す。
著者
岡田 昌彰
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.721-724, 2006-03-27
被引用文献数
1

Recently, renovation project of existing structures, such as old architecture, industrial or civil engineering facilities are taken for efficient use of existing facilities with different functions. This current on social facilities may suggest the gradual change of value from flow (scrap and build) to social "stock". Their purposes of renovation are to acquire economic benefit or efficient preservation of cultural heritages, however, landscape or spatial values or meaning of renovated landscape or space which the structures take on as a result of renovation have yet to be sufficiently discussed. This study reviews social trend of renovation projects, and introduction of existing aesthetic theory of Mitate and Estrangement permits the manifestation of potential value of landscape and space, such as significance of "distance" caused by semantic difference between present and past use. In this meaning, landscape and space of industrial or civil engineering facilities (i.e. technoscape and technospace), such as watertowers, channel defenses, or abolished railway tracks are concluded to possess high potential to produce estranged value when renovated.
著者
東 淳樹 武内 和彦
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.573-576, 1999

The research on the relationship between the environmental conditions of the habitat and the speci.es and the individual number was made in respect to the frogs which inhabiting in the Kashima and Tegri River, watershed of Inba Marsh, Chiba Prefecture. The field-survey was carried out from May to July in 1997 and 1998. Walking on the paddy field ridge, the number of the frogs, the walking distance and the environmental factors of the surrounding area were recorded. Then the relationship between the individual density of each species and the environmental conditions was analyzed by means of Hayashi's quantification theory I. As a result, the major factors which would affect the individual density were clarified: The underdrainage of the paddy field, the landuse of the slope, the irrigation system and the arrangements of the canal. Another fact was also revealed that the reformation into well-drained paddy field which is promoted by the farmland consolidatuin tends to have the negative impact on the inhabiting of the Japanese brown frog while it does not have much affect on that of the Japanese tree frog.
著者
永松 義博 岩渕 由生子 長澤 栄子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.727-730, 2002-03-30
被引用文献数
4 4

視覚障害者の公園利用の状況,公園を利用するに際しての支障事項,また,どんな公園施設を望んでいるかを知るために,点字アンケートを行った。視覚障害者が利用している公園は自宅から容易に行ける場所にあり,多くの緑と広い空間があった。公園に行かない理由は,公園に行くまでの移動に危険がある,遊ぶ仲間がいないことなどがあげられた。視覚障害者が望む公園施設は,主に,散歩道,ベンチ,休憩所などであった。
著者
外村 中
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.266-269, 2001-01-29
被引用文献数
2

中国ではすでに5世紀後半頃には,生活環境にすぐれた郊外に住居を構え,朝早く起きて都市内にある職場に通うといった,いわば極めて現代的な生活様式が一部知識人達の間に流行していたらしいことが認められる。本稿は,この点に関して最も詳しい記録を残した人物のひとりである梁の沈約(441-513)の郊居(郊外の住居)についての基礎的な考察である。
著者
古山 道太 服部 勉 進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.377-380, 2005-03-31

Shiki-an Garden(Negishi, Taito Ward in Tokyo) is a garden inside the residence where Shiki MASAOKA(a superior haiku poet in the Meiji era) had lived for about 9 years from 1894 (the year 27 in the Meiji era) before he passed away by the vertebra caries of disease in 1902(the year 35 in the Meiji era). In this research, it emerged the garden's sort, form, position and terms of plants and facilities in the garden, from some analyses about 398 articles of Shiki's essays, poems (haiku, tanka, and new-style poetry), pictures, letters, reminiscence notes of his pupils, old garden photos and pictures. In addition, I made 9 ground plans year by year which are re-creating garden scenes in his life. As a result, this garden was classified into three kinds of era, and had each of different garden scenes. It also could be inferred that a progress of garden scenes considerably concerns with a growth of his disease and a change in his view.
著者
大窪 久美子 前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.109-112, 1995-03-31
被引用文献数
16 12

畦畔草地は個々の規模は小さいものの,多様な半自然草地が成立し,農業生態系においては多様な生物のすみかとして重要な役割を担っている。しかし近年,基盤整備事業が進行するなかで,かつては普通にみられた畦畔草地は減少,変化しつつある。そこで本研究では,畦畔草地群落の現状と基盤整備の影響を把握するため,4地域において植生調査等を行った。大規模な基盤整備が行われた地域の群落は,帰化率が高<多様性は低かった。一方,基盤整備が行われていない地域では帰化率が低く,多様性の高い群落から低い群落まで,多様なタイプの群落が存在した。この多様な群落の存在が,地域としての生物群集の種多様性を高めるものと考えられた。
著者
斎藤 馨 藤原 章雄 熊谷 洋一 塚口 馨介
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.689-692, 2002-03-30
参考文献数
7
被引用文献数
3 5

既設森林景観ロボットカメラによる映像記録を分析し,今後大容量の情報通信が可能な時代に対応した環境情報記録を検討し,ステレオ録音による環境音記録機能を付加し,画質精度向上のため最新映像記録方式を導入して改良カメラを開発した。同カメラを運用して得た動画像と環境音の記録には,野鳥昆虫の鳴き声や風雨音,木々の枝葉音等が記録され,従来の映像記録よりさらに詳細な環境情報が記録できることを明らかにした。鳥類専門家にヒアリングして音記録から同定できる鳥類を示し,音記録による環境モニタリングヘの応用を実証した。インターネットによる情報共有時に動画映像と環境音記録による同時多地点環境モニタリングの意義を展望した。
著者
楠本 良延 小池 文人 藤原 一繪
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.563-568, 2002-03-30
被引用文献数
4 2

神奈川県域で1969-2000年に取得された826地点の残存自然植生のデータベース化を行い, TWINSPANならびに植物社会学的表操作により自然植生の分類を行った。これにより調査地の自然植生を14タイプに分類した。次に環境データとして, 地形, 気候, 土壌, 地質, その他の環境データを構築し, GISを用いて植生調査地点の環境値を抽出し, ロジステック回帰分析を用いることにより各植生タイプの成立環境要因を定量的に把握した。さらに, このモデルを用いて潜在自然植生図を作成した。この研究により, 個々の自然植生の成立する環境が明らかになるとともに, 客観的な方法による潜在自然植生図の作成が可能となった。自然植生の保全や回復の基礎的な情報となるものと期待する。
著者
藤田 直子 熊谷 洋一 下村 彰男
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.591-596, 2007-03-30
参考文献数
59
被引用文献数
3

The objective of this study is to make clear the difference of spatial conceptions of open spaces of Shinto shrines between "Shasoh" and its synonyms "Chinjyuno-mori" and "Shaji-rin". We approached the sides of qualitative changes and quantitative changes. By both side of research, we could make clear the meanings and their contexts considered with the social background of their words. As a result, we can mention similarities and differences between "Shasoh", "Chinjyuno-mori" and "Shaji-rin". From 1975 onward, the spaces of forest of Shinto shrines were attentioned for study site by various kinds of scientific fields. The spatial conception of "Shasoh" was intended for the space of forests only in Shinto shrines. This word was taken the Shintoism into their consideration. The spatial conception of "Chinjyuno-mori" was intended for image for gods or spiritual spaces "Geniusu Loci" in origin, and then intended for the valuable site for ecological and botanical study as space of native forest. The spatial conception of "Shaji-rin" was used by political stance at first, and then it was intended for the spaces involved in politics of forests and fields. This word wasn't distinguished between the space and image of Shinto shrine and Buddhism temple.
著者
渋江 桂子 大場 信義 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.121-124, 1995-03-31
被引用文献数
5 9

本研究は,都市周辺地域の緑地保全計画の基礎として,横須賀市野比地区の谷戸田においてゲンジボタルを研究対象種として選定し,ゲンジボタルの成虫個体数に影響を及ぼしている生息環境要因を解析することを目的とした。マン・ホイットニ検定によりゲンジボタルの生息環境として2つの異なる地形の存在が明らかになった。地形の異なる2つのタイプについて重回帰分析を行った結果,両方の地形タイプに共通して,ゲンジボタルの個体が選択した生息環境要因は,川幅と流速と冬の水路照度であった。さらに,地形タイプに固有に,ゲンジボタルの個体が選択した生息環境要因は,夏の水路照度と谷戸田の長さと畔の高さであった。
著者
大宮 直記 下村 彰男 熊谷 洋一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.429-437, 1995-03-29
被引用文献数
3 6

本研究は,個人を越えて社会に共通する風景の捉え方の集合意識を「景」とし,その存在と近代以降の変遷の特徴について考察を行ったものである。分析対象として近代以降の東京の名所図会・百景を取り上げた。その結果,作品間に共通した風景の捉え方,つまり「景」の存在することを確認できた。その変遷は(1)明治前期(明治20年代まで),(2)明治後期・大正期,(3)昭和戦前期,(4)昭和戦後期の4期に区分された。変遷の特徴の流れは,対象選択における価値基準の共有から個人の嗜好への「個人化」と,対象の捉え方における観念的捉え方から,客体として視覚優位の捉え方へ,そしてさらに活動場所自体を風景とする捉え方へと変化する「場所化」の二点にまとめられた。
著者
曽和 治好
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.769-772, 2001-03-30
被引用文献数
1

桂離宮庭園,対龍山荘庭園に続き,詩仙堂庭園を事例とし,騒音計を用いた庭園の環境音調査を実施した。その結果(1)本庭園は交通量の多い市道白川通りの騒音の影響を受けにくく,僧都の音や細やかな環境音を鑑賞するための基本的な音環境が保全されている。(2)沈床園的空間構成を持った本庭園の視覚的中心部分に僧都・滝・小川によって形成される音環境のクライマックスが重なった。(3)僧都の周波数分析を行い,その周波数は275Hz,560Hz,775Hz (Peak),1 1kHz,1 3kHzである。以上の事項があきらかにされた。