著者
夏原 由博 三好 文 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.523-526, 2002-03-30
被引用文献数
4 7

開発や保護がカスミサンショウウオの絶滅確率におよぼす影響について,メタ個体群存続可能性分析によるシナリオ分析を行った。調査地は滋賀県南部の面積約200haの孤立した丘陵で,かつては全ての谷が水田であったが,現在では大部分が耕作されていない。1歳到達仔数および上陸後の生存率と移動率を変化させ,土地利用のシナリオを変えてシミュレーションをおこなった。その結果,全面開発された場合,小規模な保護区を設けても絶滅リスクは緩和できないこと,部分開発でも絶滅リスクは増加することが示唆された。また,現状維持でも孤立したパッチには個体群が回復しないこと,耕作放棄の影響は部分開発よりも大きいという結果が得られた。
著者
上原 厳
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.493-496, 2001-03-30
被引用文献数
1 1

ドイツ国内には,クナイプ療法地という自然保養地が多数存在するが,本論では,そのクナイプ療法の発祥地であるバイエルン州バート・ウェーリスホーフェン市がどのように保養地として発展したのか,その特徴を明らかにすることを目的とした。調査の結果から,同市は前身が農村田園地帯であり,自然保養地としての基盤条件を備えていたこと,中世にカトリック教会が待ちの造成基盤をなし,19世紀中頃に同教会修道院にセバスチャン・クナイプ司祭が赴任して自らのクナイプ療法を同地に伝えたことにより保養客が増加し村の施策転換をもたらしたこと,そしてその後の各施設建設と行政による環境整備が保養地形成を進めてきたことなどが明らかになった。
著者
李 龍太 恒川 篤史
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.737-740, 1999-03-30
被引用文献数
3 4

都市内に残っている民有樹林地を保全していくためには,地権者の協力が不可欠である。したがって,樹林地保全制度の効率的な運営のためには,各保全制度に対する地権者の意識を把握することが重要であると考えられる。本研究では,練馬区に樹林を提供している土地所有者を対象に,アンケート調査により意識傾向を調べた。その結果,相続税の納付と樹林地の管理がかなり負担になっており,「市民緑地」制度における相続税の減免幅とその契約期間の長さについて不満を持っていることが分かった。この結果から,今後相続税の評価減の拡大など制度を改善し,樹林の買取り要請に対する財源確保プログラムを樹立する必要があると考えられた。
著者
浅井 俊光 宮本 れい 水庭 千鶴子 近藤 三雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.451-454, 2006-03-27
被引用文献数
2 1

Recently the lower criterion on cadmium (Cd) concentrations for polished rice was suggested in CODEX. It is urgently necessary to find out the most effective phytoremediator to remove Cd from rice fields. We have selected Iris pseudoacorus L. and Iris ensata Thunb. for our study from the following reasons; Iris pseudoacorus L. is known for its high biomass and strong resistance to environmental impacts: Iris ensata Thunb. have been often planted in the rice field in fallow. Both species are recognized by their beautiful flowers, commonness, the low prices and the easiness of planting. This experiment is aimed to evaluate these two species as phytoremediators to remove Cd. These plants are planted into 1ppm, 10ppm, 100ppm Cd hydroponics for 7 days. In general, Cd uptake by plants increases according to the Cd level of the hydroponics. The Cd removal rates of Iris pseudoacorus L. are between 0.64 and 2.00% (g/DW), while those of Iris ensata Thunb. are between 0.48 and 4.33%. Iris ensata Thunb. showed the higher efficiency in the low Cd concentration, whereas Iris pseudoacorus L. indicated an advantage under the high Cd concentration. Both Iris pseudoacorus L. and Iris ensata Thunb. indicate high Cd concentration in their roots but low in their shoots.
著者
澤木 昌典 上甫木 昭春
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.133-136, 1995-03-31
被引用文献数
7 8

本研究では,今後のニュータウン開発において重要な課題となる生物の生息にも配慮した緑地保全に際して,生物と共生しつつ快適で魅力ある居住環境形成のための緑地保全の方向をさぐることを目的として,兵庫県三田市の神戸三田国際公園都市フラワータウン地区及び周辺居住者に対して意識調査を実施した。その結果,生物の生息範囲についての願望による居住者の類型化を通じて,生物との共生に好意的な人・嫌いな生物への疎遠化傾向の強い人などの存在が明らかになり,今後のニュータウン開発での緑地保全に関して,生態学的調査・検討に基づく生物との共生に配慮した土地利用ゾーニング,居住者の生物嗜好による住み分け等の検討の必要性を論じた。
著者
鈴木 誠 栗田 和弥 麻生 恵
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.5-8, 1995-03-31
被引用文献数
3 3

日本人と結婚し在日する知日家欧米人とその伴侶の日本庭園に対する認識・イメージをアンケート調査し比較考察した。その結果、彼等の日本庭園の体験度、理解度は日本人と大差はな<、日本庭園に対する感覚的イメージもほば同様であった。日本庭園関連用語などはむしろよく理解していると自認し、外国人にも日本庭園は理解できると彼我共に認めていた。彼我で異なるのは、借景の意味内容や枯山水の認識、わび・さびについての理解がやや低くなることであった。また、「日本庭園」から日本人が具体的庭園要素を連想イメージするのに対し、欧米人は静寂、緑、平和などの印象を多くあげ感性的に庭の雰囲気を享受する姿勢をもつことが認められた。
著者
田中 章
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.282-285, 2002-03-28
被引用文献数
4 2 14

Currently, ecological restoration activities including "biotope creation/restoration projects," "compensatory mitigation projects" have been popular in Japan. However, success criteria on these activities were not clearly defined. Ecological restoration activities must have clear success criteria that directly relates to their goals/objectives. This paper reviewed mechanisms of Habitat Evaluation Procedures (HEP) that are very popular in the U.S. to identify possible success criteria on ecological restoration projects. The study showed there were three basic parameters such as "quality," "space, "time," that were used in HEP, In conclusion, such basic ideas of HEP will fit for ecological restoration projects to establish their goals/success criteria as well as to evaluate impacts on ecosystems both of development site and of compensatory mitigation site in Japan.
著者
西田 正憲
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.17-20, 1996-03-29
被引用文献数
1 1

中世末から近世にかけて,瀬戸内海は多彩な異人たちが航行し,航海,寄港地等について多くの記述を残した。16〜17世紀のキリシタン宣教師,17〜18世紀の朝鮮通信使,17〜19世紀のオランダ商館員と,瀬戸内海はこれら異人たちの布教や江戸入府の海の道となっていた。19世紀にわが国を訪れた近代の欧米人は瀬戸内海の風景を絶賛したが,これに先行するこれら異人たちは瀬戸内海の風景をどのように見ていたのであろうか。これら異人たちの瀬戸内海の風景とは何であったのか,16世紀半ばから19世紀初めにかけての彼らの紀行文,報告,日記等の文献から,瀬戸内海の風景の記述を分析することにより,考察を行うものである。
著者
内田 和伸
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.459-464, 1998-03-30
被引用文献数
1

近世城郭・陣屋・要害から社寺に移築され現存する城郭建築遺構(以下,社寺移築遺構と呼ぶ)161件について,その種類や来歴,所有者の保存意識等に関する調査を全国的に行った。その結果,社寺移築遺構の入手方法は社寺による購入だけでなく旧藩主からの寄贈が多く見られ,社寺移築遺構を当該社寺で保存する意向の社寺が多かった。今後の社寺移築遺構の調査では建築構造や意匠だけでなく,来歴や移築された意味,現在の環境,利用状況を評価し,移築を文化として捉える視点が必要になろう。また,社寺での保存のためには登録文化財制度の活用や指定文化財では修理時の補助率の引き上げが望まれる。
著者
西村 公宏
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.429-434, 1999-03-30
被引用文献数
1 1

明治初期における開成学校(1868-1876)等のランドスケープデザインの特色について,図版(写真,図面),回想・記録等の史資料から考察を行った。その結果,老マツ等の既存植栽の一部は保存がなされたこと,擬洋風庭園については,開成所の時点で,すでに成立していたこと,大学南校でも,植栽の一部が保存された可能性が強いこと,開成学校においては,洋風のイメージに基づき前庭,側庭,後庭が整備され,特に前庭は,建物から独立した逍遙空間としても位置付けられていたこと,東京大学になってからは,建物との一体性が強められるが,大学の威信を表現する装置としても機能していたことを明らかにした。
著者
柴田 祐 田原 直樹 薄井 謙一 福田 忠昭
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.233-236, 1996-03-29

本論文では,急激な都市の近代化が進むインドネシアの都市居住のあるべき姿を明らかにするため,計画的住宅地内の戸建て住宅の庭に着目して,その空間利用の実態を把握するとともに,都市居住に占める位置について考察することを目的としている。スマトラ島メダンを事例として,タイプの違う3つの戸建て住宅地において観察およびヒアリング調査を行い,住宅と庭の関係,庭の使われ方の2つの点に着目して考察を行った。その結果,庭が住居の前後に分節化されていること,前庭と後庭では住宅との空間的関係に応じて異なった役割を持つこと,前庭は公的で見せる性格が強く,後庭は私的で実用的な性格を持つことがわかった。
著者
柳井 重人 保田 圭一 丸田 頼一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.273-276, 1995-03-31
被引用文献数
3 4

本研究では,住宅地における生垣等の囲障分布の実態と囲障に係わる住民意識との関連性等を明らかにし,生垣化推進に際しての問題点や課題を探ることを目的とした。調査対象地区は東京都大田区内の住宅地とし,現地踏査による囲障分布実態調査およびアンケートによる住民意識調査を行った。その結果,生垣の出現率は人口密度等の地域特性の相違によって異なること,ごく身近な接道部の緑の量は,住民の身近な緑の多少感や満足感に影響を及ぼし,それには生垣の存在が深く係わっていること等が把握された。さらに,生垣の所有者は,街並みとの調和等の美観の面での効果を生垣の利点として評価する一方,剪定等の維持管理を負担に感じていること等が把握された。
著者
下村 泰彦 廣野 慎 山本 聡 増田 昇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.639-642, 1999-03-30
被引用文献数
3 2

本研究では,大阪市の都心業務地区で緑が集積して存在することによる環境保全に係わる効果を微気象,鳥類出現,景観評価の視点から,緑の集積度(街路上での天空状況,100m圏域内での緑被率)が異なる4地区を対象に比較考察した。結果,微気象に関する気温では8月測定から緑の集積度が高い今橋・安土両地区の方が全時間帯で0.6〜2.7℃気温上昇が抑制され,12月測定では16,17時台で0.2〜1.2℃気温低減が抑制されること。鳥類出現では今橋地区(7種97羽)が種数・個体数共に最多であること。景観評価では『ゆとり』『広がり』『開放感』等の空間量や『親しみ』『美しさ』等の修景面での評価が有意に高いこと等,緑の集積による効果が確認できた。
著者
坂井 文
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.421-426, 2003-03-31
被引用文献数
3 3

This paper will examine how the function and design of the London Square was shaped by broader social and cultural change, in the period between the development of Covent Garden in the seventeenth century, and the establishment of the archetypal Garden Square by the beginning of the nineteenth century. The study examines how changing management of urban open spaces influenced their design and functions, while also considering the development of ideas of natural landscape in the city. In particular, the paper argues that management regulations on the central part of a Square and on the secondary street in a Square formed the central open space to be a privileged communal space for the Square residents' use. At the same time there was cultural tendency to admire horticulture among the gentry, leading to attempts to bring natural elements into the design of squares -particularly lawns, shrubs and trees. These modifications culminated in the mature Garden Square of the late-eighteenth century, which had a relatively fixed form. The paper charts the diffusion of this form of urban open space.
著者
章 俊華
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.761-764, 1999-03-30
被引用文献数
3 9

本研究は,中国皇家庭園頤和園を対象として,園内に多く掛けられている「扁額」に表現された内容からみた庭園空間の特徴を明らかにすることを目的としている。研究方法としては文献・資料に記録された「扁額」を思想・芸術・政治的各背景から分析した。その結果,仏教思想,神話・伝説不老不死の神仙思想に基づくもの,倫理や道徳に関する儒教思想に基づくもの,詩歌・絵画,自然の追求,超現実の仙境等芸術的背景と皇帝の恩徳をたたえる政治的背景の両方に基づくもの,統治者の確固たる地位と無限の権勢,知恵等政治背景に基づくものの,以上4つの庭園空間の特徴が見られた。
著者
香川 隆英 田中 伸彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.201-204, 1995-03-31
被引用文献数
1 1 3

我が国における森林の風致施策は,明治6年の「官林調査仮条令」において,社寺林を風致林として保護するところから始まる。その後,今日までの120年の間に様々な歴史・変遷の過程を経ながら,森林の風致施策は展開してきた。その風致施策の2本の柱は,保安林制度の中での施策と,国有林におけるレクリエーションの森を代表とする施策である。本論では,保安林制度における,風致保安林と保健保安林について,保安林制度及び森林風致施策の歴史の中での位置づけを明らかにする。
著者
横田 健一 中村 攻 木下 勇 轟 慎一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.695-698, 1997-03-28
被引用文献数
6 5

住宅密集市街地の住民参加型のまちづくりにおいて,宅地化できない狭小な土地をポケットパークとして整備する動きが各地に起きている。このような状況に対して東京都内の豊島区4・5丁目地区,世田谷区太子堂2・3丁目地区,墨田区一寺・言問地区を事例として,ポケットパークができることに対して近隣住民がどのような関わりを持ち現在に至っているのが,ということを明らかにするために,主に現在管理に関わっている住民を対象としたヒアリングによる調査を行った。その結果1.意識とその表出2.問題への対応3.小規模な社会集団の発生と縮小といった点にポケットパークと近隣住民の関わり方の特微がみられた。
著者
徐 英大 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.56-60, 1996-08-29
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

歴史的に美しい日本庭園のデザイン要素が定量的に把握できれば, 日本庭園のデザインの特質が明らかになり, 日本庭園の再構築の可能性も考えられる。そこで本研究では, 日本の代表的な日本庭園である桂離宮庭園を中心に自然的な形態の把握手法として, フラクタル理論を適用し, 庭園の重要なデザイン要素である池の形と樹木, 庭石, 建物の分布の特性について検討した。その結果, 各デザイン要素にフラクタル性が存在していることが明らかになり, それらをフラクタル次元として定量化することができ, その次元は池の形の定量的な比較や樹木, 建物, 庭石の分布のデザイン特徴を表わすのに有効である可能性が認められた。