著者
鎌田 紘一 門廻 充侍 Anawat SUPPASRI 今村 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_1075-I_1080, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
19

2011年3月11日に発生した東日本大震災により我が国は甚大な被害を受け,これまで様々な被害実態と低減の先行研究が行われてきた.津波災害時の新たな検討事項として,寒冷下における災害時の低体温症が議論されている.本研究では,同災害における低体温症の被害実態を検討するため,震災データを用いて宮城県の郵便番号地区を対象に,遺体発見場所に基づいた低体温症を検討し,以下の結果を得た.犠牲者の位置情報から,避難先の屋内で低体温症を発症した可能性が示された.低体温症犠牲者が確認された地区の浸水状況から,津波曝露で身体が濡れたことによる低体温症を発症した可能性が示された.新しい低体温症リスク想定として,津波で身体が濡れた人が避難先の屋内で低体温症を発症するケースを提示し,避難先における低体温症対策の重要性を示した.
著者
戸川 直希 佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_493-I_498, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
10

防災訓練に参加することによる効果・効用については,様々な側面から評価されている.2016年は8月には台風第10号,11月には福島県沖で発生した地震に伴う津波等の災害があった.本研究では,これらのイベントにおいて,それ以前に参加した防災訓練時の経験が活かされたかや,訓練通りの行動ができたかといった,実災害時の対応行動への効果を評価した.その結果が次の3点である.1)訓練時の想定と実災害が一致する場合には一致しなかった場合に比べて,訓練時の経験がより活かされていた傾向がある.2)訓練時の想定と実災害が異なっていても訓練時と同様の行動がとれる可能性がある.3)津波災害時は高齢なほど,台風災害時では若いほど訓練時の経験が活かされて,訓練通りの行動ができていた.
著者
鷲見 浩一 山 清太郎 大淵 啓介 朝香 智仁 落合 実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1411-I_1415, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
8

In this study, we surveyed the tsunami damage in Asahi City, Chiba, which was devastated by the tsunami. In addition, the damage caused by tsunami revealed the importance of soft countermeasures to supplement the disaster prevention functions of hard countermeasures. Therefore, we devised a method whereby residents hand down lessons from disasters. The inundation height above T.P. (Tokyo Bay mean sea level) was about 4.6 meters in Shimonagai, Asahi City. The tsunami run-up height in the district was about 5.1 meters. This reach point is consistent with the data from interviews with eyewitnesses. The method for handing down lessons from disasters is composed of four stages: (i) survey on disaster subculture, (ii) summary of the results of the survey, (iii) plan for implementation, and (iv) achievement of residents' evacuation.
著者
岩本 直弥 新谷 哲也 芝崎 麗央 夏池 真史 山田 雄一郎 横山 勝英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_1159-I_1164, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
9

気仙沼湾を対象として,貝毒原因プランクトンAlexandrium tamarenseの分布と流動の関係を,現地観測と三次元流動シミュレーションから検討した.2013年はA. tamarenseが気仙沼港の奥部で発生して大島瀬戸へ移流したと推測された.2014年の計数データからA. tamarenseの移動指数を作成し,大島瀬戸における平均流速との関係を調べたところ,正の相関が認められた.以上から,A. tamarenseは1週間程度かけて湾奥から湾内全域に拡散すると推測された.三次元流動シミュレーションにより,中立浮遊粒子を気仙沼港奥部の底層に配置して,その挙動を調べた.粒子は気仙沼港内で鉛直循環流により表層に巻き上げられてから南部に移流し,2日後には西湾を下るものが33 %,大島瀬戸へ移動するものが12 %になった.渦鞭毛藻類の日周鉛直移動を考慮することで,移動メカニズムを把握できる可能性が示唆された.
著者
今井 健太郎 都司 嘉宣 林 豊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_211-I_215, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
6

Waveform analysis using data by the 2010 Chilean tsunami obtained in Tokyo Bay were carried out. Numerical experiments using single sine wave with various periods in and around the bay were also carried out. Then we conclude that a tsunami in Tokyo Bay is characterized by a tsunami originated from the Seiche excited in Sagami Bay; the Seiche in Sagami Bay is efficiently excited from offshore tsunami whose period is 30 min or more.
著者
宇多 高明 松浦 健郎 大崎 康弘 大木 康弘 三波 俊郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_643-I_648, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
2
被引用文献数
2 2

茨城県の大洗磯浜海岸にある大洗水族館前には,1961年頃までは幅130 mもの砂浜が広がっていたが,急速に侵食が進み,護岸が波に曝される状態となった.2015年10月には階段護岸の空洞化が始まって陥没の危険性が高まり,2015年11月18日には階段護岸を強制的に崩落させねばならない事態となった.本研究では,最終的に破壊に至った大洗水族館の護岸を実例として,護岸の被災原因について考察した.空中写真とWorldView-2衛星画像を用いて大洗磯浜海岸の長期的な汀線後退状況を把握した上で,数回の現地踏査とドローンによる低空(150 m)からの空中写真撮影により護岸の被災原因について考察した.
著者
桑江 朝比呂 三好 英一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1176-I_1180, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

Our empirical multi-disciplinary study shows that shorebird reliance on biofilm, a ubiquitous, previously unsuspected food comprised of microbes, their extracellular mucus substances, and detritus, is universal. The reliance was dependent on the environment that determines biofilm density. These findings revise shorebirds' trophic position and reveal new food web structures. Also, the study can assist in recovering worldwide declines in shorebird biodiversity as well as conservation and restoration of the integrity of intertidal flat ecosystems. We propose ideal configurations applied to the planning and designing of intertidal flat restoration projects, in the light of shorebird foraging ecology.
著者
三好 真千 上月 康則 山中 亮一 山口 暢洋 坂下 広大 田中 千裕 山口 奈津美
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1246-1250, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

Large volume of mussels attaches on the coastal structure in eutrophic area. The dropped and died mussels accelerate the depression of dissolved oxygen in the bottom layer. This study revealed the relationship between fluctuation of salinity and temperature and their attaching activity on the wall. Result of our investigation at Amagasaki Harbor in Osaka Bay showed that the mass of mussels dropped out at the bottom after the salinity and temperature had extensively changed. It was also observed in Komatsushima Harbor that the salinity and temperature jumps initiated the dropout of the mussel. From laboratory experiments in different environmental conditions; salinity and temperature, we cleared the ecological cycle of the mussels in which the changes in salinity and temperature mainly influenced their activities.
著者
上平 雄基 川村 英之 小林 卓也 内山 雄介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_451-I_456, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

日本原子力研究開発機構で開発された海洋拡散予測システムの沿岸海域での高精度化を図るため,気象研MOVEと多段ネストROMSを用いたダウンスケーリングに基づく高解像度海洋モデルを導入した.新システムを福島第一原発事故に適用することで,現行システムでは再現することが困難であったサブメソスケール渦の消長に伴う137Csの3次元的な混合と海洋中移行過程の解析精度検証を行った.高解像度モデルによる流速場・乱流強度等の再現性は良好であり,低解像度モデルと比較して137Cs濃度分布の再現性の向上が確認された.事故直後の福島県沖海域では,季節的な海面冷却などによって強いサブメソスケール渦が発達し,それに伴う強い鉛直流によって137Csが中深層へ活発に輸送されていた.
著者
内山 雄介 西井 達也 森 信人 馬場 康之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_481-I_485, 2013 (Released:2013-11-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

Oceanic response to a series of typhoon passages is investigated with a triply-nested oceanic downscaling model forced by the assimilative GPV-MSM reanalysis dataset for the coastal marginal sea off Kii Peninsula, Japan. Temperature is decreased about 2 degrees for 2 weeks during three typhoons passing by. An EOF analysis decomposes the modeled SST properly into 1) a seasonal signal as a linear trend attributed to enhanced vertical mixing and mixed layer deepening due to the seasonal surface cooling in the 1st mode, 2) coastal upwelling at several locations through the Ekman transport due to the stormy surface wind field in the 2nd and 4th modes, and 3) SSH changes caused by the meso- and submeso-scale, cyclonic cold eddies near the topography and subsequent eastward transport by the Kuroshio in the 3rd mode.
著者
嶋田 陽一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_319-I_324, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
6

沖縄諸島・奄美群島周辺において漂流漁船,タンカー事故による流出油が漂着した事例より,漂流物が沖縄諸島・奄美群島周辺へ移動する経路を調べた.気象庁提供の漂流型海洋気象ブイロボット(以下,ブイ)の観測データを解析した.南向きの風を受けたブイは黒潮流域から時計回りに奄美群島北部へ移動し,あるいは沖縄諸島・奄美群島の西側に沿って南下する傾向を示す.このブイの軌跡は上記の事例と対応する.伊豆・小笠原海嶺周辺を始点とするブイは,奄美群島周辺へ移動する軌跡が沖縄諸島周辺へ移動する軌跡よりもばらつきが小さい傾向を示す.
著者
渡部 靖憲 但木 慎治 山田 朋人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_61-I_65, 2011 (Released:2011-11-09)
参考文献数
4

Deformations of air-water interfaces throughout a splash event of falling water drops on a still water surface were studied in this paper on the basis of back-light imaging measurements.A series of interfacial processes, formations of fine sprays shedding from crown tips, air bubbles released from the center of a cavity, secondary droplets fragmented from a centric jet, was parameterized with Froude and Weber numbers as well as relative densities of impacting and receiving liquids with the aim to develop a future model to describe local heat and moisture exchanges between atmosphere and ocean under rainfall.
著者
松下 晃生 内山 雄介 高浦 育 小硲 大地
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_1003-I_1008, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
11

気候値海洋モデルを用いたLagrange粒子追跡実験により,南シナ海に河口を有する4本の大河川から放出される海洋マイクロプラスチック(以下 MP)の平年的な移流分散特性とその形成機構を解析した.MPの分散パターンにはモンスーンに伴う季節差が存在した.特に中国南部の2河川から放出された粒子は,南西モンスーンが卓越する春から夏にかけて台湾海峡を越えて東シナ海へと到達する割合が増加する傾向が見られたことなどから,南シナ海起源のMPが日本近海のMP汚染に大きく寄与している可能性が示された.さらにMP自身の重量密度にも着目し,海洋表層を漂う(軽い)MP,および浮力を持たない(中立密度)MPに分けて粒子追跡実験を行い,海洋での輸送傾向の違いを考察した.
著者
宇多 高明 五十嵐 竜行 立石 賢吾 繁原 俊弘 芹沢 真澄 宮原 志帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_745-I_750, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

既往研究によれば,森戸川河口に隣接する西湘PA沖の-100 m付近には海底谷谷頭部を縁取るほぼ垂直に切り立った崖があり,また,森戸川河口沖の海底谷の西端と東端の急斜面上には海底谷へと続く流跡模様が残され,その状況から海底面を土砂が滑り落ち,海底を侵食しつつ流れ下っていると推定された.しかしこれらと海岸から深海への土砂落ち込みとの因果関係は明らかでなかった.本研究では,BGモデルを用いた数値計算により,海底谷谷頭部では急勾配斜面を経た沖合への土砂落ち込みが起こり得ることを示した.
著者
宮下 寿哉 中村 由行 比嘉 紘士 田中 陽二 伊藤 比伽留 池津 拓哉 金谷 一憲 鈴木 崇之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_1213-I_1218, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
9

2016年8月~9月に連続的な岸壁調査および計4回にわたる船上調査を実施し,東京湾湾奥部における複数の湧昇イベントを捉えた.4回の船上調査のうち一度は青潮発生の直前に対応し,残りのうち2回は青潮に至らない弱い湧昇の直前とそのピーク時に対応していた.各湧昇イベント時の水塊の起源推定を行ったところ,青潮発生時には千葉本航路内でも湾央側の航路底層から硫黄を含む水塊が岸壁まで湧昇し青潮に至ったものと推定された.一方,弱い湧昇時では比較的浅い層の湧昇にとどまり,水面の着色や濁度の上昇はなく青潮として確認されなかったが,その期間には航路内で硫化物や硫黄が活発に生成していたことが示唆された.
著者
濱田 孝治 吉田 司 岡村 寛 原 武史 鈴木 輝明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_1129-I_1134, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
23

浮魚類群集(イワシ類)は内湾における主要な漁獲対象種であり,自然的,人為的な環境変動に伴う漁獲量の変動や漁場形成の変化は大きな関心事である.本研究では機械学習の一つであるGradient Boostingを用いて内湾の浮魚群集の分布量を推定する統計モデルを構築し,伊勢・三河湾のカタクチイワシ漁獲量の時空間的分布の推定を行った.モデルは標本漁船による実測結果をよく再現した.
著者
長谷部 雅伸 大竹 健司 古村 孝志 木全 宏之 征矢 雅宏 石井 やよい 佐藤 俊明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_166-I_170, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
6

To understand the characteristics of tsunami propagation in the Seto Inland Sea, tsunami simulations for the largest earthquake on the Nankai trough were conducted. In this paper, we assumed three fault models with taking into account the latest findings after the 2011 earthquake off the Pacific coast of Tohoku. For the case of large fault slip along the plate boundary region, the tsunami height around the Seto Inland Sea was about the same as the value of the conventional assumption, because the tsunami components generated by the plate boundary regions were attenuated when passing through the straits. But we confirmed that the tsunami height around the Seto Inland Sea became higher in the case of delayed rupture with appropriate time lag, or in the another case that the fault region was expanded to north.
著者
山中 亮一 上月 康則 田邊 晋 井若 和久 村上 仁士
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.341-345, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
18

Tsunami disaster prevention of Seto Inland Sea is slow to take action for lack of knowledge of generation mechanism of Tsunami damages. According to previous research papers, there is a possibility of appearance of sudden water level raising and long-term water level fluctuation in sympathetic vibration with characteristic vibration in some bay. Therefore, this study focuses on period characteristics and hazardous sea area. As a result of numerical analysis, temporal period characteristics of each sea area, distribution of largest tsunami heights and time of occurrence, distribution of maximum tsunami velocity and time of occurrence and a map of hazardous sea area are clarified. Moreover, generation mechanisms of Tsunami damages are examined.
著者
宇多 高明 田村 貴久 小金 宏秋 横田 拓也 芹沢 真澄 大谷 靖郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_427-I_432, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1

初期地形として平行等深線地形を与え,江の島をおいて方向分散法により波浪場を定めた上,BGモデルにより地形変化計算を行った.この結果,江の島背後の舌状砂州の再現が可能となった.次に,計算された地形を初期形状として,湘南港や片瀬漁港などの施設建設後の地形変化を計算し,その上で片瀬漁港での航路浚渫を考慮した計算を行ったところ,片瀬西浜の汀線後退には片瀬漁港沖での航路浚渫の影響が大きいことが明らかになった.さらに,引地川河口以西では冬季にSSW方向の季節風の作用により汀線砂が斜め陸向きに運ばれ,海岸線に沿う遊歩道に堆積するが,BGモデルとセルオートマトン法を組み合わせて飛砂も含む海浜変形の予測を行った.最後に,片瀬西浜での侵食対策としては,片瀬西浜で2万m3/yrの養浜を行うことが望ましいことを明らかにした.
著者
松本 浩幸 柄本 邦明 今井 健太郎 高橋 成実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_319-I_324, 2020 (Released:2020-11-04)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,リアルタイム津波検知手法の高度化のために,台風接近時に観測された海底津波計データを精査して,地震にともなう津波との相違点を明らかにした.台風接近時と地震にともなう津波発生時では,観測波形の卓越周波数の特徴が異なることが判明した.すなわち,台風接近時には広帯域にエネルギーが分布するのに対し,地震にともなう津波発生時には低周波のエネルギーが卓越する.次に,微小振幅波理論にもとづくカットオフ周波数で津波を検出するリアルタイムフィルタを設計し,海底津波計の近傍で発生した地震に適用した.検出した津波は数値計算と整合し,設計フィルタの妥当性を検証した.ただし,台風接近時にはうねり成分が含まれることから,うねり成分を除去するカットオフ周波数の検討が必要であることを示唆する.