著者
宮下 光宏 小池 淳司 上田 孝行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.316-332, 2012
被引用文献数
1

近年,アジアやわが国において,高速鉄道整備および計画が進められてきている.これらの評価は経済効果に主眼を置くものが多い.一方,高速鉄道整備の環境影響の評価は流動量や交通機関分担の変化に伴うCO<sub>2</sub>排出量の影響といった交通部門のみに主眼を置くものが多く,高速鉄道整備による経済成長に伴う産業部門からのCO<sub>2</sub>排出量増加を踏まえた分析事例は少ない.また,こうした評価が可能なSCGEモデルは各国で構築されているものの,国際比較による分析事例はみられない.そこで,本研究では韓国のKTX(韓国高速鉄道整備)と日本のMAGLEV(リニア中央新幹線整備)を対象として,これら双方の観点からの評価が可能なSCGEモデルを用いて,高速鉄道整備による経済効果及びCO<sub>2</sub>排出量の計測を試み,交通機関や産業構造の観点から国際比較を行う.
著者
荒木 雅弘 溝上 章志 円山 琢也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_323-I_335, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
10
被引用文献数
9

近年,熊本市では,中心市街地の魅力と活力向上のために様々な施策がとられている.その中でも,人々の回遊行動を促進させることは,中心市街地を活性化させる有効な施策のひとつであると考えられている.そのためには,歩行者の回遊行動の実態を詳細に分析し,回遊行動に影響を及ぼす要因とメカニズムを明らかにすることが必要である.本研究では,街路構成指標なども説明変数として導入して,まちなかの空間的魅力向上のための政策提言に活用できるモデルを構築する.その後,現在熊本市が計画している桜町地区の再開発事業「桜町地区第一種市街地再開発事業」が来街者の回遊行動に与える効果を政策シミュレーションによって分析することを目的としている.
著者
中嶋 悠人 山中 英生 真田 純子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_747-I_754, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
8
被引用文献数
1

クロスバイク,ロードバイク等のスポーツサイクル(以下SC)は,普及しているシティサイクル(以下CC)に比べ,高速・長距離・長時間の走行が可能であり,全身運動にも優れているので,中距離通勤や健康活動に適しており,環境や健康に資する自転車利活用する上でSCの活用が着目されている.また,車道で走行するSC利用者は,歩道走行が中心のCC利用者に比べて,安全走行の手本(マナーリーダー)になり得ることが期待される.本研究では,SC利用者が,CC利用者よりも本来の自転車ルール・マナーに対する認知及び走行態度の安全性が高まっているかについて検証することを目的に,両者の自転車ルール認知度,運転態度を比較した.その結果,SC利用者の中でもレベルが高いロングサイクリストがマナーリーダーになる可能性を有していることが明らかになった.
著者
赤松 隆 大澤 実 長江 剛志 山口 裕通
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1-I_19, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
10

東日本大震災では,石油精製・輸送施設の損壊を背景に,東北地域は長期にわたる深刻なガソリン不足に直面し,地域全体の社会・経済活動が大きく低下した.本研究では,ガソリン販売統計と港湾間の移出入統計を用いて東北地域における発災後一ヵ月間のガソリン需給ギャップを分析し,ガソリン不足の主要因が供給(輸送)戦略の失敗であったことを示す.その上で,日本海側港湾を活用してガソリンを早期に大量供給する輸送戦略を提案し,それによりガソリン不足がいかに軽減されるかを示す.結果として,提案輸送戦略に必要な追加的陸上輸送費用は高々2~3億円程度である一方,経済損失軽減効果は1500~2500億円に上ることを明らかにする.また,ガソリン価格の操作により経済損失の軽減を図る戦略は大規模災害時には不適当であることも論ずる.
著者
田中 皓介 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_143-I_149, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
4

先の東日本大震災からの復興や,高い確率でその到来が予測されている首都直下型地震及び東海・東南海地震等に対する防災・減災の観点からしても,公共事業の重要性は近年一層高まっていると考えられる.そうした公共事業の実施に当たっては,国民世論並びに世論形成に影響を及ぼし得るメディアの報道が重要であるといえる.ところがそうしたメディアの主要な一つである新聞の,近年の報道が公共事業に対し批判的な傾向であることが示唆されている.ついては本研究では,既往研究からさらに範囲を広げ,戦後から現代までの日本における大手新聞社の公共事業に対する報道傾向を分析した.その結果,その論調は戦後徐々に批判的なものへと変遷していき,特に2000年代の論調は他の年代のそれに比べても極端に否定的な論調であったことが示唆された.
著者
貝戸 清之 小林 潔司 青木 一也 松岡 弘大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-271, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
36
被引用文献数
12

社会基盤施設の劣化過程においては,施設の構造特性や使用・環境条件の違いにより劣化速度に多大な異質性が存在する.個々の施設に特有な異質性がもたらす劣化速度の過分散の問題を克服するために,施設グループ間の劣化速度の異質性を明示的に考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルが提案されている.本研究では,劣化速度の過分散が,施設グループ間における劣化速度の異質性と,グループを構成する個々の施設間における異質性というレベルの異なるつの異質性が複合された結果により発生すると考える.その上で,階層的異質性を導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを定式化し,その階層ベイズ推計法を提案する.最後に,橋梁床版に対する目視点検データを用いた実証分析を通して,本研究で提案する手法の妥当性を検討する.
著者
大西 正光 小林 潔司 中野 秀俊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_231-67_I_242, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2

民間資金を活用して,インフラストラクチャーの建設及び維持管理運営を行うPPP (Public-Private Partnership)は世界的な潮流となっている.PPP事業における資金調達先も多様化する中,イスラーム金融が果たす役割が大きくなっている.本研究ではイスラーム金融の発展がPPP投資に与える影響を分析するため,イスラーム金融における金利決定メカニズムを明示的に表現したイスラーム金融市場モデルを定式化する.その結果,イスラーム金融の利益配分率(疑似利子率)は,預金,貸出の両市場において,通常金融の利子率よりも小さくなることが示された.さらに,預金者のイスラームに対する自覚が高まるほど,疑似貸出利子率が低下する一方,イスラーム金融に伴う取引費用が軽減されれば,疑似貸出利子率が増大することが示された.
著者
川崎 洋輔 原 祐輔 桑原 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_949-I_959, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では,状態空間モデルによる経路選択を考慮した二次元ネットワークの交通状態推定手法を提案する.交通管制においては,二次元ネットワーク全体の交通状態をモニタリングすることが重要である.二次元ネットワークでは,利用者の経路選択行動により渋滞状況が変化する.そこで,本研究では,経路選択モデルを内包したCTMをベースに,観測密度,観測分岐台数を用いた2種類の状態空間モデルを構築した.モデル検証の結果,観測分岐台数は,モデルの経路選択改善に寄与すること,観測密度で交通状態を更新する方が観測分岐台数を用いるよりも渋滞推定精度がよいことがわかった.
著者
大西 正光 村上 武士 Wu Peiwei 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_309-I_322, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水道コンセッション事業の経済的価値は,主に水道料金及び水道の接続数(普及率)に依存する.政府が契約条件として望ましい水道料金及び接続数を設定するためには,民間事業者が有する技術に関する情報を有しておく必要がある.政府が技術に関する十分な情報を有していない場合には,技術提案型入札が適用される場合も少なくない.本研究では,技術提案型入札の下での最低単価落札方式と最大接続数落札方式という2つの落札方式の経済的帰結を理論的に分析する.さらに,水道コンセッション事業では,しばしば事後的に初期契約の見直しが行われることを指摘する.その上で,事業者の戦略的ホールドアップ行動の帰結を分析し,各落札方式の得失について考察する.
著者
古倉 宗治 大森 宣暁 佐藤 利明 吉川 泰生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_693-I_703, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

自転車利用者のルールに対する意識や遵守の態度は低いとされる.本研究は,ルールの根拠,事故の発生場所や事故の態様,発生要因等の事故実態とこれに基づくルール遵守の必要性,不遵守の場合の不利益,他人の白い目による心理的圧力など,ルール遵守に効果が想定される内容を記したパンレットを試作し,これを添付して自転車利用者にアンケート調査を実施し,その効果を明らかにすることを目的とする.アンケート調査では,自転車の利用状況,ルールの遵守状況等の利用実態とともに,パンフレットの各内容を見たうえでのルール遵守意識等の効果などを質問し,教育啓発内容の差異によるルールの遵守意識の向上の可能性,及びルールの教育啓発の内容の有効性とともに,教育啓発の方法,講習会の方法等の的確な自転車の教育啓発のあり方を考察した.
著者
中西 航 布施 孝志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_549-I_557, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
23

歩行者行動の高解像度な把握により街路上の施設配置の高度化などが見込まれる.一般に,高解像度に捉えた歩行軌跡は道路ネットワークの真上には存在しない.しかし,ネットワークに測位値を吸着させる従来のマップマッチング手法は,軌跡をネットワーク上に復元することが前提であるという課題を有する.そこで本研究では,ネットワークが有する誤差を連続空間上で明示的に考慮する手法を提案する.歩行軌跡のネットワークからのずれを潜在変数と捉え,これをGNSS測位値により測位誤差を考慮しながら逐次推定する手法である.誤差を有する観測から,ネットワーク上で移動を記述でき,かつ実際の位置をネットワーク上に限定しない軌跡を得る定式化を行うとともに,複数の設定におけるシミュレーションデータへの適用を通し,その有用性を示した.
著者
和田 健太郎 瀬尾 亨 中西 航 佐津川 功季 柳原 正実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_1139-I_1158, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
80

本稿では,道路上の交通流ダイナミクスを記述する標準的な枠組みであるKinematic Wave (KW)理論の近年の発展について解説を行う.具体的にはまず,KWモデルの従来の解析法を概説しその限界を述べた上で,交通流の変分理論(VT)を解説する.また,様々な座標系(Euler座標系,Lagrange座標系)で記述される交通流モデルがVTの枠組みにより相互に関係づけられることをみる.続く章では,上記の単一道路区間(リンク)でのモデルをネットワークに拡張するための理論について記述する.ここでは,多車線道路や交差点を対象に,複数のリンクの境界面における交通流を決めるための条件や手法を解説する.
著者
石原 凌河 坪井 塑太郎 照本 清峰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_69-I_77, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
10

本研究では,南海トラフ巨大地震において甚大な被害を受けることが想定される四国4県をケーススタディとして,孤立集落における重傷者数の空間分布を把握するとともに,ヘリコプターによる重傷者の搬送戦略を検討した.その結果,南海トラフ巨大地震が発生すれば,四国における孤立集落での重傷者は広く点在するとともに,孤立集落の重傷者を集落単位で搬送すれば膨大な日数を要することが明らかとなった.小学校区もしくは中学校区で搬送拠点を設定し,そこから大型ヘリと小型ヘリを組み合わせて重傷者を搬送することにより,迅速かつ効率的に搬送できることが示唆された.
著者
佐藤 恵大 鈴木 美緒 細谷 奎介 宮之上 慶 屋井 鉄雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_773-I_784, 2015

自転車運転者のマナーが問題視されているにもかかわらず,パターン化した教育が一律に行われていることや,「交通ルールを知っているが遵守しない」自転車利用者に対する教育方法が確立されていないことなど,自転車安全教育の改善には重要な課題が存在する.近年,体験させる教育ツールとして注目されているのが自転車シミュレータ(CS)である.そこで,本研究ではCSの教育機会への導入可能性を検討するために,法令違反による事故の傾向を整理し,CSの主観的評価とCSでの事故経験および教育効果の関連性を考察した後,自転車の法令違反行為をCSで再現できるか実験を行なった.その結果,CS走行シナリオ内で法令違反を含む普段通りの走行挙動が観測され,「交通ルールを知っているが遵守しない」違反挙動を再現できる可能性が示された.
著者
中村 泰広 日比野 直彦 森地 茂
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_705-67_I_713, 2011

東京都市圏では,鉄道ネットワークの拡大と過密な運行ダイヤにより,駅の混雑という問題が顕在化している.本研究の目的は,鉄道駅の特にコンコースの混雑に関する評価指標を確立するために,混雑の感じ方と利用者数の関係について確認すると共に,データの取得が困難であり十分な分析が進んでいない旅客流動について簡易に調査・分析可能とする手法を提案することである.本研究の結論として,第一に,コンコースにおける混雑の感じ方は単位面積あたりの利用者数によって説明可能であるが,その関係性が各コンコースにより異なることを明らかにしている.第二に,加速度計を用いた歩行調査により旅客流動の特徴を把握し,混雑状況を簡易に評価する分析手法について,その適用性を確認している.
著者
羽鳥 剛史 片岡 由香 尾崎 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_407-I_414, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年,地域社会の課題に対して,市民自身が自主的・自発的に取り組み,課題解決に貢献する様々な市民活動の事例が増えつつある.しかし,市民活動の中には,当初の理念や問題意識が薄れていき,その活動が長続きしない事例も少なからず見受けられる.本研究では,市民活動の持続可能性の規定要因を明らかにすることを目的として,一般市民を対象として,市民活動への参加状況やその活動期間の実態を調査した.それと同時に,市民活動の持続可能性に関わる要因として,地域愛着や文化資本等の諸項目を測定した.この調査の結果から,市民活動の持続可能性に寄与する心理要因やその心的プロセスについて検討し,市民の主体的かつ継続的な活動を支えるための方途について考察した.
著者
宮崎 一浩 日比野 直彦 森地 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_477-I_486, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
14
被引用文献数
1

我が国の都市鉄道は,新線建設,高頻度運行等の輸送力増強施策による混雑緩和対策やネットワークを活用したシームレスな輸送サービスの提供等,利便性の向上に取り組んできた.その反面,稠密なダイヤ構成や運行形態の複雑化により,慢性的な遅延の発生,広域波及といった新たな課題が顕在化している.本研究は,都市鉄道における列車遅延の発生,波及の要因について,路線の特性を踏まえつつ,実績値データを用いた現状の把握を目的としている.また,輸送サービスの維持と遅延解消の両立に向け,ラッシュ時における列車の運行を再現するシミュレーションモデルを構築し,計画ダイヤ上の発時刻前に列車を発車(以下「早発」という)した場合の影響を定量的に示している.
著者
仮屋崎 圭司 日比野 直彦 森地 茂
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_1001-67_I_1010, 2011

首都圏の鉄道は,高密度な鉄道網整備,列車の長編成化,高頻度運行,相互直通運転の実施,ホームドアの設置等により,広域かつ巨大な通勤需要を正確かつ安全に輸送可能とした世界に誇れるシステムである.しかし,現在,輸送障害に至らない慢性的な遅延が顕在化し,新たな問題として生じている.そこで本研究では,遅延の発生・波及の要因について,列車運行の実績値データを用いた分析を行うとともに,列車の運行挙動を再現するシミュレーションモデルを構築した.また,それ用いて列車間隔に起因する遅延の波及と拡大の現象を定量的に示したうえで,列車運行における遅延対策の課題を抽出する.最後に,遅延発生後における遅延拡大の抑制方法と,遅延の早期回復方法について得られた示唆を報告する.
著者
松井 京子 島村 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_111-I_119, 2015

近年頻発する竜巻災害に対しレーダー観測等を用いた警報システムの開発が切望されているが,精度の経済評価および効率的運用の指針は欠如している.低頻度・局所事象警報の空振り削減は難しいが,誤警報は警報の信頼性を減じ事業者損失を発生させる.そこで,直前警報によって被害の軽減が可能な個人・事業者を対象に,竜巻警報の経済価値定式化を行った.これは,警報の精度特性と対象者の損益構造によって経済価値を最大にする捕捉率・誤警報率を導き出すものである.本研究の結果は,「警報には最適な誤警報率・捕捉率の組み合わせが存在し,これは受け取り手の損益構造によって異なる」「誤警報による損失が大きい場合には,『閾値を高く設定してカタストロフィックな災害は回避するが,弱い竜巻を見逃す』戦略が有効である」の2点を示唆する.
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
19

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.