著者
何川 凉
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.9-14, 1992

過去約30年にわたり,共同研究者と共に行ってきたアルコールに関する研究成果の概略を述べる。アルコール研究の足跡(1962年以来現在に至る経過)アルコールの測定法(気化平衡GC法の開発)生体のアルコールに関する研究1) 飲酒後の体液アルコール濃度の比較と影響する諸条件 2) 血中アルコール濃度から飲酒量の推定 3) アルコールの吸収,代謝,排泄と遺伝形質 4) 悪酔,宿酔とその原因 5) アルコールと薬毒物の併用 6) 交通医学的研究(飲酒時の運転能力,飲酒運転取り締まりにおけるアルコール測定法) 7) その他の研究(飲酒の効用,市販のドリンク類のアルコール含有)死体のアルコールに関する研究1) 法医学の鑑定実務における諸問題 2) 検屍と解剖における試料の選択と採取 3) 以前の時点における血中濃度の推定法 4) アルコール類の死後産生と飲酒との鑑別 5) 胃内アルコールの拡散による周囲体液への影響 6) 死因とアルコール濃度の関係 7) 受傷時や死亡時の酩酊度の推定
著者
松本 真
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-41, 1996

正中動脈を例にあげて, 形態にたいする見かた, 方法論について述べる.現象論ないし変異論的には, 正中動脈は成体の8%ほどに出現する枝である.その形成を要因論または機械論的に実証することは, 他の肉眼解剖学的形態についてと同様, きわめて困難である.過程論的には, 個体発生において, 正中動脈は前腕部で骨間動脈にひきつづいて形成される主要枝である.さらに, ツパイにおける個体発生や比較解剖学的考察から, 正中動脈は系統発生的に霊長類の祖先段階で, 成体においても残存し, 機能する枝であったことが推測される.真猿類, 狭鼻類としての段階における変化について, 機能的意義を推論した.これらのさまざまな見かたは, 形態の持つ要素を互いに相補的に分析するものだが, 系統発生がその中心に認識されることが肝要である.また, そのような分析を可能にするうえで, 霊長類の比較研究の重要性が認識される.
著者
竹内 一夫
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.67-73, 1992

効果的な対人援助関係は,迅速で創造的でかつ問題解決的な活動でなければならないし,それは援助者と被援助者の関与を要求する。それ故,両者間でのコミニュケーションは対人援助関係において重要な因子となる。最近,援助者と被援助者間の良き関係作りを促進する新しいコミニュケーションの技術が示された。それは自己開陳である。本稿では,自己開陳の効果について,特にその一部であるユーモアとあそび心の有効性について検討する。
著者
齋藤 芳徳
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.83-89, 2001
被引用文献数
1

車イス使用高齢者のシーティングについて, (1)「高齢者一軍イス」の関係を探るために, 車イス座面の変更が高齢者の座圧分布に与える影響を把握するとともに, (2)「車イス使用高齢者一生活環境」の関係を捉えるために, シーティングの改善が生活展開に与える影響を時系列的に探り, (3)高齢者が使用する車イスのあり方について若干の考察を加えた.以下にその内容を要約する.(1)車イス座面のスリングシートから固定シートへの変更と車イスの調整により, 座圧分布の改善がみられた事例がある一方で, 改善がみられない事例もあり, 1種類の座面による対応の限界が示された.(2)シーティングの改善による車イス環境の変化が, 生活展開にも影響を与えている傾向がみられた.(3)高齢者が使用する車イスは, モジュラー型車イス等の個別対応可能な車イスが必要である.また, シーティングの改善に際しては, 「高齢者一車イスー生活環境」に関連する現状での馴染みへの配慮も必要である.
著者
吉岡 豊 森 壽子 藤野 博 瀬尾 邦子 濱田 豊彦 寺尾 章
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.169-176, 1992

本研究では42例の失語症患者と3歳から8歳の正常児94例を対象に, 文理解力と物語理解力を調査し, 失語症患者と正常児の相違点を考察した.課題として文理解力の評価には2種類の3文節能動文を用い, 物語理解力の評価には失語症鑑別検査(老研版)を用いた.主な知見は以下の如くであった.1.失語症患者では物語理解力が文理解力よりも良好であった.両課題の成績には乖離が見られ, 特に重度・中度群で著しく, 軽度群では差がやや縮まった.2.正常児ではどの年齢でも物語理解力と文理解力はほぼ並行して発達した.また, 理解良好な者の比率は4〜5歳代で有意に上昇した.以上の結果から, 文理解力と物語理解力の乖離は失語症患者に特有な現象であることが確認された.その原因としては, 文理解力には主に左脳の能力が, 物語理解力には右脳の能力も関与しているためと考えられた.
著者
矢野 里佐 矢野 博已 木下 幸文
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.133-138, 1995

本研究では, 高強度運動が肝機能に及ぼす影響を検討することを目的とし, Sprague-Dawley系雄性ラット5匹を用いて高強度運動時の肝門脈血流変化を捉え, さらに血清GOT, GPT, CPK, LDH活性値などの肝機能検査に加えて, 肝障害を特異的に反映するとされる血清グアナーゼ活性と, 血清ピアルロン酸の分析を行った.(1)高強度運動は, 運動開始後5分以降に, 門脈血流量を有意に減少させた.(2)肝機能検査では, 血清GOT, GPT, CPK活性はともに高強度運動によって有意に上昇した(p<0.05)が, 血清LDH活性は変化を認めなかった.高強度運動は血清グアナーゼ活性を有意に上昇させた(p<0.05).一血清HY濃度は, 肝門脈血清HY濃度から肝静脈血清HY濃度を差し引いたHYuptakeで比較すると高強度運動群で有意に低位(p<0.05)を示した.これらの結果から, 高強度運動は, 肝門脈血流量を減少させ, 肝実質細胞, 及び類洞細胞の機能に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
長尾 光城 馬渕 博行 Michael KREMENIK 長尾 憲樹 松枝 秀二 柚木 脩
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.319-323, 2001-12-25

スポーツ外傷と障害でもっとも頻繁にみられるものの一つが足関節内反捻挫である,捻挫を経験した選手にたいして, スポーツ現場ではテーピング, 装具のいずれにするか, その選択に苦慮している。そこで現在使用頻度の高い各種装具, テーピングについて, 装着感, 固定性, 価格について検討した.足関節に不安を感じているもの10名に対して両足関節に内反ストレステストをおこないX線で撮影し, 健側と患側の比較をした.比較の結果, 両者の距骨傾斜角度に5度を越える被検者に対して, 6種の装具, テーピングを装着後, 再度内反ストレステストをおこない, 固定性, 装着感を調べた.被検者の主観と距骨傾斜角度, 価格から一覧表にしてまとめた.その結果2種類の装具とテーピングで良好な固定性をみた.装具の固定性に関しては, 金額の高いものほどよかった,また足関節を筒状につつみこみ, フィギアエイトがほどこされているものが, 固定性を保っていた.重度の損傷に対しては固定性の良い装具かテーピングが有用であることが確認できた.しかし, 競技種目(たとえば, サッカー)によっては装具が使用できない場合があるので, 競技特性を考えた装具の開発がのぞまれる,テーピングは非常に有用であるが, 毎回の利用で経費がかかることを念頭にいれないといけない.固定性重視か, 不安感解消かで使い分けるとともに, 足関節周囲の支持組織の強化を怠らないことが重要である.
著者
深井 喜代子 阪本 みどり 田中 美穂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.99-106, 1996
被引用文献数
5

水の経口摂取や運動, 温罨法が揚音に及ぼす影響を, 健康女性20名(28.9±6.9歳)を被験者に検討した.被験者を仰臥位にし, 下行結腸下部付近の皮膚にマイクロフォンを装着して心音計で揚音を増幅し, スパイクカウンターを介して揚音波形の1分間当たりの出現頻度を計測した.また, 腹部皮膚温も記録した.7℃, 500mlの冷水を経口摂取させると, 摂取後30分間は揚音出現頻度が有意に増加した.階段昇降を含む10分間の歩行をさせた結果, その後45分間は揚音は有意に増加した.温枕貼用, 又は電気毛布による腹部温罨法では, 後者の揚音増加効果がより著明であった.また, 各刺激中, ほとんどの被験者が揚音亢進時に腸蠕動を自覚していた.以上の結果から, 水又は運動負荷と腹部温刺激は揚音出現頻度を増加させ, 腸蠕動を亢進させうることが確認された.
著者
"品川 佳満 岸本 俊夫 太田 茂"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.553-563, 2006
被引用文献数
2

"赤外線センサを利用した高齢者見守りシステムに応用可能な自動緊急通報を行うためのアルゴリズムを開発した.本研究で考案した自動緊急通報アルゴリズムは,センサの無応答(全センサがOFF状態)時間をリアルタイムにモニタするものである.クラスタ分析により求めた過去の行動パターン別センサ応答分布と現時刻の無応答時間とを比較し,平素よりセンサの無応答時間が長いと判断した場合,通報を行う.独居高齢者4名の長期計測データを用いてシミュレーションを行った結果,1ヶ月あたり1〜3回程度の通報が認められた.また,無応答状態になってから通報に至るまでの時間は,日中では平均120〜240分程度要することが分かった.シミュレーションで検知した異常は,必ずしも被験者の健康の異常を示してはいなかったが,本研究は,動けなくなるなどの事態発生から,平均2〜4時間程度で異常検出ができることを明らかにした."
著者
"新山 悦子 塚原 貴子 笹野 友寿"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.117-122, 2005
被引用文献数
3

"看護学生107名を対象にアダルトチルドレン(Adult children;以下,ACと略記)特性とバーンアウト(Burnout Syndrome;以下,BOと略記)との関連を明らかにするために,自記式質問紙調査を実施した.その結果,BOの平均値は3.53(SD=0.98)であり,燃え尽き度は先行研究よりも燃え尽き傾向〜うつ状態の者が多かった.またAC特性の平均値は10.18(SD=4.84)であり,AC特性のカットオフポイントであると指摘されている12点以上の者が40.19%であった.AC特性からBOが出現するという仮説のもと,AC特性がBOをどの程度予測しうるかを調べるため,AC特性を独立変数,BOを従属変数として単回帰分析を行なった.その結果,AC特性からBOへの影響については,連続性を積極的に支持することができ,本研究の仮説をほぼ支持するものと考えられた.特に「私は情け容赦なく自分を批判する」「私は何でも楽しむことができない」「私は自分のことを真剣に考えすぎる」「私は他人と親密な関係を持てない」「私は自分が変化を支配できないと過剰に反応する」の5項目がBO得点と関連が強かった.AC特性はBOを導き,さらに自尊感情の低下と関連がある可能性が示唆された."
著者
吉利 宗久 津島 ひろ江
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.225-233, 1999-12-25

本研究においては, アメリカ合衆国における健康障害児の統合教育をとりあげ, ヘルス・ケアサービスとの関係から今日的課題を探った.近年では, 個別障害者教育法(IDEA)における統合教育の要求や医療技術の進歩とともに, 健康障害児が通常の教育環境において教育を受ける機会が拡大している.それに伴い, 教育現場においても, 教育者が複雑なヘルスケアへの対応を求められるようになってきた.しかしながら, それと同時に, 「特殊教育及び関連サービス」の枠組みの中でのヘルス・ケアの性質や範囲をめぐる議論がなされ, 訴訟においても大きな争点となっている.そこで, 健康障害児の教育状況を把握し, ヘルス・ケアをめぐる法解釈と判例を中心に検討を進めた.また, ケアサービスの提供システムに関する実態と問題点についても言及した.
著者
橋本 信子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.233-238, 1993

マーガレット・ローレンスの「石造りの天使」はカナダを舞台とした作品としては初めてのものである.主人公ヘイガーは今や90歳で, 病のために死が真近に迫り, 自分のために不幸になった愛する夫や息子のことを思い出し, 慙愧に堪えない.マナワカ墓地に建つ, 目の無い石造りの天使に象徴されるように, ヘイガーは他人の苦しみ, 痛みに対して盲目で, 彼女の誇りが人に優しくすることを許さなかった.死の恐怖に捉えられているヘイガーは突然, 「誇りが私を孤独にさせてきた.私はいつも心から喜びたかったのだ.」と悟る.そう悟ることによって石のようだったヘイガーも人間的な気持ちを取り戻し, 心の安らぎを得ることができた.
著者
木下 清 島田 修 保野 孝弘 綱島 啓司
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.91-101, 1997

大学生の学校および家庭への適応状況を調べ, 精神的健康度をチェックする目的で, UPIを含む調査表を作成した.実施法としては授業時に配付し, つぎの同じ授業時に回収する方法によった.対象者はJil崎医療福祉大学の1,2年生で有効回収数は604名であった.UPIの訴え数平均値は9.7であったが, この値から訴え数の多い者89名, 少ない者56名を選びそれぞれをH群, L群として, 調査表の他の項目への応答を比較した.家庭生活でH群は両親のしつけや接し方に批判または不満を感じ, それゆえ反抗・批判・無視という態度をとる者が多かった.学校生活でも友が少なく, 友への感情も陰性または両価的であるとともに, 学校そのものにも不満を感じ将来を「暗い」とする者が多かった.つぎに調査表のなかの過去の問題状態にチェックのあった学生325名(P群)とチェックのない学生279名(N群)について, 他の項目への応答を比較したところ, H群とL群の比較に類似の結果が得られた.なおUPIの平均値もP群が高かった.特に家出, いじめられ経験, ノイローゼ, 自殺念慮の項では有意に高い.その他者項目について, 学科別, 学年別, 性別に比較を試みた.一貫して見られた傾向は2年生の方が, 1年生に比べて特に学校生活に不満や不安を多く感じているらしいことであった.学科別の特徴は人数の少ない項目がいくつかあったので省略する.
著者
緒方 正名 當瀬 美枝 山田 寛子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.19-32, 1997
被引用文献数
1

本調査においては, 在宅介護者の介護負担度を探るために, 高齢者の介護をしている介護者の負担感を半定量的に評価する指標として開発されたCostofCareIndex(CCI)を導入し, 老人福祉法に位置付けられている老人ホームヘルパー(194名)と実際に自宅で家族の一員を介護している在宅介護者(270名)を調査対象にして, その負担感に焦点を当て両者の差異を比較検討した.そのCCIの5項目の制約について, 単純集計の結果から両群の差異を得点のメディアンで比較すると, (1)社会的制約のある人は, 在宅介護者が約46%, ホームヘルパーが約48%, (2)健康については, いずれかの形でホームヘルパー, 在宅介護者の約40%がそれを損ねていること, (3)介護に対する意欲では, ホームヘルパーの約2倍以上の在宅介護者が失っていること, (4)被介護者の態度については, ホームヘルパーの約2倍以上の在宅介護者が不愉快さを感じめいること, (5)介護に必要な費用については, 在宅介護者の約1.4倍以上のホームヘルパーが高いと考えていること(ホームヘルパーの値は推定値である), が明らかにされた.また, 各項目において単純集計の結果における訴えの比率について両群の差異をκ2検定で調べた.そして, ホームヘルパーと在宅介護者の差異の多い質問について両群の統計的有意差の見られた項目を中心に各群別のクロス集計を行った.その結果, 両群の介護者共に(1)健康を損ねると被介護者に対する不愉快さが増すこと, (2)社会的制約が増すと被介護者に対する不愉快さが増すこと, (3)介護に対する意欲の有無は, すべての負担度に直接影響を及ぼさないこと, が認められ, また在宅介護者では, その38.3%が, 社会的制約に基づいて健康を損ねていること, などが明らかになった.終りにあたって, 本調査の結果が, ホームヘルパーと在宅介護者の負担感を軽減するための方法と現状の福祉政策の課題を提示するための基礎資料となり, 在宅介護者の負担の軽減を目的としたホームヘルパーの確固たる位置付けと在宅福祉の推進に活用されることを期待していることを述べた.
著者
"植松 章子 田中 昌昭"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.497-510, 2006

"スケジュール作成は,労力を要し,時間のかかる作業である.これは,法的な制約,勤務規程上の制約,あるいは個人の都合による制約など,多数の競合する制約条件の下で最適な解を探索しなければならないからである.本論文では,遺伝的アルゴリズムを用いて,臨床検査技師の日当直勤務割当て問題に取り組んだ.遺伝的アルゴリズムは,多くの組み合わせ最適化問題に適用されている探索アルゴリズムである. 川崎医科大学附属病院中央検査部は,一般,血液など13の部署に分かれ,総勢約80名の職員が勤務している.職員には,日勤の他に平日当直,土曜・日曜・祝祭日の日当直が割当てられている.副技師長は毎月勤務割当表を作成して病院へ提出することになっているが,その際,全部で8つのルールを考慮しなければならない.本研究では,それらのルールをペナルティとして適応度関数に取り込んだ. 本研究で考案した手法を用いて入念な実験を行い,2年間にわたって蓄積された過去の実績データとの比較を行った.その結果,本研究のアプローチは十分実用に耐えられることが示され,スケジュール作成エンジンとして日当直勤務割当て支援システムに組み込んだ. このシステムを利用することにより,ターンアラウンドタイムを50%短縮することができた.しかしながら,日当直勤務割当ての完全自動化を実現するためには,さらなる改良の必要がある."