著者
坪井 康次
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.269-275, 1989

In this paper, the disturbance of interpersonal relationship and eating behavior of the neurotic patients with somatic complaints, so called somatizing patients, were discussed.It was said that they have a tendency not to express their emotions and psychosocial background. Then, they may be unable to have intimate relationship with others because of their personality characteristics and this is seen particularly in doctor-patient relationship.It might be also true that one's nehavior toward other persons reflects the characteristics of their interpersonal relationship in various situations. Especially, this fact is remarkable in eating situations, where interpersonal distance becomes close.Therefore, I tried to compare the eatin behavior at home, the attitude of communication with family, and awareness of emotional state, between somatizing patients with neuroticism and normal controls. The results were as follows.1) Irregularity of eating behavior was more frequently seen in neurotic oatients than in the control group.2) In the patient group, the attitude of communication with their family was negative, compared with control group.3) Patients with neuroticism tend to recognize themselves as calm, not-tense and not-irritable persons, as compared with normal controls.Moreover, a discussion was included as to one case, who was suffering from both irritable bowel syndrome and social phobia, and who felt very tense at eating situation such as together with his friends, in terms of his disturbance of interpersonal relationship and eating behavior.
著者
船場 美佐子 河西 ひとみ 藤井 靖 富田 吉敏 関口 敦 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.330-334, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
24

難治性の過敏性腸症候群 (IBS) に対する心理療法の1つとして, コクラン・レビューでは認知行動療法 (CBT) の有効性が示されている. 本稿では, 近年日本で臨床研究が実施されている, IBSに対する 「内部感覚曝露を用いた認知行動療法 (CBT-IE)」 とその構成要素, CBT-IEの臨床研究の動向を紹介する.
著者
鈴木 (堀田) 眞理
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1006-1012, 2016 (Released:2016-10-01)
参考文献数
16

栄養学の知識は摂食障害の病態の理解と治療に必須である. 治療抵抗性の肥満やメタボリック症候群では過食性障害や夜食症候群の存在を疑うべきである. 1940年代に行われた健康人の半飢餓臨床試験では, 神経性やせ症に似た行動異常と精神的合併症と反動の過食が認められた. 飢餓が二次的な心理・行動変化をもたらすことは周知すべきである. 神経性やせ症患者では三大栄養素だけでなく, ビタミンや微量元素などほとんどの栄養素が不足する. 本症患者の体重1kgあたりの1日の必要エネルギーは健康人より多いので体重は増加しにくい. 成長期に発症した神経性やせ症では, 低身長は後遺症になりうる. 日本の神経性やせ症患者の約80%がビタミンD不足・欠乏で, 二次性副甲状腺機能亢進症を伴い, 骨粗鬆症や骨軟化症を合併する. 長期間の低栄養状態から摂食量が増加するときには反応性低血糖やrefeeding症候群に留意すべきである.
著者
安藤 哲也 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.265-272, 2007-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Familial aggregation and twin studies have suggested that genetic factors play a significant role in susceptibility to eating disorders such as anorexia nervosa (AN) and bulimia nervosa(BN). A sib-pair linkage study suggested a linkage region for restricting AN in chromosome 1 and that for BN in chromosome 10. Candidate-gene association studies indicated associations of SLC6A4, HTR2A and BDNF genes with AN in multiple studies. We found that ghrelin precursor gene SNPs and their haplotype were associated with purging type BN. In addition, the same gene SNPs were significantly associated with increased body weight, body mass index, fat mass, waist circumference, thickness of skinfolds, elevated fasting acylated ghrelin concentration, decreased HDL-cholesterol concentration and elevated scores in the Drive for Thinness-Body Dissatisfaction in non-clinical young female. A genome-wide association study using microsatellite markers is in progress in Japan. Studying susceptibility genes for eating disorders are expected to lead preventions and development of new treatments.
著者
山本 和美 中井 吉英
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.147-152, 2021 (Released:2021-03-01)
参考文献数
4

慢性疼痛患者に対して, 身体を活用するマインドフルネスアプローチを実施した事例を紹介した. マインドフルネス瞑想により, 痛み感覚に受容的な注意を向けて観察する心の姿勢が育まれ, 痛み感覚への注意の固着や破局的な認知が緩和されて痛みに対する自己効力感が高まった. 痛みとの関わり方を模索しながら, 生活習慣の改善, 自己の性格・行動傾向や症状発現の背景への気づきに至った過程を内受容感覚の視点も交えて考察した.
著者
今津 芳恵 松野 俊夫 村上 正人 林 葉子 杉山 匡
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.263-270, 2016

心療内科に通院中の患者233名を対象に, ストレス反応を測定するPublic Health Research Foundationストレスチェックリスト・ショートフォーム (以下, PHRF-SCL〔SF〕) と自己成長エゴグラム (以下, SGE) を実施し, その関連を検討した. SGEの得点のクラスター分析から, 「A高位Wタイプ」, 「A低位Mタイプ」, 「FC低位Vタイプ」, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」が抽出された. それぞれについて, PHRF-SCL (SF) の下位尺度ごとに偏差値を算出し, 一元配置分散分析により平均の差を検討した. その結果, 「FC低位Vタイプ」はストレス反応が他のタイプより高く, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」は他のタイプより低かった. PHRF-SCL (SF) とエゴグラムとの関連が認められ, その関連性は先行研究と一致するものであり, PHRF-SCL (SF) の構成概念妥当性の一端が検証された.
著者
大谷 真
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.812-816, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

摂食障害とは, 単なる食欲や食行動の異常ではなく, 体重に対する過度のこだわりや自己評価への体重・体型の過剰な影響といった心理的要因に基づく食行動の重篤な障害である. 摂食障害は, 著明なやせを維持する神経性やせ症と正常体重内にとどまる神経性過食症などに分類される. 神経性やせ症に関しては, 心理社会的因子の中でも, 周囲からどのようにみられているのかという不安が, 症状と関連しているとの報告があり, 神経性過食症の場合にも, 過食・嘔吐が, 低い陽性感情, 高い陰性感情, 怒り/敵意, ストレスを伴った日に起きやすいという報告がある. このように, 症状や経過に心理社会的因子を含むストレスが関連していることを示す報告が多く, 摂食障害がストレス関連疾患であることは疑いようもない. 本稿では, われわれの施設で治療を行った摂食障害患者の心理社会的因子に関するデータの紹介も行い, 摂食障害とストレスの関係について概観する.
著者
吉野 槇一 中村 洋 判治 直人 黄田 道信
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.559-564, 1996
参考文献数
19
被引用文献数
6

RA患者と健常者の笑いによる神経内分泌-免疫系の変化を, 落語観賞前後で調査した。その結果, RA患者の血漿中メチオニン-エンケファリン, ACTH, IL-6,IFN-γが, また健常者の血漿中メチオニン-エンケファリン, サブスタンスP, ノルエピネフリン, ACTH, CD4/CD8,%CD57,IFN-γが落語後に変化した。特に, RA患者で疾患の活動性に相関するIL-6値が, 落語後には落語前の1/3に低下し, 健常者の値に近づいた。これらより, 楽しい笑いは神経内分泌-免疫系に作用し, RAの活動性を改善させうることが示唆された。
著者
佐藤 由佳利 土谷 聡子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.321-326, 2010-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

高校生894名を対象に,摂食障害症状評価尺度スクリーニング版Symptom Rating Scale for Eating Disorders Screening test(SRSEDS)を用いて,摂食障害傾向についての調査を実施した.その結果,男女で差があることがわかり,「過食経験」,「食べることの心理的負担」は女子が高く,「やせていることへの周囲からの圧力」は男子のほうが高かった.従来,摂食障害は女性特有の疾病と考えられてきたが,摂食行動やボディイメージなどについて,男子は女子とは違った圧迫やストレスを感じていることが調査からわかり,今後,男女で異なった予防教育や治療が必要になってくると思われた.
著者
米澤 紗智江 鎌田 穣 黒川 順夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.157-164, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
9

過食嘔吐の症状が消失後, 身体と心の不一致感を主訴とする事例に対し, ヨーガ療法による介入が奏効したので報告する. ヨーガ療法は, 独自の人間観, 病理論, 治療/指導論, 技法論を有する心理療法体系である. 摂食障害専門ヨーガ療法の通所施設にて約3カ月間 (1回/週・90分), ヨーガ療法を実施した. プログラムは身体面からのアプローチを主軸としたが, 主な介入のターゲットとしたのは身体的改善や呼吸機能改善以上に, 身体感覚の意識化や感覚に対する認知などの心理的側面であった. その結果, 失体感症傾向や気分状態の改善が認められ, 主観的症状も快方に向かった. 以上から, ヨーガ療法による身体感覚の意識化の促進が, 本事例でみられた心身の不一致感および摂食障害でよく認められる失体感症傾向の改善に有効に作用したと考えられる. また, 病理が身体性と深く関連している摂食障害に対し, 予防・回復支援・再発防止それぞれの段階で奏効する可能性が示唆された.
著者
筒井 順子 中野 完 村永 鉄郎 鈴木 伸一 野添 新一 乾 明夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.803-808, 2008-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
7

摂食障害を合併した1型糖尿病患者にヨーガと認知行動療法の併用を試みた.介入当初はアレキシシミア傾向が強く治療への動機づけが不安定であったため,感情の言語化を促しながら,ヨーガを用いて激しい感情と距離が置けるよう援助した.その後に,過食嘔吐の代替行動の形成や問題解決療法など摂食障害によく用いられる技法を導入した.さらに,母親に対して具体的なサポート方法を提案することで母子関係の調整を行い,長期的には1型糖尿病をセルフケアすることに対する患者の自立的態度の育成に貢献できた.
著者
久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-31, 2007-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

第47回日本心身医学会総会において,「東京大学心療内科の30年」というテーマで会長講演の機会を得た.東京大学心療内科は昭和47年(1972年)に東京大学医学部附属病院分院に開設された.当時の中心人物は石川 中助教授と菊池長徳医局長の2名であった.初代教授となった石川は心身医学に5つのサイバネティックス原理を導入し,TEG(東大式エゴグラム)を作成し,サイバネーション療法を確立した.また,彼は「気づきとセルフコントロール医学」を提唱した.そのほかに日本心身医学理事,『心身医学』誌編集委員長,第4回国際心身医学会総会(会長:池見酉次郎先生,1977年,京都)の事務局長を務め,さらに日本心身医学会の日本医学会への加盟に貢献した.第三代教授となった筆者は世界保健機関(WHO)の主催する世界パニック障害研究会議(G. Klerman)と世界摂食障害研究会議(B. Liana)に委員として出席し,国内ではPsychosomatic Symposium in Tokyoを3年間主催した.また,分院と本院の統合に参画し,心療内科病棟を開設した.さらに2005年には神戸において第18回世界心身医学会議の組織委員長を務めた.最後に最近の研究の中から(1)心身相関マトリックス, (2)パニック障害患者の脳機能をPETを利用して, (3)Ecological Momentary Assessment (EMA), (4)Mild depressionの診断基準づくりの4つについて概説した.
著者
小原 千郷 鈴木 (堀田) 眞理 西園マーハ 文 末松 弘行 鈴木 裕也 山岡 昌之 石川 俊男 生野 照子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.162-172, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
21

日本の一般女性における摂食障害の認識を明らかにすることを目的に, 病名の認知度と摂食障害に関する誤解や偏見に関するWEBアンケートを実施し, メディアからの情報入手が誤解・偏見に与える影響を検討した.回答者は4,107名の女性で, 平均年齢は27.0±7.4歳であった. 摂食障害を 「よく知っている」 が17.7%, 「ある程度知っている」 が43.5%, 「病名を聞いたことあるが, 症状などはよく知らない」 が27.8%, 「病名も聞いたことがない」 が6.5%であった. 病名の認知度は高い順から 「うつ病」 > 「拒食症」 ≒ 「過食症」 > 「子宮頸がん」 > 「摂食障害」 > 「統合失調症」 であった. 全般的にメディアからの情報入手が多いほうが摂食障害に対する誤解や偏見が少ない傾向にあったが, 摂食障害は 「ダイエットが一番の原因である」 「母親の育て方が原因である」 とする項目については, 特定のメディアからの情報入手があるほうが, そうであると考える人が多かった.