著者
山口 直美 小林 純 太刀川 弘和 佐藤 晋爾 堀 正士 鈴木 利人 白石 博康
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-32, 2000-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
30

摂食障害患者を自殺企図の有無で2群に分類し, 2群間でParental Bonding Instrument(PBI)で測定された両親の養育態度や臨床症状などについて比較検討した.PBIの結果において, 自殺企図群では両親のoverotection(過保護)得点が有意に高かつた.また自殺企図群では虐待体験を伴う症例が有意に多かつた.一方, 発症年齢, 調査時年齢, 摂食障害の重症度, 過食, 嘔吐, 下剤乱用, 物質乱用, 抑うつ状態の有無などについては2群間に有意差を認めなかつた.摂食障害患者において自殺企図の危険因子として, PBIの高いover protection得点で示されるような, 親の支配的で過保護な養育態度や虐待体験などが重要と考えられた.
著者
荒井 弘和 所 昭宏 平井 啓 野長 さおり 小林 博美 井上 亜由美 上砂 陽子 田中 孝浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.667-673, 2010-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

本研究では,肺結核患者のマスク着用行動に対する変容ステージを検討し,マスク着用に関する恩恵と負担,阻害要因と促進要因,社会的要因,身体症状,および心理的適応状態が,変容ステージによって異なるか比較を行った.対象者は,入院中の肺結核患者および肺結核疑い患者であった.研究デザインは横断的調査であった.本研究の48名の対象者のうち,ステージの分布は,準備期22名および実行期26名であった.48名の平均年齢は53.09±16.70歳(19〜78歳)であった.分析の結果,マスク着用の負担,マスク着用の阻害要因,身体症状において,2つのステージ間に違いがみられる項目が存在した.入院日数およびマスク着用の促進要因においては,ステージ間で有意に異なる傾向が認められた.特に,マスク着用の阻害要因については,複数の項目において,ステージ間に差が認められた.今後は,看護師を中心とした医療スタッフが,促進要因を増強するだけでなく,阻害要因が存在していてもマスクを着用するよう意識づけるべきである.さらに,着け忘れを防止するような介入を行うことが好ましいと考えられる.
著者
輿古田 孝夫 石津 宏 高江洲 なつ子 赤嶺 依子 垣花 シゲ 佐和田 重信 兪 峰 森山 浩司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.681-687, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

沖縄県は全国でも有数の長寿県であり,伝統文化と風土に培われた地域性を有している.本研究では,こうした沖縄の地域特性をふまえ,地域高齢者のメンタルヘルスとその関連要因について検討することを目的とした.沖縄県中部に位置する具志川市平良川地区の65歳以上の地域住民120名を対象に,自尊感情と関連する要因を検討した.その結果,self-esteem得点が有意に高値を示した者は,男女ともに健康状態が良好で,暮らしにゆとりがあり,生活満足度や健康度自己評価が高かった.また,地域の伝統行事や祭事の際に役割を有するものはself-esteem得点も有意に高値を示した.沖縄県中部に位置する中城村2地区の65歳以上の地域住民162名を対象に, self-efficacy(自己効力感)に着目した調査では,男女とも健康度自己評価,老研式活動能力指標の社会的役割が有意な関連を有した.男女別にみると,男性では伝統的祭事への参加状況で,女性では経済状況で有意な関連を認めた.また,同村における80歳以上の地域住民610名を対象にCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)を用いた抑うつ傾向との関連をみると身体的自立直やself-esteem得点,主体的な日常生活や社会への関心度,社会参加の程度とCES-D得点では,有意な負の相関関係がみられた.以上の結果から,高齢者のメンタルヘルスには,心身の健康状況や社会的役割,社会的活動性といつだ多くの要因が関連していた.また沖縄の伝統的行事や祭事が高齢者のQOL(quality of life)に影響している可能性が示唆された.今後,伝統的社会風土を基盤とする地域性を考慮した高齢者の健康長寿対策の必要性が示唆された.
著者
石津 宏 豊里 竹彦 太田 光紀 森山 浩司 大城 和久 輿古田 孝夫 津田 彰 矢島 潤平 兪 峰 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.671-680, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
34

本研究は,固有の祭祀行事が生活の中に息づく沖縄県知念村久高島の高齢者を対象とし,主観的幸福態と健康状態を調べ,その関連要因を検討するとともに,唾液を採取し,その中に含まれるS-IgAや,脳内神経伝達物質の主要代謝産物であるMHPGを測定し,心身相関について検討することを目的とした.久高島で年間20数回も行われる神聖な祭祀行事が,高齢者の主観的幸福感,抑うつ感などのメンタルヘルスや免疫系統に与える影響についても検討した.その結果,久高島の高齢者(65〜96歳,50名)の健康度自己評価は前期高齢者,後期高齢者とも高く,健康老人が多かった.また,健康度自己評価とWHO/QOL26,LSI-K,PGCモラールスケールの3尺度間に有意な正の相関がみられた.唾液中S-IgA値は,70代,80代,90代とも高く,年齢による減弱はみられていない.S-IgAに関与する因子は重回帰分析の結果,WHO/QOL26の下位項目「手段的自立」と有意な関連がみられた.神事を経験した高齢女性では,神事(「祭り」)の後には,唾液中free MHPGが減少する傾向こあった(p<0.10).このことから,久高島高齢者は主観的な健康だけでなく,実際の免疫系統も健康であるという心身相関が示唆された.久高島の伝統的な祭祀行事は心身の安らぎを与え,高齢者のメンタルヘルスと健康に重要な関わりをもつことが示唆された.
著者
森山 浩司 石津 宏 輿古田 孝夫 豊里 竹彦 太田 光紀 大城 和久 馬 宏坤 兪 峰 佐和田 重信 柳田 信彦 名嘉 幸一 和氣 則江 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.661-669, 2004-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

健康長寿要因としてのメンタルヘルスの重要性を研究するために,長寿地域である沖縄県北中城村と固有の祭祀行事が生活に息づく知念村久高島において,高齢者の主観的幸福感と健康状態の関連要因について検討した.分析対象は,北中城群173名(男性75名,女性98名),久高群77名(男性24名,女性53名)の65歳以上の高齢者である.主観的幸福感(生きがい感)の指標としてPGCモラールスケール,生活満足度尺度K(LSI-K)を用い,健康度自己評価得点に及ぼす関連因子について重回帰分析を行った.健康度自己評価得点と有意な関連要因は,北中城群ではPGOモラール得点,学歴,久高群では老研式活動能力指標,女性,LSI-K得点,小遣いであった.また一方,主観的幸福感に影響を及ぼす関連因子として健康度自己評価,老研式活動能力指標などがみられたことは,心の健康状態と体の健康状態は表裏一体であることを示している.健康度自己評価にPGOモラール得点,LSI-K得点が有意に関連を示したことは,身体の健康状態の生成に主観的幸福感(生きがい感)がヘルスプロモーション要因として関与することを意味する
著者
河野 友信
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-14, 1980

Relationships between disease and sex were investigated in the outpatients of our psychosomatic clinic. 1) Problems concerning sex were observed in 35 (20.3%) out of 172 outpatients excluding depression at our psychosomatic clinic. 2) Female patients amounted to 85.7%(30) of all the patients who had sexual problems. There were 26 patients (74%) whose ages ranged from 20 to 40. 3) Details of sexual problems were as follows : Sexual frustration, frigidity, premature ejaculation, abnormal acceleration of sexual desire, impotence, neurotic masturbation, sexual delusion, fear of venereal disease, fear of sexual intercourse, fear of loss of virginity, pregnancy outside of marriage, incest, sexual perversion, living together of feme and concubine, manic-depressive psychosis and sexual problems, sexual relations between patients and nurses, chronic disease and sexual problems, sexual relations between father and his adopted daughter. 4) In the clinical site, sexual problems were projected or hidden behind the disease in the following forms : Defense mechanisms (conversion reaction, escape, denial), positive transference, troubles between husband and wife (separation, divorce), abnormal mental state of the patient (neurosis), refusal of sexual intercourse, symptoms concerning sex (delusion, sexual frustration, impotence, incomplete sexual feeling, masturbation and onanism, inadaptability to sexual development and aging, and abnormal sexuality.) 5) Psycho-sociological backgrounds creating sexual problems were analysed. 6) When the Kyushu University Medical Index (KMI) was executed on 85 depressive patients, only 17 (20.9 %) gave affirmative answers regarding sexual difficulties. Sexual problems were latent in 6 patients (9.3 %) out of 64 excluding the above-mentioned 17 depressive patients. 7) The following 4 cases of sexual problems were presented : Anorexia nervosa, ulcerative colitis, depression and Shay-Drager syndrome.
著者
安野 広三
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.38-43, 2020 (Released:2020-01-01)
参考文献数
13

疼痛性障害は1つまたはそれ以上の部位における疼痛が臨床像の中心であり, 著しい苦痛や機能障害をきたし, その発症や経過に心理的要因の関与があると判断される病態をいう. この病態に相当する病態名はいくつかあるが, その1つに機能性身体症候群がある. 機能性身体症候群は痛みを中心とする身体症状群を呈する機能性疾患を指し, 過敏性腸症候群, 緊張型頭痛, 線維筋痛症などが含まれる. 近年, 機能性身体症候群の病態に中枢性感作が大きな役割を果たしていることが推察されている. 中枢性感作とは中枢神経のメカニズムにより疼痛の増強が起こる病態である. 本稿では疼痛性障害の合併症について, 機能性身体症候群および中枢性感作の観点から検討してみる.
著者
永田 勝太郎 長谷川 拓也 岡野 寛 大槻 千住 広門 靖正 青山 幸生
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.479-486, 2004
参考文献数
15

専門医により予後不良と診断された末期がん患者28例に対し,補剤を投与し,実存分析的なアプローチを加え,全人的医療を試みた.その効果について,レトロスペクティブに検討した.評価は,主観的にはQOL調査票を用いてQOLを評価し,客観的には尿17-KS-S(以下,S),17-OHCS(以下,OH),S/OH比を用いた.補剤である十全大補湯,紅参末,コエンザイムQ10を用い,さらに実存分析を基盤とした心理療法を行った.その結果,延命効果(6カ月未満から平均18カ月へ)とQOLの改善(特に食欲と疼痛)が認められ,低下していたS,S/OH比が上昇した.さらに,6例が実存的転換を示した.転換群と非転換群の身体・心理・社会・実存的条件を比較した.トータルQOL,食欲,高S,至高体験,意味への気つきが転換群で優れていた.また,死の様態では転換群に尊厳死が多かった.
著者
波夛 伴和 瀧井 正人 高倉 修 森田 千尋 河合 啓介 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.857-863, 2015-07-01 (Released:2017-08-01)

生活習慣や治療行動(食事や運動など)は糖尿病患者の病状を左右する重要な要素である.患者を適切な治療行動に導くために,従来,糖尿病治療者は教育・指導に注力してきた.近年では,患者の問題解決能力を尊重して,その能力の発揮を援助する考え方(糖尿病エンパワーメントなど)が紹介され,効果も報告されている.しかし,中には自身の能力を発揮するのが難しい患者も存在する.そのような患者を効果的に援助するためには,より深く患者を理解することが必要である.本稿では,糖尿病患者を理解するためのかかわりについて,筆者の学びの過程を示しながら考察した.患者の大きな変化につながるような言葉や,技法が明確な心理療法に注目が集まりやすいが,その前段階の土台作りの重要性についても強調したい.
著者
遠藤 由香
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.733-740, 2010
参考文献数
27

目的:思春期過敏性腸症候群(IBS)の疫学的特徴を明らかにする.方法および対象:中学3年生にアンケート調査を施行した.質問紙にはRIIMQ,SIBSQ,GSES,SF-36v2を用い,さらに睡眠やストレスなど生活に関する質問を付加した.結果:男子106名(12.7%),女子145名(16.3%)がIBSと診断された.全員IBSの治療歴はなく,有症状率に地域差はなかった.IBSの腹部症状に大きな男女差はなく,ストレスによる症状増悪は女子に多かった(p<0.05).IBS群は対照群に比して,睡眠障害,ストレスやトラウマ(各p<0.01)をより多く訴えた.IBS群では,女子のほうが男子よりストレス,トラウマを多く訴えた(各p<0.05).IBS群は対照群よりGSESとSF-36v2の全下位尺度で得点が低かった(各p<0.01).結論:思春期IBSでは性差の面で成人とは異なる傾向が認められた.
著者
森本 兼曩 丸山 総一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-251, 2001-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
26

情報化社会, 高齢化社会の到来といった社会経済構造の変革, 疾病構造の変化などにより, われわれのライフスタイルは大きく変わろうとしている.このような現代社会において, 国民の健康意識は高く, 病気になって考えるのではなく, 健康な時期に将来発生するかもしれない疾病に対する一次予防の方法を積極的かつ科学的に考え, さらにQuality of Life(QOL)を高める具体的方策を追求していくことが, 緊急かつ重要な課題となっている.こうした問題に対するアプローチとして, われわれが必要と考えているのはストレスに強いライフスタイル, より健康的なライフスタイルへの変容に個々人が自主的, 自発的に取り組むことである.喫煙, 飲酒, 運動などのライフスタイルが, 心身の健康と関連性のあることをこれまでに報告してきた.われわれは, 勤労者, 地域住民, 高齢者, 阪神・淡路大震災被災者を対象に, 一般的健康質問票, 健診データ, 染色体変異, NK細胞活性, IgE, コルチゾールなどを調べた.われわれは, これまでの研究やBreslowの報告に基づき, 8つの健康習慣として, (1)喫煙しない, (2)適量飲酒, (3)定期的な運動, (4)7〜8時間の睡眠, (5)栄養バランスを考える, (6)労働時間10時間未満, (7)毎日朝食を食べる, (8)ストレスを適正に保つ, を抽出した.同時に, この8つの健康習慣をいくつ守るかによって健康習慣指数(HPI)を算出した.2, 148人の勤労者における6年間の追跡調査の結果からは, 不健康なライフスタイルの人は, 慢性疾患の発症の割合が有意に高いことを示した.一方, 癌免疫力の指標の一つであるNK細胞活性は, 良好なライフスタイルの人で有意に高いことも明らかにした.遺伝的健康度は, リンパ球染色体変異の頻度(姉妹染色分体;SCE, 小核;MN)で測定した.その結果, 良好なライフスタイルを多くもつ人ほど, 染色体変異の頻度が有意に低かった.また, 不健康なライフスタイルの人で異常にIgEが高くなっていることも明らかにした.震災の被災者を対象にした調査では, 不良なライフスタイルの人ほど, また心的外傷後ストレス傷害(PTSD)傾向の強い人ほど, NK細胞活性が有意に低く, コルチゾールは有意に高くなっていることを示した.勤労者や高齢者のデータからは, 良いライフスタイルの人やヒューマンサポートの多い人ほど, 高い職場ストレスや身体的健康状態が良くないにもかかわらず, 高いQOLを示していたことを報告した.以上の結果から, われわれがライフスタイルをより健康的なものに変容させようとするのも, 個々人のいわば短い生涯のうちで, なるたけ大きな自己実現に向けての活動が, 健康であればあるほど容易になるからである.そのような意味からは, より健康的なライフスタイルは, 将来のさまざまな健康破綻への負荷に対する防御力, 耐性力, 抵抗力を示す資料でもある.
著者
窪寺 俊之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.353-363, 2010-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
4

人間は,「我と汝」「我と我」「我と神的存在」との関係の中で生きている.「いのち」が危機に直面すると「我と我」「我と神的存在」の関係が顕著に意識される.その関係性をよりいっそう意識化し,活性化して患者の「いのち」の土台,意味,希望を見出す援助がスピリチュアルケアである.「我と我」「我と神的存在」の関係を重視する視点は,患者の存在,現状,将来をより全体的視点から見直すことを促す.その結果,見失った自己の生きる意味,目的,希望の気づきにつながる.そこに自己回復という「癒し」がある.医療者には,患者の言葉,態度の中にスピリチュアルな側面を見て取る感性と解釈法が求められる.
著者
斎藤 清二 北 啓一朗 高木 由夏 田口 恭仁子 黒田 昌弘 初瀬 リマ 大澤 幸治 渡辺 明治 Paulo R Souza Antonio F.N Magalhaes
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.463-471, 1994-08-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

Some patients complain of continuous or reccurent abdominal pain associated with high serum levels of pancreatic enzymes but without definite signs of chronic pancreatitis on various examinations including ERCP. CT and US. This condition has been called clinically suggested chronic pancreatitis (CSCP) . In this report, we propose a new pathophysiologic hypothesis and a strategy for the treatment of CSCP based on the viewpoint of system theory and phenomenology. A psychosomatic vicious cycle consisting of the following three processes is often observed in CSCP : 1) A depressive mood and anxiety induce hypersecretion of the pancreatic juice. 2) An elevation of the intraductal pressure resulting from the pancreatic hypersecretion causes abdominal pain and increases in the serum levels of pancreatic enzymes. 3) Exacerbation of the symptoms and the information of the abnormal examination results aggravate the depressive mood and anxiety of the patient. This vicious cycle is considered to exacerbate and prolong the disease in the presence of the constitutional factor of hyperreactivity of the pancreatic exocrine function. On the basis of this pathophysiologic hypothesis, we formulated the following therapeutic strategy from a viewpoint of system theory, focusing particularly on the physician-patient relationship. ( I ) Sufficient medical interview and physical examination ; ( 2 ) examinations needed to exclude malignancies ; ( 3 ) proper explanation of the disease ; ( 4 ) setting control of symptom as the goal of the treatment ; and ( 5 ) administration of anti-depressants, if necessary. In this report, the clinical courses of two cases of CSCP, a 39-year-old female and a 32-yearold male, treated according to this strategy are described phenomenologically, and the validity of the hypothesis and the therapeutic strategy is evaluated.
著者
大場 眞理子 安藤 哲也 宮崎 隆穂 川村 則行 濱田 孝 大野 貴子 龍田 直子 苅部 正巳 近喰 ふじ子 吾郷 晋浩 小牧 元 石川 俊男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.315-324, 2002-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3

家族環境からみた摂食障害の危険因子について調べるために,「先行体験」「患者からみた親の養育態度」について,患者からよく聞かれるキーワードを用いて質問表を作成し,健常対照群と比較検討した.その結果,「母親に甘えられずさびしい」がどの病型でも危険因子として抽出された.また患者群全体で「父親との接点が乏しい」も抽出され父親の役割との関連性も見直す必要性があると思われた.さらにANbpとBNにおいては,「両親間の不和」「両親の別居・離婚」といった先行体験の項目も抽出され,"むちゃ食い"が家庭内のストレス状況に対する対処行動としての意味合いをもつのではないかと考えられた.
著者
生野 照子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.277-283, 1989-04-01 (Released:2017-08-01)

Children tend to show symptoms related to "eating." The causes for eating-related symptoms in children are often associated with the parent-child relationship. The author recently studied the parent-child relationship in connection with the eating behavior, taking intp consideration the current social background in Japan.The subjects of this study were 14 children (aged under then years) who visited our department with the chief complaint of one of various kinds of eating disorder. The psychological backgrounds of these children were analyzed. In a half of them, there had been troubles with food intake already in the early infantile period ; the addition of parent-child mental conflicts to these disturbances resulted in the onset of eating disorder. In the remaining half of the children, no eating-related symptoms had occurred in the early infantile period, but a crisis in the parent-child relationship had appeared at some occasion and eating disorder was induced as a reaction to that stress.Before the onset of eating disorder, all children had been more or less controlled by their parents (or the desires of the children had often been refused by their parents). After the onset of eating disorder, the children in turn controlled the behavior of their parents.In the familes of these children, the educational, physical and self-sufficient aspects of eating had been emphasized at the dining table, with little attention paid to the emotional exchange among family members at the dining table. Thus, the mental aspect of eating had been narrowed in these families.This state of dining table nehavior can distort the parent-child and familial relationships under the influence of the current social factors ; it makes the dining table a place where children feel heavy pressure, suffering, passive status and frustration.The questionnaire survery about anorexia nervosa also disclosed that an unsatisfactory emotional parent-child exchange is relfected in the dining table behavior. Such an ambivalent situation between parent and child produces an ambivalent parent-child relationship, resulting in ambivalent, morbid eating habits.