著者
岡留 剛 前川 卓也 服部 正嗣 柳沢 豊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.2351-2361, 2007-07-15
被引用文献数
4

センサネットワークを前提とした実世界イベント検索システムを提案する.そのシステムは,GooやGoogle といったウェブ検索の入力と同じく,いくつかの単語を入力とする.システムは,1. 実世界で起こったイベントに関係する入力単語の集合を,イベント記述子に変換し,2. そのイベント記述子に付随しその解釈の物理量を用いた表現に整合するセンサデータセグメントを抽出し,質問に対する返答として,抽出されたデータセグメントをもとにイベントが起きた時刻や関与したモノの名称などを出力する.Assuming an environment in which a sensor network always collects data produced by sensors attached to physical objects, the system presented here searches for data segments corresponding to real-world events using natural language (NL) words in a query. The system translates each query into a physical quantity representation, which we also introduce here, searches for a sensor data segment that satisfies the description by the representation, and shows the event occurrence time, its place, or its related objects as a reply to the query.
著者
鈴木 晋 茨木 俊秀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.48-58, 2001-01-15

演繹データベースの新しい問題クラスである直積問題クラスを定義する.直積問題クラスは右線形問題や同世代問題を包む,datalog問題クラスの部分クラスである.このクラスを効率的に解くために直積法を提案する.従来の方法が中間データとして基礎アトムを生成するのに対し,直積法は基礎アトムの集合を直積を利用して簡潔に表す式を生成する.これにより,直積法は生成する中間データの数を減らして,問題を効率的に解こうとする.直積問題クラス全体に適用できる従来の方法の中ではマジック集合法が最も効率的であると思われる.そこで,直積法とマジック集合法の効率を比較するために,直積問題の例として同世代問題の再帰ルールを複数にした問題および非線形にした問題を使って,計算機実験を行った.実験の結果,ファクトをランダムに生成した場合,どちらの問題に対しても問題がファクトを密に含むとき,直積法がマジック集合法より効率的であることが分かった.We define a new problem class of deductive databases, called the Cartesian product problem class (abbreviated to the CP class).The CP class is a subclass of the datalog problem class, and includes the right-linear problem, the same generation problem and others.To solve the CP class efficiently, we propose the Cartesian product method (abbreviated to the CP method).Although all the existing methods generate ground atoms as intermediate data, the CP method generates Cartesian products, each of which compactly expresses a set of ground atoms.Thus the CP method tries to reduce the number of generated intermediate data and, consequently, to solve problems efficiently.Among the existing methods applicable to the whole CP class, the magic set method seems most efficient.For performance comparisons of these two methods, we conducted experiments with two types of modified same generation problems, where one had two recursive rules and the other a non-linear recursive rule.The experimental results show that the CP method is more efficient than the magic set method when problems densely contain the facts generated at random.
著者
由井薗 隆也 宗森 純
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.30-42, 2007-01

近年,組織活動のために知識が重要であるという認識が高まり,様々な企業が知識経営に取り組んでいる.そのなか,大学の研究グループにおける知識創造活動を支援するグループウェアを検討するために,組織のダイナミックな知識創造モデルとして提案されたSECIモデル(共同化,表出化,連結化,内面化から構成されるモデル)を参考としたGUNGEN-SECIの研究を進めている.GUNGEN-SECIでは,セマンティックチャット機能によりグループ活動である電子ゼミナール中のデータ収集を支援してきた.本論文では,セマンティックチャットによって収集されたチャットデータをXMLデータに変換し,SECIモデルの表出化と連結化を支援する仕組みについて述べる.表出化ではセマンティックチャットデータを用いた分散協調型KJ法により概念形成を試みる.連結化では,そのKJ法の結果として得られた図解とセマンティックチャットデータのタグ情報を組み合わせた知識の抽出を支援する.適用結果より,(1)セマンティック情報をタグとして埋め込んだチャットデータの中から選んでデータを使用すると,分散協調型KJ法の概念形成結果である島数,および,まとめ文章の文字数が有意に増加すること.(2)グループ行動を記録するために埋め込んだタグ情報と表出化である分散協調型KJ法の結果を連結することにより,表出化のみでは得られない新たな知識獲得を支援できることが分かった. : Organizations recognize an importance of knowledge for their activity and tackle the knowledge management. GUNGEN-SECI has been studied for supporting the knowledge creative process called SECI model, which consists of four steps (socialization, externalization, combination and internalization), in order to support a knowledge creative work such as a research education in a university. The model was proposed by Nonaka for the explaining dynamism of interaction between explicit knowledge and tacit knowledge within an organization. GUNGEN-SECI has a semantic chat function to collect the chat data within an electronic seminar as a group work. In this paper, XML data converted from the collected chat data are applied to the support of externalization step and the combination step. In the externalization step, a concept formation is carried out by the distributed and cooperative KJ method using the chat data. In the combination step, a knowledge acquisition is supported by combining the semantic tag from the group work with the concept map obtained from the externalization step. The application results showed the possibility as follows: (1) The chat data selected with the semantic information increased the number of islands and the number of characters of a conclusion sentence obtained through the distributed and cooperative KJ method significantly. (2) Combining between the tag information collected from a group work and the result of the KJ method leads to a new knowledge acquisition beyond the previous externalization step.
著者
久野 靖 角田 博保
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.854-861, 1988-09-15
被引用文献数
3

近年 ピットマップ画面とマウス装置を持ち Unixオペレーティングシステムを搭載した高機能ワークステーションが多く見られるようになっている.しかし実際にこれらのシステムの使われ方を見ると 利用者は単にピットマップ画面上に複数の端末窓を開き その上で作業をしているにすぎないことが多いように思われる.そこで筆者らはそのような環境の問題点を分析し ごく少数のツールを作成することでその欠点を補うことを試みた.これらのツールは既存のUnix環境を置き換えるものではなく Unixの多数の指令群と有機的に組み合わせて使えるようなものとした.これらのツール群は起動されると端末窓とは独立に窓を開き そこに表示された情報は利用者が陽に指示するまで消えることなく利用可能である.これらのツール群により非常に多数の窓が作られるため その有機的な関係を整理し使いやすくすることにも留意した.またこれらのツール群の有効性を調べるための簡単な模擬実験も行ったが その結果 必要な情報がスクロールして消えて行ってしまうという端末窓の問題点が大幅に改善されたとの感触を得た.
著者
後藤浩一 松原 広 深澤 紀子 水上 直樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3256-3268, 2003-12-15
被引用文献数
21

携帯端末を用いて,鉄道の駅における視覚障害者の行動を支援する情報提供システムを開発した.視覚障害者の行動支援のためには利用者の現在位置を特定する必要がある.画像認識や音声認識による環境の認識はまだ実用レベルではなく,GPSや携帯電話の基地局等による位置の把握は,精度的にも利用可能な場所の面からも要求を満たせない.本システムでは,視覚障害者が移動のときの目安としている視覚障害者用誘導ブロックに位置情報を保持するRFIDタグを埋め込んで位置情報を取得し,携帯端末が持つ利用者情報や地図情報を用いて現在地の案内や目的地までの誘導案内を行う.利用者はシステムへ要求を音声で伝え,システムも音声で必要な情報を提供する.本稿では,現状の問題点とシステムへの要求を整理したのち,開発したシステムの構成と機能を説明する.実際の駅で行った評価試験の結果,目標とした機能を果たせることを確認した.本システムが提供する機能は,駅だけでなく一般市街地でも活用できることが期待でき,今後は歩行者ITS等の同様のシステムとの共通化を図り,実用化を目指す.We have developed a information guide system for visually disabled people by embedding location data in the station environment. This system consists of a portable information device, a cane carried by the user and guide blocks embedded RF-ID tags which have location data. The datum of a RF-ID tag is read by the cane and transmitted by radio wave to the portable information device. Then information about the current location is provided vocally to the user. When the user tells the information device where he/she wants to go, the device computes a route and guides the user to the destination. This paper also includes the result of a field test executed in a real railway station.
著者
舟渡 信彦 吉川 耕平 花田 恵太郎 宮本 雅之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1258-1267, 1993-06-15
被引用文献数
9

本論文では、アニメーションの作成・修正を簡便化することを目的としたアニメーション作成支環システムを提案する。本システムは、アニメーションの作成作業の一部である「登場物の動き」の記述を日本語で行うことを可能にする。このためにシステムは、日本語のシナリオを入力とし、(1)アスペクトを用いた登場物の動作間に成り立つ順序関係の抽出、(2)動作に付随する状態変化知識を用いた順序関係を補正するための推論、(3)得られた関係からの事象駆動方式にもとづくアニメーション記述言語プログラムの生成、を行う。日本語こよるシナリオの記述を許すことで、利用者が習得しなければならないシステムに関する知識は軽減される。また、従来のフレームごとの画像を作成する方法に比べて、作成したいアニメーションを直接的に表現することができるため、試行錯誤が容易になる。これらの特徴により、本システムは専門的な知識をもたない利用者が自らアニメーション作成作業を行う場合に有効である。
著者
今中 武 上原 邦昭 豊田 順一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.349-358, 1987-04-15

Prologには プログラムの大規模化に伴う実行効率の低下 高速集合演算機能などの実用的なデータベース操作機能の欠落などの問題点があることが指摘されている.これらの問題点を解決するために 本論文ではPrologと関係データベースを結合したDB-Prologを提案するDB-Prologでは 関係データベースとの結合に非評価方式と評価方式と呼ばれる二方式を用いている.非評価方式を用いて結合されているデータベースは Prologの内部データベースを拡張したものとみなされ ファクト集合が格納される.このファクト集合は データベースの検索機能を用いて実現したユニフィケーションによって高速に検索される評価方式を用いて結合されているデータベースには 数値 文字列データなどが格納され DB-Prologのシステム組み込み述語を用いて操作される.システム組み込み述語には データの追加 削除 検索などを行う述語のほかに 既存のデータベースにアクセスするための述語などが用意されている.また DB-Prologの評価実験を行ったところ ファクト集合が3 000個を越えると DB-Prologの方が従来のPrologに比べて高速にプログラムを実行できることがわかった.さらに 評価方式を用いて結合されている複数の関係データベースに閉じた世界の仮定を行うことで 知識の多世界化などが可能となっている.
著者
箱守 聰 佐川 雄二 大西 昇 杉江 昇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.153-161, 1992-02-15
被引用文献数
7

文中の修飾構造を評価することにより 日本語の文章作成における添削作業を支援するシステムについて述べる修飾構造は 文の構造の基本をなすものであるため それがあいまいであったり 複雑すぎる場合 伝達したい内容が正確に伝わらない恐れがあるまた修飾構造は 単に文法だけでなく 文の意味内容とも関連するので 読み手の知識のレベルによっては 書き手の意図しないあいまいさの発生することがあるしたがって 客観的な評価が特に有効な部分である本研究では 文章中の各文に対して構文・意味レベルの解析を行って修飾構造のあいまいさ わかりにくさの存在する箇所を検出し さらに修正案を提示することにより 添削作業を支援するシステムについて述べるあいまいさについては 意味構造を得る段階で解析結果が複数存在するものを指摘するわかりにくさについては 出版されている文章作成の指導書を参考にして作成した3つの規則を基に判定するまた 本方式では文の解析の精度によってシステムの能力が左右されることが予想されるため 実際の文章を対象にした評価実験を行ったこの結果 現在実用化されている機械翻訳システムと同程度の文法と辞書および知識ベースを用いて 指摘すべき文は漏らさず評価が行えることを確認した
著者
松尾 文碩 佐藤 誉夫 高山 悟
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1486-1494, 1995-06-15
被引用文献数
1

情報検索システムのキーワード転置ファイルには、索引の見出し語(キーワード)の内容を格納したファイルがあり、これを文書参照ファイルということにする。見出し語の内容は、文書番号あるいは見出し語の生起位置の線形リストであり、この長さの分布は非常に偏っている。文書参照ファイルにおいて、長短リストを同形式で記憶し、2次記憶アクセス回数を減らすためにブロックサイズを大きくとると、低頻度キーワードのために非常に大きな無駄領域が生じる。本稿では、英文科学技術抄録文に関して、個々の低頻度キーワードの増加は予測できないが、生起回数が同一なものをまとめると、群として増加が予測できることを利用して、低頻度キーワードリストを生起回数ごとに群として管理する方法を提案した。この方法によって無駄領域を大きく減少させることが可能である。
著者
遠藤 裕英 畑田 稔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.2259-2268, 1998-07-15

本論文では次のような特徴を持つ研究情報サービスシステムを構築し,評価する.(1)紙媒体で入手したニュース系情報を電子化して,ネットワーク経由で遅滞なく配信するシステム.(2)インターネットのホームページの新着記事を収集し,キーワードを抽出して配信するシステム.(3)ウェブ閲覧ソフトでニュース系情報と図書系データベースを統一的に閲覧できるネットワークサービスを提供するシステム.本システムを利用者約600人の職場で評価した結果,ニュース系閲覧サービスで250人/日,図書系サービスで46人/日,プッシュ型(配信型)サービスで50?57人/日の利用者があった.研究情報の伝達迅速化では,次の結果が得られた.(a)従来,約4時間要していた紙媒体情報の配信を約2時間に短縮できた.(b)従来,約1週間遅れで閲覧されていたワールドワイドウェブの新着記事に対し,12時間以内に要約情報を配信できるようになった.(c)従来,図書室に出向く必要のあった図書データの検索を,利用者の端末からウェブ閲覧ソフトで利用できるようになった.This paper reports on the implementation and evaluation of a laboratory information service system that: (1) Digitizes news-oriented information obtained from print media and distributes it without delay over the network; (2) Collects newly arrived articles from home pages on the internet and extracts and distributes key words from these articles;and (3) Provides a network service that enables news and library databases to be read in an integrated manner through a Web browser.Evaluation of this system at a work place consisting of about 600 users revealed that about 250 people/day used the news service,about 46 people/day used the library service,and about 50 to 57 people/day used a distribution service.The following benefits were obtained as a result of speeding up the laboratory information service: (a) Distribution of print-based information that previously took about four hours has been reduced to about two hours; (b) Distribution of summaries with respect to newly arrived articles perused on the WWW can be performed within 12 hours compared to one week in the past; (c) Retrieval of library date that previously required a trip to an actual library can now be performed from a user's terminal using a Web browser.
著者
遠藤 裕英 藤田 義之 上林彌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.2534-2543, 1997-12-15
被引用文献数
1

企業の技術情報サービス部門ではWWW (World Wide Web)のホームページから新製品情報や新技術情報を取得し,研究者に迅速に伝達することが重要な課題になってきた.そこで,あらかじめ登録したホームページに毎日アクセスし,新着記事のキーワードを電子メールで配信するプッシュ型の技術情報サービスを開発した.ホームページから新着記事を抽出する方式として,ホームページに現れるアンカーのURL (Universal Resource Locator)の一致を照合する「アンカーを手掛かりとした新着記事抽出方式」を採用した.また,新着記事のキーワードにはホットテキストとホットイメージ代替文を用いた.上記方式を実装したWWW新着記事収集・配信システムを開発し,著者らの研究所で運用した.新着記事のキーワードを毎日配信することにより迅速な技術情報サービスが実現できた.また,「アンカーを手掛かりとした新着記事抽出方式」によって新着記事だけを抽出できることと,画像の新着記事を抽出できることが分かった.An increasingly important topic in the technical information service divisions of large corporations is the obtaining of new product and technical information from homepages on the World Wide Web,and the quick transfer of this to researchers.In this regard,a"push"technical information service has been developed that accesses pre-registered homepages everyday,and delivers keywords of new articles by electronic mail.This system compares and checks the anchor URL(Universal Resource Locator)that appears on the homepages,using this anchor as the key to extracting new articles.Hot text and altenative text to hot image are also used in the keyword of new articles.A World Wide Web new article extraction and delivery system incorporating the said system has been developed,and is operating at our laboratories.By delivering keywords of new articles everyday,a fast technical information service has been achieved.In using this new article extraction system,it has been found that new articles can be extracted regardless of differences in location of articles or exression of articles,and that even keywords of new images can be extracted.
著者
斉藤 剛 穂坂 衛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.562-570, 1990-04-15
被引用文献数
2

先に報告した拡張2次有理Bezier曲線による曲線近似法の応用と拡張とを述べる.まず 毛筆などの滑らかな文字の輪郭線を近似することにより 文字の品質を保持したまま 自動的に 少ないセグメント数で高品位文字フォントが作成できることを示す.次いで 先の近似法を拡張し 線図形を記述する点の間の距離が一様でない場合も 指定された誤差範囲で 最少のセグメント数で近似できるようにする.これを用いて 既に直線近似されているフォントを その品位を上げ しかも少ない記憶量で曲線近似する方法を示す.最後に 近似曲線に2次有理Bezier曲線を用いた利点として 座標変換および領域埋めが容易かつ効率的に行えることを示す.
著者
佐藤 宏之 杉本 重雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.103-114, 2005-01-15

情報リソースのメタデータの記述に利用する共通のボキャブラリの定義やオントロジをWeb 上に置いて,複数のユーザや組織の間で参照するための研究が進められている.本論文は,個別のユーザや組織によって生成され分散環境上に公開された階層的知識をユーザ間で参照して活用する方法について述べる.ここではオブジェクト指向の考えを利用して,情報リソースをインスタンスとしたときのクラスに相当する概念を定義し,概念を階層化して表現した階層的知識を扱っている.セマンティックWeb のフレームワークを利用して,概念と結びついた情報リソースに関するメタデータを記述し,それをPeer-to-Peer 環境で流通させることによって,他者が保持する階層的知識の発見を支援する方式を提案する.さらに,ユーザの「関わった情報を整理して保持したい」というモチベーションを利用して,自らのために行った活動から他者とのインタラクションを発生させ階層的知識を拡張するプロセスモデルを提案する.このプロセスを支援するシステムを用いた実験では,ユーザは自らが生成した階層的知識に他者の概念を引用したり,他者の概念との間の関係付けを行ったりして,階層的知識を拡張することが可能であることを確認した.また,拡張の際に強く関わりあう3~6 人のユーザの階層的知識を結合することで,ユーザ間で平均約71% の概念の引用や関係付けが類似するなどの特徴を持った新たな階層的知識の生成が確認できた.Many studies that have the goal of providing multiple users and organizations with Webbased common vocabularies or ontologies for use in describing metadata on informational resources are now under way. This paper describes a method that facilitates reference to and utilization of concept hierarchies evolved by individual users or organizations and made available in distributed environments. In the method we use an object-oriented paradigm to define resource-related concepts as classes, the instances of which represent resources. We set up these classes in a hierarchy that represents the hierarchy of concepts. We use the Semantic Web as a framework for a way to define metadata that reflects linkages between concepts and resources in a way that makes it easy for users to find associated concept hierarchies held by other users in a peer-to-peer environment. Moreover, we propose a model for the evolution of concept hierarchies through interaction among users. This process takes advantage of the motivation of users to organize information which they find relevant. We implemented the system and ran an experiment which demonstrating that hierarchies created by using the system evolve as the users refer to or make connections with concept hierarchies held by other users. We also identify an interesting feature of new concept hierarchies produced by applying the evolutionary process to merge concept hierarchies initially produced by sets of three to six "strongly related" users: actions common to the users make up an average of 71% of all actions (connection and reference) that lead to the evolution of new hierarchies.
著者
駱琴 渡邉 豊英 吉田 雄二 稲垣 康善 齊藤 隆夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.1755-1767, 1990-12-15
被引用文献数
13

図書館業務に計算機を導入して より多様な情報サービス より効率的な業務処理を実現することが積極的に試みられているしかし 膨大な書誌情報をいかに効率よく計算機に入力するかが大きな課題となっているこのために 図書目録カードから目録情報を自動的に抽出し 各項目ごとに分類する方法が必要である本論文では 図書目録カードに付帯する様々な知識を活用して目録情報を自動的に分類・抽出するトップダウン的なアプローチを提案する本アプローチの基本的な戦略は書式構造 項目の並び関係 各項目に関する知識を段階的に かつ独立に適用することによって 仮説の生成・検証プロセスの下に項目を順次決定し 処理する今までに報告されている同課題の処理手法と比べて 本アプローチは処理対象の書式構造 論理構造をあらかじめ記述しておくことにより 種々の図書目録カードに対処できるすなわち 構造的な変形 記述形式に変化を有した図書目録カードにも対処でき 応用性 適応性 柔軟性に富んでいる
著者
三品 拓也 貞光 九月 山本 幹雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.2168-2176, 2004-09-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

本論文ではかな漢字変換誤り,特に同音異義語の選択誤りを対象とした日本語スペルチェックの方法を報告する.同音異義語誤りの判定には局所的な情報と大域的な情報の両者が必要であるが,本論文では大域的な情報をモデル化するために確率的LSAを用いることを提案・検討する.評価実験として,人為的に誤りを混入させたテストデータを用いた誤り検出・訂正実験を行った.局所的な情報のモデル化に従来からよく使われているngramモデルのみを利用した手法をベースラインとして比較した.ベースラインシステムでは再現率93.8%,適合率79.0%(F値85.8%)であった性能が,確率的LSAと組み合わせることにより再現率95.5%,適合率83.6%(F値89.2%)と改善された.We report a method of a Japanese spell checker for homophone errors which often occur in Japanese input process using a kana-kanji conversion system. Error detection methods need both of local and global information around a target word. In this paper, we propose and investigate use of a probabilistic LSA for modeling global information. We will show experimental results of performance to detect and correct homophone errors which are generated randomly. We use a simple method based on ngram models as a baseline system. Ngram models are common for Japanese spell checkers to model local information. In the results, although detection rates of the baseline system are 93.8% in recall, 79.0% in precision (85.8% in F-measure), those of a combination system of an ngram model and a probabilistic LSA increase to 95.5% in recall, 83.6% in precision (89.2% in F-measure).
著者
高林 哲 小松 弘幸 増井 俊之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.3698-3705, 2002-12-15
被引用文献数
1

インクリメンタル検索は情報検索やテキスト編集などの用途に広く用いられている.しかし,日本語の入力にはかな漢字変換という障壁があるため,キーボードから1文字入力するごとに検索を進めていくスムーズなインクリメンタル検索は従来,行うことができなかった.本論文では,指定された読みで始まる単語をコンパクトな正規表現に動的に展開してインクリメンタル検索を行う手法Migemoを提案する.我々はMigemoの実装および評価を行い,これまで困難であったスムーズな日本語のインクリメンタル検索が実現できることを示す.最後に各種の応用例を紹介する.Although incremental search is used in a wide range of tasks including information retrieval and text editing,conventional incremental search method cannot handle Japanese texts effectively because Japanese text input requires an indirect input method called Kana-Kanji conversion.In this paper,we introduce a new incremental search method called Migemo to realize the incremental search for Japanese texts.Migemo performs the incremental search by dynamically expanding the input pattern into a compact regular expression which represents all the possible words that match the input pattern.We show how Migemo realize the Japanese incremental search,which is hard to perform effectively so far, through the concrete implementation and evaluation.Various applications are also presented.
著者
丸山 宏 荻野 紫穂
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.1293-1299, 1994-07-15
被引用文献数
19

日本語の形態素解析は正規文法で行えるとされてきたが、今までの形態素解析システムでは、文法は接続表の形で記述されてきた。本論文では、文法を正規文法の生成規則として記述する形態素解析システムについて述ぺ、その利点と限界について議論する。
著者
中田 育男 山下 義行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.239-245, 1993-02-15
被引用文献数
1

加算や乗算などの演算子を含んだ通常の式の形をしたものの文法は、生成規則だけによる定義より、演算子順位を使った定義のほうが一般には分かりやすく、構文解析の効率もよい。LR構文解析の中で演算子順位を利用した構文解析をする方法はよく知られているが、再帰的下向き構文解析の中での方法は、演算子の順位を示す数値を手続きの引数として渡す方法があるようであるが、あまり報告されていない。本論文では、後者の方法として、再帰的下向き構文解析法における再帰的手続きの呼び出しの引数として、文法のLL(1)性などを調べるのに使われるFollow集合の部分集合を使う方法を提案する。これは、引数として演算子の順位を示す数値を渡す方法より一般的である。また、この部分集合は、再矯的下向き構文解析法でエラー処理のためによく使われる集合に近いものであり、この方法を再帰的下向き構文解析に導入するのは容易である。
著者
横矢 直和 マーチンD.レビン
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.944-953, 1989-08-15
被引用文献数
9

3次元物体のモデル化と認識を目的とした距離画像解析の初期段階において最も重要な処理はセグメンテーションである.本論文では この問題に対して領域およびエッジに基づくハイブリッドな手法を提案する.距離画像のセグメンテーションを 観察方向に不変な微分幾何学特徴が一様でかつ 距離と法線ベクトルに関する不連続点を含まないような表面領域への分割と定義する・この分割を実現するために まず汲初に初期分割としてルガウス曲率と平均曲率の符号の組合わせに基づく 座標のとり方と観察方向に不変な画素分類(曲率符号マップ)を行い 同時に 距離の不連続点(ジャンプエッジマップ)と法線ベクトルの不連続点(ルーフエッジマップ)を抽出する.そして最後に この3種類の初期分割マップを統・合することによって最終的な分割を得る・本手法は 距離画像を物体の部分表面に対応した領域に分割するとともに 各面を物体認識の観点から重要な観察方向不変な8つの基本曲面タイプに分類することもに また 本手法は多面体と自由曲面物体が混在するような複雑なシーンに対しても有効である.これは人工データとレーザレンジファインダから得られた実データを用いた実験によって確かめられた.
著者
小宮 常康 湯淺 太一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.2382-2391, 1994-11-15
被引用文献数
2

継続とはある時点以降の残りの計算を表したものである。Lispの一方言であるSchemeでは、継続を生成する関数が用意されており、継続をデータとして扱うことができる。これによって、非局所的脱出やコルーチンなどの様々な制御構造を実現することができる。一方、Scheme言語を並列化するためによく使用されるfuture構文は、プロセスの生成とそれらの間の同期を取るメカニズムを提供する。しかし、future構文に墓づく従来の並列Schemeの継続機能では、並列プログラムを記述するのに不十分であった。そこで本論文では、future構文に基づく並列環境に適合するように、Schemeの継続機能を拡張することを提案する。