著者
小林 享
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.511-516, 1996-08-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

本研究は、景観研究の分野にあっては未開拓の領域であった「飲食」の問題を、新たに景観的視点から解釈したものである。特に本論では次の点に重きを置き研究の概念的枠組みを示した。(1) 飲食と景観との関係を、歴史的に一定の評価が定まっている事象を手がかりに、時系列的な側面・飲食行為と景観体験とが関連するケースとその形態・飲食行為に際しての、空間に対する人の働きかけ、などの観点から整理し、飲食行為に際して働く空間や景観に関連する幾つかの原理をまとめる。(2) 飲食内容について、それが持つ記号性を、名物と場所の関わり・料理の中味と組立および名称・味覚印象および味覚表現と言葉、などの観点から整理し、景観的影響をまとめる。
著者
小林 享夫 佐藤 賢一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.138-148, 1976-04-25

本病菌 Cercospora spiraeicola Muller et Chupp は南米グアテマラでシジミバナ (Spiraea prunifolia) 上に記載されたもので, わが国ではテマリシモツケ (Physocarpus amurensis) およびケアメリカシモツケ (P. opulifolius) の葉を侵して著しい褐斑と早期落葉をおこす。人工接種ではシモツケ科の Spiraea 属, Stephanandra 属, Sorbaria 属などには発病しない。日本産の菌は Physocarpus 属にのみ病原性を有し Stiraea 属に陰性である点で若干の疑義は残るが, シジミバナの苗木かえられないこと, シモツケ科の植物上には本種以外に形態的に一致する種がないことから, やはり Cercospora spiraeicola に包括されるものと結論した。本病菌の分生胞子は病落葉上で脱落することなしに高い発芽率を保持したまま越冬し, これが翌春5〜6月に第一次伝染源となる。冬芽における潜伏越冬の可能性はほぼ否定された。感染から発病までの潜伏期間は春の低温期で約2か月, 夏〜初秋の高温期で約1か月である。本病菌の分生胞子は25〜30Cを発芽適温とし空気湿度98%以上で良好な発芽を示し, 92〜94%でも低率ながら発芽する。培地上では分生胞子の形成は認められず, ジャガイモ, 麦芽, 斉藤氏しょう油および Waksman 氏寒天培地上で良好な発育をする。菌そうは10〜35Cの間で生育し25〜30Cを適温とする。水素イオン濃度は, 極端な酸性側を除いては, 分生胞子の発芽および菌そうの発育にほとんど影響しない。
著者
松村 勝 児玉 麻亜子 下河辺 久陽 田代 恵太 西村 太郎 竹谷 園生 吉本 裕紀 林 享治 和田 義人 谷脇 智 明石 英俊 宗 宏伸 今村 鉄男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1362-1366, 2019-11-20

【ポイント】◆膀胱ヘルニアは膀胱壁の一部分,もしくはすべてが脱出する病態で,成人鼠径ヘルニアの1〜4%と報告されている.◆鼠径ヘルニア同様の症状に加え,頻尿・夜間尿・二段性排尿・血尿・排尿障害など,泌尿器系症状を有する場合は膀胱ヘルニアを疑う必要がある.◆術前画像検査により膀胱ヘルニアと診断することで,術中膀胱損傷を回避できるが,外鼠径ヘルニア/内鼠径ヘルニアともに膀胱滑脱の可能性があることを念頭に置き手術を行うことで膀胱損傷を回避しうる.*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。
著者
岸 國平 古川 聡子 小林 享夫 白石 俊昌 酒井 宏 田中 一嘉
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.43-49, 1998

堀による命名以後,アナモルフの記載等に疑問を残したまま放置されてきたネギ黒渋病について研究し,以下のような事実を明らかにした。<br>(1)群馬県下仁田町で,多年にわたり自家採種と連作が繰り返されてきた同町特産の下仁田ネギに,本病が毎年激しく発生することが認められた。(2)本病の発生は下仁田町を含む関東北部,東北,北海道地域で多く認められ,関東南部および関東以西の地域ではまれにしか認められなかった。(3)培養菌叢片およびほ場病斑の成熟子のう胞子を用いて行った接種実験において,いずれも自然発病と同様に病徴を再現した。(4)観察されたすべての自然発病および人工接種病斑においてテレオモルフは形成されたが,アナモルフは全く認められなかった。(5)本病菌の培地上の生育適温は約20°C,子のうの成熟適温は20∼25°C,子のう胞子の発芽管伸長の適温は20∼25°Cであり,生育とpHの関係はpH 4∼9で生育し,6∼9で最も良かった。
著者
福田 有希子 廣岡 裕吏 小野 剛 小林 享夫 夏秋 啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.130-138, 2008-09-16
被引用文献数
1

2005年5月,東京都小笠原村父島で施設栽培されていたカカオの果実に,初め茶褐色〜暗褐色の不整病斑を生じ,のちに拡大して腐敗症状を呈する病害が観察された。その罹病部からはLasiodiplodia属菌が高率に分離され,分離菌を用いた接種試験により原病徴が再現され接種菌が再分離された。分離菌は,暗褐色から黒色の分生子殻内に,隔壁の無い側糸と,後に完熟すると2胞,暗褐色で縦縞模様をもつ分生子を形成することから,Lasiodiplodia theobromae (Pat.) Griffon & Maubl.と同定した。さらにrDNA内のITS領域を用いた分子系統解析の結果からも同定を裏付ける結果を得た。小笠原で商業的に栽培されているパッションフルーツ,パパイア,バナナ,マンゴーを用いた宿主範囲の検討では,パパイア,バナナ,マンゴーにおいて病原性が確認された。これまでカカオにおける本病害は日本において報告がないため,Lasiodiplodia果実腐敗病(英名 : Lasiodiplodia pod rot)と命名したい。
著者
廣岡 裕吏 小林 享夫
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.69, 2007

<I>Cosmospora</I>属菌は,<I>Nectria</I>属<I>Dialonectria</I>亜属(Samuels et al. 1991)を1999年にRossmanらが属へ昇格させたHypocrea目,Nectria科の1属である.現在,本属菌のアナモルフは,5属が知られておりアナモルフとテレオモルフの一元化には至っていない.演者らは,日本で未記録の<I>Fusarium</I>アナモルフを持つ<I>Cosmospora</I>属菌2種を確認したので報告する.1. <I>Cosmospora</I> sp. (アナモルフ: <I>Fusarium</I> sp.): 東京都西多摩郡奥多摩町および宮城県宮城郡利府町の枯れ枝より採集,子のう殻は孔口部に短い付属糸を持ち薄いオレンジ色で,子のう胞子は表面に小疣があり,大きさ8-12 × 4-5μmである.アナモルフはSNA(暗黒下)上でポリフィアリディックの分生子形成細胞から鎌形で末端に脚胞があり,1-3隔壁を持つ大きさ22-46 × 2.5-3μmの分生子(大分生子)を豊富に形成した.無隔壁で紡錘形などの特徴を持つ小型の分生子(小分生子)は形成されない.本菌は両世代ともこれまで記録が無く新種と考えられる.2. <I>Cosmospora</I> <I>pseudoflavoviridis</I> (Lowen & Samuels) Rossman & Samuels (アナモルフ: <I>Fusarium</I> sp.): 宮城県宮城郡利府町の落枝より採集,子のう殻は孔口部に付属糸を持ち赤色で,子のう胞子は表面に疣があり,大きさ10-20 × 5-8μmである.アナモルフはSNA(BLB照射下)上でモノフィアリディックの分生子形成細胞から鎌形で末端に脚胞があり,1-5隔壁を持つ大きさ10-57 × 2.5-5μmの大分生子と短い棍棒形から楕円形で大きさ3-20 × 2-4μmの小分生子を豊富に形成した.また,長さ52-135μmの分生子柄を立ち上げた.本菌のアナモルフは,これまで<I>Fusarium</I> cf. <I>melanochlorum</I> Casp. と記録されていたが,極端に長い分生子柄を立ち上げるため新種と考えられる.
著者
林 享 草薙 健太 水上 拓也 松井 健
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.217_3, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、スポーツ選手の競技力向上を目的として、体力や技術のトレーニングに加えて、精神面のトレーニングとしてのイメージトレーニングが注目されている。最近では、水泳界において、小型防水ビデオカメラを用いることで水中でも主観的な映像からバーチャルリアリティー映像(VR映像)を体験することが可能になり、競泳選手の新しいイメージトレーニングの手法としてVR映像が使用できる可能性が考えられる。以 上のことから、本研究の目的は、競泳選手におけるVR映像が、最大努力泳に及ぼす影響を明らかにすることとした。本実験には、鍛錬された男性競泳選手11名が参加した。被験者はVR映像視聴(VR)とVR映像視聴しない(コントロール)試技を行い、VR試行では視聴直後に100m自由形全力泳を行った。測定項目は、100m泳タイムおよび乳酸値であった。実験の結果、100m泳タイムはVRがコントロール条件より速くなる傾向がみられ、レベルが低い選手ほどタイムの改善が顕著であった。また、乳酸においては、最大値がVRにおいて高くなる傾向にあり、最大値から全力泳後10分後までの減少量も、VRがコントロール条件に比べて有意に大きかった(p<0.05)。
著者
岸 國平 古川 聡子 小林 享夫 白石 俊昌 酒井 宏 田中 一嘉
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.43-49, 1998-02-25
被引用文献数
1

堀による命名以後, アナモルフの記載等に疑問を残したまま放置されてきたネギ黒渋病について研究し, 以下のような事実を明らかにした。(1) 群馬県下仁田町で, 多年にわたり自家採種と連作が繰り返されてきた同町特産の下仁田ネギに, 本病が毎年激しく発生することが認められた。(2) 本病の発生は下仁田町を含む関東北部,東北,北海道地域で多く認められ, 関東南部および関東以西の地域ではまれにしか認められなかった。(3) 培養菌叢片およびほ場病斑の成熟子のう胞子を用いて行った接種実験において, いずれも自然発病と同様に病徴を再現した。(4) 観察されたすべての自然発病および人工接種病斑においてテレオモルフは形成されたが, アナモルフは全く認められなかった。(5) 本病菌の培地上の生育適温は約20℃, 子のうの成熟適温は20〜25℃, 子のう胞子の発芽管伸長の適温は20〜25℃であり, 生育とpHの関係はpH4〜9で生育し, 6〜9で最も良かった。
著者
小林 享夫 高橋 幸吉
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, 2001-08-25
被引用文献数
1
著者
小林 享夫 高橋 幸吉
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-20, 2002-03-31
参考文献数
20

関東地方の茨城・埼玉・千葉の各県において1997年以降ナツツバキに未記録の斑点性病害の発生が見られ、特に2000年にはヒメシャラも含めて激しい発生と落葉被害が起こった。病斑は褐色小円斑から拡大し、周囲は紅色に呈色し、間もなく落葉する。病斑裏面が白色微粉状の分生子柄と分生子塊に覆われる。菌叢磨砕液または分生子浮遊液の噴霧によりナツツバキ、ヒメシャラとも無傷葉に多数の病斑を形成、分生子の形成と落葉が起きた。Stewartia属では未記録の病気であり、病徴から紅斑病と命名した。病原菌は新種と思われ、 Ramularia属の概念に定説はないが、とりあえずRamulana sp.として、解明を待って記載したい。
著者
小林 享夫 佐々木 克彦 真宮 靖治
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.p184-193, 1975-06
被引用文献数
2

マツ健全木の幹からPestalotia, Papularia, Trichodermaが, 枝からPestalotiaとRhizosphaeraが, 健全苗木の茎枝からRhizosphaera, Pestalotia, Cladosporiumが検出され, 材中における糸状菌の潜在が示唆された。線虫の加害によりマツが異常・枯死を起こすと樹体内の糸状菌相は急激に変化し, 枝幹上部にはCeratocystis, Diplodia, Macrophomaが, 幹下部の辺材部にはVerticicladiellaが優占し, 細菌も一時的に異常に増加する。健全木の糸状菌の中ではPestalotiaとRhizosphaeraが線虫増殖に好適でマツ樹体内で線虫の食餌の一つとして役立ちうることが示された。マツが異常を起こしてのちの材中での線虫の増殖にはCeratocystisとDiplodiaが好適である。Ceratosystisは線虫とマツノマダラカミキリ両者の共存関係にもう一つ加わり三者で共存関係を形成することが示唆された。晩秋から早春に異常枯死を起こすマツからはマツノザイセンチュウは検出されず, 材中から糸状菌Amylostereumが優占的に検出され, キパチ類との関連性やマツへの加害性など, 線虫によらない枯損原因の一つとして検討の必要性が示された。
著者
小林 享夫 佐々木 克彦 真宮 靖治
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.136-145, 1974-04
被引用文献数
4

マツノザイセンチュウの生活環の中で, 糸状菌のかかわり合う程度とその役割を明らかにするため, 幾つかの分離・培養実験を行った。えられた結果は次のとおりである。1)マツノザイセンチュウがマツ樹冠の後食枝に侵入してから翌春マツノマダラカミキリによって運び出されるまでの間の, いろいろな時期に検出される糸状菌相には, それぞれ特徴が認められた。2)マツノザイセンチュウの侵入場所である健全木樹冠の枝の後食部では, Ceratocystis, Pestalotia, Alternaria, Cladosporium, Rhizosphaera, Colletotrichumが主として検出され, 針葉に葉枯性の病気を起す菌類がかなりの頻度を占めることと3)4)で高い検出率を示すVerticicladiellaが全く検出されないことが特徴的である。3)マツが枯れたあと線虫の生息場所である幹の材中では, RhizosphaeraやColletotrichum等の葉枯性病菌は検出されず, Ceratocystis, Pestalotia, Alternariaに加えてVerticicladiella, Diplodia, Fusariumが主な糸状菌となる。またTrichodermaやPenicilliumによる汚染もかなり認められる。4)マツノザイセンチュウが集中してくるマツノマダラカミキリ蛹室壁面からは, Ceratocystis, Verticicladiellaが主として検出され, とくに前者は蛹室壁の表面に多量の子のう殻を形成, しばしば黒色じゅうたん状を呈する。カミキリ幼虫の不在の孔道や蛹室ではTrichodermaの汚染の多い傾向がある。5)線虫の伝播者である羽化脱出したカミキリ成虫体からは, Ceratocystis, Aliernaria, Pestalotia, Diplodiaが主として検出され, とくにCeratocystisはマツノザイセンチュウと同様に, もっぱらこのカミキリによってマツからマツへと伝播されるものと思われる。6)これらの各種糸状菌のうち, Diplodia, Pestalotia, Ceratocystis, Verticicladiella, Fusariumの菌そう上で, 線虫は菌糸を食餌として良く増殖する。これに反して, Trichoderma, Cephalosporium, Alternariaの菌そう上では, 線虫は全くあるいはほとんど増殖せず, これらの菌糸を餌として利用できない。7)マツの材組織を円板あるいはおが屑にして殺菌し線虫を接種したが線虫は全く増殖できなかった。これらの実験結果から, マツが樹脂浸出の停止を起してからの樹体内におけるマツノザイセンチュウの増殖に際しては, 樹体内にまん延繁殖した糸状菌を食餌として利用しているものと推測される。Ceratocysits, Pestalotia, Diplodia, Verticicladiella, Fusarium等が線虫の増殖に好適な糸状菌であり, 線虫は材中でこれらの菌類を選択することなく餌として利用するのであろう。逆にTrichodermaやCephalosporiumが優占した材中では, 線虫の増殖はほとんど行われないものと考えられる。
著者
小林 享夫 岡本 崇
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.89-104, 2003-12-30
被引用文献数
1

本報告は1998年8月および2000年3月に東京都小笠原村母島において,著者の1人岡本により採集された28点の植物病害標本上に認められた,植物寄生菌類の同定結果とそれらに関する若干の菌学的補遺について述べたものである。すなわち16科19属19種の植物上に22種の菌類と未同定2属の菌類による28種類の病害が観察された。これらのうちハチジョウススキ紫眼斑病菌Ascochyta miscanthi, マルバツユクサ斑点病菌Cercospora japonica, リュウケツジュ赤斑病菌Microsphaeropsis boninensis, シマギョクシンカ褐斑病菌Mycosphaerella tarennicola, およびヘクソカズラ灰褐斑病菌Phyllosticta boninensisの5種はそれぞれ新種として発表した。また日本新産種としてホウライショウ灰色葉枯病菌Fusicoccum vagans(Dothiorellaより転属処理),シュロガヤツリ灰色葉枯病菌Ascohyta papyricola, ムニンセンニンソウ褐斑病菌Ascochyta vitalbae, グアバ・モモタマナペスタロチア病菌Pestalotiopsis toxica, マンゴー灰色葉枯病菌Phomopsis mangiferae, パパイアホモプシス葉枯病菌Phomopsis papayae, マンゴー褐色葉枯病菌Phyllosticta anacardiacearumの7種を記録した。そのほか小笠原未記録種としてColeosporoum eupaederiae(ヘクソカズラさび病菌,種名変更),Colletotrichum capsici(パッションフルーツ炭疽病菌),Fusicoccum aesculi(キュウリ褐色葉枯病菌),Pestalotiopsis adusta(ヘクソカズラペスタロチア病菌),Pseudocercospora paederiicola(ヘクソカズラ角斑病菌),Pseudocercosporella oxalidis(ムラサキカタバミ褐斑病),Septoria pastinacina(パッションフルーツ円斑病菌,種名変更)の7種が加えられた。上記の菌類を加えて小笠原産の植物寄生菌は約170種となる。
著者
出川 洋介 勝山 輝男 田中 徳久 山岡 裕一 細矢 剛 佐久間 大輔 廣瀬 大 升屋 勇人 大坪 奏 城川 四郎 小林 享夫 原田 幸雄 松本 淳 勝本 謙 稲葉 重樹 佐藤 豊三 川上 新一 WALTER Gams
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

労力と時間を要すために研究が遅れてきた菌類のインベントリー調査を、博物館を介して専門研究者と市民とを繋ぐ3者連携体制を構築して実施した。多様な世代の70名以上の市民により5千点を超す標本が収蔵された10年に及ぶ事前調査を踏まえ、約50種の菌類を選定し、研究者の指導のもとに市民が正確な記載、図版を作成し菌類誌を刊行、デジタルデータを公表した。本研究事例は今後の生物相調査の推進に有効な指針を示すと期待される。
著者
小林 享夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.85-"94-5", 1976

屋久島はその多雨と高い山があるという気候的地理的特徴によって植物相の変化にとんでいる。それに伴って植物寄生菌相もまた, 北方系, 南方系の要素が混在し, 地理誌的に興味深い。屋久島からは今まで約60属140種の樹木類寄生菌類が知られるが, 1975年7月の調査において新たに約20属30種を追加できた。これらの全貌については別報(KOBAYASHI, 1976)の予定であるが, ここにはその中から新種と考えられる8種について病徴と形態の記載を行なった。以下その種名とともに, 主に病徴から名づけられた病名を挙げて新病害として登録する。 1. Ascochyta yakushimensis, KOBAYASHI, sp. nov. ホソバタブ白斑病菌 2. Hypoderma insularis KOBAYASHI, sp. nov. ツガ葉ふるい病菌 3. Mycosphaerella cleyerae KOBAYASHI, sp. nov. サカキ円(まる)斑病菌 4. Plagiosphaera quercicola KOBAYASHI, sp. nov. 5. Plagiostigme neolitseae KOBAYASHI, sp. nov. イヌガシ黒点円星(まるほし)病菌 6. Plectosphaera actinodaphneae KOBAYASHI, sp. nov. バリバリノキ褐斑病菌 7. Trematospharia yakushimensis KOBAYASHI, sp. nov. (不完全世代 Hendersonula yakushimensis) カンザブロウノキ黒点病菌) 8. Vestergrenia daphniphylli KOBAYASHI, sp. nov. ヒメユズリハ褐紋病菌