著者
近藤 智善 広西 昌也
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.629-633, 2000-04-10

振戦は安静時振戦,姿勢時振戦,企図振戦,動作時振戦に区別される.小脳性協調運動障害の現れと解される動作時振戦や代謝異常による振戦を除いて,小脳歯状核・赤核・視床を結ぶ経路のどこかの障害で振戦のリズムが発生し,振戦の性状の違いは筋トーヌスの差によるとの説がある.パーキンソン病の振戦と本態性振戦に対する薬物治療以外は特異的な内服療法はなく,視床Vim核の定位的破壊術の適用が考慮される症例がある.
著者
佐藤 文俊 森本 玲 岩倉 芳倫 小野 美澄 松田 謙 祢津 昌広 尾股 慧 工藤 正孝 伊藤 貞嘉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.886-894, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
12

原発性アルドステロン症は臓器障害の可能性の高さと頻度の多さからスクリーニングの重要性が提唱され,血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比を用いて疑う.低カリウム血症を伴う(ARB・ACE阻害薬の内服患者では正常低値も),比較的若年者,血圧コントロール不良,グレードII(160/100 mmHg)以上の高血圧患者等は当然診断対象だが,特に手術で治癒が可能な腺腫病変は早期診断・治療が望まれる.薬物治療ではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を含んだ十分な降圧を行うことが肝要である.
著者
山村 昌弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.894-898, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
森 俊平 太田 耕造 嶋内 亜希子 中條 和志 木村 時久
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.2250-2252, 2003-11-10

症例は57歳,男性.意識消失発作,脱力を主訴に受診.平成5年の食道癌根治術以降,食事摂取量が減少すると共に日本酒を多く摂るようになり,来院時著明な低Na, K血症を認めた.ビールを多飲し,食事を摂取しない場合,高度の低Na血症を示す症例はBeer Potomaniaとして知られている<sup>7)</sup>.日本酒はビールと同様に電解質に乏しく,長期の飲酒と食事摂取量低下により同様の病態が生じ得ることを考察した.
著者
佐久間 博也 廣田 卓男 村松 学 宗 友厚
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.662-667, 2006-04-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
6

Apparent mineralocorticoid excess症候群 (AME) は, アルドステロンは低いにもかかわらず, 低K・低レニン性高血圧や代謝性アルカローシスなど, あたかも原発性アルドステロン症を思わせる徴候をきたす先天性疾患である. コルチゾールをコーチゾンに代謝不活化する酵素である11βHSDタイプ2の異常により, ミネラルコルチコイドレセプター防御機構が破綻し, コルチゾールがミネラルコルチコイドとして働くために起きることが判明した.
著者
津田 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.1049-1055, 2018-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),間質性肺炎等の非がん性呼吸器疾患では,増悪を繰り返すたびに機能が低下,死に向かうモデルであり,がん疾患と比べて予後の予測が難しい.また,増悪時に救命のための治療が行われていることが多く,どこから緩和ケアを開始するのか判断が難しい.従って,増悪での入院の際には,個人の生き方を尊重できるよう,インフォームド・コンセントをもとに,これからの医療のあり方を患者の意思として確認しておくことが必要である.包括的呼吸リハビリテーションは,終末期に向かう人々のケアも包括しており,在宅酸素療法施行までには,呼吸リハプログラムの導入が望まれる.海外では,最終末期の呼吸困難に対してオピオイド使用が推奨されているが,本邦では,鎮咳以外の保険適用が認められていない.
著者
松本 光司 吉川 裕之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2456-2464, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5

ヒトパピローマウイルス(HPV;human papillomavirus)は現在90以上の型が分離されているが,HPVの型によって感染部位と生じる疾患が異なる.子宮頸癌の90%以上からHPV DNAが検出され,我が国ではHPV16,18,31,33,35,52,58型の7タイプがとくにハイリスクである.海外ではワクチンがすでに市販されており,ワクチンによる感染予防が現実のものとなってきた.

2 0 0 0 OA 3.ワクチン

著者
加藤 達夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.2841-2844, 2002-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3
著者
岡田 洋右 田中 健一 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.758-764, 2022-04-10 (Released:2023-04-10)
参考文献数
8

骨粗鬆症の予防と治療の目的は,骨折を予防し骨格の健康を保って,生活機能とQOL(quality of life)を維持することである.そのためには,種々の骨粗鬆症治療薬から個々の症例において,症例背景や作用機序を考慮して薬剤選択をするべきであり,骨密度増加・骨折予防効果のエビデンスのみならず,アドヒアランス,副作用,薬価も念頭においた治療方針を立てる必要があり,長期的な視点に立ち個々の患者に適した薬剤を選択することが重要である.

2 0 0 0 OA 1.めまいとは

著者
森若 文雄 田代 邦雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.505-511, 1995-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

「めまい」は日常診療でよく遭遇する症状の一つであるが,訴えられている「めまい」には種々の症状が含まれる.自己または周囲が回転するめまい(回転性めまい, vertigo)と動揺感を主体とするめまい感(浮動性めまい, dizziness)がある.めまいの分類は一般的に前庭性めまい,非前庭性めまいに大別される.おのおのの代表的疾患を概説し, Ménière病,前庭神経炎,良性発作性頭位めまいの診断基準も紹介した.
著者
梅原 久範 岡崎 和一 川 茂幸 高橋 裕樹 後藤 浩 松井 祥子 石坂 信和 赤水 尚史 佐藤 康晴 川野 充弘 厚生労働省難治性疾患等政策研究事業IgG4関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究班 IgG4関連疾患包括診断基準改訂ワーキンググループ
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.962-969, 2021-05-10 (Released:2022-05-10)
参考文献数
31
被引用文献数
3

IgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)は,Mikulicz病,自己免疫疾患,間質性腎炎,前立腺炎,後腹膜線維症等多彩な疾患を含む病態で,今世紀に本邦から発信された興味深い疾患である.厚生労働省のIgG4関連疾患研究班は,2011年に世界で初めての診断基準であるIgG4関連疾患包括診断基準を発表した.これにより,この新疾患は広く世界に受け入れられ,世界中から多くの報告がなされた.しかし,実臨床においては,生検組織が得られない組織があること,血清IgG4(immunoglobulin G4)値や組織中IgG4陽性細胞数のカットオフ値に対する感度・特異度等の問題が生じてきた.そのため,厚生労働省IgG4関連疾患研究班は,IgG4関連疾患包括診断基準2011を改訂した,2020年 改訂 IgG4関連疾患包括診断基準を提唱する.改訂基準は,1)臨床的・放射線学的診断,2)血清学的診断,3)病理学的診断の3項目からなる.さらに,改訂された病理学的診断基準は,従来の2項目に加え,花筵様線維化と閉塞性静脈炎を含めた3項目から構成される.
著者
大石 醒悟
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.2, pp.240-247, 2020-02-10 (Released:2021-02-10)
参考文献数
25

患者及び家族の苦痛へ介入し,QOL(quality of life)向上を図るアプローチである緩和ケアは,本邦において,がん領域で先行して進められてきたが,慢性の進行性疾患である心不全でもそのニーズは存在し,提供されるべき医療である.本稿では,心不全の緩和ケアの概念及びその実践における主たる課題である,意思決定支援及び症状緩和の方法論に関する現状を述べる.
著者
佐藤 誠
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.1059-1065, 2020-06-10 (Released:2021-06-10)
参考文献数
12

日常臨床で遭遇する睡眠時無呼吸症候群患者の大多数は閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)である. 本邦では,中等症以上の成人OSA有病者数(各国の人口から換算)が900万人も存在すると推測する報告が2019年発表されたが,治療の恩恵を受けているOSA患者数は50万人にも達していない.肥満や日中傾眠がなければ,他疾患発症の背景にOSAの存在があることを疑わないのではないかと思うが,本邦のOSA患者の4割は肥満ではなく,約半数は日中傾眠を感じていないのである.肥満・日中傾眠の有無にかかわらず,検査を行うべきである.OSAの基本症状は“いびき”である.「“いびき”をかくと言われませんか?無呼吸の検査をしてみませんか?」と問うことからOSA診療が始まる.
著者
清水 栄司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.2311-2316, 2022-11-10 (Released:2023-11-10)
参考文献数
10

エビデンスに基づいた精神療法である認知行動療法は,これまでうつ病や不安症のような精神疾患に用いられてきた.より簡便な低強度の認知行動療法では,ワークブックやデジタル・セラピューティックスとしてのアプリの形で患者に提供することが可能であり,禁煙外来だけでなく,プライマリケアで通常みられる肥満症,糖尿病,肝疾患,慢性疼痛などの内科診療でも大いに活用できる可能性があるので,本稿で紹介する.
著者
湧上 聖 今村 義典 平 敏裕 山崎 富浩 渡嘉敷 崇 江頭 有朋 末永 英文 前原 愛和 上地 和美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2466-2468, 1999-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
5

当院に入院していた経腸栄養患者76人中42人が銅欠乏の状態であった.血清銅値が1~27μg/dlの患者8人に対して,ピュアココア30~45g/日を経腸栄養剤に混注し, 1~2カ月使用した. 8例中2例は嘔吐や下痢のため中断し, 1例は途中で輸血を行った.残りの5例は血清銅が12→101μg/dl,ヘモグロビンが10.9→11.9g/dl,白血球が5380→7600と改善がみられた.ココアが銅欠乏症に有効であることがわかった.
著者
中岡 秀男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1553-1563, 1960-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

異なった体位において肺の換気動態がいかなる差異を示すかについて,肺圧縮率(肺compliance)と機械的抵抗を各体位において測定して,観察し,起坐呼吸の発生機構を追求する一助とした.健常者,肺疾患々者および心疾患々者の3群について坐位,右側臥位,左側臥位および背臥位において測定した結果は,いずれの疾患群も坐位でcompliance最も大,機械的抵抗最も小であつた.臥位への体位変換によるcomplianceの低下度は各疾患群に大差がみられなかったが,機械的抵抗は,肺疾患群でその増加が最も大であり,しかも左側に比し右側臥位における方が,また心疾患群では右側に比し左側臥位の方がより大なる傾向がみられる.これらの結果と,心不全患者に最も強く現われる起坐呼吸ならびにしばしば右側偏側臥呼吸(trepopnea)のみられる事実とを関連させて発生機構について檢討した.
著者
志水 英明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.957-964, 2022-05-10 (Released:2023-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

・血液ガスを測定しなくてもNa―Clで酸塩基平衡異常が推測できる. ・Na―Cl<36 代謝性アシドーシス,Na―Cl>36 代謝性アルカローシスを疑う. ・Na―Cl≒36でも酸塩基平衡異常がある. ・重症疾患(乳酸アシドーシス,ケトアシドーシス,呼吸不全)では血液ガス測定を行う.