著者
山内 康宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.2059-2066, 2018-10-10 (Released:2019-10-10)
参考文献数
10
被引用文献数
5

気管支喘息の有症率及び有病率はそれぞれ約10%及び5%であり,小児から高齢者まで全ての年齢層で発症する.喘息診療の進歩・普及に伴い,良好な喘息コントロールが得られる症例も多くなり,喘息増悪に伴う入院や喘息死も減少している一方で,難治性の重症喘息や回避すべき喘息死は依然存在する.特に高齢者においては,有症率が高く,喘息死の割合が多い.今後の喘息診療のさらなる進歩と充実化,そして,その普及が重要である.
著者
神﨑 恒一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.2461-2468, 2018-12-10 (Released:2019-12-10)
参考文献数
8

加齢に伴って認知機能は低下する.これは神経細胞の萎縮・脱落によって起こり,病理学的に老人斑(senile plaque:SP)や神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT)等として観察される.特にNFTの広がりは臨床症状を反映する.Alzheimer病(Alzheimer’s disease:AD)はSPとNFTが一定以上の広がりをもって観察されるのに対し,SPを伴わないNFT沈着タイプは神経原線維変化型老年期認知症(senile dementia of the neurofibrillary tangle type:SD-NFT)と呼ばれ,ADに比べて進行が緩徐である.加齢に伴う認知機能の低下,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI),認知症の鑑別は難しく,症例に応じて,必要なモダリティを用いて診断しているのが現状である.
著者
岡田 定
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1220-1225, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
9

鉄欠乏性貧血の治療ではまず診断を確認する.診断特異的な所見は,小球性貧血,血清鉄低値ではなくフェリチン低値(<12ng/ml),総鉄結合能高値(≥360μg/dl)である.治療は経口鉄剤を第一選択とする.鉄剤の副作用の消化器症状は,インクレミン®が最も少ない.貧血が消失しても,フェリチンの正常化(貯蔵鉄の正常化)までさらに3~4カ月間鉄剤を継続する.鉄剤中止後も貧血の再発がないかをチェックする.
著者
平田 純生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.826-833, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
10

診断し,処方箋を書く医師は,薬物動態・相互作用について必ずしも得意なわけではない.それを補うためには,これからの薬剤師は「調剤し服薬指導をする人」から「薬物適正使用を推進する人」に変わっていく必要がある.それによって,①腎機能低下患者の中毒性副作用の未然防止,②適切な服薬指導による腎機能悪化・心血管合併症の防止,③腎毒性薬物による薬剤性腎障害の防止について,医師との緊密な協力によって成し遂げなければならない.
著者
柴田 護 鈴木 則宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1634-1640, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
6

薬物乱用頭痛は日常臨床で稀ならず遭遇する疾患であり,鎮痛薬を服用している慢性頭痛患者を診察する際には,服用回数や服用量の詳細な聴取が必要である.診断には画像診断による器質性疾患の除外を慎重に行う.起因薬剤の中止により頭痛は軽快するか薬物乱用前のパターンに戻る.治療に際しては起因薬剤中止後の初期に起こる反跳頭痛への対処法や再度薬物乱用に陥らせないための方策を知っておくことが肝要である.最近の動向としてトリプタンによる薬物乱用頭痛の増加が問題になっている.
著者
太田 樹 内田 俊也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.906-916, 2015-05-10 (Released:2016-05-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

水電解質異常は,高齢化,薬剤の増加,原疾患と合併症および治療法の多様化とともに,日常臨床において遭遇する機会が増加している.中でも,水・ナトリウム(Na)代謝異常は頻度が高く,様々な疾患や病態に関連し,患者の生活の質や予後に直接影響する.脱水,低Na血症,高Na血症のいずれについても必要とされる基礎知識を再確認し,病態生理を理解して適切かつ迅速に診断と治療を行わなければならない.
著者
岡田 千春 宗田 良
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.2153-2158, 2004-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

化学物質過敏症は微量な化学物質に反応して多彩な症状を呈する疾患群と考えられているが,病態も不明な部分が多く診断基準が確立されたとは言い難い.そこで,診断目的で環境クリーンルームにおいて微量の化学物質の負荷テストを行い61.1%の陽性症例を認めた.また,客観的指標として負荷テスト前後のSuperoxide desmutase (SOD)活性の変化や脳内酸素状態の変化が有用である可能性がある.
著者
水澤 英洋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1783-1801, 2015-09-10 (Released:2016-09-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1
著者
坂本 信夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1540-1543, 1989-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
13
著者
長谷部 浩平 金城 紀与史 大西 富文 岸田 直樹 金城 光代 芹澤 良幹 松井 和生 西垂水 和隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.1075-1077, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8

16歳,男性.モルディブから帰国後7日目に高熱と下痢を生じた.肝機能異常と血小板減少を認め,渡航歴から旅行者感染症を考えた.末梢血スメアでマラリア原虫を認めず,腸チフスとデング熱の可能性を考え抗菌薬を使用の上,国立感染症研究所に依頼しデングウイルス3型遺伝子を検出した.その後皮膚点状出血や凝固時間延長が出現し,デング出血熱の診断基準を満たした.支持療法で改善し入院7日目で退院した.渡航歴の確認が重要と考えた.
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.1463-1468, 2019-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

Narrative based medicine(NBM)は,1998年に英国のGreenhalgh T,Hurwitz Bらによって提唱された医学/医療の概念であり,evidence based medicine(EBM)を補完する概念として一定の関心を集めてきた.本邦では,EBMとNBMは「患者中心の医療を実現するための車の両輪」と理解されている.近年,医療構造の急激な変化に伴い,改めてNBMの重要性が注目されている.また,2000年にCharon Aによって米国で開始された医学教育のムーブメントであるnarrative medicine(NM)は,医療者に必要な物語能力を涵養する教育法として,本邦の医学教育にも取り入れられつつある.本稿では,医療におけるナラティブ・アプローチとしてのNBMとNMの歴史・変遷を概観すると共に,現代の医療,特に地域包括医療,多職種連携ならびに医療人教育等の分野における最新の動向を加えて紹介したい.
著者
久堀 保 梶 龍兒
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.623-628, 1998-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチーは慢性の経過をとる運動知覚性ニューロパチーの一群で,近位部優位の末梢神経系有髄線維の障害による.診断は,臨床的・病理学的所見や脳脊髄液所見より行われるが,特に電気生理学的所見が重要である.治療は,副腎皮質ステロイドホルモン療法, azathioprine・cyclophosphamideなどの免疫抑制療法,血漿分離療法が一般的であるが,最近免疫グロブリン療法が注目されている.
著者
掛屋 弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2268-2274, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2

ステロイドは,感染免疫を担当する白血球の血行動態やその機能に影響する.特にCD4陽性T細胞を減少させ,細胞内寄生菌や真菌,ウイルスによる日和見感染症を発症させる.また,炎症部位や感染巣への好中球の遊走能や貪食能も低下させるため,細菌感染症の発症にも注意が必要である.そのリスクは,ステロイドの投与量が多いほど,投与期間が長いほど増加するが,リスクを定量的に評価することは難しい.そのため,投与開始後には,慎重に経過を観察し,適切な感染症予防や診断・治療を行うことが患者の予後を左右する.
著者
佐野 統
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.2888-2901, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

NSAIDsは関節リウマチ(RA)治療において,早期から疼痛緩和のため補助的に使用される.関節破壊抑制作用はないが,ADL(activities of daily living)およびQOL(quality of life)を改善・維持させる.抗リウマチ薬や生物学的製剤などの効果が発現するまでの橋渡し,DMARDsの効果が不十分な場合の補助薬として使用される.疾患活動性が抑えられれば,長期連用はできるだけ避け,減量,中止することが大切である.消化管障害,腎障害,心血管障害などの多彩な副作用が存在する.COX-2阻害薬は消化管障害が有意に少ない.NSAIDsの特徴,薬物相互作用などを勘案して症例に応じた適切な薬剤を選択する.
著者
滝川 一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.991-997, 2015-05-10 (Released:2016-05-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年,薬の副作用は社会的にも注目されており,中でも肝障害は劇症化して死に至る場合もある.薬物性肝障害(drug-induced liver injury:DILI)の診断には薬物投与と肝障害の推移との関連と除外診断が重要であるが,診断基準としては,日本消化器関連学会週間(JDDW-Japan)2004のワークショップで提案されたものが現在広く用いられている.これは,診断時のALT値とALP値から肝障害のタイプ分類をした後,8項目のスコアを計算し,総スコア5点以上については可能性が高い,3,4点については可能性あり,2点以下については可能性が低いとの判定を行うものである.薬物性肝障害の治療は,肝細胞障害型ではグリチルリチン注射薬やウルソデオキシコール酸経口投与が行われることが多いが,きちんとしたエビデンスはないのが現状である.胆汁うっ滞型では,ウルソデオキシコール酸,プレドニンゾロン,フェノバルビタールが投与される.劇症化例では血液透析と持続的血液濾過透析を行い,無効の場合は肝移植が唯一の救命法になる.
著者
住田 圭一 乳原 善文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2631-2638, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
14

リウマチ・膠原病疾患の治療においては,ステロイドや免疫抑制薬に加え,近年,抗TNF-α抗体や抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤が積極的に導入されはじめ,飛躍的な治療効果が得られている一方,免疫不全状態を背景とした日和見感染症の発生頻度の増加が問題となっている.今後も,リウマチ・膠原病診療において新規薬剤による治療成績の向上が期待されるが,それと同時に各種病原体による日和見感染症へも注意する必要がある.
著者
島袋 充生 山川 研 益崎 裕章 佐田 政隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.983-988, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

遊離脂肪酸はエネルギー基質であると同時にさまざまなシグナル分子の基質でもあり,インスリン作用,インスリン合成・分泌に影響を与える.肥満症にともなう過剰な遊離脂肪酸は,耐糖能を悪化させる.遊離脂肪酸によるインスリン作用の障害を(広義の)脂肪毒性,インスリン分泌能に及ぼす悪影響を膵β細胞脂肪毒性(狭義の脂肪毒性)と呼ぶ.最近,脂肪組織以外の臓器に蓄積する脂肪(異所性脂肪)の動態に注目が集まっており,各臓器で何らかの病的意義を有する可能性がある.
著者
成田 美和子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1375-1382, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

貧血は臨床的に遭遇する最も多い病態の1つである.重篤な造血器疾患の可能性もあるため,他系統の血球減少を伴う場合は速やかな診断が必要であるが,頻度的には他の病態に由来する場合が圧倒的に高い.ここでは一般検査項目から見た貧血の診断方法についてまとめた.