著者
川上 和義
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.2307-2313, 2015-11-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
12

肺炎球菌は厚い莢膜を持つ細胞外増殖細菌であり,好中球が主要な貪食殺菌細胞である.補体の活性化を阻害するため,莢膜多糖に対する抗体がオプソニンとして重要である.莢膜多糖は胸腺非依存性抗原であり,メモリーB細胞を形成しないが,IgMからIgG2へのクラススイッチは起こり,インターフェロンγが関与するとされている.本稿では,肺炎球菌肺炎の病態の理解のために,本菌に対する免疫応答機構について概説する.
著者
光武 範吏 山下 俊一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.786-791, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

広島・長崎での原爆被爆者やチェルノブイリ原発事故後の疫学調査などより,外部被曝のみならず放射性ヨードによる内部被曝によるものと考えられる晩発性甲状腺癌が誘発される事が確認された.発癌リスクには線量依存性があり,被爆時の年齢と強い逆相関性が認められる.特に低年齢,5~10歳未満では顕著であり,この時期の被曝を避ける事がもっとも重要である.近年の分子生物学の進歩により,放射線誘発癌の分子メカニズムも次第に明らかになりつつある.

11 0 0 0 OA 13.梅毒

著者
柳原 保武 柳原 格
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.2983-2989, 2002-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
13
著者
朝倉 均 本間 照 成澤 林太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1066-1071, 1996-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7

続発性吸収不良症候群のうち,本邦でみられる代表的疾患であるA型胃炎,胃切除後症候群, Crohn病,全身性疾患に伴う腸病変(アミロイドーシス, PSS, α鎖病)および糖質吸収不全に伴う下痢などの病態について解説した.続発性吸収不良症候群は糖質,脂質,蛋白質,ビタミンB12,鉄,水・電解質,胆汁酸などの消化吸収不全を伴っているので,それがもたらす徴候は多岐にわたるので,患者をよく見ることが大事である.
著者
伴 信太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2673-2680, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日本の医師国家試験は,認知領域の試験としては信頼性,透明性,公平性,効率性の高い試験となっているが,技能,態度を測定できておらず,妥当性に欠ける.又法的に見ても医師法第九条を満足していない.国家試験は卒前教育にも強い影響を与えており,早急に臨床実習に積極的に取り組んだ学生ほど合格し易くなるような設計をすべきである.また,改革のためにはその成果を検証しながら進めることが不可欠であり,常設の国家試験センターの設置を構想すべきである.
著者
奥野 英雄 多屋 馨子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.782-787, 2015-04-10 (Released:2016-04-10)
参考文献数
10

麻疹ウイルスは感染力が強く,わずかな感受性者を見つけて感染伝播する.我が国では国をあげた麻疹排除への取り組みが奏功し,患者報告数も減少傾向であり,日本国内の土着株である遺伝子型D5は2010年5月を最後に検出されなくなった.しかし,海外で感染した輸入例を発端とした小規模のアウトブレイクの報告はいまだにあり,医療機関を受診した麻疹患者から,医療関係者や周りの患者へ感染が伝播した報告も見られる.麻疹には有効なワクチンが存在するが,特異的な治療法はなく,感染が拡大してしまってから対処できることは限定的である.麻疹の感染対策には,感染が発覚してから対処するよりも,麻疹の特徴を知ったうえで,平時から備えておくことが重要である.
著者
岡本 光佑 金藤 公人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1365-1372, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
6

45歳,男性.3年前よりエソメプラゾール20 mgを内服中であった.後頸部痛と両手の攣り(つり)を主訴に救急搬送され,著明な電解質異常(K 1.7 mEq/l,Ca 9.1 mg/dl,Mg 1.0 mg/dl)を認めた.各電解質の補正と共に低Mg血症の原因をプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)と疑い,中止した.長期PPI内服で低Mg血症を,二次的に低K血症,低Ca血症も来たし得る.

10 0 0 0 OA II.橋本脳症

著者
米田 誠 松永 晶子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1550-1554, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

橋本脳症の精神・神経症状(脳症)は多彩であるが,臨床的特徴を知ることで診断できる.橋本脳症は,急性脳症,慢性精神病ならびに小脳失調等の病型をとる.鑑別としては,粘液水腫性脳症,脳炎,認知症,脊髄小脳変性症が挙げられる.血清の抗NAE(anti-NH2 terminal of alpha-enolase)抗体の特異度は90%と高いが,感度は約50%程度である.脳波の基礎律動の徐波化や脳SPECT(single photon emission computed tomography)の血流低下が高頻度にみられる.多くの患者はステロイドが奏効する.橋本脳症を念頭に置き,日常診療に潜む患者を見逃さないことが肝要である.
著者
小泉 俊三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2441-2449, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
7
被引用文献数
5

Choosing Wiselyキャンペーンは,米国内科専門医機構財団の主導で2012年に発足した.米欧で同時発表された「新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章」(Medical Professionalism in the New Millennium:A Physician Charter)(2002)を実践に移すべく,全米の臨床系専門学会に対して“再考すべき(無駄な)医療行為”をそれぞれ5つずつリストアップすることを求めたところ,大部分の専門学会が根拠文献とともにこれに応じたことで大きく注目された.キャンペーンとしては,「賢明な選択」を合言葉に,患者にとって最も望ましい医療について“医療職と患者との対話を促進する”ことを目指し,患者向けの説明資料や診療場面の動画を数多く提供している.2014年開催の国際円卓会議を機にこの機運は全世界に広まり,Choosing Wisely Internationalとしての本格的な活動が始まっている.これまでevidence-practice gapといえば,実施すべき医療が実施されていないことを指していたが,このChoosing Wiselyキャンペーンが,臨床的有用性についてのevidenceなしに実施されている過剰な医療に着目したことは,EBM(evidence-based medicine,根拠に基づく医療)の今日的展開という意味でも,また,医療技術評価論の立場からするlow-value care(低価値医療)への警鐘としても,特筆に値する.

10 0 0 0 OA 2.鉄と発癌

著者
大竹 孝明 生田 克哉 高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1277-1281, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
16

鉄は生体反応に必須の金属元素であるが,過剰状態では自由鉄分画が増加し活性酸素種産生を介して細胞毒性,DNA損傷ひいては発癌を誘導する.鉄は遺伝性ヘモクロマトーシスだけでなく,C型慢性肝炎の肝癌発生機序にも関与している.これに対し瀉血療法が発癌抑制効果をあげている.さらに鉄はアスベストによる胸膜中皮腫,子宮内膜症による卵巣癌の発症にも関与していることが示唆されてきている.
著者
宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.262-268, 2018-02-10 (Released:2019-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
5 5
著者
木村 暁夫 犬塚 貴
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1564-1570, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
14

傍腫瘍性自己免疫性脳炎は,腫瘍の遠隔効果として発症する脳炎・脳症である.髄液検査や画像検査で異常を認めないこともあり,しばしば診断に難渋し治療開始が遅れることも少なくない.また,様々な精神・神経症状の出現が腫瘍の発見に先立つことも多く,常に腫瘍の合併を念頭に置き,診療を進める必要がある.時に,神経と腫瘍に共通する抗原を認識する特異的な自己抗体が,神経細胞内もしくは細胞膜・細胞外抗原に対する自己抗体として検出されることがあり,診断マーカーとして重要である.また,抗体と背景腫瘍の間には一定の傾向がみられることから,腫瘍マーカーとしても重要である.合併腫瘍に対する治療が自己免疫性脳炎の治療としても優先される.
著者
吉田 正樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2801-2807, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
22

ノロウイルスによる胃腸炎は,通常12~48時間の潜伏期の後に,下痢,嘔吐などの症状で急激に発症する.多くは1~3日で後遺症もなく軽快する.迅速検査キットであるイムノクロマト法(IC法)は,臨床診断の補助的な検査として利用され,感染拡大防止に使用される.ノロウイルスは感染力が非常に強いウイルスであり,糞便や吐物より感染するために,接触感染予防策や飛沫感染予防策による対応が必要である.汚染された環境からの感染も報告されており,加熱処理や次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が勧められている.
著者
倉恒 弘彦 近藤 一博 生田 和良 山西 弘一 渡辺 恭良 木谷 照夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.2431-2437, 2001-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

慢性疲労症候群とは,原因不明の激しい全身倦怠感と共に微熱,頭痛,リンパ節腫脹,脱力感,関節痛,思考力の低下,抑うつ症状,睡眠異常などが続くため,健全な社会生活が送れなくなるという病気である.化学的,生物学的,社会心理的なストレスが誘因となって引き起こされた神経・内分泌・免疫系の変調に基づく病態と思われるが,潜伏感染ウイルスの再活性化やサイトカインの産生異常などが深くかかわっている.
著者
大谷 藤郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.159-162, 2002-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4
著者
西岡 紘治 田中 敏郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.2440-2448, 2014-10-10 (Released:2015-10-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は原因不明の慢性炎症性疾患であり,50歳以上の中高年に発症する.肩や殿部に両側性の疼痛,朝のこわばりが出現し,赤沈,CRPなどの炎症マーカーが上昇するが,リウマトイド因子(rheumatoid factor:RF),抗核抗体などは上昇しない.多くの場合,PMRは少量ステロイド薬で劇的に改善するが,約20%で巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)を合併する.また関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA),脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA),感染症,悪性腫瘍などの鑑別を要する.PMRは「疑わなければ診断できない」疾患であり,高齢社会において一般臨床医が知っておかなければならない疾患でもある.本項では,2012年に改定されたPMRの分類基準,鑑別疾患,合併症,治療法について概説する.

9 0 0 0 OA II.線維筋痛症

著者
村上 正人 金 外淑
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2077-2087, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

線維筋痛症は,臨床検査や画像検査で異常所見が認められないため,自覚症状から診断せざるを得ないリウマチ性疾患の代表的な疾患であり,慢性疼痛のモデル的疾患でもある.中高年の女性に多く発症し,全身の筋肉や腱等の結合組織の痛みを中心に多彩な心身の愁訴を有するために,十分な鑑別診断が必要であるが,近年注目され始めた「機能性身体症候群」の概念が線維筋痛症の病態を理解するうえで有用である.リウマチ性疾患のなかでの線維筋痛症の位置付けや機能性身体症候群との関わり,診断と治療について論ずる.
著者
後藤 俊介
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.872-877, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
19

プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)は,さまざまな上部消化管疾患の治療成績の大幅な向上に寄与した薬剤であり,現在,臨床現場で広く使用されている.ただ近年,プロトンポンプ阻害薬と腎機能低下の関連が報告されており,本稿では,それらについて概説する.プロトンポンプ阻害薬は,稀に急性間質性腎炎を起こす可能性があることが報告されている.また,大規模な観察研究において,腎機能低下との関連の可能性も指摘されている.ただし,そのリスクがプロトンポンプ阻害薬の有するベネフィットを上回るものかどうかは定かではなく,漫然と使用している場合には,必要性を見直す必要があると考えられる.
著者
谷川 久一 瀬田 勝雄 町井 彰 伊藤 進
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.414-419, 1961-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11

28才女子例.数カ月にわたりノリを1~2帖毎日食べていたところ,重症の柑皮症となつた.血清ビリルビンその他の肝機能は正常なるも,血清カロチン448γ/dlと上昇し,ノリ中に含まれるカロチンによる柑皮症と診断す.柑皮症の発来は,カロチンを含む食品の多食といつた外因のみならず,個体側の内因も重要と考える.多汗体質,甲状腺機能低下などは,同症の発来を助けるもので,同患者にも自律神経失調によると思われる多汗体質および甲状腺機能低下おあつたのは興味深い.本症の皮膚黄染のメカニズムは,組織学的検討から,いつたん汗とともに出たカロチンが外から体表を染めるものと思われる.肝生検によりカロチンと同定し得た顆粒が肝細胞内,特にその周辺部に多くみられ,電子顕微鏡でみるとこの顆粒は滑面小胞体とゴルジー体と形態学上密接に関連していると思われる所見であつた.