著者
今泉 文寿 早川 裕弌 經隆 悠 堀田 紀文
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

土石流はその速度,移動距離,破壊力から,甚大な災害を引き起こす土砂移動現象である。土石流の発生・流下特性は土石流の材料となりうる不安定土砂の土石流発生域における貯留状況の影響を受けていると考えられるが,土石流の発生域はアクセスが困難であり,また危険性が伴うことからほとんど明らかになっていない。そこで静岡県北部の大谷崩において,定期的な地上レーザースキャンやUAV撮影,現地観測によって不安定土砂の貯留状況が土石流の発生・流下特性へ及ぼす影響について調べた。その結果,土石流の発生位置は不安定土砂の堆積状況,および支流から土石流渓流への水の供給の影響を受けていることがわかった。土石流発生域においては渓床勾配が急なことから不飽和土石流が重要な流動形態である。さらに堆積土砂量が15,000m3を超えるときには不飽和土石流が,10,000 m3を下回るときには飽和土石流が多く発生した。また,流動形態は流下とともに変化をすることが明らかになった。このように,土石流の発生・流下特性は発生域における不安定土砂の堆積状況の影響を受け,さらに流下・堆積域で観測される土石流と流下形態が異なることがあることが明らかになった。
著者
杉岡 誠 溝口 勝
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

東京電力福島第一原子力発電所の事故で全村民が避難していた飯舘村では平成2017年3月に一部地域を除き避難指示が解除されたが、生活環境の未整備、環境中の放射能への不安から、実際に飯舘村に定住している人は1割以下である。しかしながら、飯舘村役場は農家の希望に応じた4つの農業プラン(農地を守る農業、生きがい農業、なりわい農業、新たな農業)を提案し、「農」の再生に向けて努力している。本発表では、そうした取組を紹介する。
著者
河村 聡人 早川 尚志 玉澤 晴史 磯部 洋明 柴田 一成
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

太陽は人類が最も研究している恒星ではありますが、その知見は限られた時間スケールでの観測に基づいています。太陽活動の科学的な記録は、黒点に関して約400年、エネルギーの解放を伴う突発的増光現象であるフレアに関して約160年にわたります。一方で、人々は何千年にもわたって太陽活動の痕跡を観察し記録してきました。その現象を今日の我々はオーロラと呼んでいます。我々の研究の第一のゴールは、科学的な黒点観測と歴史資料に残るオーロラの記録とを組み合わせ、過去400年の太陽活動を解明することです。我々が知りたい物理変数はフレアの強度で、現代の太陽観測に基づく統計からその強度を推定する手法を開発しました。この手法の鍵となるのは、フレア時にコロナ質量放出が起こったことを強く示唆する低緯度オーロラの観測です。黒点の大きさの科学的観測と低緯度オーロラ観測の歴史資料から、フレア強度を推定することができるようになりました。当ポスター発表では、歴史資料を用いた太陽物理学の将来性と課題を議論します。当ポスターを科学と歴史学のコラボレーションの成功の一例として提示します。
著者
神野 拓哉
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Cloud clusters show a wide variety of shape and size, and their spatial pattern is often taken up as a typical example of fractal. However, the methods of studying fractal are in an early stage of development. In this study, we conducted fractal analysis on the perimeter of tropical clouds using satellite observation and cloud-resolving simulation of sub-kilometer resolution. We evaluated fractal dimension as a function of spatial scale (transient fractal dimension) and quantified the characteristic spatial scale of the pattern from the scale where self-similarity breaks down. From the observational data from HIMAWARI-8, It is shown that the self-similarity of the cloud perimeter persists only in the spatial scale range from 2 km up to 30 km. The limit of the self-similarity is suggested to be the characteristic scale of the pattern formation of tropical clouds. The cloud-resolving simulation data with NICAM also shows finite-size self-similarity. However, the profile of the transient fractal dimension changed with integration time far more rapidly than HIMAWARI-8 observation, and it lost its self-similarity at the end of the 48-hour simulation. This process is suggested to reflect the increase of stratiform cloud in the upper-troposphere as an adjustment to the transition of spatial resolution.
著者
森田 直樹 安井 万奈 萩谷 宏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

NPO法人Science and Artでは幼児期からの理科離れ対策として、2016年以来幼稚園における自然科学教育を展開し、年少児から小学校2年生まで毎週9クラス(幼児60名・小学生8名)の自然科学教室を展開している。本研究発表では以下の3つのプログラムとその教育効果について紹介する。1・化石発掘体験2・鉱物万華鏡3・恐竜カルタ化石発掘体験では実物のアンモナイトを石膏と砂を混ぜた土台に埋め込み、子供達に割り箸とゴムハンマーで発掘の感覚を味わってもらう。この際、子供のレベルに応じて土台の硬さを調節することにより醍醐味が変わってくる。模擬的に発掘された化石にはラベルをつけて自分の標本として自分で管理させる。鉱物万華鏡では水晶(石英・紫・ピンク)やカンラン石のなどの色石のさざれ石を利用して万華鏡を作る。石の観察を行いながら、その起源や産地の話題へと話を発展させる。恐竜カルタでは通常のカルタ遊びを行いながら、カルタに出てきた恐竜や海棲爬虫類の標本(レプリカ・実物化石)を見せたり触ったりさせる。図鑑も多用してカルタに書いてある文字以上の情報を図鑑から得る方法を教える。本プログラムのフィードバックを紹介することで、いずれも幼児期から楽しみながら地学に触れることができるだけでなく、その後の興味を伸ばす要素も含んでおり、幼児期からの地学教育において画期的なプログラムであると提案したい。
著者
坂元 真舟 鎌田 瑞葉 野口 愛天
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

「弘前藩庁日記」からみた江戸時代の飢饉の要因研究の動機古文書の日付に添えられた天気に着目をして、一昨々年から江戸時代に記された4つの古文書を使って気象の分析をしてきました。今年は「弘前藩庁日記」を分析しました。「弘前藩庁日記」は、今の青森県にあった弘前藩が書き残した毎日の日記で、1661年から1868年までの日本で最古の公的な記録です。研究の目的過年度に調べた古文書のデータと合わせて、データベースを作ります。江戸時代の飢饉を起こした原因を探ります。研究の方法天気は現代の気象庁の判断に近づけて、雪>雨>曇>晴れと分類しました。ただし、24時間のうち、9割以上曇っていれば「曇り」、9割(21.6時間)未満であれば「晴れ」と、雲量を時間に換算して判断しました。天気以外の気象情報「雷」、「風」、「冷・涼」などの言葉も数えました。取得したデータは164年間で、58,781日でした。データ①1701年から1864年までの晴れと雨の出現率をみると、宝暦の飢饉の期間の晴れの出現率が急激に下がります。東北地方に冷害が発生した飢饉だと言われます。天保の飢饉の原因は大雨、洪水と、それに伴う冷夏だったと言われます。グラフのように雨の出現率が高く、日照時間が低下し飢饉につながったと考えられます。雪の出現率は1768年が最低で9.3%、最高は1706年の29.9%です。1706年には浅間山が噴火しています。 他の古文書との比較はデータ①-2のとおりでした。データ②1701年から1864年までの年間の雷の記録を調べました。1787年は天明の飢饉の年でデータ④からみても「やませ」の影響が見られることから、日本海低気圧とオホーツク海高気圧の影響が強かった年だと考えられます。データ③雷の季節ごとの割合を見ると、晴れの出現率が高い30年間の夏に「熱雷」が発生しています。天保の飢饉の30年は冬の雷の比率が高いので、シベリア寒気が優勢で冷たい空気が流れ込み雷が発生したと考えられます。データ④天明の飢饉のあった1776年から1789年の間に東よりの風、つまり、「やませ」と考えられる風の日数が多いです。「やませ」とは主に東北地方の太平洋側で春から6月〜8月の夏に吹く冷たく湿った東よりの風のことです。データ⑤弘前藩庁日記の6月から8月の夏の間の「冷たい」「涼しい」という記録を調べました。「冷」または「涼」と記されているのは1701年から1864年までの夏に459日ありました。1782年から1785年の間と1833年から1839年まで続いた天保の飢饉の期間に「冷たい」「涼しい」と書かれた日数が多いです。「寒い」という言葉は記録にありませんでした。天保の飢饉の原因は大雨、洪水と、それに伴う冷夏だったと言われ、グラフのように夏季の「冷たい」という記録が多く、冷夏を裏づけます。考察(1)享保の飢饉は西日本におけるウンカの発生と長雨であったと言われますが、青森ではこの影響が見られず、晴れの出現率は高いです。しかし、データ①から、宝暦の飢饉の期間だけは晴れの出現率が低下し、飢饉が発生したと考えられます。(2)データ②・④より、天明の飢饉の背景にはオホーツク海気団の影響で「やませ」が吹き、雷の発生数からみて寒冷前線が頻繁に通過した年でした。(3)データ①・③より、天保の飢饉の期間を含む30年が、雨の出現率が一番高く気温の低い時期だったと考えられます。特に冬はシベリア気団の影響を受けました。まとめ(1)享保の飢饉は西日本を中心とする飢饉だと言われ、30年間の晴れの出現率が高いことから、青森の気象の変動は少なかったと考えられます。(2)晴れの出現率が高い中で、宝暦の飢饉の5年間は日照時間の低下に加え、雷が多発していることから、上空に寒気が流入して、不安定な大気の日が多くなり飢饉につながりました。(3)天明の飢饉を含む期間はオホーツク海高気圧が発達して 「やませ」が発生し、夏季の気温が上がらなかったことが飢饉の原因だったと考えられます。(4)天保の飢饉を含む期間30年の雨の出現率が晴れの出現率を超えている。日照時間の低下で、気温も下がったことが飢饉を招きました。今後の課題 江戸時代の古文書、「盛岡藩家老席日記雑書」(岩手県)をデータ化して、東北地方の気象変動を調べ、今回の分析を裏づけます。
著者
王 宇晨 佐竹 健治 三反畑 修 前田 拓人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

The 2015 Torishima earthquake (M5.9) occurred at the Smith caldera, on May 2, 2015. It had a CLVD-type focal mechanism and generated larger tsunami waves compared to its seismic magnitude (Sandanbata et al., 2018). Therefore, it was regarded as a ‘volcanic tsunami earthquake’ – a tsunami earthquake with volcanic origin. The tsunami reached Hachijo Island, Boso Peninsula and Shikoku Island, and were recorded by tide gauges and ocean bottom pressure gauges (Kubota, 2018). Fukao et al. (2018) proposed an opening horizontal sill model to explain its origin. The abnormal mechanism makes it difficult to forecast tsunami from its seismic magnitude.Tsunami data assimilation forecasts the tsunami by assimilating offshore observed data into a numerical simulation, without the need of calculating the initial sea surface height at the source (Maeda et al., 2015). In the Nankai region, the Dense Oceanfloor Network System for Earthquakes and Tsunamis (DONET) records the water pressure and has real-time data transmission. Synthetic experiments showed that this observational system was able to forecast the waveforms at Shikoku Island by tsunami data assimilation approach (Wang et al., 2018). Here, we performed this method to retroactively forecast the tsunami of the 2015 Torishima earthquake. We assimilated the observations of 16 DONET stations and two ocean bottom gauges off Muroto. The tsunami waveforms at the tide gauges Tosashimizu and Kushimoto were forecasted, and compared with the actual records.The comparison between forecasted and observed waveforms at two tide gauges suggested that our method could forecast the tsunami amplitudes and arrival time accurately. The tsunami warning could be issued to local residents of Shikoku Island more than one hour before its arrival. Our method is merely based on offshore observations, and could be implemented for future tsunami warning systems.
著者
三反畑 修 綿田 辰吾 佐竹 健治
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Abnormal non-double-couple (NDC) earthquakes are sometimes observed near volcanic or geothermal areas [e.g. Shuler et al., 2013, JGR], some of which generate large tsunamis despite their moderate seismic magnitudes, M5-6. The Torishima earthquakes are ones of the few examples and were attributed to a large crustal uplift associated with some volcanic activity at a submarine caldera edifice on Izu-Bonin Ridge [Fukao et al., 2018, Sci. Adv.; Sandanbata et al., 2018, PAGEOPH]. This type of earthquakes therefore can be regarded as "volcanic tsunami earthquakes."Another series of volcanic tsunami earthquake were observed near the Curtis and Cheeseman Islands, parts of the Kermadec Islands, north of New Zealand, on 17 Feb 2009 and 8 Dec 2017 (UTC). Tsunamis were recorded at tide gauges and ocean bottom pressure gauges with a maximum amplitude of ~40 cm. The two earthquakes are remarkably similar in seismic magnitudes (M~6.0), focal mechanisms (dominant NDC components), centroid locations (gap of ~10 km) and observed tsunami waves.In order to investigate their tsunami sources, we numerically solved two-dimensional Boussinesq-like equations with the simulation code, JAGURS [Baba et al., 2015, PAGEOPH]. We first located their source region in the vicinity of the Curtis and Cheeseman Islands, by assuming Gaussian-shaped sea-surface uplifts at 9 locations. We then conducted the tsunami waveform inversion with Green’s functions computed from cosine-tapered uplift distributed around the islands. The estimated tsunami source has a large sea-surface uplift concentrated just over a bathymetric depression that is a characteristic structure of calderas. This suggests a large uplift on seafloor was caused by the earthquakes associated with a volcanic activity of the submarine caldera.Large uplift events called “resurgence” have been observed at calderas in nature and experiments, which are often attributed to reactivation of ring faults due to overpressure of a magma reservoir [e.g. Acocella et al., 2001, JVGR]. We modeled crustal deformation of a caldera with an interacted system of a ring-fault structure and a shallow sill-like magma reservoir [Liu et al., 2017, AGU Fall Meeting]. Our modeling suggests that the system can cause a large uplift concentrated just over the caldera. The uplift also reproduced tsunami waves similar to the observations, while the gap between seismic and tsunami magnitudes can be explained qualitatively. We therefore suggest that a ring-fault reactivation due to overpressure in a sill-like magma reservoir as a possible mechanism of the earthquakes and their resultant tsunamis.
著者
熊谷 英憲
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

地球惑星科学総合選出の代議員として、また、今後連合を個人としての学会活動の中心に位置づけていきたい立場から、連合が目指すべき1つの方向性として国内の地球科学コミュニティの活性化と多様化を通じた基盤の強化を図ること、そのための国内向けの活動の強化を提案する。そのために議論/考慮すべき点として以下を挙げる:1: 過度な国際化を志向しない2: 地方在住者や学協会に基盤を持たない会員が参加しやすい仕組みづくり3: 参加学協会個々で抱えている困難/課題に対する支援4: 連合体としての機能強化。1については、AGUとの連携が真に連合の活動強化となっているかを立ち止まって考えるべきであるとの認識からである。母国語での高度な議論が可能であるというメリットも今一度認識する必要がある。プロフェッショナル団体の会合としてはいささかの疑問がある近年のAGU秋季大会が連携の志向先として適切かどうか、ということでもある。2については1とも関連し、大会参加費の相次ぐ値上げの打開、それと表裏一体の参加登録料に依存した財政体質の改善を指摘したい。会員としては個々の学協会に支出する年会費さえ抑えたいのが人情である。学協会の背景を持たない代議員の活用が図られることとも関連しよう。3については学協会それぞれに課題が異なっているやに思われ、演者の限られた経験では概括的な議論は難しいと感じるものの、例えば、学会誌への査読付論文の確保が難しい団体は必ずしも小規模学協会のみとは限られないであろうことは考慮すべき要素の1つであるように思える。会員数減少はより普遍的な課題であるだろう。異なる視点ではあるが、日本学術会議により2019年2月14日に公表された提言「学協会に係る法人制度ー運用の見直し、改善等について」でも小規模学協会が活動しやすい条件整備が重要との指摘がなされている(主に法人運営に関する法整備の視点ではあるが)。4についても上述の提言にて、研究者コミュニティが社会の多様な要請に対応する際に重要な役割を果たしているとして、学協会連携組織体の顕著な活動に着目しつつ、事業運営の困難を打開する提案を行っている。これを踏まえ、「学術会議協力学術研究団体」としての要件に現在は個々の学協会が「論文等を掲載する機関誌を年1回継続して発行していること」が掲げられているところ、この緩和への期待に基づき、連合に加わっている学協会の機関誌発行を受託しいずれ統合して地球科学の基幹誌を発行していくことを提案したい。PEPSは高いインパクトを国際的に獲得することを志向しているが、これを補うものが必要ではないか、ということである。例えば、AAASによるScience誌の発行に倣うような地球科学総合誌が発行され、定着、成長していくならば、PEPSないしそのジャーナルが相応の影響力を持つこともあり得るかも知れない。であれば、N誌やS誌のような欧米の権威を借りての業績評価の風潮も打開されるだろう。
著者
廣野 哲朗 横山 友暉 金木 俊也 小笠原 宏 矢部 康男 松崎 琢也 山本 裕二 徳山 英一 Tullis C. Onstott Martin Ziegler Durrheim Ray Esterhuizen van Heerden Bennie Liebenberg The ICDP DSeis team
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Drilling into seismogenic zones of M2.0-M5.5 earthquakes in deep South Africa gold mines (DSeis Project) was undertaken in 2017–2018 near Orkney, South Africa, to understand principal mechanism of earthquakes nucleate and propagate. Drilling at two main holes, Hole A (817 m) and Hole B (700 m), was completed at the Moab Khotsong mine, and the latter hole penetrated the fault zone that slipped at the 2014 M5.5 earthquake. Fault-related material and its surrounding host rocks were successfully recovered from the hole, and the samples were analyzed in the Center for Advanced Marine Core Research, Kochi University, Japan. The main damaged zone is characterized by highly fragmented fault breccia with high amount of talc and amorphous material, which is likely to related to recent earthquake event. Nondestructive continuous measurements of physical properties (X-ray CT image, density, magnetic susceptibility, and natural gamma ray) are in progress. We will show the preliminary results about the characteristics of the M5.5 fault zone and its implication for generation of the M5.5 earthquake.
著者
林田 天 米田 光希 山本 美薫
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

⒈ 研究背景・目的日本は世界有数の火山大国である。火山の下にはマグマだまりが形成されているが、その位置を正確に知ることは難しい。そこで、本研究では、地震波形を使ってマグマの位置を推測するため、2段階に分けて検証を行う。まず、火山下を通った地震波がどんな影響を受けるのか明らかにしたのち、その結果を使ってマグマだまりの位置を推測する。今回は熊本県を中心とする九州地方に対象を絞った。2016年に熊本県で大規模な地震が起こったため、余震を含めた多くの地震データを手に入れることができる。また、九州地方の地震波は比較的震の浅いものが多いため、後に記す地震データの選定条件に一致しやすい。2.原理・仮説地震波には初期微動を引き起こすP波と主要動を引き起こすS波の2種類が存在する。P波は個体・液体・気体のすべての物質内を伝播していくが、てS波は固体中のみしか伝播することができない。そのことを考えると、液体であるマグマだまりを通過した地震波は、波形の位相が不明瞭になると考えられる。「波形の位相が不明瞭」というのは、P波とS波の境目がはっきりしないような形になっているもののことをさす。また、断層と垂直方向に進む地震波は波形の位相が明瞭になることが明らかにされている(本多,1954)。つまり、断層と垂直方向に進む地震波で火山を通るものの位相が不明瞭ならば、その地震波はマグマから何等かの影響を受けていると考えられる。しかし断層とおよそ45度方向に進む地震波ではマグマに関係なく不明瞭になることも知られている(本多,1954)ため、今回は区別が明瞭に出るはずの断層から垂直な方向に進む地震波に着目する。この仮説が正しければ、波形が不明瞭になっている地震波から、マグマだまりの位置や深さを推測することができる。2.研究内容 ⑴ 検証1:火山下を通った地震波がどんな影響を受けるのか明らかにする。 ・方法 ①気象庁HP内の「震度データベース検索」を使い、以下の条件を設定して研究に使用できる地震を探す。この時、九州地方の火山の分布を調べておく。・M3以上であること ・震源深さが30km以下であること・九州地方の陸地で発生した地震であること・震源地から観測点に地震波が到達するまでに、火山下を通過すること マグニチュードの制限は、規模が小さく波形の位相がもともと不明瞭になりやすい地震を選ばないようにするために設定した。震源深さについては、深さおよそ30kmの位置にはモホロビチッチ不連続面があり、その面を境に波の性質が変わってしまうと考えて検証データから省いた。 ②①で集めた地震について、気象庁HPからそれぞれの断層の動いた向きを調べ、断層の動きが比較的はっきりしているものだけを選ぶ。 ③「防災科学技術研究所Hi-net高感度地震観測網」から、⑴,⑵で選定された地震のイベント波形数値データをダウンロードする。 ④③で集められたデータを、WIN2という波形解析専用ソフトウェアを使って解析する。このソフトウェアを使うと、各観測点の波形・震源地情報・震源地と各観測点のマップを手に入れることができる。 ⑤各地震について、位相が不明瞭になっている地震波を選びだし、その観測点をマップにプロットする(図7)。 ⑥断層の方向と比較し、波形が不明瞭になることと火山の存在が関係するかについて考える。・研究結果・考察いくつかの地震で、断層に垂直な波線において、火山を通過する場合に位相が不明瞭になるという感触が得られた。本来ならば位相が明瞭になるはずの断層方向から垂直な波線で、逆のことが起きているということであるから、火山の下のマグマだまりによる影響があった可能性が高い。つまり、仮説通り、マグマを通る地震波は、位相が不明瞭になるということがいえる。この検証結果を使って次の検証を進めていく。⑵ 検証2:マグマだまりの位置を推測する ・方法① 地図ソフトGMTを使用して、北九州地方の白地図を作る。② 波形が不明瞭になった各観測点・震央の位置を、①の白地図にプロットして線で結ぶ。・結果・考察完成した地図を見るだけではマグマだまりの位置を明確にすることはできなかったが,波線が阿蘇山の付近で密度が高くなることは確認できた。5.今後の課題 ⑴ 検証1 データ数が少ないため、さらにデータ数を増やし結果をより強固なものにする。 また、発表の際結果を目に見えてわかる形にするための工夫が必要になる。⑵ 検証2検証1と同様、データ数が少ないためさらにデータを増やす。また、今の検証方法だとマグマの位置を検証することが困難なので、地震データの集め方やデータ処理の仕方を考え直す必要がある。
著者
河野 葉子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)は日本列島全体に大きな地殻変動を与え、各地の地震活動に大きな影響を与えている。本研究では、巨大地震の発生が想定される南海トラフのプレート境界遷移領域でのすべりに対して東北地方太平洋沖地震が及ぼす影響について調査した。 紀伊北部・中部・南部、四国東部・中部・西部の6地域において、東北地方太平洋沖地震前後におけるプレート境界遷移領域での地震モーメント解放率の変化を解析した。本研究に使用したデータは、2002年4月から2013年7月まで[Daiku et al.2018]および2013年8月から2017年2月まで[中本他,2018]の期間のうち長期的スロースリップイベント未発生時の深部低周波微動の大きさのデータである。深部低周波微動の大きさから地震モーメントへの換算には、[Daiku et al.2018]で報告されている換算率を用いる。東北地震太平洋沖地震前後の期間を対象として、ノンパラメトリックブートストラップ法を用いて、地震モーメント解放率の平均値や95%信頼区域を推定した。なお、東海地方は長期的スロースリップによる影響を受けている期間が長いため除外した。 東北地方太平洋沖地震前後におけるプレート境界遷移領域での地震モーメント解放率の平均値は、紀伊北部と四国西部では変化が無かった。四国東部・中部では地震後に平均値が大きく、紀伊南部では地震後に小さくなるものの有意な差ではなかった。紀伊中部では地震後に有意に平均値が小さくなった。さらに東北地方太平洋沖地震前の期間について調べたところ、紀伊中部・南部では平均値の有意な減少が認められた。 上記の結果より、東北地方太平洋沖地震前後における南海トラフのプレート境界遷移領域での地震モーメント解放率は紀伊中部を除いて有意な変化が無いことが分かる。紀伊中部においては東北地方太平洋沖地震前の期間でも東北地方太平洋沖地震前後と同様の変化が認められることから、東北地方太平洋沖地震前後の変化は東北地方太平洋沖地震とは関連していない可能性が高い。したがって、東北地方太平洋沖地震は地震モーメント解放率の変化を与えるような影響は及ぼさなかったと結論できる。これは、東北地方太平洋沖地震による応力変化が南海トラフにおいては地震発生に影響を及ぼすほど大きくないことを示した[Toda et al. 2013]の結果と整合的である。紀伊中部および東北地方太平洋沖地震前に紀伊南部に見られた地震モーメント解放率の有意な減少は、遷移領域での摩擦状態の変化を反映している可能性がある。
著者
高下 裕章 芦 寿一郎 朴 進午
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込み帯や造山帯のように側方からの圧縮により衝上断層が卓越し、短縮変形を受けた地質体を総称してFold-and-thrust beltと呼ぶ。Critical taper modelはfold-and-thrust beltの地形パラメータから断層の摩擦係数を知るために広く用いられてきた。沈み込み帯に対してこのCritical taper modelを適用した場合、単純な地形パラメータを用いてプレート境界断層における摩擦係数の推定が可能である。そのため、Critical taper modelは地震に関連する議論においても広く用いられてきた。ただし、Critical taper modelでは、計算に用いる地形データを取得する際、以下のような2つの問題点が指摘できる。1)反射法地震探査断面のデータが必要であるため、観測記録のある断面以外に Critical taper modelの適用ができない。2)反射法地震探査データを用いた深度断面処理において、プレート境界断層の深度が速度モデルに大きく依存し、プレート境界断層の傾斜角βの値に影響を与える。そのため正確な比較という点に関して信頼性が低い。そこで本研究は上述の問題点を改善するため、Critical taper modelに用いるパラメータを反射法地震探査断面ではなく、水深測量データからのみ得る新たな手法の開発を行った。反射法地震探査断面から得られるプレート境界断層の傾斜角βの代わりに、プレートが沈み込む前の海溝海側斜面の傾斜角β(bathymetry)を使用し、その計算結果から手法の妥当性の検証を行った。本研究では、南海トラフを対象領域として手法の妥当性の検証を行った。南海トラフでは海溝型巨大地震の基礎研究の重要性から反射法地震探査断面が多く取得されており、従来の Critical taper modelと本研究で新たに行う手法との比較が行い易いこと、地震波やGPSなど、様々な研究手法による観測が進んでいることから、その比較対象とするべき先行研究が豊富である。そのため、Critical taper modelでのデータ取得と、結果の解釈がほかの沈み込み帯より容易であることが期待される。本手法の妥当性の検証結果から、海底下の沈み込み帯にCritical taper modelを適用する場合、理論的に見過ごされてきた特徴があることが明らかになった。その性質とは、高い間隙水圧比がウェッジ全体で仮定される場合、有効摩擦係数の算出に際しβが結果に与える影響が非常に小さくなることである。そのため、水深測量データにおける海溝陸側斜面の傾斜αのみを用いて浅部プレート境界断層の摩擦分布を議論することが十分可能であることが示唆された。ただしその際、有効摩擦係数の算出誤差が20パーセント程度生じる点は注意が必要である。水深測量データは空間的に密に取得されたデータであるため、これにより海溝軸に沿った高密度な浅部プレート境界断層の摩擦分布を初めて算出することが可能となった。予察的な解釈として、本手法は地震活動によるセグメントが十分に検討されていない領域において、地震・津波防災に関して資する新たな手法だと考えられる。
著者
吉光 奈奈 前田 拓人 William Ellsworth
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

Stress drop is important parameter to understand earthquake source characteristics and to improve hazard assessment. Many studies use the spectral ratio method to measure the moment ratio and two corner frequencies by comparing theoretical and observed spectral ratio in the frequency domain and obtain the stress drop. Accurate stress drop estimates are difficult to make because it depends on the accuracy of the three parameters. The Markov Chain Monte Carlo (MCMC) method is effective to estimate high dimensional parameters. In this study, we evaluate the uncertainty of the estimation and trade-off among parameters from a statistical perspective.We analyzed five clusters of events near Cushing, Oklahoma, each containing a M 4+ event. Empirical Green’s function events used as the denominator all locate within 2 km of the target event. We analyzed 5.12 seconds of the time-aligned seismogram from twice the S wave arrival time. Spectral ratios between a large event (ML > 4) and small events were formed by stacking all stations to remove path effects. Then, analyzed spectral ratios between event pairs using the Metropolis-Hastings algorithm to estimate moment ratio and two corner frequencies for the Brune model. We updated the value of moment ratio and two corner frequencies with 300,000 iterations which first 100,000 calculations was ignored as burn-in.In most cases, the distribution of the sampling showed ellipsoidal shape in the 3D parameter space. We searched the axial direction of the sampling distribution by principal component analysis (PCA), and estimated loadings of the principal component and contribution rate. Some spectral ratio showed irregular shape from ideal shape because of small magnitude difference or contamination by noise. The percentage of the contribution rate indicates how well the sampling distribution is explained by each component. The contribution rate of the first principal component with irregular shape of the spectral ratio was lower than 80 % while it was higher than 80 % with normal shape of the spectral ratio. The loadings among three parameters and three principal components also showed different pattern in the case of normal shape and irregular shape of the spectral ratio. These different trend of the contribution rate and the loadings indicates different pattern of the sampling distribution of a spectral ratio that have irregular shape. Thus, the combination of MCMC and PCA analysis have a possibility that to automatically classify spectral ratios which have irregular shape and ideal shape.
著者
高坂 宥輝 日置 幸介
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

2011年東北沖地震を契機に、大地震の前兆が地球の超高層大気である電離圏の全電子数(Total Electron content、TEC)変化として直前に現れることが、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星の2周波マイクロ波の位相差から見いだされた(Heki, 2011)。その後の数多くの地震前後のTECデータの解析により観測事実は充実していったが(e.g. He & Heki, 2017)、原因となる物理過程に関しては未解明な部分が多い。この前兆の存在は、本格的な断層滑りが始まる前に地震の最終的なサイズがある程度決まっていることを示唆し、地震学的にも重要である。現在考えられている地震直前のTEC変化のシナリオは以下のようなものである。地震直前に断層を一方の端から侵食(弱化)する過程が起こる際に、微小な割目や食い違いが岩石中に生じる。そこで過酸化架橋と呼ばれる格子欠陥が切断されて生じた電子の空隙(正孔)が電子の移動とともに岩石中を移動し、互いの反発によって拡散した結果地表に蓄積する。蓄積した正孔は大気中に上向き電場を作り、地震断層が大きい場合電場は超高層大気に達する。電離圏内では磁力線に沿った電気抵抗が極めて小さいため、磁力線に沿って荷電粒子が移動してその方向の外部電場を打ち消す誘導電場が生じる。その過程で震源上空の電離圏下端の電子密度が上昇し、逆に高高度の電離圏では電子密度が減少する。この構造は電離圏トモグラフィーで推定した2015年Illapel地震直前の電子密度異常の3次元構造からも支持される(He and Heki, 2018)。本研究では地震直前TEC変化の物理過程の解明に向けて、地震直前直後のTEC変化を、前兆が認められた18の地震(Mw7.3-9.2)について比較し、それらの間のスケーリング則を議論する。またそれらをスタックしたTEC変化標準曲線を導出し、物理過程のヒントを探す。上述のシナリオから考えると、地震とともに応力が解放され、新たな食い違いや割れ目の発生が起こらなくなると、地表の正電荷蓄積も停止し、TEC異常の成長も頭打ちになるだろう。導出した標準曲線から、地震発生時から音波擾乱が生じる約十分後までの間は、予測どおりTECは増加せず、ほぼ一定で推移することが示唆された。またTEC異常の蓄積曲線は地域性を持つ可能性がある。陸域に対する海域の割合が大きい地域の地震では、電気伝導度の高い海水中の電荷拡散が速く、電荷が地表に蓄積しにくい。そのためTEC異常の成長も早期に定常状態になるだろう。逆に陸域では電荷の消散が遅く、地震まで継続してTEC異常が成長するかも知れない。TEC標準曲線と各々の地震におけるTEC変化曲線との形の比較から、一見かなり違って見える各地震の地震前TEC上昇曲線の形の差異は小さく、地域性はそれほど顕著ではないことが示唆された。
著者
種子 彰
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

今まで太陽系の起源の探究を帰納法や演繹法で行ってきたが,過去まで時間を遡れない為に,真理の探究は遅々として進まなかった. 理論は詳細な実験の結果だけを複数の結果を説明する事で法則を検証してきた.初期状態は不明で再現実験の不可能な起源仮説の検証は,現実に一度限りの進化は起きたので,現状と云う太陽系の惑星や特に地球や月の複数の特徴の全てを統一的に説明するAbductionと云う方法で検証できる。今までの月の起源仮説「ジャイアントインパクト仮説」はマントルだけの月をつくるシミュレーションであり,それ以外の月の特徴は一つも説明できなかった.アブダクションで云えばN=1の例証でしか無い、しかし,「マルチインパクト仮説」は,成分がマントルである月の起源だけでなく,月の軌道エネルギー(60・Re)や,月の偏芯(常に表面が地球を向く),月の海の起源,月の裏面に海が無い理由も説明できた.更に月の起源仮説でありながら,太陽系の他の特徴,小惑星帯の起源や分化した地球隕石の起源,地球の海(60%>,5km深さ)の起源,プレート境界の起源,プレートテクトニクスの起源,駆動力の起源,環太平洋孤児洋列島と背弧凹海盆の起源,プレート相互の重なりの起源,地軸傾斜の起源,ダイヤモンド鉱山の起源,バンアレン帯偏芯の起源,ティチス海の起源,地軸傾斜の起源,プレート移動方向急変の危険,生物種大絶滅の起源,木星大赤斑の起源,水星コアリッチの起源,冥王星の起源,アルプスとチベット高地の起源,大陸移動説の起源まで統一的に説明できる事で,アブダクションとして検証できたと云える.特に,アイソスタシーによる平均5kmの深海底形成と,アセノスフェアによるプレートのエアーホッケー状態は,慣性能率の偏芯による地球プレートの駆動力であり,CERRA断裂によるCERRAマントルのトレーン小惑星と成り,地球軌道との交点での衝突は,月の射出と地球マントル欠損であり,複数の海の起源であり,生物種大絶滅の起源でもある.地球マントルの亀裂はプレート境界の起源であり,環太平洋背弧凹海盆はプレート重なりの起源でもある.高緯度衝突は地軸傾斜の起源であり,南極大陸が地軸へ収まり不動と成る事が駆動力の検証でもある.太陽系(惑星・小惑星帯・地球・月)の起源を,一度限りの進化の複数(16)結果からアブダクションで検証する理論モデルを提案した.特に地球への衝突速度と角度(12.4km/s,36.4度)と月軌道エネルギー(60・Re)を示せたことは特筆に値する.ついでにフィーデングゾーンとボーデの法則も示せた.理論モデルとアブダクションの勝利である.S-CG61,U-08,S-SS12,P-PS06,P-PS07 にエントリーしました.口頭とポスター会場でお会いして議論して下さい.
著者
中島 涼輔 吉田 茂生
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Magnetohydrodynamic (MHD) waves in a thin layer on a rotating sphere with an imposed toroidal magnetic field are investigated. The system is often considered as a model of the stably stratified outermost Earth's outer core or the tachocline of the Sun. The stratification of the outermost core is suggested on the basis of seismological evidence (e.g. Helffrich and Kaneshima, 2010; Kaneshima, 2018) and interpretations of the geomagnetic variations with MHD waves (e.g. Braginsky, 1993; Buffett, 2014; Chulliat et al., 2015). In order to provide constraints on the obscure stratified layer by comparing with wavy variations in the geomagnetic field, we studied the linear waves of the two-dimensional MHD and the MHD shallow water system over a rotating sphere.We adopt an azimuthal equatorially antisymmetric field (BΦ(θ) = B0 sinθcosθ, where θ is colatitude, Φ is azimuth) as a background magnetic field. On the other hand, an equatorially symmetric field (BΦ(θ) = B0 sinθ) was assumed in Márquez-Artavia et al.(2017), whose results we replicated and reported in JpGU 2018.Compared with previous results, the dispersion diagrams obtained with the toroidal equatorially antisymmetric field show that some fast magnetic Rossby branches remain, while slow magnetic Rossby waves disappear. Besides, a continuous spectrum is found in the range where an azimuthal phase velocity is coincident with a local Alfvén velocity divided by sinθ. Similar continuous spectra are also seen in various physical situations, including inviscid shear flow (e.g. Case, 1960; Balmforth and Morrison, 1995; Iga, 2013) and plasma oscillations (e.g. Van Kampen, 1955; Case, 1959; Barston, 1964; Sedláček, 1971). The continuous spectra are accompanied by a singular eigenfunction, which is physically meaningful only when they are integrated over the continuous spectra. Its integrated solutions generally decay with time, which is referred to as phase mixing. Unlike exponentially damped discrete modes, this decaying is proportional to negative powers of time.In the case of the shallow water system with the antisymmetric field, discrete eigenvalues buried in the continuous spectrum is found, which include unstable modes. For the Earth-like parameters, polar trapped modes with decadal period and equatorial trapped Rossby waves with a few years period are found when the stratification is weak.
著者
古川 邦之 渡部 里々花 伊藤 季紗 小谷 沙織
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

マグマは冷却に伴い結晶化が進行する。形成される結晶の数やサイズ、形態は主に過冷却度に支配されている。天然の火成岩は様々な冷却履歴を経て形成されるので、結晶の産状は多様である。深成岩と火山岩の結晶組織の違いについては高等学校までに学習するが、実際の野外調査や顕微鏡観察では、さらに複雑な組織に出会うことになる。そのため、大学で地質学や岩石学を学ぶ学生は、より詳細な結晶形成過程を理解する必要がある。そこで私たちは、マグマ中における結晶化プロセスを直感的に理解できる簡単な実験を提案する。 実験には、甘味料であるエリスリトール(C4H10O4)を使用する。エリスリトールはカロリーゼロなので、ダイエット目的でよく使用される。エリスリトールの融点は121℃であるため、カセットコンロや家庭用ホットプレートなどで簡単に溶かすことができる。また液状のエリスリトールは比較的粘性が低いため、小さな過冷却度(高温)でも結晶が形成される。これは粘性の高い砂糖とは異なる点である。ガラス容器内で溶かしたエリスリトールを、様々な速度で冷却することで、多様な結晶の産状を作ることができる。容器やエリスリトールの量は任意で良いが、私たちは直径90mmのガラスシャーレに25gのエリスリトールを溶融させた。多様な冷却速度については、徐冷用ガラスマットやタオル、氷などを用いることで作り出した。その結果、過冷却度の上昇と共に、形成される結晶形態は自形、樹枝状、球晶と変化し、また結晶サイズは小さくなる傾向があった。球晶については大きな冷却速度が必要で、ガラスシャーレだと急冷により破損することが多い。そのため、スライドガラス上において、エリスリトールのメルトをカバーガラスで封入して冷却する方法の方が、表面積が大きくなり冷却速度が上がるので、容易に作ることができる。これらの結晶組織の特徴は、火成岩で観察されるものと類似している。特に、過冷却度が大きくなりやすい珪長質火山岩とはよく類似している。 また、赤外線放射温度計を用いて冷却中のメルト温度を測定することもできる。例えば、冷却速度の簡単な定量化もでき、今回の場合は冷却速度が概ね12℃/minを境に自形と樹枝状が変化し、40℃/minで樹枝状と球晶の変化が観察された。さらに、結晶化が進行すると潜熱の放出によりメルト温度が上昇に転じることも測定できる。結晶化に伴う昇温は、溶岩やマグマ溜まりのレオロジーにも重要であると考えられている。さらに顕微鏡により、リアルタイムで結晶成長を観察することもできる。 以上の実験を、地質学および岩石学などの実習教育に取り入れることで、結晶成長の直感的な理解が可能になると考えられる。結晶成長を理解した上で、野外や顕微鏡下での観察にのぞめば、それらの産状から冷却過程に関する制約を与えることでき、地質現象の正確な解釈に繋がると考えられる。
著者
辻原 諒 小木曽 哲 佐野 貴司 石橋 秀巳
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

箱根火山は首都圏から最も近く,カルデラ形成噴火を数回繰り返してきた活動的な火山のひとつである.箱根火山における最大規模の噴火は,約6万年前に発生した,箱根火山における最新のカルデラである強羅潜在カルデラを形成した噴火(VEI 6)である.この噴火はプリニー式噴火で開始し,続いて火砕流が発生した.プリニー式噴火による降下軽石(箱根東京軽石)は南関東の広域でみられ,火砕流は噴出源から約50km遠方まで到達した(笠間・山下,2008).この噴火の準備過程を詳細に検討することは,同規模の噴火が今後も起こるリスクを評価する上で非常に重要である.そこで本研究では,降下軽石と火砕流堆積物中の本質物質を対象に噴火準備過程を検討した. 本研究で用いた試料は,神奈川県足柄下郡箱根町芦之湯の谷底露頭から採取した.本質岩片として軽石とスコリアがみられ,軽石にはマフィックエンクレーブを持つものがみられた.本研究ではXRF(国立科学博物館)を用いた全岩主成分・微量元素組成分析を行い,偏光顕微鏡とSEM(京大理学部)を用いた組織解析と,EPMA(京大理学部)を用いた主成分化学組成分析を行った. 軽石は流紋岩からデイサイト(SiO2 =64-71wt.%)で,斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,チタン鉄鉱,燐灰石,橄欖石の斑晶が見られた.スコリアは安山岩(SiO2=58-60wt.%)で,斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,燐灰石,橄欖石の斑晶がみられた.マフィックエンクレーブは玄武岩から玄武岩質安山岩で(SiO2 ~52 wt.%),斜長石,磁鉄鉱,橄欖石の斑晶がみられた.ガラスと斑晶鉱物の化学組成から,斑晶鉱物と平衡共存するメルト組成が4種類存在することが示唆され,この噴火の直前のマグマだまりには組成的に異なる4種類のマグマが存在したことが考えられる.全岩化学組成はSiO2 ~67 wt.%で組成トレンドが異なり,SiO2 > ~67 wt.%の全岩化学組成トレンドと斜長石斑晶の組成累帯構造パターンから,噴火前のマグマは結晶分化作用を経験しており,SiO2 < ~67 wt.%の全岩化学組成トレンドと斜長石と橄欖石斑晶の組成累帯構造パターンから,噴火前のマグマはマグマ混合を経験していることが示唆される.Fe-Ti酸化物温度計と斜長石-メルト温度含水量計を用いると,噴火前のデイサイト質〜流紋岩質マグマの温度は820-880 ℃,含水量は4.2-7.2wt.%と見積られ,メルトが水に飽和していると仮定した場合,噴火前のマグマだまり最浅部の深さは5.5-10.5 kmと見積られる.橄欖石のFe-Mg拡散モデリングにより,最後のマグマ混合から噴火までの時間は30日-1年と見積られた. 以上より,次のような噴火準備過程を考察した.結晶分化したデイサイト質〜流紋岩質マグマが深さ≧5.5-10.5kmに存在し,そこに苦鉄質マグマが貫入・混合した.最後のマグマ混合から30日から1年程度経過後に噴火が開始した. 当時のマグマだまり最浅部の深さは,地球物理学的に見積られている現在のマグマだまりの深さ(~10 km: Yukutake et al., 2015) と概ね一致する.このマグマだまりが,今後“箱根東京軽石噴火”と同規模の噴火を起こす可能性を正確に評価するためには,“箱根東京軽石噴火”以降の噴火準備過程の変遷を明らかにする必要がある.
著者
種田 凌也 石橋 秀巳 安田 敦 外西 奈津美
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

Plagioclase-melt compositional relations sensitively depend on temperature, T, and water content, XW, of melt. Therefore, the relations are formulated as functions of T and XW and used as geothermohygrometer (e.g., Putirka, 2008). Plagioclase-melt equilibrium is postulated for applying the thermohygrometer models. However, validity of the assumption is unobvious for microlite crystallization driven by degassing and/or cooling during eruption. Can we apply the thermohygrometers to the plagioclase-melt pairs formed by dynamic crystallization? To examine the issue, the cooling crystallization experiments of the high-Al basaltic melt were carried out and textural and chemical analyses were performed the run samples.We used the high-Al basalt lava from Waianae, Hawaii Oahu as the starting material for the cooling crystallization experiments. This experiment was conducted using the 1atm fO2-controlled furnace at University of Hawaii at Manoa. After 3 hours pre-heating at 1180℃, ~30K higher than the liquidus, the samples were cooled at cooling rates, Rc, of 0.1, 0.3, 1, 3, and 10K/min, and then quenched in water at four target temperatures, Tq, of 1150, 1120, 1090, and 1060℃. We used FE-EPMA (JEOL-JXA-8530FPlus) and EPMA (JEOL8800R) at Earthquake Research Institute, University of Tokyo, for textural and chemical analyses of the run samples.As Rc and/or Tq increase, the abundance and size of plagioclase crystals decrease. As Rc increases, the shape of plagioclase changes from euhedral to dendritic. The Rc-dependent shape change is more obvious at lower Tq. Pyroxene crystallization was suppressed in the run samples coolied at higher Rc. In addition, melt boundary layers are observed around pyroxene in the samples cooled at 0.3-1K/min, quenched at 1090℃ and cooled at 0.3-3K/min, quenched at 1060℃, and around plagioclase in the samples cooled at >3K/min, quenched at <1120℃. Lower diffusivity of Al2O3 compared to those of FeO and MgO is responsible for lower threshold cooling rate of melt boundary layer formation around pyroxene.The maximum An# [=100Ca/(Ca + Na)] of plagioclase was almost the same among all run samples. We applied both plagioclase liquidus and plagioclase-melt An-partitioning thermometers of Putirka (2008) to the pairs of plagioclase rim-boundary layer melt (BLM) and plagioclase rim-far field melt (FFM) to estimate temperatures recorded in their phase compositions. At Tq=1150℃, the estimated temperatures well represent Tq for both BLM and FFM. However, at lower Tq, both of the thermometers estimate temperatures higher than Tq; difference between estimated temperature and Tq, ΔT, increases as decreasing Tq. The two thermometers estimate similar temperatures for each sample, and the differences between the two estimated temperatures do not depend on Rc. These results suggest that the plagioclase-melt partition coefficient of An component does not depend on the Rc. Therefore, the increase of ΔT at lower Tq is not due to the Rc-dependence of the partition coefficient. It is attributed to the kinetic delay of the crystal growth at lower temperature. On the other hand, the coincidence between calculated temperatures and Tq at 1150℃ suggests that kinetic delay of plagioclase crystal growth is small at near liquidus temperature.Present results show that plagioclase-melt thermometers can be applied regardless of the Rc at higher temperatures, while magmatic temperature tends to be overestimated due to kinetic delay of crystal growth at lower temperature.