著者
小口 高
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2022年度から高校の地歴科で「地理総合」が必修となる。地理総合は現行の地理Aを基礎とするが、地理情報システム(GIS)によるデジタル情報の処理、自然災害、地球環境問題といった理系的な要素が重視されている。したがって、地理総合は高校生が地理学のみならず地学の素養を高めることにもつながる。高校の理科では、2012年度に「地学基礎」が新科目となった結果、以前よりも地学を学ぶ高校生が増えた。しかし履修率は三割弱であるため、多くの高校生にとっては地理総合が地球惑星科学に関連する内容に触れる主要な機会となる。したがって、地理総合が高校生の関心を惹きつけ、その内容が大学への進学や将来の職業の選択の際に考慮されれば、地理学のみならず地学を含む地球惑星科学の発展につながる。このような状況を作り出すためには、日本地球惑星科学連合や日本学術会議のような、地理学と地学の研究者が共に参加している組織における活動が効果的である。これらの組織の構成員の多くは大学や研究所の研究者であるため、高校の地歴科や理科の教員との連携体制を作ることも重要である。2018年度には、日本学術会議の地球惑星科学人材育成分科会の下に地学・地理学初等中等教育検討小委員会が設置され、主に高校における地学・地理教育の充実に向けた検討を行っている。この小委員会には大学と高校の教員とともに、文科省と国土地理院の職員も参加しており、検討課題の中には上記した地理総合の実施を踏まえた地学・地理教育の活性化も含まれている。このような活動を日本地球惑星科学連合の場でも行いつつ、地理学と地学の関係者が連携して将来の両学問を支える人材の育成に取り組むことが重要である。
著者
小河 泰貴
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

次期学習指導要領が2018年3月に告示され、「持続可能な社会づくり」に求められる地理の新科目として、必履修科目の「地理総合」が設けられた。1992年の「地理教育国際憲章」において、地理学研究の五大概念は「位置と分布」「場所」「人間と自然環境との相互依存関係「空間的相互依存作用」「地域」とされた。これらの概念は、地理カリキュラムを構成するうえでの一つの指針となっている。また、国際地理オリンピックの開催を通して、世界と日本の高校生に、地理教育で養う思考やスキルなどの国際的な基準が示されている。 「地理総合」の実施に向けて、私たち地理教員は何をどのように意識して授業構想をしていくのか。その視点として、国際地理オリンピック世界大会の出題内容や、日本の高校生の地理的な見方・考え方の現状などを踏まえ、「地理総合」で付けさせたい力と授業構想について報告をする。
著者
熊本 雄一郎 青山 道夫 浜島 靖典 村田 昌彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故によって、20­-40 PBqの放射性セシウムが環境中に放出されたと推定されている。そのうちの7­8割は北太平洋に沈着・流出したと見積もられているが、それらのほとんどは海水に溶けた状態で存在する。そのため福島事故由来の放射性セシウムは、海水混合によって希釈されながら表層水の流れに沿って北太平洋全域に広がりつつある。これまでの研究によって、日本近海に沈着・流出した放射性セシウムは北太平洋の中緯度を表面海流に乗って東に運ばれ、事故から約4年が経過した2015年には北米大陸の西海岸に到達したことが分かっている。演者らは2017年夏季に北太平洋亜寒帯域において実施された海洋研究開発機構「白鳳丸」航海において海水試料を採取し、その中の放射性セシウム濃度を測定した。福島事故起源134Csの濃度は、希釈と放射壊変(半減期は約2年)によって現在1 Bq m­-3以下まで低下しているため、濃縮しなければ測定することができない。濃縮には、仏国Triskem社製のCsレジン(potassium nickel ferrocyanate on polyacrylnitrile, KNiFC-PAN)を用いた。海水試料約40 Lを50 ml min­-1の流速で5 ml(約1 g)のCsレジンに通水することで、レジンに放射性セシウムを濃縮した。海水試料にはキャリアとして塩化セシウム(133Cs)を加え(濃度約100 ppb)、その通水前と通水後の濃度差から放射性セシウムの回収率を約95%と見積もった。陸上実験室に持ち帰ったCsレジンは洗浄後、海洋研究開発機構むつ研究所、または金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射能実験施設の低バックグランドGe半導体検出器を用いてγ線分析に供され、134Csの放射能濃度が求められた。東部北太平洋のアラスカ湾を横断する東西(北緯47度線)と南北(西経145度線)の2本の観測線に沿った鉛直断面図によると、深度300mまでの表層において東側及び北側の観測点、すなわち北米大陸沿岸により近い観測点で事故起源134Csの濃度が高くなっていた(放射壊変を補正した濃度で最高6 Bq m­-3)。これは北米大陸に到達した福島事故起源134Csが北米大陸に沿って北上し、さらに北太平洋の高緯度(北緯50­-60度)を西向きに運ばれていることを示唆している。本研究によって得られた結果から、今後数年以内に福島事故起源134Csが北太平洋亜寒帯の反時計周りの循環流、すなわち北太平洋亜寒帯循環流に沿って日本近海に回帰してくることが予測された。
著者
北 佐枝子 Heidi Houston 田中 佐千子 浅野 陽一 澁谷 拓郎 須田 直樹
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

The slip on the plate interface has the potential to affect the stress field and seismicity within the subducting slab. Several studies have examined the interaction of slow slip phenomena with intraslab earthquakes [Nankai and Tokai regions, Han et al. 2014; Mexico, Radiguet et al. 2018, 2018 JpGU meeting; New Zealand, 2018, Warren-Smith, 2018 AGU meeting]. Kita et al. [2018, SSJ meeting] reported the stress change in the whole slab associated with ETS times based on stress tensor inversion results. However, we find a clear double seismic zone under Kii Peninsula, as also noted in a previous study [e.g. Miyoshi and Ishibashi, 2004]. Therefore, we here examine seismicity rate variations, stress changes, and b-value variations of seismicity separately for the upper plane events and oceanic mantle ones relative to ETS timings beneath the Kii Peninsula. We use the JMA earthquake catalog, the NIED tremor catalog, the upper surface of the Philippine sea plate estimated by Shibutani and Hirahara [2016], P-wave polarity data by NIED, and a stress tensor inversion code [Vavrycuk, 2014].We determined the timings of ~30 large ETS beneath the Kii Peninsula from 2001 to 2017, and categorized slab seismicity relative to the occurrence times of nearby the ETS (i.e., 60 days before or after). We then combined or stacked the slab seismicity based on these relative occurrence times. The rate of seismicity both in the upper plane events and in the oceanic mantle ones after the ETS timings clearly decreased, compared to the rate before the ETS timings. The peaks of b-values of seismicity both in the upper plane events and oceanic mantle ones were found to occur 1.5 months before ETS. A change in stress orientations before and after the ETS was seen in the oceanic mantle, and a relatively small change was seen for the upper plane events. The stress change in the upper plane events appears to be larger in the region updip of the ETS zone. The results of our study suggest that the aseismic slip on the plate boundary may affect the stress field and the occurrence of seismicity within the subducting slab beneath the Kii Peninsula. Fluid migration from the oceanic slab into the ETS zone on the plate boundary could be related to the interaction of slow slip phenomena with intraslab earthquakes.
著者
Liping Zhang Thomas L Delworth William Cooke Xiaosong Yang
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

While decadal variability and predictability in the North Atlantic and North Pacific have received considerable attention, there has been less work on decadal variability and predictability in the Southern Ocean. As shown previously, a coherent mode of decadal to centennial variability exists in multiple climate models. The mechanism involves a multidecadal accumulation of heat in the subsurface of the Southern Ocean, which is then rapidly discharged through intense oceanic convection when the accumulation of subsurface heat reduces the stratification of the water column. The release of this accumulated subsurface heat can have considerable regional scale climatic impacts, along with substantial impacts on ocean heat uptake. Using a large suite of perfect predictability experiments, in concert with long control simulations, we show that this variability has a high degree of predictability. We present further results that show this type of variability may play an important role for interpreting recently observed trends of sea ice and temperature in the Southern Ocean. Specifically, observed trends over the last several decades resemble a particular phase of this variability in which reduced oceanic convection leads to subsurface warming and surface cooling, with associated increases in sea ice extent. This phase of natural variability may substantially contribute to observed decadal trends, working in concert with other factors.
著者
大峡 充己 古村 孝志 前田 拓人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

本研究では、強震観測データと地震波伝播シミュレーションの同化に基づく長周期地震動の即時予測の実現に向け、データ同化手法の高速化に向けた検討を行った。これまでFurumura et al. (2019)は、K-NETとKiK-net強震観測と3次元差分法による地震波伝播シミュレーションのデータ同化に基づき、2007年新潟県中越沖地震と2011年東北地方太平洋地震における、都心の長周期地震動の即時予測実験を行った。データ同化には、震度の即時予測(Hoshiba and Aoki, 2015)や津波の即時予測(Maeda et al., 2015; Gusman et al., 2016)などで広く用いられている最適内挿法が用いられ、長周期地震動の計算は3次元地下構造モデルを用いた差分法計算により行われている。近年の高速計算機により、日本列島規模の長周期地震動のシミュレーションは、地震波(表面波の基本モード)の伝播速度の数倍以上の速度で行うことは十分可能になった。しかし、長周期地震動の予測から揺れが実際に始まるまでの十分な時間的猶予を確保するためには、コストの高い地震波伝播計算を、より高速に行うための研究開発が必要である。そこで、本研究は従来のデータ同化・予測に表面波伝播のGreen関数を活用して高速化する手法の有効性を検討した。この手法はWang et al. (2017)でGreen’s Function-Based Tsunami Data Assimilation (GFTDA)として、沖合津波計を用いた津波の高速データ同化・予測手法として提案されている。GFTDAでは、予めデータ同化地点と最終予測地点の間の津波伝播のGreen関数を計算しておき、これをデータ同化地点での観測データとシミュレーション結果との残差に畳み込み積分することで、予測地点の波形を計算する。差分法によって残差を時間発展させていく計算過程を予め計算されたGreen関数で代用するため、最終予測地点の津波波形を瞬時に求めることができる。通常のデータ同化に基づく予測手順と数学的に等価であることはWang et al. (2017)により証明されている。 本研究では、まずこの手法の長周期地震動への適用性を確かめるために、2004年紀伊半島南東沖地震(M7.4)のK-NET, KiK-net強震観測データを用いたデータ同化の数値実験を行い、K-NET新宿地点(TKY007)の長周期地震動の予測を行った。同化・予測計算はJ-SHIS地下構造モデルに対して行った。Green関数の計算を効率的に進めるために、相反定理を用いた震源と観測点を入れ替えた計算を行った。実験より、従来のデータ同化手法による予測とGreen関数を併用した本手法による予測が同一となることを確認した。本手法の活用により、震源域近傍の和歌山県〜三重県の観測データの同化後、直ちに遠地の最終予測地点の長周期地震動が得られることから、猶予時間を大幅に拡大することができる。さらに、熊野灘沖のDONET観測網を利用することで、より即時予測の精度の向上と猶予時間の確保が期待できることも確認した。 続いて、Green関数を併用した手法を用いた南海トラフ地震の長周期地震動の即時予測実験を行った。最終予測地点はKiK-net此花(OSKH02)、K-NET津島(AIC003)、新宿(TKY007)の3点である。震源モデルに内閣府(2016)の1944年東南海地震と1946年南海地震、そして想定最大級(M9)のものを用いた。それぞれの地震の長周期地震動は3次元差分法計算により求め、これを想定観測データとみなして実験に用いた。本実験ではK-NET, KiK-netに加え、DONET、気象庁海底ケーブル地震計、及び高知県沖〜日向灘に展開が計画されている海底津波地震観測網N-netの予想地点での想定観測データも用いた。最終予測地点の長周期地震動の強さは、水平動の速度応答スペクトルのGMRotD50 (水平2成分の波形記録を0~90°回転させたときのそれぞれの速度応答スペクトルの幾何平均のメディアンの値; Boore et al., 2006)により評価した。また、長周期地震動の継続時間の影響を評価するために、地動の累積変動量も計算した。これらの長周期地震動の予測精度は同化の経過とともに一様に高まる。例えば昭和南海地震の震源断層モデルと破壊が東側(熊野灘沖)から進行する地震シナリオでは、地震発生から70秒後の新宿地点の速度応答スペクトル(固有周期10秒)と累積変動量の予測は、大きな揺れが始まる約80秒前に実際の7割のレベルまで達成することを確認した。一方、破壊が西(足摺岬沖)から始まるシナリオでは、最終予測地点が遠い分、同等の予測精度を得る時点でより長い猶予時間(約120秒)が確保できることがわかった。しかしながら、断層破壊が都心に近づくにつれ、長周期地震動レベルが増大するため、より長時間(100秒間)の同化時間が必要であった。いずれにせよ、精度の高い予測と猶予時間の両方を確保するためには、震源域近傍での強震観測とともに、巨大地震の断層破壊の拡大に合わせてデータ同化を一定時間続け、予測を更新し続けることが必要である。
著者
内田 直希 東 龍介 石上 朗 岡田 知己 高木 涼太 豊国 源知 海野 徳仁 太田 雄策 佐藤 真樹子 鈴木 秀市 高橋 秀暢 立岩 和也 趙 大鵬 中山 貴史 長谷川 昭 日野 亮太 平原 聡 松澤 暢 吉田 圭佑
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込み帯研究のフロンティアである前弧の海域下において,防災科学技術研究所は新たに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築した.S-netは東北日本の太平洋側の海岸から約200kmの範囲を海溝直交方向に約30km,海溝平行方向に50-60km間隔でカバーする150点の海底観測点からなり,その速度と加速度の連続データが,2018年10月より2016年8月に遡って公開された.観測空白域に設置されたこの観測網は,沈み込み帯の構造およびダイナミクスの解明に風穴をあける可能性がある.本発表ではこの新しいデータを用いた最初の研究を紹介する.まず,海底の速度計・加速度計の3軸の方向を,加速度計による重力加速度および遠地地震波形の振動軌跡を用いて推定した.その結果,2つの地震に伴って1°以上のケーブル軸周りの回転が推定されたが,それ以外には大きな時間変化は見られないことがわかった.また,センサーの方位は,5-10°の精度で推定できた.さらに得られた軸方向を用い,東西・南北・上下方向の波形を作成した(高木・他,本大会).海底観測に基づく震源決定で重要となる浅部の堆積層についての研究では,PS変換波を用いた推定により,ほとんどの観測点で,350-400mの厚さに相当する1.3 – 1.4 秒のPS-P 時間が観測された.ただし,千島-日本海溝の会合部海側と根室沖の海溝陸側では,さらに堆積層が厚い可能性がある(東・他,本大会).また,雑微動を用いた相関解析でも10秒以下の周期で1.5 km/s と0.3 km/sの2つの群速度で伝播するレイリー波が見られ,それぞれ堆積層と海水層にエネルギーを持つモードと推定された(高木・他,本大会).さらに,近地地震波形の読み取りによっても,堆積層およびプレート構造の影響を明らかにすることができた.1次元および3次元速度構造から期待される走時との比較により,それぞれ陸域の地震の海溝海側での観測で3秒程度(岡田・他,本大会),海域の地震で場所により2秒程度(豊国・他,本大会)の走時残差が見られた.これらは,震源決定や地震波トモグラフィーの際の観測点補正などとして用いることができる(岡田・他,本大会; 豊国・他,本大会).もう少し深い上盤の速度構造もS-netのデータにより明らかとなった.遠地地震の表面波の到達時間の差を用いた位相速度推定では,20-50sの周期について3.6-3.9km/sの位相速度を得ることができた.これはRayleigh波の位相速度として妥当な値である.また,得られた位相速度の空間分布は,宮城県・福島県沖の領域で周りに比べて高速度を示した(石上・高木,本大会).この高速度は,S-netを用いた近地地震の地震波トモグラフィーからも推定されている.また,このトモグラフィーでは,S-netの利用により海溝に近い場所までの速度構造がよく求まることが示された(豊国・他,本大会).雑微動解析によっても,周期30秒程度の長周期まで観測点間を伝播するレイリー波およびラブ波を抽出することができた.これらも地殻構造の推定に用いることができる(高木・他,本大会).また,海域の前弧上盤の構造についてはS-net 観測点を用いたS波スプリッティング解析によって速度異方性の特徴が明らかになった.プレート境界地震を用いた解析から,速いS波の振動方向は,海溝と平行な方向を向く傾向があり,マントルウエッジの鉱物の選択配向や上盤地殻のクラックの向きを表している可能性がある(内田・他,本大会).プレート境界においては,繰り返し地震がS-net速度波形によっても抽出できることが示された.プレート境界でのスロースリップの検出やプレート境界の位置推定に役立つ可能性がある(内田・他,本大会).さらに,S-net加速度計のデータの中には,潮汐と思われる変動が観測されるものもあり,プレート境界におけるスロースリップによる傾斜変動を捉えられる可能性があるかもしれない(高木・他,本大会).以上のように,東北日本の前弧海洋底における連続観測について,そのデータの特性が明らかになるとともに,浅部から深部にわたる沈み込み帯の構造や変動についての新たな知見が得られつつある.これらの研究は技術的にも内容的にもお互いに密接に関わっており,総合的な解析の推進がさらなるデータ活用につながると考えられる. 謝辞:S-netの構築・データ蓄積および公開に携わられた皆様に感謝いたします.
著者
園田 潤 木本 智幸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

海水は導電率が高く一般的に電波は伝搬しないとされており,現在では海水中では主に超音波が利用されている.我々は東日本大震災の津波災害による海底の行方不明者やがれきを探索するために,数百MHz帯の地中レーダを用いた海底探査を試みている.本稿では,宮城県閖上広浦湾と山元町磯浜漁港および坂元沖における地中レーダによる海底探査実験について,TDR (Time Domain Reflectometry) による海水の複素比誘電率の周波数特性と,CTD (Conductivity Temperature Depth profiler) による深さ方向の導電率分布の測定結果とともに,実際の地中レーダ画像からの海底物体探査について述べ,350 MHzの地中レーダで深さ10 m程度の海底物体の反射波が受信できたことを明らかにする.また,GPUを用いたFDTD法による海水中の電波伝搬解析を行い,実験結果の妥当性を示す.
著者
尾西 恭亮
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

橋梁床版は,土砂化等の発生により,急速に劣化が進行することが知られている。点検サイクル内に抜け落ちにまで発展する事例が発生し,目視点検以外の事前検知手法の開発が望まれている。地中レーダは,地下空洞探査などに広く用いられており,有効な探査手法のひとつと考えられている。しかし,地中レーダで橋梁床版の損傷域を特定するのは困難な場合が多い。この理由のひとつは,探査対象深度が浅いことにある。橋梁床版の損傷は上面から進行することが多い。橋梁床版の上面深度は舗装厚により決定される。舗装厚は5~10cm程度の範囲に入っている場合が多い。深度5~10cmという範囲は,一般的な地中レーダの記録では,空中を伝播する光速度の直接波と,地表を伝播する地盤速度の直達波が同じ走時域に混在するため,イメージングが困難となる場合が多い。そこで,橋梁床版モデルを作成し,種類の異なる地中レーダで探査を行ったので,探査記録を比較した結果を示す。床版モデルは,アスファルト舗装の着脱が容易な設計となっており,損傷域の状態を簡単に変更できる特徴を有する。この結果,損傷域の誘電特性が周囲より十分異なれば,比較的に容易に異常信号を検知できることがわかった。しかし,検知された異常信号を用いても,表面からの深さ,粒径,水分状態などの異常の状態を特定するには困難であるため,床版モデルや数値計算等の解析を進め,信号特性を把握した上で,実際の床版の記録を解釈することが重要となる。
著者
水野 晃子 石坂 丞二
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

デジタルカメラデータのRGB表色系値を用いた、光合成生物と環境条件の調査方法は、この20年間で様々な研究がなされてきた。例えば、海域ではスマートフォンカメラを用いた水質の推定(Leeuw and Boss 2018)や、航空写真からの海草植生の検出とクロロフィルa濃度の推定(Goddijn and White 2006)などがあるが、海洋域だけでなく陸域などさまざまな地域で調査のために活用される背景には、デジタルカメラの携帯性と利便性、低価格であることがあげられる。また、観測可能性が天候によって左右されることがないため、衛星観測に対する補助的、追加的な調査としてデジタルカメラの有用性は大きいと言える。本研究では、伊勢三河湾において撮影されたデジタルカメラ写真のRGB表色系値を解析することによって、クロロフィルa濃度の推定方法の構築を試みた。伊勢三河湾ではSeaWiFSおよびMODISデータを用いたクロロフィルa濃度の推定方法がHayashiら(2015)によってなされているが、デジタルカメラデータによる方法は構築されていない。 我々は、伊勢三河湾の観測航海によってクロロフィルa濃度、海表面、18%グレー版および天空のデジタルカメラ撮影写真、連続スペクトル分光放射計(RAMSES/TriOS)による海表面輝度および天空照度のスペクトルデータを採集した。デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の誤差は、海面反射、波長数の少なさ、データ圧縮やデジタル化による情報劣化など様々な要因によって生じると考えられる。本研究では海面反射について考察するため、分光放射計による海面輝度データは、海面反射の影響を最小に抑えることができるドーム法(Tanaka et al 2006)と、甲板上から撮影されたデジタルカメラデータと同条件で採集された甲板法の2種類を得、デジタルカメラデータのRGB表色系値と比較するためにCIE等色関数によってスペクトルデータをRGB値へと変換した(それぞれドーム法変換RGB値、甲板法変換RGB値とする)。デジタルカメラ写真のRGB値とは、甲板法変換RGB値の方が相関が高く、ドーム法とは関係性が低かった。また、甲板法変換RGB値によるクロロフィルa濃度推定の誤差が、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa濃度推定の誤差量とほとんど同じ大きさであったため、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の主な誤差要因は海面反射の影響が大きいことが推察された。 L.M. Goddijn; M White, Using a digital camera for water quality measurements in Galway Bay, Estuarine, Coastal and Shelf Science (2006), 66, 429-436.M. Hayashi; J. Ishizaka; M. Toratani; T. Nakamura; Y. Nakashima; S. Yamada; Evaluation and Improvement of MODIS and SeaWIFS-derived Chlorophyll a Concentration in Ise-Mikawa Bay, Journal of The Remote Sensing Society of Japan (2015), 35, 245-259.T. Leeuw; E. Boss, The HydroColor App: Above Water Measurements of Remote Sensing Reflectance and Turbidity Using a Smartphone Camera, Sensors (2018), 18, 256-271.A. Tanaka; H. Sasaki; J. Ishizaka, Alternative measuring method for water-leaving radiance using a radiance sensor with a domed cover, Optics Express(2006), 14(8), 3099-3105
著者
東 久美子 塚川 佳美 近藤 豊 Dallmayr Remi 平林 幹啓 尾形 純 北村 享太郎 川村 賢二 本山 秀明 的場 澄人 青木 輝夫 茂木 信宏 大畑 祥 森 樹大 小池 真 小室 悠紀 對馬 あかね 永塚 尚子 繁山 航 藤田 耕史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2014年春にグリーンランド氷床北西部のSIGMA-Dサイトで225メートルの深さまでのアイスコアが掘削された。積雪のアルベドに影響を及ぼす物質として注目されているブラックカーボン(BC)の変動を高時間分解能で復元するため、国立極地研究所で開発されたアイスコア連続融解析装置(CFA)を用いてこのコアの深度6~113mを高時間分解能分析した。CFAはアイスコアを融解しながら連続的に分析する方法であるが、融解部に接続したWide-Range SP2 (Single Soot Photometer)によりBCを分析した。コアの上部6mは空隙の多いフィルンであり、CFAを用いることができなかったため、約5cmの長さ毎に切り、試料表面の汚染を除去して融解した後、SP2で分析した。主としてナトリウムイオン濃度と酸素同位体比の季節変動を利用してこのコアの年代決定を行い、1年を12に分割して月毎の変化を調べた。ブラックカーボンの質量濃度と数濃度はともに1870年頃から増加し始め、1920~1930年頃にピークを迎えたが、その後減少に転じた。1870年頃からの濃度の増加は、化石燃料の燃焼によって発生する人為起源のブラックカーボンがグリーンランドに流入したためであると考えられる。化石燃料起源のBC濃度の増加に伴ってBCの粒径が大きくなる傾向が見られた。これはグリーンランドに到達する化石燃料起源のBCの粒径が森林火災起源のものよりも大きいことを示唆している。BC濃度の季節変動を調べたところ、BC濃度の増加は主に秋~冬に生じていることが分かった。また、人為起源のBCの影響がない時代にはBC濃度は夏にピークを示していたが、人為起源のBCが多量に流入した時代には冬にピークを示していたことも分かった。夏にはしばしばBCが短期間だけ50µg/Lを超える高濃度になることがあったが、これは森林火災によるものと考えられる。本発表では、SIGMA-Dコアの結果を他のグリーンランドコアと比較して議論する。
著者
綿田 辰吾 Iyan Mulia 山田 真澄 Dimas Sianipar
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2018年12月22日UT14時30分頃、インドネシアスンダ海峡周辺のジャワ島・スマトラ島を津波が襲い400名余が犠牲となった。この津波の発生とほぼ同時期にAnak Krakatau火山が噴火し、火山の標高が噴火前後で300mから100mへと低下したと報告されているため、津波は陸上または海中の山体崩壊が引き起こしたと考えられている。噴火直後のSAR画像から南西方向に山頂部を含め山体が崩落し海中に消失している。周辺の検潮記録から、津波の発生は13時58分頃と推定される。インドネシア国内では火山噴火や津波発生時に強い地震の発生の報告はないが、日本を含むインドネシア国内外の広帯域地震計には周期50-100秒の長周期の地震波(S波・レイリー波)が明瞭に記録されている。S波は14時11分に日本の南西諸島へ、14時16分に北海道へ到達している。表面波も14時27分に北海道を通過している。どの地震波も13時56分頃にAnak Krakatau火山付近で長周期の地震波発生イベントがあったことを示している。遠地実体波から震源時間関数は100秒以内(1分程度)であり、スンダ海峡周辺の4観測点の地震波形3成分は、最大5x1011Nの力が、最初に20秒間でほぼ北東方向わずかに上向き、さらに50秒で南西方向に方向でわずかに下向き向きに働いたことで説明できる。力の方向と角度は、Krakatau海底カルデラ外縁部に成長していたAnak Krakatau山体の低角(8度)南西方向へ水深250mのカルデラ底へ崩壊とそれに伴う津波の可能性を指摘していたGiachetti et al. (2012, Geol. Soc. London) の山体崩壊モデルとほぼ一致する。山体崩壊の質量はEkstrom and Startk (2013, Science) が経験的に求めた陸上地滑りの最大力と質量の比例式から3x1011kgと推定され、山体の密度を2gr/cm3を仮定すると山体崩壊体積はおよそ0.15km3となり、検潮記録から推定されている海底地滑りを引き起こした体積0.2km3とおよそ一致している。津波を引き起こすような地震が現地では検知されなかったため、津波警報は発令されなかった。一方、津波の発生と共に発生したと考えられる長周期地震波は地震発生イベントの40秒後にはJakartaに到達した。もし今回観測されたような長周期地震動が定常的にインドネシアでモニターされれていれば、Anak Krakatau山体崩壊の早期検知とそれに伴う津波発生の可能性は津波被害発生前に把握できたかもしれない。
著者
加藤 愛太郎 上田 拓
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

We reconstructed the spatiotemporal evolution of seismicity associated with the 2018 Mw 5.6 northern Osaka earthquake, Japan, to discuss the source fault model of the mainshock rupture, the possible link between this rupture and known active faults, and subsequent crustal deformation. We first relocated the hypocenters listed in the earthquake catalog determined by the Japan Meteorological Agency using a double-difference relocation algorithm. We then searched for the earthquake waveforms that closely resembled those of the relocated hypocenters by applying a matched filtering technique to the continuous waveform data. The relocated hypocenters revealed two distinct planar alignments with different fault geometries. A combination of the relocated hypocenters and focal mechanisms suggests that the mainshock rupture initiated on a NNW–SSE-striking thrust fault, dipping ~45° to the east, with the rupture propagating to an adjacent sub-vertical ENE–WSW-striking strike-slip fault ~0.3 s after the initial mainshock rupture, resulting in the simultaneous propagation of dynamic rupture along the two faults. The strike-slip fault is oblique to the strike of the Arima-Takatsuki Fault, indicating that blind strike-slip faulting occurred. While the east-dipping thrust fault is located deeper than the modeled extent of the Uemachi Fault, a simple extrapolation of the near-surface geometry of the Uemachi fault partially overlaps the mainshock rupture area. Although it is unclear as to whether a blind thrust fault or a deep portion of the Uemachi Fault ruptured during this mainshock–aftershock sequence, a mainshock rupture would have transferred a static stress change of >0.1 MPa to a portion of the east-dipping thrust fault system. Intensive aftershocks have persisted along the northern and southern edges of the source area, including moderate-magnitude events, whereas the seismicity in the central part of the source area has shown a rapid decay over time. Delayed triggered aftershocks were clearly identified along the northern extension of the rupture area. Because the background seismicity is predominant in this northern area, we interpret that aseismic deformation, such as cataclastic flow lubricated by crustal fluids, triggered this off-fault seismicity.
著者
上田 拓 加藤 愛太郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

A growing body of evidence suggests that seismicity is seasonally modulated in a variety of tectonic environments (e.g., Gao et al., 2000; Heki, 2003; Bettinelli et al., 2008; Ben-Zion & Allam, 2013; Amos et al., 2014; Johnson et al., 2017). Identifying cyclic variations in seismicity leads to an improvement of our understanding about the physics of earthquake triggering.San-in district, southwest Japan, is an active seismicity zone characterized as high shear strain rate by geodetic measurement (Nishimura and Takada, 2017). Moreover, Ogata (1983) has pointed out a possibility of seasonal variations in seismicity rate in the Inner Zone of southwest Japan. We here focus on seasonal variations in crustal seismicity in San-in district.We used the JMA catalog (constructed by Japan Meteorological Agency) from 1975 through 2017 (magnitude M >= 3.0 and depth <= 20 km). We applied space-time Epidemic Type Aftershock Sequence (ETAS) model (e.g., Ogata, 1998; Zhuang et al., 2004) to the catalog and used a probability-based declustering procedure based on the work of Zhuang et al. (2002) to evaluate the significance of the seasonal variations, adopting uncertainties derived from the declustering scheme.We demonstrated that semiannual variations in background seismicity rate, which increases in spring and autumn, are statistically significant from 1980 through 2017. The distribution of large historic and modern earthquakes (from 1850 through 2017, magnitude M >= 6.2, constructed by Chronological Scientific Tables) shows a similar pattern to recent background seismicity, suggesting that seismicity in San-in district has shown seasonal variations for over 150 years. There is some correlation between the monthly averaged background rate shifted backward 2 months and monthly averaged rain amount in the studied region. These results infer that seasonal variations in seismicity in San-in district can be explained by increasing pore pressure within fault zones, caused by infiltration of rainfall in autumn and decreasing surface mass due to snow melting in spring. Some correlation between seismicity and precipitation suggests that modulation of precipitation may be a key ingredient to produce time-dependence of background seismicity.
著者
山本 隆太
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日本のジオパークでは学校教育との定期的な教育連携活動が見られる。出前講座や実験演習といった比較的一回性の教育イベントとなりやすい教育活動に対して,地域学習(郷土学習,ふるさと学習)では,年間あるいは学校修学年限(3年・6年),場合によっては学校種を横断した一貫性あるカリキュラムが構想されている地域も少なくない。近年では持続可能な開発のための教育(ESD)の進展に伴い,ESDカレンダーのような体系的な教育カリキュラムが求められており,これまでの総合的な学習に加え,各教科の横断的なカリキュラムも認められている。こうしたカリキュラムを作成するにあたっては,学年配列と学習内容のマトリクスをたたき台としながらジオパークと関連する学習内容を当てはめていくことで,見かけ上のカリキュラムを作成することが従来は可能であった。しかし,新学習指導要領の最も基本的な転換点は,PISAに象徴されるようなコンピテンシーへの能力論的な展開であるといえ,つまりは育むべき能力と位置付けられた資質・能力(コンピテンシー)と,それを受けた各教科での見方・考え方が教育活動の軸に据えられるようになる。その結果,コンピテンシーはコンテンツ(学習内容)に先んじることとなり,カリキュラムも育成すべきコンピテンシーによって再構成されていく。ただし,学校現場レベルでは移行期間としてコンテンツベースが続くことも考えられるが,その場合でも,コンテンツに準じながらもコンピテンシーを意識せざるをえない状況に迫られる。そこで本発表では,ジオパークで育まれるコンピテンシーに関して,とりわけ地域学習のカリキュラム開発に資すると考えられるシステム思考とそのコンピテンシーの理論ついて取り上げた上で,コンテンツベースからコンピテンシーベースのカリキュラムへの移行についてシステム思考の援用を具体的に論ずる。システム思考コンピテンシーは,把握対象をシステムとして捉えるのみならず,システム的な問題解決の能力として教育分野で開発されてきた。日本の新指導要領でもコンピテンシーの問題解決能力に着目しており,その意味では地域学習も問題解決能力に資する部分を明示する必要がある。そのためには,問題解決能力の全体像を示すことが前提となるが,システム思考のコンピテンシーモデルが説明モデルとして適応できる。またジオパークの特性を生かすということは,ジオパークの持つシステマティックな特性とシステミックな特性を整理した上でカリキュラム開発に寄与することといえる。その際,システマティックな特性については従来のコンテンツベースカリキュラムでカバーしきれるためいわゆる内容の読み替えが適応可能である。一方,システミックな特性についてはESDやSDGsにおいて重視されているものの学校教育では扱いきれていない部分であり,この点についてはジオストーリーが概念的に近いが,地域学習カリキュラムの開発のためには,静的で固定されたジオストーリーではなく操作可能なジオストーリーの在り方が求められることが考えられる。
著者
阿部 國廣
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

島根半島・宍道湖中海ジオパークは日本ジオパークに認定され3年目となる。島根県でのジオパーク認定は、隠岐世界ジオパークに次いで2番目となる。隠岐ジオパークの知名度は県民にもかなり認知されているが、島根半島・宍道湖中海はまだまだという感が強い。推進協議会は認知活動と合わせ、ジオパークの活用と、教育活動が強く求められている。昨年18回目を迎えた青少年のための科学の祭典島根大会で、島根の地学系のブースにおいて、島根半島・宍道湖中海ジオパークのブースを出展し、「宍道湖、出雲平野の誕生」というてーまでコンパネで、360×270×120㎝の型枠に真さ砂で斐伊川と神門川の流域地形を作り、二川の源流部に散水ホースを固定し、散水し続けることにより、流水による堆積実験に合わせ、中国山地と島根半島に挟まれた海域に次第に土砂が堆積し、出雲平野が出来上がってくる過程を観察しながら時間の経過とともに宍道湖が形成されていく様子を理解していくものである。出雲大社のある西側は平野となって海域ではなくなっている。これは神門川水系に位置する三瓶火山の噴火による影響は無視できない。築地松で知られる出雲平野を形成した斐伊川、神門川、中国山地の花崗岩を主体とするがん性、三瓶さんの火山活動によって、北に位置する島根半島突動く産地の間に出雲平野が形成されていったことをジオパークの宍道湖中海低地帯の所信や資料と対比させながら実験を行った。
著者
佐藤 公 宇井 忠英
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

磐梯山ジオパークは5万年前と1888年の2回に発生した山体崩壊とそれに伴う岩なだれ(岩屑なだれ)で生じた地形や人々の営みに影響を与えた様子を来訪者に伝える狙いで作られた。磐梯山噴火記念館はその中核展示施設である。2018年は1888年の山体崩壊から130年、記念館の開館から30年という節目の年に当たっていた。岩なだれは日本では100年に1回程度しか発生しないため、市民にあまり知られていない。この岩なだれにスポットを当てた企画展を磐梯山噴火記念館で開催した。合わせて全国の火山系博物館でも巡回展示を行った。この巡回展を通して、参加したジオパークの連携と互いの理解が進むと考え、シンポジウムを開催したり、それらのジオパークに出向き出前講座も実施した。 この講演では企画展と出前講座の概要を紹介し、出前講座の際に実施した参加者アンケートから、地域による火山理解の違いなどを紹介する。
著者
松原 誠 西澤 あずさ 青井 真 竹之内 耕 平松 良浩 中川 和之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

(1) はじめに 公益社団法人日本地震学会(地震学会)では「行動計画2012」における「地震学の現状を一般市民の目線に立って社会に伝えていくとともに、地域防災への貢献及び社会からの要請を受け止める場となることを目指す」という考えに基づき、その具体化と手段の多様化を実現するために2017年4月にジオパーク支援委員会を設立した。ジオパークでは、火山や地質・歴史地震・津波痕跡に関するジオサイト・ガイド・案内板は数多く存在するが、自分たちの足元で起きている地震活動を認識してもらう案内方法が欠けている面があった。 防災科学技術研究所(防災科研)では、ジオサイトで足元の地球の活動を可視化するという観点から、「防災科研 地震だねっと!」というホームページ(http://www.geopark.bosai.go.jp/、以下、当サイト)を構築し、防災科研陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)で捉えた現在の地震活動や歴史地震を簡単に見られるホームページを2018年7月に開設した。これは、糸魚川世界ユネスコジオパークのフォッサマグナパークのリニューアルオープンを機に、案内板のQRコードから当サイトに接続することにより、現在の糸魚川周辺の地震活動を閲覧できるホームページである。(2)ホームページの概要 当サイトに接続すると、過去1年間の震源分布図が表示される。色で震源の深さを、丸の大きさでマグニチュードを表している。震源分布は1時間毎に更新され、最新の地震は星印で表示されている。地図には、現在地に加え、火山・活断層・河川・県境なども表示され、周辺を含めた位置を捉えやすくなっている。震源分布図の期間は過去24時間~10年間が選択可能である。記憶に残っている過去の地震もプロットされると同時に、無感の微小地震の分布も表示されるので、足元の地球内部でどのような活動が起こっているかを診ることができる。震源分布図の下には、被害地震も列挙されているので、地元での有史以来の地震活動を把握することが可能である。(3)閲覧実績 当サイト開設後、毎日20-30の所外からのアクセスが確認されている。また、フォッサマグナパークにおいて団体の見学があり、糸魚川ジオパークで当サイトについて紹介した際には、50~60のアクセスがあった。(4)ジオパークとの連携 防災科研は日本ジオパークネットワーク(JGN)と包括的連携協定を2018年10月13日に締結した。また、糸魚川ユネスコ世界ジオパークとは、当サイトの活用に関する覚書を締結した。今後、JGNを通じて、要望のあるジオパークに向けて当サイトを構築していく予定である。(5)利活用に関するアンケート結果と今後の展開 地震学会ジオパーク支援委員会では、JpGUの際にジオパーク向けに地震に関する勉強会を開催している。2018年度には、歴史地震の利活用について説明したこともあり、JGNを通じて、全国のジオパーク協議会やジオパーク推進協議会に対して歴史地震や最近の震源分布図、地震波形の展示の希望に関するアンケートを実施した。26のジオパークと7つのジオパーク構想から回答があった。以下の結果では、ジオパーク構想についてもジオパークに含める。 歴史地震に関するジオサイトは、46%の構想中を含めたジオパークに存在した。また、地元の地震活動には、91%のジオパークから関心があるという回答を得た。しかし、現在の地震活動に関する展示が存在するのは27%であった。博物館などの展示施設や屋外のジオサイトの案内板等で地震活動の展示希望については、条件によるも含めて、82%のジオパークで関心があった。条件としての多くは費用に関するものであった。当サイトのホームページの作成・運用費用は防災科研で負担しているので、ジオパーク側ではQRコードを掲載するジオサイトでの案内板の更新や、展示施設内でホームページを閲覧できるような仕組み(例えばパソコン等)を準備していただくことになる。防災科研では、ジオパークにおいて地震活動を実感する一助となるべく、それぞれの要望に沿った領域の地震活動の図を作成・提供していきたいと考えている。
著者
溝口 勝
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

火星の地下における水分移動のメカニズムを探る目的で、減圧蒸発過程での砂カラム中の水分・温度・塩分分布を測定する実験を行った。その結果、低塩分濃度では試料が凍結するが高濃度では試料が凍結しないこと、液状水移動に伴い塩分が表層に移動すること、塩分濃度が高いほど蒸発量が多いことがわかった。これらは、減圧蒸発に伴う乾燥、潜熱損失による凍結、塩濃縮によるクラスト形成や凝固点降下などの現象が関係している。