著者
八木橋 勉 渡久山 尚子 石原 鈴也 宮本 麻子 関 伸一 齋藤 和彦 中谷 友樹 小高 信彦 久高 将洋 久高 奈津子 大城 勝吉 中田 勝士 高嶋 敦史 東 竜一郎 城間 篤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ヤンバルクイナは沖縄島北部のやんばる地域のみに分布しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に分類されている。森林面積や外来種とヤンバルクイナの繁殖分布の関係を明らかにするため、沖縄島北部でプレイバック法による調査を2007年から2016年の繁殖期に3年ごとに4回実施し、確認個体数を応答変数とするGAMMによる統計解析を行った。その結果、ヤンバルクイナは、マングースが少ない場所ほど多い、広葉樹林面積が大きい場所ほど多い、畑地草地面積が大きい場所ほど多い、2007年と比較して近年確認個体数が増加している、という統計的に有意な関係がみられた。また、確認地点数も増加していた。これらの結果から、地上性のヤンバルクイナは、外来種であるマングースの影響を強く受けているが、マングース防除事業の効果により、近年分布が回復していると考えられた。ヤンバルクイナは広葉樹林面積が大きい場所で多いことから、近年大面積伐採が減少していることも分布回復に有利に働いていると考えられた。同時に畑地草地面積が大きい場所で多いことから、林内だけでなく、林冠ギャップ、林縁や草地なども生息環境として重要である可能性が考えられた。</p>
著者
阿部 真 阿部 篤志 齋藤 和彦 高嶋 敦史 高橋 與明 宮本 麻子 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>大型の着生ラン、オキナワセッコク(<i>Dendrobium okinawense</i> Hatusima et Ida)は、沖縄島北部やんばる地域を代表する固有種のひとつである。戦後の森林伐採や乱獲のために激減したとされ、環境省と沖縄県が絶滅危惧種(それぞれIB類、IA類)に指定する。本研究は、本種野生株の分布情報から、その適切な保護・回復のために有効な森林管理を検討する。これまでに本種が成熟林に依存すること、着生木(ホスト)樹種の選好性があること、また、2018年までに整備された国立公園の保護区域が現生する株の多くをカバーすることを明らかにした。本報告では、探査を重ね400近くになった着生木の情報から、本種の生育に求められる環境条件を、林齢や地形について絞り込む。伐採や盗掘のリスクを抑えつつ適切な林分や配置を誘導することにより、本種の分布について効果的な回復が期待できる。研究は(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(課題番号4-1503及び4-1804)の支援を受けた。また、環境省の調査資料(やんばる地域希少植物生育状況調査、平27~28)の提供を受けた。</p>
著者
亀山 統一 森田 琴美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>琉球列島のデイゴ<i>Erythrina variegata</i>は葉や若枝に侵入害虫デイゴヒメコバチの激しい加害を受けているが、被害木の一部に急速な枯死にいたる個体が存在する。この枯死被害は、<i>Fusarium solani</i> species complex (以下FSSC)に属する菌類を主因とすることが、演者を含む共同研究により明らかにされている。FSSCは沖縄島の複数地点と石垣島のデイゴ罹病木から分離され、琉球列島の広域に分布しているものと推測された。本研究では、沖縄島、宮古島、伊良部島、石垣島においてデイゴの枝枯・胴枯病徴の患部を採取して菌類を分離し、形態及び分子分類により種を推定した。いずれの島でもFSSCが分離された。患部から高率で分離されたFSSCおよび別種の菌株について、接種試験を試みた。デイゴヒメコバチが侵入している琉球諸島においても入手容易な材料として、デイゴの葉柄への接種を試みた。付傷接種によりFSSCおよび別種の菌株の多くが病原性を示した。葉柄への接種試験の手法としての有効性をまず確認した。その上で、菌株間での病原性の強弱等に着目して検討を加えるとともに、温度条件など成木での病徴進展に関与している可能性のある因子についても検討を加えた。</p>
著者
安井 瞭 岡本 透 寺嶋 芳江 Helbert Helbert 奈良 一秀
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>外生菌根菌(以下菌根菌)は樹木の根に共生し、土壌中の無機栄養分を樹木に供給する菌である。琉球列島において広く分布する固有種の「リュウキュウマツ(以下松)」の根には、菌根菌が共生していることが明らかになっている。琉球列島には松が自生する島の他に人為的に松が導入された島が数多く存在する。このような人為的な松の導入と共に菌根菌も共に侵入する事例が小笠原諸島などでは明らかになっており、過去に松が植林されたとされる琉球列島の島々でも同様に菌根菌の共侵入が起こっていると考えられる。しかし、琉球列島においてはどの島にいつ頃松が導入されたのかという情報が明らかになっていない。そのため、本研究では江戸時代の国絵図や文献資料などから読み取った植生情報を活用し、琉球列島の島々の松林が自生か植林由来であるか起源を明らかにするとともに、植林の有無が菌根菌群集に与える影響について考察する。</p>
著者
大島 順子 久高 将和
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p> 2020年夏の世界自然遺産登録を目指す沖縄島北部(やんばる)では、横行する希少野生生物の密猟を防止するために、森林パトロール事業が実施されている。事業の発注者は、環境省および沖縄県で、パトロールに携わるのは地元の林業の担い手である。森林パトロールは、やんばる山地に生息する希少野生生物種の違法採集を抑止する取組みであるが、より効果的な対策を検討し、林業の担い手が森林パトロールを継続した事業として受入れていくための体制づくりが今後必要となる。野生動植物の生息域と人間の生活空間が重なるやんばるが世界自然遺産に登録されることは、やんばるにおける林業の大きな転換を意味し、自然環境保全をも目的とする持続可能な森林業を構築していくために、林業従事者の意識改革と能力開発を促す学習機会の創出が求められている。今回は、森林パトロールに携わる林業従事者に実施したアンケート結果から、林業従事者の森林パトロール事業に対する考えや役割、必要な知識や技術等を報告する。</p>
著者
高嶋 敦史 中西 晃 森下 美菜 阿部 真 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島やんばる地域の亜熱帯林において、樹洞はケナガネズミやヤンバルテナガコガネなどの希少野生生物も利用する重要な生態学的資源である。そこで本研究では、やんばる地域の非皆伐成熟林2箇所に試験地(面積0.36haと0.25ha)を設け、胸高直径(DBH)15cm以上の幹を対象にDBHと樹洞の発生状況を調査した。なお、樹洞は立木の幹、枝、根に発生している奥行き10cm以上の穴と定義した。調査の結果、試験地内の立木の第一優占種はイタジイで、それに次いでイスノキやイジュが多かった。イタジイの樹洞を有する率(以下、樹洞発生率)は全体では22%であったが、DBH40cm以上では52%に達するなど、DBHが太くなるほど樹洞発生率が高くなる傾向が確認された。イスノキでも同様にDBHが太くなるほど樹洞発生率が高くなる傾向が確認されたが、樹洞発生率は全体で52%、DBH30cm以上では77%、同40cm以上では90%となっており、イタジイと比べてより細い幹でも高い樹洞発生率を呈していた。その一方、イジュにはまったく樹洞が発生していなかった。このように、樹洞発生率はDBHが太くなるほど高くなる傾向があるものの、樹種間による違いが大きいことが明らかになった。</p>
著者
大嶋 優希 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部やんばる地域の代表的な針葉樹であるリュウキュウマツは、人工林や里山などに広く植栽されているほか、林道沿いなどの人為的影響を受けた開けた場所に定着していることが多い。リュウキュウマツは、世界自然遺産候補地やその周辺にも広く分布しているが、既往の研究は人工林における木材生産を扱ったものが中心で、天然林における出現傾向や生育密度などは十分に検証されていない。そこで本研究では、やんばる地域に広がる天然生二次林においてリュウキュウマツの出現と地形の関係を評価することを試みた。現地調査では、天然生二次林内の主に尾根に沿って設定された合計約4.5kmの複数の歩道で、左右両側10m内のリュウキュウマツを記録した。リュウキュウマツの定着位置はGPSで記録し、その後GISで出現傾向と地形との関係性を検証した。その結果、記録されたリュウキュウマツは30本と少なく、尾根の先端部にまとまって出現する傾向があったことから、天然林におけるリュウキュウマツの生育環境は極めて限定的である可能性が考えられた。</p>
著者
高橋 與明 高嶋 敦史 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部のやんばる地域に分布している亜熱帯林は、世界的に見ても希少な植物相を育む森林であり、多くの固有種や希少種が生息している。沖縄県は台風の常襲地域であるため、森林は台風の影響を受け、高い頻度で撹乱が発生する(小多ら、2015)。例えば2012年には、最大瞬間風速が50m/sを超えるような大型の台風によってやんばる地域の森林が広範囲に渡り大きく攪乱されたが、そのような攪乱が森林生態系に与える影響は大きいと考えられる。広大な森林域の生態系に対する攪乱の影響を正しく評価するためには、局所的な生態系調査は必要であるとともに、林冠木が暴風によって被害を受けた地理的な位置を広域で把握することも必要となる。本研究では、後者について大型の台風による攪乱前後の二時期の航空機リモートセンシングデータからやんばる地域の森林変化を検出する手法を考案し、変化量をマッピングした。使用したリモートセンシングデータは航空機LiDARデータ(台風攪乱前)と空中写真測量データ(台風攪乱後)である。マッピングの結果、負の変化量が大きな場所は林冠木の樹冠が損傷している被害地(二次元的な空間分布)を的確に表現していることが示された。</p>
著者
阿部 隼人 松本 一穂 谷口 真吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p> 本研究では沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林における炭素循環プロセス解明の一環として、地上部における枯死有機物(葉・枝・粗大木質有機物)の量と供給量、分解量について調査した。</p><p> 枯死有機物量は枯死有機物の種類とサイズに応じて調査地(0.25 ha)の全域もしくは一部区画内の枯死有機物の乾燥重量から求めた。供給量はリタートラップ法や毎木調査のほか、あらかじめ枯死有機物を除去しておいた一部区画内の枯死有機物量を再調査することで評価した。分解量は林内に設置したイタジイ(優占樹種)の枯死有機物サンプルの重量減少量から推定し、併せてこれらの微生物分解呼吸量の計測も行った。</p><p> 調査の結果、2019年6~9月における地上部の枯死有機物量は1746 g C m<sup>-2</sup>であった。また、2019年の枯死有機物の年間供給量は337 g C m<sup>-2</sup>、年間分解量は594 g C m<sup>-2</sup>(このうち、微生物分解呼吸量は465 g C m<sup>-2</sup>)であった。これらの結果から,本森林では年によっては分解量が供給量を上回るほど大きく、枯死有機物内の炭素の大部分は微生物の分解呼吸によって大気へ放出されるため、枯死有機物から土壌への炭素の移入量は非常に少ないと考えられた。</p>
著者
矢部 岳広 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>大径木は、亜熱帯性照葉樹林において保全すべき森林の指標であると考えられている。沖縄島北部やんばる地域ではヤンバルテナガコガネやケナガネズミなどの大径木に依存する希少な固有種が多く生息しており、大径木の生育状況を把握することは生態系保全のために重要であると考えられる。そこで本研究では、同地域の非皆伐天然林において胸高直径30cm以上の大径木の生育状況を調査した。第二次大戦頃から強度な伐採活動が認められない森林域の尾根から斜面にかけて試験地を設定した。その結果、大径木の密度は全樹種合計で約160本/haであり、第一優占種はイタジイ、第二優占種はイスノキで、イジュは極めて少ない割合であった。やんばる地域の主要構成樹種であるオキナワウラジロガシは出現しなかった。やんばる地域の非皆伐林天然林を調査した既往の研究と比較すると、遷移後期種であり非皆伐老齢林の指標と考えられているイスノキがより多くみられ、攪乱依存種で明るい林床で更新するイジュの本数が少なかった。このことから、本試験地は非皆伐天然林の中でも特に安定した成熟林であると考えられた。</p>
著者
松本 一穂 速水 眞誉 谷口 真吾 安宅 未央子 大橋 瑞江
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林では、国内最大級の土壌呼吸量が観測され、その空間変動も大きいことが確認されている。本研究では土壌呼吸量の空間変動を特徴づけている要因を解明するために、土壌呼吸量と様々な要因との関係を検討した。2018年9月に調査地(1250m<sup>2</sup>)内の9箇所において、土壌呼吸量と環境要因(地温,土壌水分,土壌密度)を調べた。また、土壌呼吸量の構成要素として、根呼吸量と微生物呼吸量を調査した。なお、土壌中の微生物呼吸量は土壌呼吸量から根呼吸量とリターの微生物呼吸量を差し引くことで推定した。このほか、これらの呼吸量の規定要因として、根量や易分解性の有機物量、基質誘導呼吸法に基づく微生物活性の指標も測定した。調査の結果、土壌呼吸量の空間変動と各環境要因との間に明瞭な関係は認められなかった。一方、根呼吸量と土壌呼吸量との間には有意な正の相関関係が認められた。リターの微生物呼吸量は一様に小さく、土壌中の微生物呼吸量は場所によっては量的に大きな寄与を示した。なお、本調査ではリターの除去によって土壌呼吸量が増加する現象もみられ、非攪乱に近い状態での検討には技術的な課題があることも示された。</p>
著者
坂本 幸志郎 松本 一穂 谷口 真吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部の「やんばる」と呼ばれる地域の亜熱帯常緑広葉樹林は、生物多様性の高い生態系として知られている。本研究ではやんばるの森林において、植物が生産する有機物量(純一次生産量,NPP)を積み上げ法に基づいて評価した。NPPは一定期間における植物の成長量と枯死脱落量、被食量の和として求められる。本研究では2013, 2016, 2019年に琉球大学与那フィールド内の調査地(2500m<sup>2</sup>)において毎木調査を行い、各年のバイオマス量を見積もり、それらの差から成長量を求めた。また、調査地内の6箇所のリタートラップで採取したリターと虫糞から、それぞれ枯死脱落量と被食量を求めた。調査の結果、2016~2019年の間には台風攪乱等による樹木の先折れによって成長量は負の値(-61.5 g C m<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>)を示した。枯死脱落量と被食量はそれぞれ350,27 g C m<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>であった。その結果、NPPは315 g C m<sup>-2</sup> yr<sup>-1</sup>であると見積もられた。これらの結果から、本森林では年によっては植物によって生産された有機物の殆どが枯死脱落したり被食されることで、植物自身の成長が低く抑えられていることが分かった。</p>
著者
池田 重人 志知 幸治 岡本 透 林 竜馬
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.128, 2017

<p>秋田ではかつて天然スギが広く分布し、豊富に存在していた「秋田杉」の資源がこの地域の経済基盤を支えてきた。演者らはこうした秋田杉の成立過程を古生態学的手法と歴史資料から調べており、山地帯上部の「桃洞・佐渡のスギ原生林」下方の湿原で行った花粉分析では、全体としてスギは分析試料最下部の約1500年前からブナなどとともに優勢であるものの、約600年前以降の一時期に衰退していたことを示した(第125回大会)。一方、古くからの林政史資料など森林管理を記録した記録によると、江戸時代以降になると全国的に木材資源が急速に枯渇していくことが示されているが、そのことは秋田地方も同様であった。それ以前の時代についての資料は乏しいため山林利用の詳細は不明であるが、これまでは大規模な伐採等の影響があるとは考えられていなかった。しかし、秋田周辺地域で行った複数の花粉分析結果を検討した結果、スギの衰退は江戸時代より以前に遡り、中世には生じ始めていた可能性が示唆された。</p>
著者
土屋 智樹 関岡 東生 山下 詠子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 東京都における木炭産業の歴史について同業組合政策との関連で整理を行い、商人貸付により生産を行う,またはこれに類似する前期的な生産体系が主体であった近代日本における木炭生産の変化の要因を、流通組織の機能および発展段階から考察を試みた。 わが国における重要物産同業組合を核とする産業振興政策は1884年公布の「同業組合準則」、1897年公布の「重要輸出品同業組合法」、1900年公布の「重要物産同業組合法」等を根拠法として展開した。木炭については、「重要物産同業組合法」に準拠する同業組合によって過当競争の防止や製品検査による品質の向上が取り組まれた。 東京都における木炭の同業組合は1909年に設立されはじめ、1931年までに計6組合が設立された。しかし、1930年以降は農村恐慌を背景とする産業組合の拡充や1932年の「商業組合法」の公布により、同業組合以外の木炭関連の流通組織が推進された。そして1943年には「商工組合法」により燃料配給統制組合が東京都を含む主要消費都道府県に設立された。この組合は、第二次世界大戦後も統制経済の下で燃料林産組合として木炭の配給調整機関として機能したこと等が明らかになった。</p>
著者
今田 省吾 柿内 秀樹 大塚 良仁 川端 一史 藤井 正典 佐藤 雄飛 綾部 慈子 久松 俊一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>海岸林樹木による霧水の吸収とその樹体内分配を明らかにするために、重水素をトレーサーとして、クロマツの2年生ポット苗への霧水散布実験を行った。実験に際して、灌水停止によりポット内の土壌深さ0–5 cmの土壌水分量をそれぞれ0.38、0.18及び0.14 cm<sup>3</sup> cm<sup>–3</sup>に変化させた、対照区、中湿区及び少湿区を作製し、土壌をプラスチック袋で被覆したポット苗試料を人工気象器内で霧にばく露した。霧の発生には超音波加湿器を用い、15%重水を用いて1時間ばく露した後に、試料をガラス室に移し、48時間後に葉、枝及び根並びに土壌を採取した。植物及び土壌試料中の自由水を減圧乾燥法により採取し、それらの重水素濃度を測定した。自由水重水素濃度(FWD)は、全処理区で葉>枝>根の順に下がる傾向が見られ、葉及び枝のFWDは、対照区と比較して中湿区及び少湿区で明らかに高かった。一方、根のFWDは、対照区及び中湿区と比べて少湿区で高く、加えて、土壌中FWDにも上昇傾向が見られた。以上より、霧水として供給した水分の樹木地上部からの吸収及び根への分配が確認されるとともに、少湿区では霧水の根から土壌への滲出が示唆された。</p>
著者
有賀 一広 金築 佳奈江 金藏 法義 宮沢 宏 小出 勉 松本 義広
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

栃木県佐野市のセメント工場では, 2009 年4 月から燃料の65%(年間10 万トン)を木質バイオマスで賄う発電施設が本格稼動した。この施設ではこれまではRPS制度を利用してきたが、現在、FITへの申請を行っている。また、栃木県那須塩原市、那珂川町の製材所では、現在、木質バイオマス発電施設の整備が計画されている。今年度、那須塩原市に265kWが、来年度、那珂川町に2,000kWの発電施設が整備される予定である。一方、先の東日本大震災では、栃木県北部に位置する那須野ヶ原地域でも甚大な被害を受け、また、その後の放射能汚染による影響は大変深刻な状況である。森林の除染については、落葉等の堆積有機物、枝葉の除去や間伐など伐採による樹木の除去などが検討されているが、これらの除去物質を木質バイオマスとしてエネルギー利用することで、地域のエネルギー源確保に繋がる。現在、宮沢建設株式会社、那須野ヶ原土地改良区連合、小出チップ工業有限会社、松本興業株式会社、宇都宮大学からなる事業組合によって除染装置を備えた木質バイオマスガス化発電小型プラントの開発が実施されている。本発表ではその概要について報告する。
著者
芳賀 和樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 東北地方日本海側におけるスギの分布変化を明らかにするため、秋田県を対象に、17~19世紀の森林利用にかかわる文献史料を分析した。17世紀前半には建築用材生産のためスギ利用が活性化し、17世紀後半にはスギの減少が問題となった。また阿仁川流域では、17世紀後半から阿仁鉱山の開発が積極的に進められ、製錬用の木炭・薪需要が急増した。これにより阿仁鉱山周辺では、針葉樹よりも落葉広葉樹を優先した森林管理がみられるようになった。具体的には、スギの伐採跡地に落葉広葉樹を育成したほか、落葉広葉樹の育成に支障が出る箇所にはスギの植栽は禁止された。19世紀後半に作成された官林(のちの国有林)の台帳によると、秋田県のなかでも阿仁鉱山周辺ではブナ・ナラが多く分布し、スギの分布は少ない。たとえば荒瀬村所在の官林では、ブナ約460万本、ナラ約270万本、イタヤカエデ約120万本、ホオノキ約100万本、サワグルミ約140万本、その他60万本に対し、スギは約20万本となっている。こうした分布は、17世紀以降におけるスギの積極的な伐採に加え、鉱山開発と連動した木炭・薪生産の興隆と、それに対応した落葉広葉樹優先の森林管理の結果であったと考えられる。</p>
著者
杉浦 克明 吉岡 拓如 井上 公基
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

【目的】児童が思いつく樹種名というのは,身近な環境の他にも,何か別の要因があるのではないかと仮定した。そこで,本研究は,小学校の教科書に焦点をあて,児童が思いつく樹種名と教科書に記載されている樹種名との関係を分析することを目的とした。 【方法】調査は,神奈川県藤沢市の市立小学校5校の4年生の児童を対象に,思いつく樹木名の記入と,その樹種を知った理由についてのアンケートを実施した。また,藤沢市立小学校で使用されている1年生から4年生までの8教科の教科書に記載されている樹種名を調べた。 【結果および考察】5つの小学校の児童が回答した上位樹種名を見ると,サクラやモミジ等であり,校内や公園で比較的見ることのできる樹種が多かった。その一方で,リンゴ,ヤシ,ブドウ,バナナ,ナシなど小学校周辺では見られない主に食用となる果実のなる樹種名の回答も多く見られた。小学校の教科書に数多く記載されている上位樹種名にはミカン,カキ,リンゴ,レモン,ブドウ,バナナが見られたことから,教科書に出てくる樹種名は児童にとって無意識のうちに印象に残っているのかもしれない。
著者
岡 裕泰
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>国連統計部の月間統計情報オンライン(2017年2月17日更新版)による建築統計と人口統計、および国連食糧農業機関の林産物統計(2015年12月更新版)を用いて、2000年から2014年までの各国の年次別建築面積(住宅、非住宅別)、住宅建築戸数、人口と、製材と木質パネルの合計の見かけの消費量(木材消費量)の関係を分析した。住宅建築面積のデータが掲載されている主要国18か国のうち、住宅建築面積のみの一変数によって各年の木材消費量を説明しようとしたときに決定係数が0.6以上になったのは、日本(0.93)の他、トルコ、ロシア、ニュージーランド、フランス等であり、一人あたりの木材消費量が大きい北欧諸国やドイツでは決定係数が低く、住宅建築に関わらない用途の比重が高いことが示唆された。住宅建築面積に比例する成分の割合は日本が88%と際だって高く、ほとんどの国は50%未満であった。住宅建築面積が1m<sup>2</sup>増えるごとの木材消費量の増分は0.1~0.4m<sup>3</sup>/m<sup>2</sup>程度の国が多く、日本は中庸であった。日本の人口あたりの住宅建築戸数は減少傾向にあるが依然としてかなり高く、一戸あたりの面積はやや小さい方だった。</p>