著者
藍場 将司 原田 一宏
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.96, 2022-05-30 (Released:2022-06-21)

日本の国立公園研究における市民参加・協働に関して、「Cinii」に掲載されている先行研究のレビューと、論文本文の文章解析を実施した。日本の国立公園に関する研究のうち本文が閲覧可能であった698件中、138件で政策への提言が確認された。文章解析の結果、年代を問わず自然・利用・地域・保護が頻繫に用いられており、自然の利用と保護の関係に注目した論考が多いと考えられた。一方で年代を経るにつれ管理が頻出することから、研究者の間で自然への人為的介入の必要性が高まっていると考察された。一方で「管理」は多様な文脈で使用されるため、現地での検証も合わせて行われる必要がある。市民参加や連携に関する提言は27件(19.6%)で確認された。1980年代から2000年代前半までは、地域住民の意思を反映させる制度的・行政的仕組みの欠如が指摘されていた。環境省が連携を進める趣旨の提言を公表した2007年以降、国立公園の協働を主たるテーマとして議論する論考が増加し、「協働」の理論モデルの構築や負の側面にふれる論考が確認されるなど、「協働」を軸に市民参加や連携に関する議論が進行したものと考えられる。
著者
玉木 一郎 畑中 竜輝
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

フモトミズナラは東海地方と関東地方の一部に生育するコナラ属の希少樹種である。本研究では,自生地が多く存在する岐阜県の14集団417個体を対象に,それらの遺伝的多様性の程度や遺伝的分化の程度を明らかにすることを目的とした。自生地を網羅する14地域から,集団あたり約30個体の葉サンプルを採取した。DNAを抽出し,EST-SSR7座の遺伝子型を決定した。各集団における<i>H</i><sub>E</sub>と対立遺伝子数は,それぞれ平均(SD)0.745(0.012)と8.8(0.5)の値を示し,集団間のばらつきは小さかった。<i>G</i><sub>ST</sub>とHedrickの<i>G'</i><sub>ST</sub>は,それぞれ0.009と0.049の値を示し,遺伝的分化は6/7座で有意であった。しかし,<i>D</i><sub>A</sub>遺伝距離に基づくNJ樹からは明瞭な地理的傾向は認められず,地理的距離とDA遺伝距離の相関も有意ではなかった(r = 0.062; P = 0.659)。STRUCTURE解析においても,単一の任意交配集団が支持されたことから,岐阜県のフモトミズナラの遺伝的分化の程度は弱いことが示唆された。今後は同じ地点から採取した近縁種かつ普遍種のコナラと遺伝的変異の程度を比較する予定である。<br>
著者
大谷 雅人 岩泉 正和 佐藤 新一 宮本 尚子 矢野 慶介 平岡 宏一 那須 仁弥 高橋 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

林木遺伝資源の生息域内保存を進めるにあたっては、集団内の遺伝的変異の維持機構を明らかにすることが重要である。本研究では、中間温帯林の主要な遷移後期樹種であるモミを対象として、花粉及び種子を介した遺伝的流動の様態を分析した。福島県いわき市の固定試験地(約1 ha)の7地点において2002年、2005年、2010年に採取された自然散布種子のうち約650粒の胚と雌性配偶体、および試験地内の成木327個体について、SSR12遺伝子座における遺伝子型を決定した。種子散布量には豊作年と並作年の間で約5倍の差が認められたが(125.2~652.9粒/m<sup>2</sup>)、試験地外からの遺伝子流動の割合は調査した3繁殖年次間でほぼ一定であった(種子経由:約13~15%、花粉経由:53~57%)。種子親・花粉親として寄与した試験地内の成木の個体数や多様性についても、繁殖年次による差異は認められなかった。ただし、複数年にわたって種子親・花粉親として寄与した個体は3繁殖年次の寄与個体ののべ数のそれぞれ60.3%、42.4%にすぎなかったことから、各成木個体の雄性・雌性繁殖成功は年次ごとに大きく異なることが示唆された。
著者
長谷川 陽一 吉田 明弘 三嶋 賢太郎 高田 克彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

花粉化石に含まれる分解が進んでいるDNAを解析するためには、1細胞あたりに多数コピーが含まれる細胞質DNAを用いる必要がある。スギの葉緑体DNA(cpDNA)には、多くのマイクロサテライト(SSR)領域が含まれていることが明らかになっているが、スギの葉緑体SSRの多様性を天然林集団で明らかにした研究はない。そこで本研究では、高標高のスギ天然林集団として八甲田山1・2と秋田駒ケ岳カルデラ内の3集団を、低標高の集団として鰺ヶ沢、碇ヶ関、仙岩峠、鳥海、雄勝峠の5集団を対象として葉緑体SSR18座とクローン識別用に核SSR5座を用いた解析を行った。高標高の集団の、八甲田山1では全10サンプルが1クローンと、八甲田山2では全45サンプルが8クローンと、秋田駒ケ岳では全19サンプルが1クローンと推定された。また、八甲田山2における8クローンは全て、葉緑体SSRを使っても識別することが可能であった。低標高の集団では、69%~96%の個体が葉緑体SSRマーカーによって識別可能であった。これらの結果から、スギ天然林集団において葉緑体SSRマーカーに遺伝的多様性があることが明らかになり、花粉化石のDNA解析に使用できると考えられた。
著者
農林科1、2学年白井勇斗、柳瀬聡子、影山雅晃、清水渚
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

大島高校さくらプロジェクトとは、日本一早いお花見ができる伊豆大島の観光名所を生徒の手で作ることを目的に、平成24年度から活動を開始した長期的なプロジェクトである。<br> 私たち東京都立大島高等学校の地元、伊豆大島には、大島で育種開発された「夢待桜(ユメマチザクラ)」という、1月~2月に淡いピンクの花を咲かせる新種の桜がある。大島高校では、この「夢待桜」を全校生徒の手で接ぎ木繁殖して苗木を作り、10年後、20年後の桜並木をイメージしながら校内の通路沿いなどに計画的に植樹している。<br> これまでに、大島高校敷地内の他にも、島内の企業と連携して幅広く植樹していただくなど、私たちが育てた150本以上の苗木が有効活用されている。また、全校で取り組む活動であるため、接ぎ木や植樹の体験を通じて、多くの生徒に農業技術や環境活動に興味を持ってもらっている。<br> また、この桜の木の繁殖は、日本全国どこでも実施できる取り組みである。大島高校ではこのプロジェクトの成果を「高校生による桜の繁殖ガイドライン」として、全国の高校でも展開できるような夢のある活動にしていきたい。
著者
鶴田 燃海 向井 譲
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

SSRマーカーを用い、日本のサクラを代表する園芸品種ソメイヨシノの連鎖地図を構築した。Mapping pedigreeにはソメイヨシノ(CY)を種子親、野生種のエドヒガン(E750)を花粉親としたF<sub>1</sub>の実生178個体を用いた。Pseudo-testcross法により、50のSSRが座乗した、期待される8連鎖群からなる384.8cMのCY mapおよび、SSR11座からなる130.3cMのE750の部分地図が構築された。<br>このソメイヨシノとエドヒガンとの交雑による実生のうち101個体は、生育不全により本葉の展開から数ヶ月以内に枯死した。実生でみられた生育不全は雑種不和合の一つと考えられ、構築した地図にこの生育不全(HIs: Hybrid inviability of seedlings)のマッピングを試みた。<br>HIsと関与する遺伝子領域を、健全な実生と生育不全の実生とでマーカー分離比の歪みの比較を行うことにより、また遺伝子型と形質との関連解析および、QTL/MTLマッピングにより探索した。これらの結果はすべて、HIsがCY mapの第4連鎖群、BPPCT005およびBPPCT010マーカー間の12.3cMの領域に位置することを示した。
著者
加藤 珠理 勝木 俊雄 岩本 宏二郎 松本 麻子 吉丸 博志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

サクラには多種多様な栽培品種があり、全国各地の植物園等で収集・保存されている。著者らによるこれまでの研究では、多摩森林科学園、国立遺伝学研究所、新宿御苑で保存されている主要なサクラの栽培品種についてDNA分析を行い、クローン性を整理してきた。この結果と照合することで、他の集植機関・地域(松前公園、日本花の会結城農場、東京都神代植物園、東京都小金井公園、東大小石川植物園、東大日光植物園、石川県、京都府立植物園、京都御苑、植藤造園、大阪市大植物園、福岡市植物園、監物台樹木園など)で管理されているサクラ(584個体)の実態解明を試みた。本研究では、少数のDNAマーカーで効率よくクローン識別を行えるマーカーセットを検討して、多型性の高いSSR9座のマーカーセットを用いて、DNA分析を行った。その結果、先行研究で整理された栽培品種と一致するものが406個体、残りの178個体は、遺伝子型が異なる新規クローンとして約126タイプにまとめられた。これらの新規クローンについては、今後、詳細な検討を行うことで分類上の位置づけを行う必要がある。
著者
平野 悠一郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>日本では1960~90年代にかけて、アウトドア・レジャー活動としてのキャンプへの関心が高まり、各地の国有林・民有林内にも多くのキャンプ場が設立された。しかし、1990年代後半以降は、経済不況と利用者の減少による施設過剰状態となり、大多数のキャンプ場の経営が悪化した。これを受けて、2000年代以降は、民間の経営主体を中心に、キャンプ場の再生の動きが顕著となる。その一環として、ウェブを通じた情報集約・予約システムの構築や、宿泊・体験の「質」を重視する動きが見られてきた。近年では、そうしたキャンプ場再生の動きが、幾つかの方向性を伴って加速しつつある。例えば、グランピングやワーケーションの場としての施設整備に加えて、自然教育の機会としてのプログラムを充実させ、また、地域資源活用による地域活性化の基点として位置づける等の傾向が、事例調査を通じて確認できた。</p>
著者
奥 敬一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p> 地域における人々の生活・生業が生み出す「文化的景観」は、文化財の新たなカテゴリーに加わってから10年以上が経過し、「重要文化的景観」選定地域も50を超えた。こうした文化的景観の捉え方は、共通の地域特性を持ったひとまとまりの視覚的範囲として設定されたコンテンツであることから、地域づくりへの活用にとっても大きな可能性をもっていると考えられる。しかし、景観を生み出した駆動要因である生活・生業の価値を重視し、普段は「見えない」部分が強調されることで、かえって来訪者や一般の生活者にとって景観の価値をわかりにくくしている面も否めない。文化的景観の価値を見る人々に伝え、地域に関わる動機付けを生み出すためには、景観の「直接目に見える部分」と「直接目に見えない部分」の双方を統合的に視覚化できる仕掛けが必要とされている。本研究では、そのような視覚的装置について、① 眺望・展望地点、② メディアに引用されるビジュアル、③ 野外での解説装置、④ 拡張現実、の4種類に整理して、その有効性や計画論を試みたい。</p>
著者
中川 真海 加藤 正人 トウ ソウキュウ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>広葉樹の価値は、川下の需要の状況により大きく変化するため、広葉樹林業では需要と供給のマッチングが重要であるが、現状は、マッチングがうまくいかず国産広葉樹の約9割は価値の低いチップ材となっている。樹高や胸高直径で樹形が把握でき価値が決められる針葉樹と違い、広葉樹は枝分かれや曲がりが多くあるため、需要と供給のマッチングにはレーザー計測などで得られる、より詳細な情報が必要である。しかし、レーザー計測機器は高価であり、普及が難しく、これが、広葉樹林業が伸び悩んでいる原因の一つとなっている。</p><p>本研究では、安価かつ簡便に立体モデルを作成する方法を試行し、モデルの精度を検証した。iPhone SEを用いて樹木の連続写真または動画を、角度や枚数など撮影条件を変えて撮影し、それぞれの撮影条件ごとにSfM解析を用いて立体モデルを作成した。これらの精度を検証した結果について報告する。</p>
著者
大久保 達弘 深澤 瑛一 鈴木 紘子 逢沢 峰昭 飯塚 和也
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>リターフォールは、森林生態系の林冠から林床への放射性セシウム(RCs)の移行媒体、腐葉土製造の原料であるが、両者を関連づける情報は少ない。本研究は、福島第一原発事故後の栃木県のRCs初期沈着量の違う3ヶ所のコナラ林において、リターフォール、林床堆積有機物層(A<sub>0</sub>)および土層(A)のRCs濃度の7年間の変化、樹上生枝葉との比較、将来の腐葉土製造再開の可能性を考察した。リターフォール内の葉のRCs濃度は、事故直後はRCs初期沈着量の順に低くなったが、いずれの場所も林床のA<sub>0</sub>層濃度と比べ低かった。これはRCs初期沈着量に応じて林冠でのRCs沈着量が増加したが、事故当時コナラは展葉前で直接林床に降下沈着したためである。コナラ樹上枝葉のRCs濃度の季節変化(2015)は、当年枝葉は開葉直後の4月、5月が最も高く、その後はともに減少し、落葉期は葉で減少、当年枝は上昇した。以上の結果は開葉落葉に伴う枝葉のRCsの移行が枝内で限定していることを示唆する。将来的な腐葉土製造再開の可能性を知るためのA<sub>0</sub>層中のRCs濃度の減衰曲線は負の指数関数で近似され、初期沈着量の違いに応じて暫定許容値(400Bq/Kg)を超える期間が延長すると予測される。</p>
著者
竹田 晋也 鈴木 玲治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

ミャンマーのバゴー山地では英領時代よりカレン領域が設定され、ごく最近まで政府からの規制をほとんど受けない焼畑が営まれてきた。このカレン領域であるバゴー管区トングー県オクトウィン郡S村では、各世帯は毎年焼畑を開いて自給用陸稲に加えて換金用のゴマ、トウガラシ、ワタなどを栽培してきた。同村では2010年ごろから小規模ながらも谷地田造成による水田水稲作がはじまった。谷地田周囲の斜面にはバナナ、マンゴーなどの果樹とともにチーク(<i>Tectona grandis</i>)やピンカドー(<i>Xylia xylocarpa</i>)が植えられ、現地では「水田アグロフォレストリー」と呼ばれている。2012年に成立した農地法では、水田と常畑を対象に土地利用証明書の発行を通じた小農土地保有の合法化が想定されているが、焼畑はその対象外である。S村にも、最近の土地政策変化の情報が断片的に伝わりつつあり、各世帯は将来の土地所有権確保を期待して「水田アグロフォレストリー」をすすめている。19世紀末のカレン領域制定から焼畑耕作が続くS村では、自給用陸稲生産という基本的な性格は変わらないが、道路通信事情が改善され、学校教育が普及する中で、市場経済との接合が少しずつ進行している。
著者
張本 文昭
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>安田(あだ)集落は沖縄島の北端、国頭村の太平洋岸に位置する。琉球時代には各地の城や社寺、架橋や造船などのために材木需要が高まり、人々は林業を生業とした。材木は船で沖縄島南部に運び首里城に納められた。また国の重要無形民俗文化財に指定されているシヌグという祭祀では、無病息災や五穀豊穣、豊漁などが400年近く祈願されている。大シヌグ(うふしぬぐ)に執り行われる山ヌブイは、男のみが山に入り、山にある植物を身にまとい草装神となって集落に降り、豊年や女性、高齢者、子ども達の無病息災を祈願する。シヌグ小(しぬぐんくゎー)には臼太鼓(うしんでーく)が女性によって執り行われるが、極めて古典的な唄と舞踊で構成されている。わずか12名が在籍する集落の小学校では、総合的な学習の時間や生活科などの教科として、先述したシヌグに関する講話や祭祀への参加、また現在復元されている首里城の今後の改修のための植林事業を実施している。その他にもヤンバルクイナ保護活動、また稲作や漁業など、集落の環境について、人、文化と歴史、自然の総合的な観点から教育活動が長く展開されている。校長は、森を取り巻く環境そのものが生きた教材だと話す。</p>
著者
千賀 義博 横山 千佳 唐木 心優 清水 開 中西 唯稀 松村 竜誠 ワイズナーディラン 武蔵 榎本 浩実 黒河内 寛之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>長野県伊那市にある、今年で開校70年を迎える伊那西小学校は、校舎を取り囲むように1.4haの「林間」と呼ばれる学校林を所有し、この林間を活用した教育活動に取り組んでいる。1950年の開校当時は、草原だった場所に、翌1952年に背丈より低いカラマツ500本をPTAの手で植樹した。現在は、これらカラマツは優に20mを越える高さに成長している。林間には、他にも、アカマツ、さくら、モミジ等が自然に生えたり、あるいは、卒業記念に植えられたりと、42種類600本以上の樹木が生育している。樹木の多くは、背丈が随分と大きくなり、子どもたちが、全身で触れたり、観察をしたりするには適しているとは言えない状況があり、"子どもたちの目の高さで利活用できる森"は、学校の願いとなっていた。そこで、この森を今後24年かけて、計画的に大規模伐採し、子どもたちの学びの森となるよう、平成31年4月から運用してきている。本研究は、①過去70年の森の成り立ち ②大規模伐採の計画と実施 ③4月からの林の成長を観察することにより、子どもたち及び職員が今後どのような林間をどのように残していくかを見出そうとした研究である。</p>
著者
福田 夏子 下村 彰男
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

近年、岐阜県高山市周辺では、里地里山へニホンツキノワグマが出没し、人身被害や農業被害を招いている。このため、本研究では、クマの出没地の特性について、土地利用条件から考察することを目的とした。<br> 分析は、次の1)2)から、出没件数と土地利用条件との関係を把握した。1) 過去7年間(2008~2014年)の、岐阜県クママップ上の出没地点データについて、出没場所(居住地、山林、農地、その他)と出没年、季節/時期、時間、クマの頭数・幼/成獣との関係を把握した。2) 1)の出没地点のうち50地点をランダムに選び、各地点をQGIS(1.80 Lisboa)で地図化し、各地点から半径1kmの円を描いた。そして、円内の土地利用をモデル化し、各モデルと円内の出没件数との関係を分析した。
著者
八木 貴信
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ここで扱う筋残し刈りとは,植栽列間を1列おきに刈り払うとともに,植栽木周囲を坪刈りして,刈筋間の刈残しからの植栽木への庇圧や物理的干渉を緩和する下刈り方法である。一部の篤林家の間で実施されてきたこの方法は諸特性に未解明な点が多いが,大きな可能性を持つ。まずこの方法は,植栽する人工更新エリアと刈残す天然更新エリアを水平分離しており,自然植生と共存的である。刈残し筋の適切な拡幅(=疎植化)と組み合わせれば,植栽で成林を担保しつつ,天然更新エリアで混交林化材料を蓄積できる。刈残し筋からの側圧は植栽木の幹形向上,ツル繁茂抑制に役立つ。雑草木を刈残すことはシカ害対策上も有利である。また低コストに下刈り回数を維持でき,植栽木へのアクセス路である刈筋の長期維持が容易なので,ツル切りなど形質不良対策に役立つ。本発表ではこの下刈り方法で不可避な植栽木の成長低下の程度について報告するが,熊本県人吉市の造林地での試験では,植栽3年後,幹形状比は「毎年全面刈り<隔年全面刈り<毎年筋残し刈り<無下刈り」だが,樹高は「毎年全面刈り≧隔年全面刈り=毎年筋残し刈り>無下刈り」で,今後の経過に期待が持てる結果となった。</p>
著者
佐々木 豊志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>森林を通じて、学生が〝SDGs〟に取り組んだ事例の報告です 〝SDGs〟は、国連が2015年に193カ国の同意のもとに採択された2030年までに持続可能な社会を実現するために達成すべき17の目標です。その中で森林資源を循環する持続可能な地域資源として活用するために学生が取り組んだ具体的なアクションです。 青森山田学園は、青森県内に放置してきた広大な山林を所有しています。青森大学の学生が、この山林を有効に活用するための企画を提案し、昨年度朝日新聞社が主催した「大学SDGs ACTION AWARD ! 」にエントリーし、入賞しました。学生が山林の有効な活用を提案・実践する過程を通じて大学・行政・地元企業・地域住民がつながり、様々な取り組みを展開しました。SDGsの視点から取り組んだ活動が広がり、学生にとって、森と地域、森と産業、森と暮らしを学ぶ貴重な場となりました。次代を担う世代に森林に関心が増すことが、近代社会が抱える森林・林業の課題の解決につながる可能性もあります。そして、この事例から今後「森林資源と学生の学びや研究の場」ともなりうる可能性を考察します。</p>
著者
久保田 将之 吉岡 さんご 新井 一司 松下 範久
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

キイチゴ属4種の分布拡大において、種子繁殖と栄養繁殖がどの程度寄与しているのかを推測するために、マイクロサテライト(SSR)マーカーを用いた多型解析により各種のクローン構造を調査した。東京都奥多摩町(以下奥多摩)と東京大学秩父演習林(以下秩父)のスギ幼齢林内に、それぞれ8 m×13 mと5 m×10 mの調査区を設定し、調査区内の全ラメットの遺伝子型を、4遺伝子座のSSRマーカーを用いて決定した。その結果、奥多摩の調査区ではモミジイチゴ94ラメットが4ジェネットに、ニガイチゴ100ラメットが7ジェネットに、クマイチゴ53ラメットが13ジェネットに区別された。秩父の調査区ではモミジイチゴ29ラメットが7ジェネットに、ミヤマニガイチゴ115ラメットが6ジェネットに、クマイチゴ116ラメットが42ジェネットに区別された。ラメット数に対するジェネット数の比は、どちらの調査地でもクマイチゴが最も高かった。これらの結果から、クマイチゴは、他種よりも分布拡大への種子繁殖の寄与が大きいと推測された。クマイチゴは他種より埋土種子が多いか、実生の生存率が高い可能性があると考えられる。