著者
林田 重幸 山内 忠平
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.183-189, 1956

トカラ馬は,生物統計学上,体型的に済州島馬,宮古馬,八重山馬,海南島馬及び四川馬に近似性を示し,御崎馬木曽馬,北海道和種,満州馬及び蒙古馬とは近似度が低い。<br>東亜の在来馬を南方小形馬と北方中形馬に分けることが出来る。南方小形馬に属するものは,済州島馬,南鮮馬,宮古馬,八重山馬,海南島馬,四川馬,雲南馬,貴州馬,トンキ馬,アンナン馬,東インド諸島及フイリピンの在来馬である。その典型的なものは四川馬の名で知られる四川,雲南,貴州の山岳地帯に飼養される矮馬であり,その体高100~120cmの矮小馬である。トカラ馬は南方小形馬に属す。東インド諸島及びブイリピンの馬はその基礎は小形馬であると考えられるが,アラブ系統馬によつて,やや貴化と大格化をみる。北方中形馬に属するものは,北鮮,満州,蒙古,伊犁,ハイラル,サンペースの馬である。その典型的な在来馬は,内外蒙古に飼養される蒙古馬であると考えられ,その体123~136cm平均131.4cm程度のものであろう。伊犁及びサンペース馬は蒙古馬にアラブの血液の注入されたものである。本邦在来馬である御崎馬,木曽馬及び北海道和種は大さの点で北方中形馬に入る。<br>南方小形馬と北方中形馬の分布は図のようである。
著者
田中 桂一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.307-318, 1974-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
146
被引用文献数
1
著者
熊崎 一雄 森 純一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.362-368, 1962 (Released:2008-03-10)
参考文献数
8

岡山,徳島,宮崎の各県下に,合計13頭のアルビノ牛が発生した.これらの血統調査,外貌観察,被毛および眼球組織の顕微鏡的観察を行ない,次の結果を得た.1. これら13頭は,4頭の優良種雄牛から生れたものであつて,先に松本らが報告した3頭のアルビノ牛と密接な血縁関係をもつていた.松本らが報告した3頭も念めて,総計15頭のアルビノ牛が,種雄牛FM号の血を引いていた.残りの1頭では,その父親が,北海道に発生したアルビノ牛と半兄弟の関係にあつた.これらの関係から,アルビノ牛の発現は劣性遺伝子に支配されるものと推定される.2. 6ヵ月以上観察を続けることができたアルビノ牛には,すべて幽霊斑が出現した.この出現には,性の差が関与するといわれているが,今回調査したなかで,雄はすべて生後間もなく売却屠殺されたので,これを確認することができなかつた.幽霊斑が出現する原因は,被毛に含まれる色素の多少によるものではなく,被毛の構造の違いによるものと思われる.3. これらの牛は,出生後しばらく強い羞明現象を表わしたが,成長するに及んでその程度を減じた.4. 成長するに従つて,虹彩および毛様体部に色素の沈着を認めた.また一部のアルビノ牛の眼瞼および耳の皮膚に暗色の小斑点の出現を認めた.これらの事実から本アルビノ牛は不完全アルビノと推定された.
著者
大高 文男
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.226-232, 1962 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

16頭の豚で,枝肉の各部位(1~7と呼ぶ)の電気抵抗値(単位Ωははぶく)を測定し,次のような平均値を得た.部位1(腿の切断されて露出している肉面)1931;2(背肉の腿に近い部分)2334;3(背肉の肩に近い部分)1683;4(肩肉の上部)1918;5(肩肉の下部で前肢に接する付近)1363;6(下腹部の中央の肉面)17667(横隔膜筋)1628.部位2と部位3,5,または7との間には,5%水準で電気抵抗値に有意差が認められた.肉の電気抵抗値は,部位および個体によつて差があるが,死後における経時的変化の様相は同じである.死後は,最初急激に低下するが,まもなくゆるやかに減少していく.この間一時,平衡または増加の傾向を示すが,これは,酸溶性燐酸化合物およびpHの変化とも考えあわせると,死後強直の時期と思われた.赤血塩還元法で遊離SH基の量を測定した.最初の間は肉蛋白質の変性による遊離SH基の量の増加よりも,他の還元性物質の減少が大なるため,測定値は急激に減少して行き,この期間における電気抵抗の変化と同じ様相を示した.その後,蛋白質の変性にともない,遊離SH基が増加するに従つて,この値は増加するようになるが,この時期はいわゆる初期腐敗の時期と思われた.一般に応が腐敗して来るに従い,電気抵抗は,各部位でたがいに似た値を示すようになる,しかし,いわゆる初期腐敗と思われる時期の値は,部位によつて幾分異なるようであつた.
著者
カジャラン J. カジャラン S. シリノンコート S. 取出 恭彦
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.754-759, 1998

<i>Brevibacterium lactofermentum</i>より調製された酵素処理菌体末(DBCP)経口投与の初産母豚および哺乳子豚に対する影響について研究した.DBCPを妊娠期に投与する事により,出生時の一腹あたりの子豚数が増加した.DBCPの投与により,糞中の<i>Escheyichia coli</i>数が減少し,また母豚初乳中の全タンパク質,β-ラクトグロブリン,γ-ラクトグロブリンの量が増加する傾向がみられた.これらのDBCPの効果はDBCPに含まれるペプチドグリカンの免疫賦活効果によるものと考えられた.DBCPを妊娠16日から,授乳期まで投与し,更に,哺乳期に哺乳期用飼料添加により投与した場合が離乳時の一腹あたり子豚数および体重において最も良い成績が得られた.
著者
有益 祥子 及川 卓郎
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.269-280, 2017

<p>本研究は,ブタの繁殖形質に関するメタ分析により品種と気候帯の効果およびそれらの交互作用について明らかにすることを目的に行った.データには205論文の2097件の形質平均値を使用した.試験地をケッペンの気候区分に従い温帯,熱帯,亜寒帯に分類した.分析対象形質は,生存産子数,離乳産子数,離乳時平均体重,離乳時一腹体重,分娩率,分娩間隔などの12形質である.分析には統計ソフトウェアSASを使用した.SAS分析プロセジャーは,研究論文データに共通な変量効果を含む混合モデルMIXEDである.分析モデルでは,標本数を誤差分散に対する重みづけ値として考慮した.主効果に対する有意性検定の結果,多くの繁殖形質で気候帯,品種,産次数の効果が有意性を示した.一方,経営体の効果は少数の形質で有意性がみられた.本分析の結果,改良種として世界の広い地域で飼養されているランドレース種と大ヨークシャー種の高い繁殖能力が示された.この高い能力は,品種の原産地である温帯に留まらず,熱帯においても若干の低下はあったもののみられ,これらに亜寒帯を加えた3地域で示された.また,西洋種間交雑種に代表される交雑種では,温度環境が熱的中性圏以外の温度ストレスがかかる地域においてヘテローシス効果により高い能力が示された.</p>
著者
黄 宸佑 竹田 謙一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.243-246, 2016-08-25 (Released:2016-09-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,羊毛食い発現の日内変動を2つの飼育密度条件下で調べた.供試個体を高密度(全45頭,1頭/m2)と低密度(全24頭,0.4頭/m2)条件下で供試個体の羊毛食いを10分間隔で5分間の連続観察を行い,各個体ごとの羊毛食い発現回数と,羊毛食い1回あたりのバイト数,羊毛食い発現個体数を記録した.両飼育密度条件下において,夕方の給餌後の時間帯での羊毛食い回数,バイト数が他の時間帯より有意に多かった(P<0.05)が,1回あたりのバイト数は有意に少なかった(P<0.05).また,1日あたりの羊毛食い発現個体割合は,夕方の給餌後に最も多くなった(P<0.05).以上より,ヒツジの羊毛食いは摂食行動後に多発し,摂食時における何らかの口唇への刺激不足が羊毛食い行動発現に影響している可能性が示唆された.
著者
上坂 章次 堀 力
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.153-158, 1950

カゼインの高周波乾燥について予備的な試験を行い次の如き成績を得た。<br>1 平板極板を用いても金網極板を用いても生カゼインの乾燥效果には大差ないようである。<br>2 極板距離の小なる場合即ち電界強度の大なる場合程温度の上昇も速く,乾燥速度も速い。<br>3 生カゼインの厚みが薄い程温度上昇は早く,乾燥時間は短かくてすむ。<br>4 カゼインの乾燥に高周波を応用することは普通の方法では乾燥温度が余りに高くなるために品質を惡化する。<br>5 この乾燥温度をなるべく少くするために出力を落として照射したが乾燥時間が徒らに長くなり,かつ温度も相当高くなつて目的を達しなかつた。また扇風機を用いて送風しながら乾繰したが温度の上昇はまぬがれなかつた。
著者
萬田 正治 佐藤 充徳 黒肥地 一郎
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.236-239, 1989-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2

放牧牛の脱柵を防止する一助として,電牧用電線における有彩色の効果を検討するため,ホルスタイン種搾乳牛21頭を用いて,各色彩に対する牛の行動反応を観察した.供試色として,白,赤,橙,黄,緑,青,紫の7色を用い,実験用通路に張られた各着色電牧線に対する行動反応を,繰り返しのある72型ラテン方格法により検討した.その結果,着色電牧線に対する牛の反応は,赤>青>白>橙>黄>緑>紫の順に,有意に高い傾向を示した(P<0.05).またこのような色彩に対する牛の認知距離には,個体による差異が大きく関与していることも示唆された(P<0.01).
著者
阿佐 玲奈 武藤 美鈴 緒方 三華 西尾 康宏 口田 圭吾
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.351-358, 2015-08-25 (Released:2015-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

交雑種一産取り肥育牛および交雑種未経産牛を用い,真空低温調理法によるローストビーフの消費者型官能評価を行い比較検討することを目的とした.交雑種一産肥育牛は妊娠期間を経て,約10ヵ月の肥育期間で,平均35ヵ月齢で屠畜した.交雑種未経産牛は受胎しなかったウシで,肥育期間9ヵ月以上,32ヵ月齢で屠畜した.官能評価は2点嗜好法で行い,肉質が同程度となるよう選抜した交雑種一産肥育牛および交雑種未経産牛を1セットとし,5セット実施した.枝肉格付形質および画像解析形質は,すべての形質で一産肥育牛および未経産牛間の有意差は認められなかった(P>0.05).評価項目は香り,軟らかさ,ジューシーさおよび好ましさで,項目ごとに4段階で評価した.交雑種未経産牛に比べて交雑種一産肥育牛で香り,軟らかさ,ジューシーさおよび好ましさの全形質において有意に高い値を示し(P<0.01),交雑種一産取り肥育牛が消費者からの高い評価を得た.
著者
當眞 嗣平 及川 卓郎
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.103-113, 2017
被引用文献数
6

<p>アグーは,沖縄県で飼養されている黒毛で小柄なブタである.その品種特性を明らかにするため,アグーの体尺測定値(<i>n</i>=1,164)と繁殖成績の現状調査を行った.アグーの体尺測定値は,50年前の報告値と変わっていなかった.主成分分析により中国系品種および西洋系品種の体尺測定値を比較した結果,アグーの体の大きさは中型の中国系品種と同程度であった.しかし,外貌上の特徴はそれらとは異なり,体長が短い割に体は太い体型であった.繁殖成績における分散分析の結果,着床胎子数,総産子数,生存産子数,離乳頭数,死産頭数,離乳時生存率,ミイラ率,平均離乳時体重および離乳時総体重で品種の効果が有意であり,最小2乗平均値においてアグーの着床胎子数,総産子数,生存産子数,離乳頭数は西洋系品種の半分以下であった.生時生存率,離乳時生存率は低く,ミイラ率は高い傾向にあった.平均離乳時体重と離乳時総体重も低かった.</p>
著者
小堤 恭平 安藤 四郎 池田 敏雄 中井 博康 千国 幸一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-6, 1985-01-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
22
被引用文献数
9 2

市場に流通している牛肉の理化学的特性と格付等級との関連を明らかにするために,黒毛和種去勢牛の特選,極上,上,中,並およびホルスタイン種去勢牛の上,中,並に格付けされた部分肉の胸最長筋(6-8胸椎部のリブロース)各6点について,比重,一般的化学組成および脂肪酸を分析した.黒毛和種の特選,極上,上,中および並の試料の脂肪含量の平均値は,それぞれ31.7,23.5,19.8,14.9および10.6%であった.ホルスタイン種の上,中および並での平均値はそれぞれ12.4,7.7および8.5%であった.特選の脂肪含量は他の格付等級のものとは1%以上の水準で有意の差があった.脂肪含量と脂肪交雑評価点との間には両品種ともる高い正の相関が見られた.両品種の脂肪交雑評価点「+2」と「+1」における脂肪含量には統計的に有意の差は認められなかった.脂肪交雑評価点の「+2」と「十3」の脂肪含量には有意差は認められなかったが,他の評価点間では5%の水準で有意差が認められた.比重と脂肪含量との間には両品種ともに高い負の相関が認められた.肉の比重から脂肪含量を求める回帰式は,y=-549x+592,r=-0.93であった.同時に比重から脂肪交雑評価点を求める回帰式は,y=-96.6x+103,r=-0.92であった.このことから比重より胸最長筋(ロース芯)の脂肪含量または脂肪交雑評価点が簡単に求められる.脂肪酸組成は両品種の格付等級間でなんらの相違も認められなかったが,品種間ではC18:1,飽和および不飽和脂肪酸量に有意の差が認められた.脂肪含量とC18:1,および不飽和脂肪酸量との間には正の相関が認められた.
著者
渡辺 乾二 佐藤 泰
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.393-400, 1971-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19

ラードを空気の通気のもとに170-175°Cで,0-0.5,0.5-1.0,1.0-2.0,2.0-4.0,4.0-8.0と8.0-14.0時間断続的に加熱した.各加熱区間で得た揮発性生成物を中性化合物,酸性化合物およびラクトンとに分画した.これらの化合物の同定にはGCおよびある場合にはGCMSを用いた.加熱したラードの酸化変質の測定は化学および物理的方法によった.各加熱区間で得た主要な成分は,中性化合物としてペンタナール,ヘキサナール,ヘプタナール,ペンタノール,オクタナール,2-ヘプテナール,ノナナール,2-デセナールと2-ウンデセナールであり,酸性化合物としてはC6, C8とC9の脂肪酸であった.それらの生成割合は加熱区間ごとに異なっていた.検出したラクトンはγ-ラクトン(C6, C7, C8とC9)とδ-ラクトン(C10とC12)であり,γ-ラクトンが酸化変質の進んだ加熱区間の後半において特に顕著に生成されることが認められた.
著者
平田 昌弘 木村 純子 内田 健治 元島 英雅
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.1-11, 2015-02-25 (Released:2015-03-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,熟成ハード系チーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)と熟成ソフト系チーズ(タレッジョ)の加工上の特徴を分析し,イタリア北部における熟成チーズの発達史を再構成することを目的とした.パルミジャーノ・レッジャーノの加工の特色は,生乳の脱脂,自然に混入してくる微生物を利用していること,一日静置させて乳酸菌を増やしたホエイを加え合わせる技術,カッティング後の加温による凝乳粒からのホエイ排出,加温後に凝乳を細かくカッティングする技術にあった.タレッジョはもともとは移牧民により冬の寒い間に一時的に低地でつくられるものであった.北イタリアでの熟成チーズの発達史は,基層に熟成ハード系チーズがあり,低地では塩が豊富に供給される背景のもとに熟成ハード系チーズの厚みが増し,後になって,アルプス山脈山麓の低地で湿度が高く保てる特殊な状況設定のもとに熟成ソフト系チーズが発達してきたと推論することができる.
著者
西松 一郎 粂野 文雄
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.25-31, 1966

初生子牛による大豆蛋白質の消化率およびその利用性を知るために本研究を行つた。<br>1) 脱脂粉乳,乳糖,大豆油などを含む基礎飼料に大豆粕または妙つた大豆粉(キナ甥)を各々22.4%,27.8%混ぜ,ホルスタイン種雄初生子牛4頭を用い,生後10日令から39日令までを3期にわけ代謝試験を行い次の結果を得た.飼料の糧蛋白質の消化率は第1期(15~19日)大豆粕区46.4%,キナ粉区53.0%,第3期(35~39日)大豆粕区69.2%,キナ粉区76.4%でキナ粉区が若干よかつた.また,体重当りの1日窒素蓄積量およびみかけの生物価は第1期(15~29日)大豆粕区0.03g,10.8%,キナ粉区0.13g,31.7%,第3期(35~39日)大豆粕区0.11g,29.6%,キナ粉区0.26g,50.4%でキナ粉区がよかった.基礎飼料の粗蛋白質の消化率を用いて,大豆粕とキナ粉の粗蛋白質の消化率を求めると,第1期(15~19日)大豆粕0%,キナ粉10.9%,第3期(35~39日)大豆粕43.2%,キナ粉54.5%となる.第3期は第1期に比し消化率が高くなつた.<br>2) 全乳を基礎飼料とし,ホルスタイン種雄初生子牛4頭を用い10日令から41日令までを4期にわけ,4種の飼料A:大豆粕100g/day,B:大豆粕20g/day,C:キナ粉100g/day,D:キナ粉200g/dayを与えて,ラテン方格法で代謝試験を行い,次の結果を得た,牛乳+飼料の組蛋白質の消化率,体重当りの1日窒素蓄積量およびみかけの生物価は各々平A:91.7%,0.23g,47.3%,B:87.0%,0.28g,46.9%,C:91.1%,0.25g,51,3%,D:88.2%,9.29g,52.5%で各飼料間に有意差はなかつた.牛乳の粗蛋白質の消化率を用いて大豆粕とキナ粉の粗蛋白質の消化率を計算すると,各々平均79.7%,78.2%となった.<br>3) 大豆蛋白質の消化率,体重当りの1日窒素蓄積量およびみかけの生物価は,基礎飼料が全乳の場合は脱脂粉乳の場合に比し著しく高くなつた.
著者
三明 清隆 柚木 恵太 川村 純 府中 英孝 杉山 雅昭 大西 正男
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.153-161, 2014
被引用文献数
3

プラズマローゲン(Pls)は神経炎症抑制やアミロイド形成抑制効果を有し,アルツハイマー病の治療や予防に利用できる可能性がある.親鶏の皮および筋肉部のリン脂質(PL),特にPlsの組成を調べた.皮のPL画分のスフィンゴミエリン(19%)は,他の3つの筋肉組織(6%)に比べて多く含まれていた.皮PLの21%がエタノールアミンプラズマローゲン(PlsEtn),6%がコリンプラズマローゲン(PlsCho)であった.ムネではPlsChoはPlsEtnの1.8倍多く含まれていたが,モモではPlsChoとPlsEtnは同量含まれていた.Plsの脂肪酸組成としては,皮ではn-6系の20:4や22:4が多く,筋肉組織では18:1が多く検出された.皮エタノール抽出画分(高PlsEtn型)とムネ肉エタノール抽出画分(高PlsCho型)をホスホリパーゼA<sub>1</sub>処理し,ヘキサン,アセトンおよび溶解分画することにより高純度プラズマローゲン画分を容易に調製できた.皮,ムネとも鶏種および飼育環境の違いによるPL組成の変動は少ないため,親鶏は安定したPlsの供給源として有望であることが確認できた.
著者
鈴木 正三 茂木 一重 細田 達雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-195, 1956 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11

我々は山羊血液の型物質の血清化学的性状と血清型につき調査し次の事項を得た。1 山羊の特異的血液型物質は血球基質中の蛋白分屑こ存在する。2 山羊の血清中には,α',β'の凝集素が存在し,山羊血清型をα',β',α'β'及びO'の4型に分類する。両者の凝集価は一般に低く,8倍程度であるがα'はβ'より一般に高い。3 山羊の血清型の出現頻度はO'型が大部分で,α'β',β',α'の順序にして,α'は比較的少ない。而してこの血清型は家兎型である。4 山羊血清中には抗-O抗体,抗-C抗体の存在するものもあるが,一般に抗体価は低く,その出現頻度も低い。