著者
早坂 貴代史
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.992-999, 1986
被引用文献数
1 1

互に認知しないいくつかのグループからなる群における個体間関係を行動の同時性,個体間距離という両側面から明らかにしそれにかかわる要因を統計的に確認した.供試牛群は経歴の異なる3つのグループ,すなわち黒毛和種雌成牛6頭(J-Aグループ),ホルスタイン種雌育成牛4頭(H-B),同2頭(H-C)からなり,2haの牧区に11日間一諸に放牧した.調査はうち4日間,日中5分間隔で,牧区内の個体の位置および行動を記録した.行動の同時性および個体間距離を測定し,クラスター分析によりそれぞれのデンドログラムを作成した.<br>その結果,同経歴グループの個体間は,行動の同時性を示す一致係数が平均68.7%,個体間距離が平均28.4m,一方異経歴グループの個体間ではそれぞれ60%,41.8mであり,各個体は他のグループより同経歴グループの個体,特にそのなかの年齢の近い個体と密接なきずなをもつ傾向にあった.またH-Cグループが同品種のH-BグループよりJ-Aグループときずなが強かったこと,さらにJ-Aグループの最若齢個体がH-Cグループと密接なきずなをもったことが明らかにされた.<br>以上から,品種,経歴,年齢,所属するグループの大きさといった諸要因が複雑に絡みあって,個体間関係に影響を及ぼしているものと推察された。
著者
吉田 悠太 川端 二功 西村 正太郎 田畑 正志
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.17-23, 2021-02-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
54

味覚は,動物の摂食行動を制御する重要な化学感覚である.産業動物の味覚受容機構を明らかにすることで,産業動物の味覚嗜好性に基づいた飼料設計が可能になると考えられる.これまでに我々は,重要な産業動物であるニワトリの味覚受容機構に関する研究を実施してきた.本稿では,これまでのニワトリの味覚研究について概説した後,ニワトリのうま味受容に関する最近の知見をまとめた.一連の研究において,ニワトリがうま味成分に対して味覚感受性を有していること,ならびにニワトリの味蕾においてうま味受容体が発現していることが明らかとなってきている.これらの研究から,ニワトリ飼料の設計においてうま味が重要である可能性が味覚受容の観点から示されている.
著者
森 彰
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.286-292, 1970

農学飼育の日本コリデール種の分娩季節•多産性•性比についてつぎのように要約する.<br>1) 分娩季節は3(45.50%)•4(37.19%)2•(9.23%)•5月(6.99%)の順であるが,その他の月にも分娩する.<br>2) 冬飼育条件がわるくて,その後5-10月に出野草原に放牧している地域では,9-6月にわたって分娩がある.<br>3) 分娩季節と立地条件との関係は見られない.<br>4) 双子率は19.86%で,2月が最高(22.91%)で,3•4•1•5月の順である.<br>5) 双子率は遂年的に高くなっている.<br>6) 双子率の地域性は見られないが,羊農業の盛んなところでは高い.<br>7) 3子率は0.21%で,1•2•3月の順に低くなる.<br>8) 単子の性比は雌がやや多い(53.06%).<br>9) 双子の性比も雌が多い(57.69%).
著者
守屋 和幸 広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-6, 2018-02-25 (Released:2018-03-23)
参考文献数
5

各要因のグループ(水準)内のデータ数が等しくない不釣り合いデータの分散分析には,最小2乗分散分析法が用いられ,平均値には通常の算術平均値ではなく他の要因や回帰変量に影響されない最小2乗平均値が使われる.本研究では,オープンソースのフリーソフトウェアRパッケージによる最小2乗分散分析法と最小2乗平均値の算出手順を紹介し,回帰変数を含む2元配置試験の数値例を使って,Rによるプログラムと実行結果を例示した.
著者
藤村 忍 村元 隆行 勝川 雅仁 波多野 隆 石橋 晃
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.610-618, 1994
被引用文献数
1 7

鶏肉の呈味成分を解明するために,食味の異なる種間の解析からのうま味成分を検討した.その解析を進めていくために秋田県北部を中心に生産され,うまい鶏として有名な地鶏の一種,比内鶏に着目した.古くから郷土料理のきりたんぽ鍋に合う,美味な鶏として愛好され,ブロイラーの5~6倍の高価格で扱われ,秋田県畜産試験場の改良普及品種として年間約17万羽生産されている.この比内鶏を研究対象として取り上げていく価値を判断するため,比内鶏とブロイラー肉の官能比較を行なった.次に比内鶏の生産性および呈味成分を明らかにするため,われわれの栄養素要求量の研究結果を基にブロイラーおよび卵用鶏との間で成長,飼料効率,筋肉の可溶性遊離アミノ酸,イノシン酸濃度を比較した.さらに比内鶏とブロイラーの分析値と同濃度のグルタミン酸,イノシン酸の化学合成液の官能試験を行なった.食肉の官能比較から,比内鶏は味,総合評価が有意に優るとする結果が得られた.このことから以下の試験に入ったが,比内鶏の生体重は,ブロイラーの半分以下,卵用鶏よりは少しよい程度であった.比内鶏肉の高価格は遅い成長速度に由来する生産性の低さに影響されていた.可溶性遊離アミノ酸には,グルタミン酸を含め鶏種間に特徴的な傾向は認められなかった.一方,イノシン酸の含量は,比内鶏がブロイラー,卵用鶏よりもそれぞれ50%,60%有意に高く,化学合成液による官能試験からも,比内鶏の組成がうまいことが認められた.このとき,イノシン酸とグルタミン酸の混合液が,単品溶液に比べてはるかに強いうま味を呈した.このことから官能試験での比内鶏とブロイラー肉の評価結果は,イノシン酸およびグルタミン酸の組成を反映しているものと考察された.
著者
大武 由之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.165-171, 1983-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
27
被引用文献数
3 2

市場の豚枝肉から背脂肪と腎臓脂肪組織を採取し,蓄積部位のちがいによる脂肪の性質の差異と相関を検討した,腎臓脂肪と背脂肪の内層あるいは外層脂肪との,C18:1含量での相関係数はそれぞれ0.61,0.58で,高い相関とはいえなかった.しかし,その他の各脂肪酸,C16:0,C16:1,C18:0,C18:2および全飽和酸の含量ならびに全不飽和酸含量に対する全飽和酸含量の比では,各脂肪組織からの脂肪相互間で,かなり高い正の相関が存在していた.各蓄積脂肪相互間の融点での相関は高く,屈折率の場合は,融点の場合よりもさらに高い正の相関が認められた.各脂肪酸の含量,融点,屈折率についての蓄積脂肪相互間の差異と相関の検討から,調べた脂肪の全ての性質に関して,背脂肪の内層と外層との脂肪の相関は,腎臓脂肪と背脂肪の内層あるいは外層の脂肪との間の相関に比べ,最も高いことが知られれた.別に,腎臓脂肪と筋肉脂質との性質上での差異と相関を,各脂肪酸含量について検討した.腎臓脂肪と筋肉のリン脂質間での,各脂肪酸の含量での相関は低かった.筋肉の中性脂質とリン脂質との間の脂肪酸含量での相関も,C16:0とC18:1との含量の場合を除いては,いずれも低かった.これに対して,腎臓脂肪と筋肉の中性脂質との間では,各脂肪酸含量に関しては,高い正の相関が存在していたが,この相関は脂肪組織からの各蓄積脂肪相互間で見られた相関に比べると,さほど高いとはいえなかった.
著者
大武 由之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.80-89, 1983-02-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
41
被引用文献数
2 1

宇都宮屠畜場に出荷された豚枝肉から,無作為抽出によって選んだ枝肉と,枝肉格付員によって軟脂豚と判定された枝肉から,腹腔部の腎臓脂肪を採り試験に供した.軟脂豚の腎臓脂肪は,無作為抽出試料に比べてC16:0, C18:0および全飽和脂肪酸含量が少なく,C18:1とC18:2含量が多かった.また,軟脂豚の脂肪は融点が低く,屈折率が高かった.屠畜場から無作為に抽出した豚枝肉の腎臓脂肪は,性別の区分で,去勢豚は雌や雄に比べて,C18:2と全不飽和脂肪酸含量が少なく,屈折率が小さかった.枝肉重量での分類では,C16:0と全飽和脂肪酸含量は,枝肉重量の増加にともなって減少し,C18:2含量と屈折率は枝肉重量の増すにつれて増大していた.市場から得た試料では,背脂肪の厚い枝肉の脂肪は,C18:1が多くC16:0とC18:0が少なかった.背脂肪の厚さが1.5~2.4cmの範囲の枝肉の脂肪は,C18:2含量と屈折率とが最も少なく,これに対して背脂肪の厚さが1.5~1.9cmの枝肉の脂肪は,飽和脂肪酸含量が最も多く,屈折率は最も小さかった.試験した腎臓脂肪の各脂肪酸含量相互間に相関関係が認められ,C16:0とC18:0,C16:0とC18:2,C18:0とC18:2との間の相関はかなり高かった.また,脂肪の融点と屈折率との相関も高かった.さらに飽和脂肪酸の含量と融点との相関,またC18:1は除いて各脂肪酸含量と屈折率との相関はかなり高かった.これらの結果から,豚腎臓脂肪の理化学的性質相互の相関は,軟脂豚肉の判定に有効な根拠を与えるものと考えられる.なお,軟脂豚の生産に関与する大きな要因は,飼料ならびに飼養の条件にあるものと推測された.
著者
豊田 修次 小林 洋子 阿彦 健吉
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.591-598, 1990-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
26

本研究は,国産ゴーダチーズの熟成後期に発生するガス膨張の原因を究明する目的で実施した.バクトヒュージ無処理の冬季乳を用い,硝酸塩無添加で製造したゴーダチーズを13~15°Cで4ヵ月間熟成すると,30試料中,11試料が熟成2カ月以内で膨張し,その大半はガスホール周辺に大きな亀裂を生じた.このガス膨張は酪酸菌によるものであった.DRCM培地中に生育した酪酸菌は,大きな黒色コロニーと小さな褐色コロニーを呈した.膨張チーズ中の黒色コロニー数は,チーズg当り30cfu以下で,正常チーズと差が認められなかった.105株の黒色コロニーは,Cl.sporogenesが86株,Cl. beijerinckiiが11株,Cl. butyricumが8株であった.一方,褐色コロニー数は,チーズg当り膨張チーズで102~104cfu,正常チーズで10cfu以下であった.褐色コロニーは,いずれもCl.tyrobutyricumと同定された.従って,本ゴーダチーズのガス膨張は,Cl. tyrobutyricumによるものと判断した.分離したCl. tyrobutyricum KS-222は,脱脂乳培地中ではほとんど生育しないが,S. lactis subsp. lactisとの混合培養でよく生育して多量のガスを発生した.Cl. tyrobutyricumKS-222は,DRCM培地では胞子をほとんど形成しなかったが,糖密-ソイトン培地の使用で,その胞子形成率は2.1%まで上昇した.Cl. tyrobutyricum KS-222胞子は,生育限界温度およびpHがそれぞれ7~10°C,4.5~5.0付近であった.Cl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育を抑制する食塩濃度は,培地pHに著しく依存し,pH5.0で約2%,pH5.5で約4%,pH6.0~6.5で約6%であった.また,Cl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育抑制に対する硝酸カリウムの効果は,上述の食塩の場合とほぼ同様であったが,亜硝酸カリウムでは0.005%以下の濃度でCl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育を強く抑制した.
著者
宮原 晃義 谷口 慎 森地 敏樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.184-188, 1999-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2

食肉の比熱は,水分,脂肪およびそれ以外の成分に影響される.示差走査熱量計を用いて,ゼラチン,寒天,脂肪酸および食肉(牛肉,豚肉,鶏肉)の比熱を0~100°Cの温度範囲で測定した.水分の影響をみると,酸化アルミナでCP=0.04x+0.50(Cp:30°Cでの比熱,X:水分%)の関係があった.ゼラチンと寒天を用いて比較すると,乾燥品の比熱(10~100°Cの範囲の平均値)はそれぞれ1.49,1.37kJ/kg•Kであり,水分92%を加えるとそれぞれ3.53,3.46 kJ/kg•Kとなり,ほぼ同程度の影響が確認された.ウシ,ブタ,ニワトリの脂肪の主成分であるC16:0, C18:0, C18:1, C18:2脂肪酸の比熱は融解潜熱により,融点付近で高くなった.また4者の等量混合物では5°Cと60°C付近の比熱がやや高い値を示した.牛肉,豚肉,鶏肉の10~100°Cの範囲の比熱を比較すると,赤肉では畜種による差はほとんど認められず,温度上昇に伴って,約0.5kJ/kg•Kの直線的な温度依存性が見いだされた.ウシ,ブタ,ニワトリの脂肪の比熱は,いずれも融点付近で高い値を示した.そのため,脂肪含量の高い試料ほど畜種による比熱の差が明瞭になり,牛肉と豚肉では35°C付近で比熱の上昇が認められた.
著者
佐藤 衆介
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.978-982, 1992-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
吉子 裕二 楠原 征治 石田 一夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-130, 1987-02-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
21

軟卵産生鶏の大腿骨における骨髄骨の組織学的態度を卵が子宮部に存在する時期について調べ, 正常卵産生鶏の骨髄骨と比較検討した.軟卵産生鶏の骨髄骨は正常卵産生鶏に比べ, 骨髄腔内に過度に形成されていた. これらの骨髄骨は幅が厚く, 基質には不規則に轡曲した層板構造が観察され, 基質内部に埋没する骨小腔の一部は拡張し, 空胞化していた.軟卵産生鶏における骨髄骨の基質組成は, 組織化学的観察によると, 正常卵産生鶏とは逆にコラーゲン線維が多く, 酸性粘液多糖類は少なかった. また, コンタクトミクロラジオグラフィによると, これ骨髄骨は高度に石灰化していた.軟卵産生鶏の骨髄骨表面に出現する破骨細胞は正常卵産生鶏に比べ, 数が少なくまた萎縮したものが多かった. これらの破骨細胞は酸性ホスファターゼおよびコハク酸脱水素酵素活性が弱い傾向を示した.これらのことから, 軟卵産生鶏の骨髄骨では卵殻形成に必要なカルシウムの放出が不活発であることがうかがわれた.
著者
林 孝 長嶺 慶隆 西田 朗
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.439-446, 1985
被引用文献数
5

放牧牛群の社会関係を調査するために,斜め空中写真法による行動の記録と解析を試みた.放牧地の近くに立つ塔の上から放牧牛の行動を確察しながら,市販の35mm一眼レフカメラを斜め下方向に向けて,3分間隔で連続撮影した.地上座標が既知の牧柵などと共に放牧牛の写真をとれば,放牧牛などの地上座標を写真上の座標から推定することができる.この斜め空中写真法により20頭および8頭からなる2群の各個体の3分間ごとの位置を求め,これを用いて個体間距離および移動距離を計算した.放牧牛の位置する頻度は牧区の角と水飲み場が高い傾向にあった.育成牛と成雌牛を混合した群では,育成牛と成雌牛間の個体間距離は育成牛間および成雌牛間のそれよりも有意に大きいことが多く,これらは牧区内に無作為に2点を配置してシミュレートした値と区別することは困難であった.つまり育成牛と成雌牛は互いに他と関連せずに行動していたといえる.群内で特定の2個体が他よりも有意に小さな個体間距離をもつならば,この2個体は互に親密であると考えられ,この親密な関係を図示することによって牛群内の社会構造を単純化して表現することができる.個体間距離の比較によって,育成牛群内に網目構造あるいは直線構造の内部構造をもつサブグループが見出され,さらに成雌群内には直線構造のサブグループが見出された。しかし他のどの個体とも親密な関係をもたないはなれ牛も少頭数認められた
著者
中橋 良信 丸山 新 関 晋司 日高 智 口田 圭吾
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.441-446, 2007-11-25 (Released:2008-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
8 3

画像解析によりロース芯内脂肪交雑の断面部位による変化について調査するために,黒毛和種去勢牛12頭のロース芯をスライスし,画像解析を行った.第6~7胸椎から第10~11胸椎までを2 cm間隔でスライスし,12枚のスライス肉を得た(リブロース).また,第10~11胸椎から23~28枚のスライス肉を得た(サーロイン).ミラー型枝肉撮影装置を用いて各スライスの高精細デジタル画像を得た.画像解析ソフト(Beef Analyzer II)により,各スライスにおけるロース芯面積,脂肪面積割合,小ザシ数,小ザシ指数,全体あらさ指数,最大あらさ指数,慣性主軸短径長径比,ロース芯複雑度の8形質を求めた.また,第6~7切開面,サーロインの第1面,ロース芯終端面それぞれの画像解析形質と,全スライス平均との相関係数を求め,どの面がロース芯をより代表するか調査した.ロース芯の形状はリブロースからサーロインに進むにつれて細長くなった.脂肪面積割合は尾側に向かうにつれリブロースでは減少し,サーロインでは増加した.脂肪交雑のあらさは尾側に向かうにつれあらくなった.最大あらさ指数が高くなる特定の部位は存在せず,大きな粒子は突発的に発生することが示唆された.第6~7切開面と全スライス平均との相関係数は脂肪面積割合を除く形質でr=0.15~0.61の範囲にあった.それに対しサーロインの第1面と全スライス平均とのそれは,最大あらさ指数を除く形質でr=0.68~0.92の範囲にあった.個体によって第6~7切開面のロース芯における脂肪交雑の状態と,サーロインにおけるそれに差が存在する場合が確認されたため,詳細に肉質を調査する場合,第10~11胸椎の切開面の脂肪交雑の状態を追加情報とする必要性が示唆された.
著者
山内 邦男 清水 誠 高宮 幸江 川上 浩 GANGULI N. C.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.329-335, 1983

2種のインド水牛,Murrah種とSurti種,より得た乳からカゼインと乳清蛋白質を単離し,その性質を調べた.全カゼインの電気泳動パターンとアミノ酸組成は2種の水牛乳でほとんど同じであった.Murrah種の水牛乳からα<sub>s1</sub>-, α<sub>s2</sub>-, β-,およびκ-力ぜインをAmberliteCG-50およびDEAE-Sephadexクロマトグラフィーによって単離,精製した.各カゼイヤのアミノ酸組成は,イタリア水牛のカゼインについて報告されている値と一致していた.スラブ電気泳動で水牛乳α<sub>s1</sub>-カぜインは複数のバンドを示した.ホスファターゼ処理によってバンドは1本になることから,この不均一性はりん酸化の違いによるものと考えられた.α<sub>s1</sub>-, α<sub>s2</sub>-, β-およびκ-カゼインの量比は40:9:35:12であり,α<sub>s2</sub>-カゼインの比率が低い点でイタリア水牛(α<sub>s1</sub>-とα<sub>s2</sub>-カゼインがそれぞれ30および18%)と異なっていた,Murrah種とSurti種の全乳清蛋白質をスラブゲル電気泳動,SDSゲル電気泳動によって比較した結果,両者はほぼ同様のパターンを示した.また,抗-ウシ乳清蛋白質血清を用いた免疫電気泳動の結果,水牛乳の主要乳清蛋白質は牛乳のそれと免疫化学的に類似していることが示された.
著者
小松 正憲 横内 圀生 阿部 恒夫 小澤 周司 北沢 貴一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.493-497, 1981
被引用文献数
2

農林水産省岩手種畜牧場と福島種畜牧場における後代検定娘牛ホルスタイン種407頭,ジャージー種30頭を用いて,κ-力ゼイン(κ-cn),β-ラクトグロブリン(β-1g),αS1-カゼイン(αS1-cn),β-カゼイン(β-cn)座位の遺伝子型と乳量との関連性につき検討した.乳量記録はホルスタイン種では初産のもの,ジャージー種では初産から8産までのものを使用した.なお,ジャージー種における乳量は,産次が同一でないため成年型に換算して分析を行なった.分析方法は,ホルスタイン種の3年度の乳量記録では,乳量を集団平均,牛乳蛋白質型の効果,種雄牛の効果,誤差に分けた二元分類データととして最小二乗法により分散分析を行なった.残りのホルスタイン種とジャージー種の乳量記録については,種雄牛あたりの娘牛の数が少なかったため,乳量を集団平均,牛乳蛋白質の効果,誤差に分けた一元分類データとして分散分析を行なった.またあわせて,乳量の全分散に占める牛乳蛋白質型の効果の割合についても推定した.牛乳蛋白質型の判定は,既報の尿素加澱粉ゲル電気泳動法によって行なった.その結果,κ-cn型だけは常に,乳量の全分散の少なくとも数パーセントの割合を占める効果をもっていることが推察された.またκ-cn型間で乳量に統計的有意差が認められたのは,集積データのうち岩手種畜牧場のものであり,乳量の平均値をκ-cn型間で比較すると,κ-cn AB型の乳量は他のホモ型のそれよりも常に多かった.他の牛乳蛋白質型であるβ-1g型,α<sub>S1</sub>-cn型,β-cn型,およびκ-cnとβ-1g両座位におけるヘテロ座位数と乳量とには関連性は認められなかった.また牛乳蛋白型と脂肪率,無脂固形分率との間にも,一定の関連性は認められなかった.
著者
田先 威和夫 茗荷 澄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.153-158, 1964-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
4

黄色とうもろこしを54%含む産卵用配合飼料と,とうもろこしの全量または半量をマイロに置換した飼料を用いて産卵鶏を飼育し,体重,斃死,産卵率,卵重,飼料要求率および卵黄色について調査した.その結果,体重,斃死の状況および卵重については両飼料間に差異はみとめられなかつた.産卵率および産卵に対する飼料要求率においても,統計上明らかな差異は求められなかつたが,全期間を通じてマイロはとうもろこしに劣るように観察された.しかも,とうもろこし飼料をマイロ飼料に変更することにより産卵率は低下し,逆にマイロ飼料をとうもろこし飼料に置換することにより産卵率が向上することから,実用上とうもろこしはマイロよりも優れた産卵用穀物飼料であると考えられる.なおマイロの産卵率を底下させる原因がさらに明らかにされれば,マイロの産卵用飼料に利用される可能性や,とうもろこしに代替し得る量的比率の決定も明らかにされよう.マイロ飼料を与えた鶏の卵黄は,黄色とうもろこし飼料を与えたものよりも黄色度が淡いことが観察された.これはアルファルファミールや, β-apo-8'-carotenoicacid ethylester (β-caroteneの一誘導体)の添加により改善されるが,しかし黄色とうもろこし給与時の卵黄色に完全に復することはなく,卵黄着色効果に対する黄色とうもろこしの優秀性が確認された.

2 0 0 0 OA 畜産経営学

著者
松岡 忠一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2-4, pp.39-40, 1954 (Released:2008-03-10)
参考文献数
8
著者
蔡 義民 増田 信義 藤田 泰仁 河本 英憲 安藤 貞
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.536-541, 2001-10-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1 14

低未利用飼料資源を有効に利用するため,容易に流通できるポリドラムサイロを用い,食品産業廃棄物である茶飲料残渣の飼料調製•貯蔵技術を検討した.茶飲料生産工場から排出された緑茶飲料残渣には乳酸菌は検出されず,好気性細菌および酵母が高い菌数で分布していた.茶飲料残渣に含まれるグルコースなどの可溶性炭水化物(WSC)がきわめて少ないため,飼料作物のようなサイレージ発酵が出来なかった.飼料作物から分離された乳酸菌株Lactobacillus plantarum FG1または市販乳酸菌剤Lactobacillus rhamnosus SN1とAcremonium属菌由来のアクレモニウムセルラーゼを添加して茶飲料残渣サイレージを調製した.乳酸菌とセルラーゼを添加した茶飲料残渣サイレージはpH値が低く,乳酸含量が高い良質なものが調製され,125日間の貯蔵中に変敗しなかった.また,茶飲料残渣サイレージにはタンパク質,機能性成分であるカテキン類,カロチンおよびビタミンEなどが豊富に含まれた.
著者
渡辺 晴彦 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.706-712, 1975-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

肥育牛に尿素を含む飼料を与えたとき,尿石症の発生が少ない傾向のあることが観察されている.そこで尿石症に対する尿素の作用を確かめるために,めん羊を用いて尿素給与時の水分代謝と尿中ミネラル濃度を検討した.めん羊6頭を2区(だいずたん白質区と尿素区)に分け,予備期14日間,試験期10日間よりなる2期について,ラテン方格法による試験を行った.試験期間中には飲水量,尿量,糞中水分量,尿のpH,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿中のCa, MgおよびP濃度を測定し,その結果を分散分析した.その結果,試験の時期間に有意差(P〈.01)を認めたが,尿素給与の影響のみを調べたところ,代謝体重当たりの尿量は尿素給与時に31%増加し(P〈.05),飲水量は17%増加した.一方,糞中水分量,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿のpH,尿中のCaおよびP濃度には尿素給与による影響はみられなかった.しかし尿中のMg濃度は尿素給与時にやや低かった.そのため,尿素の給与は飲水量と尿量を増加させることによって尿石症の発生を予防するのではないかと思われた.なお,本試験ではめん羊の代謝体重当たりの飲水量と尿量との間には,r=0.931という高い正の相関を認めた.
著者
神谷 誠
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.277-282, 1958

各種獣毛のアミノ酸組成をPaper chromatographyを用いて分析し,これを比較検討した結果は次のごとくである。<br>1) この分析においては,17種のアミノ酸が定量された。このほかにtryおよびlanthionineの存在が推定きれる。一般に多量に存在するアミノ酸はcys, glu,asp, leuおよびargであつて,hisはつねに少量であり,hyproは存在しない。<br>2) glu, lysおよびala以外のアミノ酸含量は,動物の種類により有意の差を示す。また酸分解により生じるアンモニア態窒素量の動物の種類による差異も有意である。<br>3) 各種獣毛について,cys対比アミノ酸組成の比較検討を行なつた。その組成において,コリデール種緬羊毛とアンゴラ種家兎毛,三毛猫毛と大黒鼠毛とはそれぞれ類似のアミノ酸組成をもつ。<br>4) 獣毛のアミノ酸組成からみると,cys, glu, asp,leuおよびargがその蛋白構成の共通的主要アミノ酸であつて,その他のアミノ酸をふくめて動物の種類により有意の差を示すのである。<br>5) アミノ酸組成の分析法として,緬羊毛について,Paper chromatographyによる方法を他の分析法と比較検討した結果,これが本研究の目的に使用し得ることを確認した。