著者
内田 宏 山岸 敏宏
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.819-825, 1993
被引用文献数
1

黒毛和種の子牛市場成績,繁殖雌牛の体型,肥育成績などの経済形質に対して近親交配がどのような影響をもたらすかを調べた.材料牛は宮城県内の市場に上場された15,142頭の子牛,県内の11の改良組合の改良基礎雌牛(3歳以上)1,042頭および986頭の去勢肥育牛である.子牛では叔姪交配(近交係数6.25%以上)による近親交配が全子牛の16.4%を占めている.また,繁殖雌牛および肥育牛では,近交係数が6.5%以上のものが,それぞれ13.3%と13.4%を占めている.子牛の日齢体重は,近交度が上昇するにつれて小さくなっており,子牛市場上場時の発育形質に,近交退化が認められた.繁殖雌牛における近交係数に対する体測定値の一次回帰係数は,体高を除いた部位がすべて負となり,近交係数の高いものほど体測定値は小さくなる傾向にあったが,かん幅の体高比を除いて有意性は認められなかった.肥育牛の近交係数に対する発育形質の一次回帰係数はすべて負で有意となり,近交度の上昇にともない発育が低下しており,肥育牛の発育形質においても近交退化が認められた.一方,脂肪交雑の近交係数に対する一次回帰係数は正で有意であったが,種雄牛と一次回帰との間に交互作用が見られ,脂肪交雑に及ぼす近交の影響が種雄牛によって異なることが分った.
著者
大城 政一 及川 卓郎 平川 守彦
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.645-648, 1992-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
12

絶食下のヤギにおける反芻行動について検討を行なった.実験にはザーネン雑種成雌ヤギ3頭を供試した.自由採食期における1時間当りの吐出回数と反芻時間は24時間でほぼ一定していた.絶食期第1日における1時間当りの吐出回数と反芻時間は絶食後5時間に著しい増加を示したが,絶食期第2日と第3日では24時間一定していた.反芻時間は自由採食期で329.8分/日を示し,絶食期第1日の反芻時間は自由採食期に137%に増加したが,第2日は59%,第3日は22%に減少した.吐出回数は自由採食期で334.5回/日であったが,絶食期第1日は自由採食期の130%,第2日は156%と増加した.第3日は89%で自由採食期に近い値に回復した,絶食期における1反芻当りの休止時間を除く反芻行動は絶食期第1日において自由採食期と同じ値を示したが,第2日と第3日には顕著に減少した.
著者
永野 由祐 中田 真一 上田 浩三 松下 浩一 高橋 和昭
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.139-143, 2014

未利用海藻ノコギリモクの乾燥粉末給与が鶏卵品質に及ぼす影響を産卵ステージの異なるニワトリを用いて調査した.飼料としては,トウモロコシ─大豆粕を主体とした市販の採卵鶏用飼料とこの飼料の40%を籾米と置換した飼料を用いた.供試鶏として,産卵最盛期または廃棄直前の国産鶏と産卵後期の外国産鶏を用いた.卵黄中ヨウ素濃度は産卵時期や使用したニワトリの種類にかかわらず,ノコギリモク添加区で無添加区に比較して増加した.卵黄中<i>β</i>-カロチン濃度は国産鶏を用いた試験において,ノコギリモク添加区で無添加区に比較して増加した.また,ノコギリモク添加による卵黄中<i>β</i>-カロチン濃度の増加は,籾米混合飼料を使用した時に顕著であった.卵殻厚は,廃棄直前鶏に籾米混合飼料を給与した時に,ノコギリモク添加による増加が観察された.一方で,外国産鶏へのノコギリモク添加給与は,卵殻厚に影響を及ぼさなかったが,卵殻強度の有意な上昇が認められた.以上のことから,ノコギリモクは採卵鶏において卵黄中ヨウ素および<i>β</i>-カロチン濃度を増加させ,産卵後期におけるニワトリの卵殻質を改善させる有用な未利用資源となる可能性が示された.
著者
並河 鷹夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.235-246, 1980-04-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
110
被引用文献数
1
著者
田中 智夫 関野 通江 谷田 創 吉本 正
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.880-884, 1989

緬羊における色の識別能力のうち,特に類似色をどの程度まで識別できるかを明らかにすることを目的とした.供試羊は双子のコリデール種去勢羊を用い,正刺激側のスイッチを押すと飼料が与えられるスキナー箱を自作して2色の同時弁別実験を行なった.草の色を想定して緑を正刺激とし,黄および青から徐々に緑に近付けた計7色を負刺激としてそれぞれ識別させた.各課題とも1セッション30試行とし,20セッションまで行なった.各試行ごとにおける左右のカードの交換は乱数表に基づいて行なった.x2検定により1セッション21試行以上の正解(P<0.05)を基準とし,その基準に3回連続到達した時点でその色を識別したとみなした.結果は,黄から近付けた緑に最も近い色との対比において1頭が,また,青から近付けた緑に最も近い色との対比において2頭ともが,それぞれ識別不能と判断された他は,全ての組合せにおいて識別できるものと判断できた.以上から緬羊の色覚はかなり発達しているものと思われ,色による条件付け学習を利用した管理技術の開発の可能性が示唆された.
著者
石田 元彦 福井 憲二 長尾 伸一郎 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.116-122, 1987-02-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
10

異なる給与飼料条件で飼育された牛が排出した糞の化学成分組成と栄養価を比較, 検討した。青刈トウモロコシ・ソルゴー20kgとふすま1kg (1日1頭あたりの原物重量) を給与された黒毛和種繁殖雌牛の糞, 稲わら1kgと配合飼料9kgを給与された肥育中のホルスタイン種去勢牛の糞 (肥育牛糞A), 稲わらを自由採食, 配合飼料を8kg給与された肥育中のホルスタイン種去勢牛の糞 (肥育牛糞B) および牧草サイレージ, ウイスキー粕, 稲わら等から成る粗飼料を24kg, 配合飼料を9kg給与された泌乳牛の糞をそれぞれ採取し, 60-90℃で通風乾燥したものを供試した。牛糞の化学成分は酸素分析を中心にした分析法で求めた.可消化粗蛋白質 (DCP) と可消化養分総量 (TDN) の含量および細胞内容物 (CC) と細胞壁構成物質 (CW) 画分のみかけの消化率をあん羊を用いた消化試験によって測定した。肥育牛の糞には繁殖牛糞に比べて, CC, “CC内粗蛋白質”とデンプンが多く含まれていた. CW中のリグニン含量は肥育牛糞と泌乳牛糞の方が繁殖牛糞よりも低かった. DCP含量 (乾物%) は肥育牛糞A, 肥育牛糞B, 泌乳牛糞がそれぞれ7.6, 6.8, 5.8で, 繁殖牛糞の3.1よりも高かった。TDN含量 (乾物%) は肥育牛糞A, 肥育牛糞B, 泌乳牛糞がそれぞれ51.2, 40.2, 37.9で, 繁殖牛糞の17.7よりも高かった. 消化率の測定結果から, 牛糞中のCC画分はめん羊によってほぼ完全に消化され, 牛糞中粗蛋白質 (CP) は酸素分析によって消化性の高い“CC内CP”と消化性の非常に低い“CW内CP”とに分けられると推定した. また, 牛糞のCW画分の真の消化率は供試した牛糞ごとに異なることが示唆された. 以上の結果から, 牛糞の栄養価は給与飼料の飼料組成や飼料摂取量によってかなり大きく変動することがわかった.
著者
小島 義夫 番場 公雄 飯田 勲 伊勢 暉昭 前川 勇
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.485-492, 1972

1) 1967年から2年間にわたって,正常豚10頭から採取した精液58例についてLAVONら21)の方法で精子の比重を測定した.その結果,豚精子の比重は修正前では加重平均値として1.0549(範囲:1.0362~1.0903)となり,修正後の平均値としては1.1068(範囲は同じ)となった.<br>2) 同じ試料の中,6頭の豚からの30例の精液についてGAY-LUSSAC氏比重びんで測定したところ,精子の比重は平均値として1.0580(1.0346~1.0857)となった.算出の基礎となった精液の比重は平均値として1.0190(1.0137~1.0238)となり,精清の比重は平均値として1.0166(1.0140~1.0213)となった.<br>3) 従来の研究報告を参照して,高等動物における精子の比重のもつ意味とその応用について比較検討し考察を加えた.
著者
麻生 和衛 高橋 芳雄 田中 米二
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.435-442, 1967-10-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

大豆トリプシン•インヒビターが,生大豆の栄養阻害因子として雛に対して有害であるかどうかを,3種の大豆トリプシン•インヒビター(KUNITZのインヒビター,山本らの1,9Sインヒビター,BOWMANのアセトン不溶因子)を用いて試験した.その結果1. 従来報告されている増体率の低下,飼料摂取量の低下,膵臓肥大などの生大豆の栄養阻害作用が認められれた.2. 増体量への影響は,試験開始後3日目頃より認められた.3. 3種のトリプシン•インヒビターの間では,特に影響力の差は認められなかつた.4. 膵臓肥大は,腸内で阻害されるトリプシンを補うための機能亢進の結果として生じると考えられた.5. 栄養阻害機構の解明が試みられ,代謝エネルギー価,蛋白質消化率の測定,腸内容物のトリプシン活性およびトリプシン阻害活性の測定結果から,雛においては蛋白質の消化阻害が生じていると考えられた.6. 大豆トリプシン•インヒビターの作用に関する矛盾した報告についての考察が試みられた.
著者
池上 春香 永井 宏平 松橋 珠子 小林 直彦 武本 淳史 吉廣 卓哉 井上 悦子 樋口 智香 守田 昂太郎 内堀 翔 天野 朋子 田口 善智 加藤 博己 入谷 明 松本 和也
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.141-152, 2015-05-25 (Released:2015-06-18)
参考文献数
17

黒毛和種肥育牛の枝肉形質を推定するバイオマーカー候補タンパク質の同定を目的に,枝肉形質情報ならびに腎周囲白色脂肪組織のプロテオーム解析情報を搭載した統合情報管理システムを運用し,プロテオーム解析データを持つ去勢牛200頭から,5つの形質(枝肉重量・ロース芯面積・バラの厚さ・皮下脂肪の厚さ・BMSナンバー)に関して上位と下位の2群を選抜して,この2群間で314個のタンパク質スポットの発現量と枝肉成績との関連性を検討した.各形質の上位群(平均値+標準偏差)および下位群(平均値−標準偏差)として抽出した個体間の各スポットのタンパク質発現量を比較した結果,合計でタンパク質45種類(90スポット)の発現量に有意な差が認められた.これらタンパク質の一部について,代謝経路における位置付けを行なうとともに,vimentinのウエスタンブロット解析より発現量を検証したところ,枝肉形質を推定するバイオマーカー候補タンパク質としての可能性が示唆された.
著者
高橋 敏能
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.13-19, 1984
被引用文献数
1

メン羊3頭を用い,濃厚飼料と粗飼料の給与割合が第一胃液の総脂質含量,脂肪酸組成および微生物中の脂肪酸組成に与える影響を調べた.濃厚飼料(日本農産製ビーフデラックス)と粗飼料(チモシー主体乾草)の比を9:1,5:5および1:9とし,それぞれ600~700g/日を給与した.試験開始2週間後に給餌後1~3時間間隔で24時間にわたり第一胃内容をフィステルより採取し,2重ガーゼでロ過して第一胃液とした.更に同液よりプロトゾアおよび細菌を分画し,それぞれを分析に供した.その結果,第一胃液中の総脂質含量は濃厚飼料多給で顕著に多くなった.給餌後の経時的な観察では,濃厚飼料多給で採食開始4時間まで著しく減少し以後15時間まで漸増したが,粗飼料多給ではほとんど変化がなかった.第一胃液,プロトゾア,細菌中のC<sub>18:0</sub>およびC<sub>18:1</sub>脂肪酸は濃厚飼料多給時に多く,C<sub>17</sub>以下の脂肪酸は糧飼料多給時に多かった.第一胃液および細菌分画のC<sub>18:0</sub>脂肪酸は採食開始4時間まで減少し以後漸増しC<sub>18:1</sub>脂肪酸はC<sub>18:0</sub>脂肪酸と逆の変化を示した.プロトゾア分画のC<sub>18:0</sub>およびC<sub>18:1</sub>脂肪酸は有意な経時的変化を示さなかった.第一胃液中の側鎖脂肪酸は濃厚飼料多給時に低く経時的変化も殆どなかったが,粗飼料多給時には採食開始4時間まで著しく増加し,以後漸減した.特にアンテイソC<sub>13</sub>脂肪酸が,0.5%から11.1%と20倍以上も増加した.この増加は微生物に由来するものではなく無菌液中で起こる現象と思われた.一方,微生物中の側鎖脂肪酸は粗飼料多給時に高かったが経時的変化は見られなかった.
著者
奥村 純市 村松 達夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.345-350, 1978
被引用文献数
1

無蛋白質飼料へのアミノ酸添加による窒素節約作用を,ニワトリヒナを用いて,体重減少および窒素出納を指標として調べた.アミノ酸の添加量は,飼料1kgあたり20.1m molであり,これは0.3%のメチオニンと等モルである.単一アミノ酸の体重減少に及ぼす効果は有意差がみられなかったが,メチオニン,アルギニン,スレオニンを組み合わせて給与した場合には体重減少が有意に改善された.メチオニンの添加は窒素出納を有意に改善したが,メチオニン,アルギニン,スレオニンの組み合わせ添加は窒素出納の改善の傾向を示したものの有意ではなかった.その他のアミノ酸の添加で体重減少改善の傾向を示したものは窒素出納を改善する傾向も示したが有意差はなかった.無蛋白質飼料あるいはそれにメチオニンおよびアルギニンを添加したものを給与したヒナの腸管内の総窒素を分析したが,その結果からはこれらのアミノ酸を添加することによって内因性窒素の再利用が多くなるという証拠は得られなかった.無蛋白質飼料あるいはこれにメチオニン,リジン,アルギニンのいずれか一つのアミノ酸を添加した飼料を給与したヒナのクレアチニン排泄は,窒素出納の差を説明することが出来なかった.
著者
中村 正斗 山田 豊 美齊津 康民
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.964-970, 1993
被引用文献数
2

同腹の繁殖雌豚を2種の飼養方式で3年間飼育し,発情と産子成績を比較した.12頭のランドレース×大ヨークシャーの雑種雌豚を育成期(平均体重>60kg)から5回の妊娠•分娩期を通じてストールで単飼または豚房内で3頭ずつ群飼した.各区に同腹豚を無作為に配置し,育成期から発情を毎日調べ,性成熟後2回目の発情および離乳後の初回発情に人工授精または自然交配を行なった.供試豚はすべて,同一の繁殖ステージには同一の飼料を個別給与した.初回発情時の日齢および体重,受胎時の日齢および体重,分娩時の日齢および分娩後の体重,産子数および離乳頭数,子豚の出生時体重および離乳時体重,離乳時の子豚の育成率および離乳後の発情再帰日数について初産から5産まで調べた.平均初回発情日齢は,群飼豚がストール飼育豚よりも24.5日早かった.初回発情から2回目の発情までの平均発情周期は,群飼豚(22.2日)がストール飼育豚(26.0日)よりも有意に短かった(P<0.05).初回交配時の平均体重は,ストール飼育豚(137.2kg)が群飼豚(123.8kg)よりも有意に重かった(P<0.05),平均産子数と離乳頭数は,群飼豚でそれぞれ9.6頭および8.7頭,ストール飼育豚でそれぞれ11.0頭および9.4頭であった.群飼豚の子豚の出生時の平均体重(1.55kg)はストール飼育豚のそれ(1.32kg)よりも有意に重かった(P<0.01).群飼豚の子豚の離乳時の平均体重(7.43kg)はストール飼育豚のそれ(6.37kg)よりも有意に重かった(P<0.01).群飼豚の子豚の離乳時の平均育成率(96%)はストール飼育豚のそれ(88%)よりも有意に高かった(P<0.05).群飼豚の離乳後の平均発情再帰日数(10.8日)はストール飼育豚のそれ(41.0日)よりも有意に短かった(P<0.01).ストール飼育豚では運動器障害と流産の発生が認められた.
著者
阿部 又信 入来 常徳 舟場 正幸
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.60-65, 1992
被引用文献数
2

ホルスタイン種成雌牛延べ13頭を供試し,脂肪酸Ca塩(CSFA)の脂肪酸組成,粒度,ペレット加工,および給与量が酸分解エーテル抽出物(AEE)の消化率およびTDN含量に及ぼす影響について検討した.試験1,2ではいずれもパーム油を原料とし,約45%が2mm以上の大きさの不定形粒状CSFA(PFA-L)と,約85%が2mm以下の不定形粒状CSFA(PFA-S)のAEE消化率を求めた,いずれにおいても基礎飼料にCSFAを0または400g/日ずつ添加し,AEE消化率は400g給与時とOg給与時の糞中AEEの差をCSFA由来のAEE摂取量で除して求めた.その結果,PFA-LとPFA-SのAEE消化率はそれぞれ84.0および94.3%であった.同様にして,試験3ではPFA-Sを径5mmのペレットに加工した場合(PFA-SP)のAEE消化率を求めた結果,98.0%であった.試験4では,約39%が2mm以上の不定形粒状で牛脂を原料とするCSFA(TFA-L)を200または400g/日給与した場合のAEE消化率を求めた結果,それぞれ76.7および66.1%であった.供試CSFAのAEE含量と400g給与時の消化率からそれぞれのTDN含量を求めると,PFA-L;158,PFA-S;178,PFA-SP;179,TFA-L;126%となり,CSFAの粒度と脂肪酸組成はTDN含量に影響するが,ペレット加工しても負の影響はないことが示唆された.また,給与量も影響を及ぼしうるが,パーム油を原料とするCSFAの場合にはその影響は小さいと考えられた.
著者
細野 明義 鈴木 浩 大谷 元
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.413-420, 1987
被引用文献数
3

わが国において食肉製品をはじめ, 多くの食品の製造に最も一般的に用いられているナツメグ, メース, シナモン, 白コショウ, ショウガの5種類を選び, それらの変異原性をSalmonella typhimurium TA 98 から造成したストレプトマイシン依存性株 (SD510株) を指標菌にして調べた.その結果, 供試のすべてのスパイスに変異原性が認められた.また, これらスパイスを紫外線照射 (3.J/m<SUP>2</SUP>/secで12時間照射) もしくは加熱 (135℃で3時間) を行なった場合, ナツメグ, 白コシヨウ, ショウガで変異原性が減少することが認められたのに対し, メースではそれらの処理により変異原性は増大した.一方, これらスパイスの変異原性はα-トコフェロール, β-カロチン, システィンそれにニンジンェキスにより全般的に減弱の傾向を示した.中でもα-トコフェロールおよびβ-カロチンのそれらスパイスの変異原性に対する減弱効果は顕著であった.
著者
吉野 正純 佐藤 哲生 北田 徳蔵 古川 左近 染谷 幸雄 橋詰 和宗 森地 敏樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1048-1053, 1987-12-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
15

生乳中の細菌数の測定で, Breed法の適用性の限界, 並びにBreed法による直接鏡検個体数 (全菌数) と標準平板培養法による生菌数との関係を, 別報のBactoscan 17600 (A/S N. Foss Electric, Denmark) の性能試験で得た成績を用いて検討した.生乳305点で, Breed法で求めた全菌数の対数値とBactoscanのインパルスのそれとの相関係数は, 0.936であったが, これをBactoscanのインパルス1000 (約50万/mlの細菌数に相当) 以下の場合, 1000~10000の場合, 10000以上の場合に分けると, それぞれ, 0.491 (n=70), 0.809 (n=144), 0.824 (n=91) となり, 最初のものは, 著しく低い値を示し, Breed法の適用性の限界が示唆された. また, Bactoscanのインパルスで1000以上を与える試料について, 全菌数の対数値と生菌数のそれとの相関係数は0.819であった. 生菌数を何倍すれば, 全菌数に見合う数値になるか調べるため, 生菌数に種々のファクターを乗じた値を求め, 対応する全菌数の, この積に対する比率の度数分布を比較した. この結果, ファクターが3.5の場合, 全菌数/(生菌数×ファクター) で計算される比が0.33~3.0の範囲に入る試料の (点数の) 割合が84.7%と最大となり, かつヒストグラムの形も左右対称に最も近かった. 即ち, 生菌数に, 3.5を乗じた値で, 直接鏡検個体数のオーダーを把握できることが明らかとなった. そして, この値は生乳中に分布する細菌の菌塊 (コロニーの形成単位) の平均個体数に相当すると考えられる.
著者
千国 幸一 長妻 常人 田畑 利幸 門間 美千子 斎藤 昌義 小沢 忍 小堤 恭平
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.340-346, 1994
被引用文献数
6 1

ウシの成長ホルモンは127番目のアミノ酸でLeu/Valの多型が存在する.この多型の原因となる塩基配列の違いを決定するため,黒毛和種,ホルスタイン種,ヘレフォード種,アバーデンアンガス種から成長ホルモン遺伝子のイントロン4とエキソン5を含む652bpの領域をPCRによって増幅し,塩基配列を決定した.その結果,127番目のアミノ酸に対するコドンはA型(Leu)がCTG,B型(Val)がGTGで,1塩基の違いによる多型であることが明らかとなった.黒毛和種においてはさらに,別の部位で新たな多型が認められた.この変異は172番アミノ酸のコドンがACGからATG(C型)となるもので,コードしているアミノ酸はThrからMetに変化する.上記の4品種と褐毛和種について,Alu I切断とドットハイブリダイゼイションを用い遺伝子型を決定した結果,黒毛和種と褐毛和種にはA型(Leu<sup>127</sup>,Thr<sup>172</sup>),B型(Val<sup>127</sup>,Thr<sup>172</sup>),C型(Val<sup>127</sup>,Met<sup>172</sup>)の3種が存在し,分析したホルスタイン種,ヘレフォード種,アバーデンアンガス種には,C型が認められなかった.これらのことから,C型遺伝子は黒毛和種と褐毛和種の共通祖先のB型遺伝子に生じた変異であると考えられた.遺伝子頻度は59頭の黒毛和種で0.500(A),0.144(B),0.356(C)であった.これらの遺伝子型と枝肉形質との間に明確な関連は認められなかった.
著者
石原 盛衞
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.137-144, 1950

熊本県産及び高知県産褐毛和種の被毛皮膚及び舌の色を黒毛和種のそれと対照しつつ比較研究した。その結果の概要を摘録すれば次の如くである。<br>1 熊本県産褐牛はその一般毛色が褐色で黒毛の毛を含まなく,鼻鏡は淡紅色,角,蹄は濃赤褐色を呈し,虹彩は濃褐色である。一方高知県産褐牛の一般毛色は褐色であるが,牡に於ける頸側,上膊,前膊,眼の周囲,頬の上部,蹄冠縁,尾房,陰嚢下半等の被毛は暗褐色ないし褐黒色を呈している。牝に於いては蹄冠縁及び尾房が黒いか又は黒毛を混じている。その外に牝牡共鼻鏡,角,蹄,眼瞼,虹彩等が黒色である。<br>2 口周囲,頸側,肩胛部,季肋部,外腿部,下胸部牡の陰毛,蹄冠部,尾房の9部位から採取した檢毛についてその色を檢するに,牡に於ける頸側,肩胛部,尾房及び牝に於ける尾房は高知県産のものの方が暗色を呈しているが,その他の部分は檢毛全体としての色調には熊本高知両県産のものの間に差を認めない。<br>3 前記9部位の檢毛について褐毛と異色毛との割合を檢するに,熊本県産褐牛は総ての部位に於いて黒色の毛を含んでいないのに対し,高知県産の褐牛では口周囲,頸側,陰毛,蹄冠,尾房等は大部分の牛に於いて褐毛の外に黒毛又は二色毛を混じている。<br>4 熊本県産褐牛の毛はその基調色が淡黄色で,それに黄色ないし黄褐色の色素顆粒を有するけれども,概して顆粒の分布が少なく,黒毛和種に比して格段に少量である。黒毛和種の毛はその基調色はやはり淡黄色で,これに褐黒色の色素顆粒が極めて濃密に分布しておる。高知県産褐牛の毛の内,褐色の毛は全く熊本県産褐牛の毛と同様であり,黒色の毛は黒毛和種のそれと同様である。而して二色毛に於ける黒と褐との移行部は黄褐色の色素顆粒と褐黒色の色素顆粒とが著明に入り混つている5 熊本県産褐毛和種の皮膚はその表面が淡紅白色であるが,その皮膚色素も極めて少なく,部位によつては色素顆粒を全く認めない部もある。而も色素顆粒の色が概して淡黄色である。黒毛和種の皮膚はその色素が極めて多く.表皮全層に亘つて濃密に存し,眞皮内にも少量それを認められる。而も色素顆粒の色が濃褐色ないし褐黒色である。高知県産褐牛の皮膚は色素の分布量,分布範囲,色素顆粒の色等に於いて全く黒毛和種と同様である。<br>5 熊本県産褐毛和種の皮膚はその表面が淡紅白色であるが,その皮膚色素も極めて少なく,部位によつては色素顆粒を全く認めない部もある。而も色素顆粒の色が概して淡黄色である。黒毛和種の皮膚はその色素が極めて多く.表皮全層に亘つて濃密に存し,眞皮内にも少量それを認められる。而も色素顆粒の色が濃褐色ないし褐黒色である。高知県産褐牛の皮膚は色素の分布量,分布範囲,色素顆粒の色等に於いて全く黒毛和種と同様である。<br>6 熊本県産褐牛の舌背面は色素顆粒の量が極めて少なく,上皮最下層の所々にそれを見出したのと,各種の乳頭にそれを見た程度であるが,黒毛和種の舌背には上皮全層に亘つて褐黒色の色素顆粒が濃く分布している。而して高知県産褐牛の舌は黒毛和種のそれと全く同様の所見である。<br>7 以上要するに,高知県産褐牛は皮膚及び舌の色素蹄,角,虹彩等の色に於いては熊本県産褐牛のそれらと非常に異なつて黒毛和種と同じであり,被毛の色素に於いてはその大部分を占める褐毛は熊本県産褐牛と同様であるが,その一部分に刺毛の如く散在する黒毛は黒毛和種のそれと全く同一であり,その二色毛は1本の毛に両者の様相を併備したものである。
著者
豊川 好司 山田 和明 高安 一郎 坪松 戒三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.572-577, 1978

しょ糖10%液浸漬稲わら,またはハスクマシンにより磨砕した稲わらを,それぞれメン羊に自由摂食させ,稲わら乾物摂取量を高めた場合の第一胃内滞留時間と消化管内充満度を測定して,稲わらの低い摂取量の原因が何であるかを明らかにしようとした.供試メン羊は前報1)の2頭に1頭をかえた3頭であるが,基礎飼料も前報1)と同一のふすまを同量与え,飼養条件も同じであった.試験区は,原料稲わらを5cm前後に細切した対照区に対し,処理区は同稲わらをしょ糖10%液浸漬したしょ糖区,および同稲わらを機械的に圧縮磨砕した磨砕区である.その結果,(1) 稲わら乾物摂取量は対照区まりもしょ糖区28%,磨砕区18%高かった.またW0.75当たり全乾物摂取量は,しょ糖区が16%,磨砕区が11%多かった.(2) ふすまを含めた全飼料の消化率は,磨砕区では粗繊維が他2区より,セルロースが対照区よりも有意(P<0.05)に高く,しょ糖はNFEが他2区より,乾物と可消化エネルギーが対照区よりも有意(P<0.05)に高かった.(3) 全飼料の消化量の差は,繊維成分の有意差は認められなかったが,しょ糖区のNFE,可消化エネルギーおよび乾物は前記同様有意差を示した.(4) 稲わらの反芻胃内滞留時間は,対照区と磨砕区とがほとんど同じ程度であったが,しょ糖区がやや長かった.(5) 全消化管内充満度は,対照区よりもしょ糖区16%,磨砕区10%高かったが有意差はなかつた.(6) 以上のように対照区の第一胃内滞留時間が磨砕区と大差ないのに,全消化管内充満度が最も低く差があることは,対照区稲わらの摂食抑制が,稲わらの反芻胃内滞留に起因しないことを示した.