著者
賀来 康一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.61-81, 1997-01-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

米国シカゴ•マーカンタイル取引所(以下CME)に上場された肉牛先物取引による,肉牛生産者•牛肉処理業者の価格リスク管理の実証分析を実施した.(1) 1984年1月4日から1994年12月31日までの,毎日の価格データにより,CMEに上場された,Live Cattle(生牛),Feeder Cattle(肥育素牛),Live Hog(生豚),Frozen Pork Bellies(冷凍豚バラ肉)相互の関係を調べた.期間11年間を通算した相関係数の高い組み合わせは,Live CattleとFeeder Cattleの0.89であり,Live HogとFrozen Pork Belliesの0.57であった.しかし,1年毎に調べると,全ての組み合わせが不安定であった.(2) 1984年から1993年までの週間データを使用して,米国の肉牛と牛肉60種類に関し,現物価格の変動の大きさとbasis(ベーシス)の価格変動の大きさを比較した.Live Cattle当限価格との相関が高いほど,現物価格の標準偏差は,basisの標準偏差よりも大きかった.当限価格との相関係数0.22以下の3種類の内臓肉を除いた残り57種類の場合,現物価格の価格変動リスクをbasisの価格変動リスクへ移転した方がリスクが小さくなった.(3) 米国商品先物取引委員会(CFTC)の報告書に基づき,米国の肉牛先物市場の主たる参加者を分類した.米国CMEの肉牛先物市場は,投機の場というよりもヘッジの場としての性格が強く,米国の肉牛生産者として大きな役割を果たしている寡占化したパッカーと大規模化した肥育業者の,価格変動リスクをヘッジする場として活用されている.(4) 1990年1月2日から1995年10月11日までの,肉牛現物と当限価格との相関係数を計算した.全期間を通じた相関係数は0.94と高く,1年毎の相関係数も各々高かった.期間中の変動係数を比較すると,現物価格の変動が最も激しく,当限価格の変動は現物価格よりも小さく,期先価格の変動は最も小さかった.1990年から1995年10月11日迄,肉牛先物価格は現物価格に対して価格平準化機能を果たしていた.(5) 東京穀物商品取引所は,オーストラリア産グラスフェッド牛肉の,先物市場への上場を研究している.そこで,日本における牛肉先物取引の可能性を検討した.
著者
大森 英之 守谷 直子 石田 三佳 大塚 舞 小橋 有里 本山 三知代 佐々木 啓介 田島 清 西岡 輝美 蔡 義民 三津本 充 勝俣 昌也 川島 知之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-200, 2007 (Released:2007-11-26)
参考文献数
33
被引用文献数
7 6

コンビニエンスストアから排出された消費期限切れ食品(コンビニ残さ)の肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料としての利用について検討した.コンビニ残さを分別し,弁当めし,おにぎり,菓子パンを主体とする発酵リキッド飼料を調製した.4頭を対照区(新豚産肉能力検定用飼料)に,10頭を発酵リキッド区(FL区)に割り当てた.さらにFL区を5頭ずつCa無添加区(FLN区)とCa添加区(FL+Ca区)に分けた.FL区の肥育成績は対照区と遜色なく,胸最長筋内脂肪含量は対照区(2.9%)に比べて有意に高い値を示した(P<0.01,FLN区 : 4.9%,FL+Ca区 : 5.2%).またFL区の皮下内層脂肪中のリノール酸比率は対照区に比べて有意に低かった(P<0.01).FLN区とFL+Ca区の肥育成績および肉質に大きな差はなかったが,FL+Ca区で血清中総コレステロール濃度は有意に低い値を示した(P<0.05).以上の結果から,分別により粗脂肪含量を抑え,タンパク質源,ミネラル,ビタミンを適切に配合することで,コンビニ残さは肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料として利用できることが示された.
著者
江崎 孝三郎 早川 純一郎 富田 武 尾藤 惇一 野沢 謙 近藤 恭司
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.218-225, 1962 (Released:2008-03-10)
参考文献数
20

1. 長野県西筑摩郡の農家に飼育されている,いわゆる木曾馬の毛色に関して,1860年前後の古文書より,当時の状態を調査した.1943年以降は,「産駒登記原簿」および「伝染貧血症検査台帳」により,また直接に観察して,各種毛色の頻度の推移を調査した.2. 木曾馬産駒集団においては,年々鹿毛は増加,青毛は減少の傾向にあり,栗毛はほぼ一定の割合を維持している.河原毛および月毛は,合計してわずかに5%以下であつた.すなわち,遺伝子aの頻度qaは,1943年に約0.55であつたが,次第に減少して,1960年には約0.35となつた.遺伝子bの頻度qbは約0.45で,1943年以来この値を維持している.遺伝子Dの頻度qDは約0.02であつた.3. 以上の事実は,遺伝子A~aに関しては移行多型(transient polymorphism),遺伝子B~bに関しては平衡多型(balanced polymorphism)となつていることを示している.4. 木曾馬産駒集団における毛色の多型の維持と推移の機構に関して,種畜の選択に際して働く淘汰選抜の作用と,種畜から次の世代に移る間に働く淘汰に注目して,分析を行なつた.その結果,遺伝子aには,その頻度を減少させる方向に,上記二つの淘汰が相加的に作用すること,また遺伝子bに関してはは,前者がその頻度を,減少させる方向に,後者が増加させる方向に働いていることが判明した.そして,これら二つの要因によつて,鹿毛,青毛および栗毛の年次的変遷を遺伝的に説明することができた.
著者
中江 利孝 片岡 啓 宮本 拓
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.347-351, 1974-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

バター脂肪やマーガリン脂肪の融点測定には,従来毛細管法が用いられているが,著者らは連続的な恒温条件下の温度勾配装置を用いて,その融点測定の可能性に検討を加えた.試料は市販のバターおよびマーガリンを用い,透明融点,上昇融点および温度勾配法による固液臨界点を測定した.固液臨界点は,9°Cから50°Cの温度勾配下で下固相と液相の間にできる安定した境界層の相当温度をもって表わした.その固液臨界点の再現性,従来法の透明融点および上昇融点と固液臨界点との比較,ならびに試料の固化条件について調べた結果,温度勾配法による固液臨界点の相当位置は,試料封入管挿入後約2時間以内に現われるが,安定した固液臨界点は10時間後に得られ,約±1°C以下の誤差範囲で再現性のある測定が可能であった.実際のバターおよびマーガリン試料の分析結果から,温度勾配法による固液臨界点は,従来法の透明融点とほぼ一致する結果が得られた.また,固液臨界点に及ぼす冷却法の前処理の影響はほとんどみられなかった.以上の結果,一定条件下のバターおよびマーガリン脂肪の試料を温度勾配装置に設定することによって,所定時間後の固液臨界点の測定からそれらの融点を求め得ることがわかった.
著者
伊藤 敞敏 庄司 悦子 足立 達
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.681-686, 1987-08-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
14

物理的性質の検討) 充分に行なわれていない安定型無水α-, 無水αβ複合-および無水β-ラクトース結晶について, 融点および溶解度を中心とした検討を行なった. 安定型無水α-ラクトースの常法および示差熱分析 (昇温速度10℃/分) による融点 (分解) はそれぞれ207.7, 216.5℃, 溶解度は5, 15, 25, 35℃ において, それぞれ, 10.1±0.14, 11.5±0.02, 13.9±0.24, 18.5±0.16 (g/100g水) であった. 無水αβ複合ラクトース (α/β比, 4:1) の上記方法による融点はそれぞれ204.0, 205.0℃, 上記と同じ温度における溶解度はそれぞれ17.9±0.5, 15.2±0.47, 17.5±0.23, 20.7±0.45であった. また, 無水β-ラクトースの同じく融点はそれぞれ228.8, 243.0℃, 同じく溶解度はそれぞれ39.9±0.42, 42.6±0.47, 45.0±0.34, 48.3±0.12で, 文献からの計算値よりもかなり低い値を示した. 無水αβ複合ラクトースについては, そのα:β (4:1) 比と同比率の, 両者の結晶の混合物の融点, 赤外吸収スペクトルとの比較を行ない, その測定結果に一致の認められないことから, 無水αβ複合ラクトース結晶においては, その構成ラクトース分子間に相互作用の働いていることを推定した.
著者
長峰 孝文 中澤 宗生 古谷 修 伊藤 稔 小堤 恭平
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.331-338, 2007 (Released:2008-02-25)
参考文献数
17

645の堆肥について,食中毒の原因となる代表的な細菌であるサルモネラおよび志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157の検出を行った.堆肥化の過程によって損傷を受けたそれらの細菌を賦活化させるため,選択培地による試験の前に,堆肥サンプルを緩衝ペプトン水とともに37℃にて18~24時間インキュベートした.サルモネラが検出された堆肥は8件(1.2%)であり,3件から分離された株が公衆衛生上問題のある血清型であった.STEC O157は,検出されなかった.堆肥からサルモネラが検出された原因は,堆肥生産の際の低い処理温度もしくは堆肥化後の原料の混入が考えられた.
著者
小高 真紀子 福原 絵里子 金子 国雄 浅田 研一 荻野 和正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.187-192, 2014-05-25 (Released:2014-06-21)
参考文献数
30

ワクモの習性を利用したトラップを試作し,海外で既に報告されているトラップとワクモの定着数を比較した.まず,2枚の板を重ねて,2枚の板の1辺が接合するトラップ(非平行板トラップ)と2枚の板が平行となるトラップ(平行板トラップ)を作製し,ワクモの定着率を比較した.その結果,平行板トラップと比較して非平行板トラップの定着率が高くなる傾向を示した.次に杉,桧,竹およびポリ塩化ビニールのうち非平行板トラップに最も適した材質が何かを検討した.その結果,杉や桧は他の材質よりも有意にワクモが定着した.また,既報の段ボールや厚紙を用いたトラップよりも著者らが作製した杉材の非平行板トラップに有意にワクモが定着した.以上の結果から,今回開発したトラップはワクモを効率よく捕獲でき,農場におけるモニタリングや駆除あるいはワクモの生態解明の有効な道具となりうることが示唆された.
著者
石塚 譲 出雲 章久 安松谷 恵子 西田 眞治 斉藤 恵子
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.11-16, 2016-02-25 (Released:2016-03-26)
参考文献数
29
被引用文献数
1

我が国における現在のブロイラー(Ross 308)雄の血液生化学検査値の基準範囲の一つを示すことを目的として,14項目について21,28,35,42および49日齢の値を比較した.49日齢の平均体重は3696.2gであった.トリグリセライド値は日齢とともに増加したが(106.1mg/dL,平均値),49日齢で急激に減少した(P<0.0001).アルカリフォスファターゼ値は日齢とともに減少し(P=0.0333),逆に,アスパラギン酸トランスアミナーゼ値(P<0.0001),クレアチンキナーゼ値(P<0.0001)および乳酸脱水素酵素値(P=0.0012)は,日齢とともに増加した.本試験での乳酸脱水素酵素値(6420U/L)およびクレアチンキナーゼ値(51020U/L)は,既報と比較して約2倍の値であった.総タンパク質,アルブミン,血糖,尿酸およびアスパラギン酸トランスアミナーゼの各値は既報と大差はなかった.本結果では,血清酵素値が既報と比較して高かった.これは,筋肉の急成長を目指した改良が進められた結果と考えられ,我が国の現在のブロイラーでは基準範囲であると考えた.
著者
長谷川 隆則 森松 文毅 川本 恵子 日高 智
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.343-350, 2015-08-25 (Released:2015-09-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

自給飼料活用の更なる推進のため,北海道ではイアコーンサイレージ(ECS)の利用検討が行なわれている.本研究では,ECS給与が肥育豚の産肉性に及ぼす影響を検討した.肥育豚(平均65.4kg)を6頭ずつ3区分し,市販配合飼料を給与した対照区,配合飼料80%+ECS 20%の混合飼料を給与したECS区,配合飼料60%+ECS 20%+デンプン粕主体エコフィードサイレージ(EFS)20%の混合飼料を給与したECEFS区を設け,平均117.9kgまで肥育した.飼料(乾物)要求率は,対照区とECS区では同等で,ECEFS区では全期間平均で有意に高かった(P < 0.05).各試験区の肉質は,背部皮下脂肪中のスカトール含量が,対照区と比較してECS区,ECEFS区で有意に低かった(P < 0.05).以上から,20%量のECSを配合飼料と置換しても生産性に影響なく,産肉の不快臭を減少させる可能性が示唆された.
著者
桝田 博司 高橋 政義 関野 美晴 川倉 一彦 福島 達哉 西村 實
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.409-413, 1989-05-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

無担体連続電気泳動装置を用いて,牛精子を50~60V/cm,10°Cで泳動分取した精子は,ほぼ2峯性に分布した.分取後の精子の生存性は,陽極側に近い第1ピーク前後で最も良好であり,にれを過ぎて第2ピークに近づくほど低下した.第1ピークの手前2~3の試験管に分取した精子のみを凍結して,受胎試験に供した結果,得られた産子は雌50頭および雄29頭で,雌の割合は63.3%であった.
著者
圓通 茂喜
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.542-547, 1989-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
17

牛の視力検査法を開発する目的で,試視力用のランドルト環を用いた牛の図形識別学習を,左右に飼槽が配置されたY字型迷路で実施した.学習させた図形は,ランドルト環とその「切れ目」を無くした図形である.前者を正のパネルとして餌の摂取できる飼槽に,後者を負のパネルとして餌の摂取できない飼槽に,それぞれ配置した.ただし,左右の飼槽の正負は,どちらか一方に中蓋をするという方法で無作為に変化させた.選択反応は,10試行を1セッションとして正反応数と誤反応数を調査した.識別の判定は,連続した3セッション(30試行)における正反応数が24回(適合度の検定,p<0.01)以上であることを基準にした.ただし,学習では,この基準が3回以上連続して連成されるまで訓練を続けた.まず,正のパネルのみを配置して予備学習をさせたのち,正と負のパネルを対比させた学習を行なった.その結果,供試牛は正のパネルの飼槽を識別するようにこなった.この学習が図形の「切れ目」以外の刺激によるものでないことを確認するため以下の実験を行なった.パネルを全く配置しない場合の実験においては,供試牛は餌の摂取できる飼槽を識別できなかった.今までのパネルを正から負,負から正に相互に改造したパネルでの選択反応の実験では,供試牛は改造後のパネルの図形に対応して正しく飼槽を選択した.これらの結果は,供試牛が「切れ目」を識別の刺激として受けとめていることを示していた.最後に,視力検査で「切れ目」が見分けられなくなった状況を想定して,いずれの飼槽にも「切れ目」の無い図形を配置したところ,供試牛は餌の摂取できる飼槽を選択できなかったが,追われなければ,なかなか選択路に進入しないという問題が生じた.この問題を避けるためには,「切れ目」の無い図形を正刺激として学習させるべきであると考えられた.
著者
高柳 誠二 守屋 和幸 野村 哲郎 道後 泰治 佐々木 義之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.286-290, 1996-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

品種全体に対して種雄牛の供給という役割を持ち,閉鎖牛群として維持されてきた兵庫県黒毛和種の集団構造を明らかにするために血統分析を行った.材料としては,1960,1970,1980および1988年に兵庫県で生産された黒毛和種登録雌牛から得られた無作為抽出標本(各年次200頭)を用いた.その結果,種雄牛の多様性は1960~1970年の間および1980~1988年の間で大きく減少した.また,F-統計量についてみると,平均近交係数(FIT)および無作為交配下で期待される近交係数(FST)は年次とともに上昇したが,1980年以降はFIT<FSTとなった.したがって,集団分化に起因する近交係数(FIS)および集団分化指数は次第に減少した.さらに,集団の有効な大きさは1960年から1988年の間に262から8となった.以上の結果より,兵庫県の黒毛和種集団では,遺伝的均一化および集団の有効な大きさの縮小が生じ,近年,その傾向がさらに強まっていることが明らかになった.
著者
新城 明久
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.144-148, 1977-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

沖繩における水牛の来歴,体型,毛色,飼養実態および用途を明らかにした.体尺測定は石垣島,西表島,小浜島,与那国島,沖繩島,南大東島および北大東島の7つの島で実施した.頭数は普通型水牛で雌94,雄39,去勢雄19,小型水牛で雌6,雄1頭の計159頭である,体尺は3才以上のものについて,ウシに準じ測定定した.1) 沖繩の水牛は台湾からの移住民により,台湾から1933年石垣島に輸入され,そこから各島に伝播した.2) 普通型水牛の雌,雄および去勢雄の体高は,それぞれ124,129,13cm,体長は143,151,146cm,胸囲は195,202,206cmであった.小型水牛では雌と雄の体高は115.114cm,体長は135,133cm,胸囲は176,184cmであった.3) 毛色はすべて灰色一色で変異はみられなかった.4) 飼養形態は湿地帯,河原,原野でのけい牧が最も多く,次いで屋敷周辺の防風林の下でのけい留である.また沖繩島の一部の地域では舎飼がなされ,与那国島では放牧もされている.5) 繁殖は主として与那国島の牧場で行われている.一般の農家は妊娠末期に使役ができないこと,子水牛が農作物を荒すことから繁殖を嫌っており,時たま,雄または雌の逃亡による自然交配がみられる程度である.6) 用途は主に水田耕作に使役され,そのほか農作物の運搬に輓用,駄用としての役畜である.肉は加工用と生肉用に消費されている.
著者
田中 清一 石井 和夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.15-17, 1953-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
11

Both germicidal Lamps made in Japan and the United States were effective in killing bacteria in the air and the tin-foil can prepared for the dried milk packaging, but less effective in fluid milk and dried milk except the mold in butter.In case of granular sugar, the thin layer of sugar and long time of irradiation neccesary to destroy bacteria and mold appeared to make this procedure difficult commercialy.American niade apparatus was stronger than Japanese one in its killing power.
著者
圓山 悠子 北 満夫 今井 裕 徳永 智之 角田 幸雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.757-762, 1991-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19

ブタ卵子の核移植を行なうために,体外で成熟させたブタ卵胞卵の単為発生誘起条件,ならびに抜き取った細胞質と除核未受精卵との電気的再融合条件について検討した.卵胞卵は屠場で得た卵巣から回収し,10%ブタ去勢雄血清,FSH,および抗生物質を含むTCM-199液中で44-48時間培養して成熟させ,第1極体の放出が認められた卵子を実験に供した.25-100V⁄mm,25μsecのパルスを2度与えることにより,体外成熟卵の79-100%に単為発生が誘起された.一方,7%濃度のェタノール処理は,卵胞卵の単為発生誘起には効果がなかった,ついで,8細胞期胚割球の融合を想定し,およそ1⁄8細胞質を吸引除去した除核未受精卵への除去細胞質の再融合条件を検討したところ,50-100V⁄mmの電圧下25-50μsecのパルスを2度与えることによって,高率(88-95%)に細胞融合が観察された.ブタ体外成熟卵子を用いた,1⁄8吸引除去細胞質の除核未受精卵への移植においては,50-100V⁄mm,25μsec,2回のパルス条件が適しているものと推察された.
著者
入江 正和 大本 邦介 熊谷 重夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.381-388, 1984
被引用文献数
1 1

豚の妊娠診断を,より簡単に,早期に,かつ的確に行なうために,小型軽量の人体用電子リニアスキャンを用いて超音波断層法(パルス法,Bモード)を実施した.超音波装置の探触子を無保定で起立している豚の下腹部に密着させて検査を行なったが,交配後18~21日で子宮内に胎嚢(Gestationa lSac, GS)の出現を確認することができ,これにより,あるいは,胎芽や胎児エコーの存在によって妊娠の有無を診断した結果,交配後22日以降では検査豚の99%について明確な診断を下すことができ,その適中率は100%であった.交配後25日まで平均GS径(y)は急激な増大を示し(1日約6mm),交配後の日数(x)と高い相関があり(r=0.89), y=6.97x-128.02なる回帰式が得られた.GSの形態は,発現時期では円形~楕円形のものが多かったが,以後不正形を呈するものが多くなった.GSの大きさは個体内でもさまざまであった.交配後25日頃には弱い胎芽エコーが確認できるようになり,妊娠診断も多数の大きなGSが存在するために容易であった.妊娠中期以降では,胎児の頭や体が明確に区別されるようになり,胎児の動きや胎児心臓の鼓動も観察でき,生死鑑別も可能であった.子宮内における胎児の向きや分布はさまざまであった.検査母豚における分娩頭数,妊娠期間等に異常はみられず,本法の安全性に問題はなかった.以上の成績から,超音波断層法は実用的ですぐれた豚の早期妊娠診断法であることがわかった.
著者
佐々木 義之 祝前 博明
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.93-99, 1980
被引用文献数
4

和牛産肉能力検定直接法の成績を用いて増体率(ADG)および飼料の利用能力に関する種雄牛の育種価を推定した.鳥取県種畜場および宮崎県総合農試肉畜支場で昭和46年から51年までの6年間に検定された雄子牛そらそれ135頭および174頭の成績を用いた.育種価を推定した種雄牛はそれぞれ14頭および23頭であった.検定成績は補正係数を用いて,あらかじめ検定期間,季節および開始時日齢につき補正を行った.育種価の推定法としてはRENDERSON (1973)のMixed Model Solution(MMS)による方法(BLUP法)を用いた.その際,相加的血縁行列を用いることにより種雄牛間の血縁を考慮したが,それをしなかった場合,さらに,単に通常の最小自乗分散分析法による最小自乗恒数を育種価推定値と見做す場合についても検討してみた。種雄牛分散に対する誤差分散の比(&sigma;&epsilon;2/&sigma;&mu;2)は全国の検定牛から推定された分散成分を用いて算出した.種雄牛相互間の平均血縁係数は鳥取および宮崎でそれぞれ14.0%および3.0%であった.ADGに関する育種価にもとづき種雄牛に序列をつけると鳥取および宮崎の上位3頭は,それぞれ昭栄1,吉光,吉徳および第18明石,前谷,初栄であった.しかしながら,相加的血縁行列を用いないBLUP法あるいは通常の最小自乗分散分析法による最小自乗恒数では,それらの序列が異なり種雄牛間に濃い血縁関係のある鳥取の場合は,とくにその違いが顕著であった.形質ごとに求めた種雄牛の序列を比較するとADGと終了時体重との間,TDN要求率とDCP要求率との間,さらにADGと飼料要求率との間には高い正の順位相関が認められたが,ADGと粗飼料摂取率との間の相関はむしろ負の傾向を示した.
著者
宮崎 昭 上坂 章次 池田 清隆
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.133-140, 1967

イネ科青刈飼料作物の硝酸塩含量の草種,系統による差異を知るために,春の青刈飼料4種,夏の青刈飼料3種をそれぞれ同一条件下で栽培しその硝酸塩を定量した.また青刈トウモロコシについては10系統を用いて同じくその硝酸塩を定量した.第1試験では春の青刈飼料としてエンバク,ライムギ,オオムギ,コムギを用い1965年4月6日から約10日目ごとに5回刈取り,その硝酸塩を定量した.その含量は全般に少なく乾物中KNO<sub>3</sub>として2%以下であり,生育に伴う変化もそれほど著しくはなかつた.しかし全期間を通して青刈コムギの硝酸塩含量は他の3種のそれより少なく,つねに1/2程度であつた.またコムギを除いて他の3種の作物の硝酸塩含量は刈取期ごとに異なつていたので,いずれが,より硝酸塩を蓄積しやすいということはなかつたが,出穂期にはオオムギにやや多くの硝酸塩が含まれており,乾物中KNO<sub>3</sub>として1.08%であつた.第2試験では夏の青刈飼料としてトウモロコシ,ソルガム,テオシントを用い1965年8月24日から約8日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.本試験では生育の初期に40日余り降雨がなかつたので,最初の2回の刈取期には硝酸塩含量はいくぶん少なかつたが,そののち雨が降ると非常に高くなり,乾物中KNO<sub>3</sub>として5%以上となつていた.しかしその後は生育期が進むにつれて減少し,出穂期ごろには1%前後であつた.つぎに草種による差異をみると,全期間にわたつて硝酸塩含量がつねに高いものはなかつたが,生育の後期にはソルガムにやや硝酸塩が多いようであつた.第3試験では青刈トウモロコシ10系統を用い,1965年6月22日から約7日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.まず青刈トウモロコシの硝酸塩含量は刈取期が早いときには乾物中KNO3として6~10%も含まれていたが,生育期が進むにつれて激減し,ふつう青刈飼料として用いる程度に生育したものではその硝酸塩含量は大低の場合1.5%以下であつた.つぎに系統による差異をみると,各刈取期ごとに硝酸塩を多く含むものとそうでないものと量あつた.そして生育期のはじめごろには系統間の差異は大きいようであつた.これら3つの試験において,青刈飼料作物の硝酸塩含量は環境条件によりかなり影響されるようにみうけられた.したがつて硝酸塩を多く蓄積しない作物をみつけていくには,草種,系統による硝酸塩蓄積の差異を知ることは大切であるが,硝酸塩蓄積に大きな影響を及ぼす環境条件を知ることも大切であろうと推察された.