著者
大久津 昌治 小柳 深
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.362-367, 1991

ddY系マウスの8細胞期胚から得た単一割球および2~8個の単一割球から作製した集合胚の発生能を検討した.培養開始後単一割球が桑実期に発生する時間は,2個集合胚よりも長かったが,胞胚腔を形成する時間は2個集合胚と差がみられなかった.一方,各集合胚では,集合に用いた割球数が多い胚ほど桑実期への発生は遅れたが,初期胚盤胞期に発生する時間は,2個集合胚を除き透明帯を除去した胚とほとんど同じであった,各集合胚の体積の増加率は,集合に用いた割球数が少ない胚ほど小さくなる傾向がみられた.胚盤胞期における集合胚の栄養芽細胞と内細胞塊の細胞数は,集合時の割球数の少ない胚ほど少なく,単一割球から発生した胞状の胚では,内細胞塊は全く認められなかった.桑実期あるいは初期胚盤胞期の胚をレシピエントに移植し,妊娠19日目に剖検した結果,単一割球由来の胚はすべて着床しなかったが,2個以上の単一割球を集合した胚からは生存胎児が得られた.これらのことから,マウス8細胞期胚の単一割球は胎児への発生能をもたないが,4細胞期胚の単一割球は胎児にまで発生する可能性のあることが示唆された.
著者
熊崎 一雄 佐々木 義之 山根 道資
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.489-495, 1973-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
7

農林省鳥取種畜牧場で生産された黒毛和種の雄子牛128頭,雌子牛125頭の生時体重,離乳前1日増体量および180日令補正離乳時体重について,最小自乗分析法を用いて産地別系統間の比較を行なった.結果を要約すると下記のとおりである.1. 生時体重では雄雌ともに両親の系統が有意な効果を示したが,離乳前1日増体量と離乳時体重に対しては母親の系統だけが雄子牛で有意な効果を示した.これは雄子牛の生時から離乳時までの発育に対して子牛自身の遺伝的な発育潜在能力よりも,母体効果の方がより重要なことを意味している.2. 父牛の系統としては岡山系と鳥取系,母牛の系統としては鳥取系がすぐれていた.兵庫系を父牛または母牛として用いた場合には他の系統より子牛の生時体重が小さかった.3. 系統間交配群は直系交配群より生時体重がややすぐれているようであったが,離乳前1日増体量と離乳時体重では系統間交配群の方が全般的に劣っていた.4. 系統間交配群の正逆交配では,岡山系(父)×兵庫系(母)および岡山系(父)×鳥取系(母)がその逆交配の場合より離乳時までの子牛の発育が良く,岡山系は子牛の発育潜在能力は高いが,母牛としての哺育能力の低いことがうかがわれた.これに対し鳥取系は父牛として用いた場合より母牛として用いた場合の方が全般的にすぐれた成績を示し,鳥取系の母牛の哺育能力のすぐれていることが示唆された.
著者
蓮沼 俊哉 久保 博文 伊奈 隆年 廣瀬 富雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.313-318, 2015-08-25 (Released:2015-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

食肉処理場に出荷されて肝臓に異常所見を認めなかった肥育去勢牛524頭の胆嚢内胆汁について胆汁量の測定を行い,品種,枝肉重量,および出荷日齢との関連性について検討した.また,そのうち111頭について胆汁酸組成の分析を行った.胆汁量は,品種による違いはあるものの,枝肉重量や出荷日齢との関連性は認められなかった.胆汁酸組成は,品種による差はないが,いずれの品種においても胆汁酸濃度の標準偏差が大きく,個体によって胆汁酸組成がかなり異なることが明らかになった.このことは,腸内細菌の持つ胆汁酸合成能力の違いによって生じていると考えられ,育成期での給与飼料や疾病,消化管の炎症の有無より腸内細菌叢が影響を受けた結果,出荷時の胆汁酸組成に影響を与える可能性が推察された.
著者
奥村 朋之 犬塚 雄介 西村 敏英 荒井 綜一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.360-367, 1996-04-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

本研究では真空包装した豚肉を,4°Cで30日間保存した時の官能的並びに理化学的変化を調べ,最適熟成期間について検討を行った.豚肉の味や香りは貯蔵期間20日目まで熟成が進むにつれ強くなり,好ましくなることが判明した.また,25日目まで微生物による劣化に問題はなかった.しかし,30日目に酸臭が発生し好ましくなかった.豚肉の軟らかさは熟成が進むにつれて増大した.また破断応力も30日目まで減少し続けた.遊離アミノ酸は30日目まで増加し続けたが,20日目以降増加割合が減少した.ペプチドは20日目まで増加し続けたが,それ以降の変化は認められなかった.これらの物質は,熟成による呈味向上に貢献していると推察された.イノシン酸は熟成により減少したが,20日目でも1.6μmol/gmeat残存しており,グルタミン酸との相乗効果により豚肉の呈味形成に寄与していると推察された.以上の結果から,豚肉を真空包装し4°Cで貯蔵した場合には,20日目の肉が官能的に最も優れていると結論された.
著者
本薗 幸広 波多野 和広 菅原 徳夫 石橋 晃
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.247-252, 1998-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

ブロイラー雛に2種類の有機クロム,ピコリン酸クロムおよび酵母クロムを給与した場合の発育および屠体成分への影響を調べた.アーバーエーカー1週齢の雌雛,各区20羽を6週齢まで群飼した.給与飼料は1週齢から3週齢までは粗タンパク質21.5%,代謝エネルギー3.10kcal/g,4週齢から6週齢までは粗タンパク質18.3%,代謝エネルギー3.20kcal/gの基礎飼料を用い,ピコリン酸クロムおよび酵母クロムをクロムとして0,200および400ppbになるように添加した.体重および飼料摂取量は毎週記録した.試験終了時に屠殺して,腹腔内脂肪と皮なしの胸肉および皮付きのもも肉の粗脂肪含量,粗タンパク質含量,水分含量を測定した.クロム添加区では飼料摂取量および増体重ともに低下する傾向がみられ,特に酵母クロムの添加区(400ppb)で増体重が有意に低下した.また,ピコリン酸クロムの添加区よりも酵母クロムの添加区の方が負の影響が大きかった.腹腔内脂肪および皮付きのもも肉と皮なしの胸肉の粗タンパク質含量および水分含量はクロム添加によって影響はうけなかった.皮付きのもも肉の粗脂肪含量はクロム添加の影響を受けなかったが,皮なしの胸肉の粗脂肪含量では飼料中のクロム含量が増加するにつれ低下した.
著者
戸津川 清 菅原 七郎 竹内 三郎
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.319-326, 1974

家兎胚盤胞の性鑑別及び移植により,産子の性支配を行うことを目的とし,その基礎実験としてトロホプラスト細胞の切り取り方法,同細胞の染色及び処理胚盤胞の回復等について検討した.1. 胚盤胞の固定のための装置として,吸引ピペットの先端にミリポァ•フィルターを接着することにより,胚盤胞の損傷を防ぐことができた.2. トロホブラスト細胞を切り取る方法としては,透明帯に針で穴を開け,その穴からトロホブラスト細胞を毛細管により引き出して,それを眼科用ハサミで切り取る方法が最良であった.3,セックス•クロマチンの有無による性鑑別比は1:1であった.4. 処理胚盤胞を各種培地中で培養した結果,子牛血清,家兎血清,イーグルMEM培地+20%子牛血清及びハムF12培地+10%子牛血清区において24時間後に,約70%の処理胚盤胞が回復した.これら4者の間には有意差(P⟩0.05)は認められなかった.5.処理後80%程度に縮小した胚盤胞(無処理時の体積を100%)は,大部分のものが,3~5時間後に回復し,50%に縮小した胚盤胞は,約12~24時間後に回復するもの(70%)と,萎縮してしまう2つの型に分れた.また,20%に縮小した胚盤胞は,大部分(80%)が萎縮した.6. 切り取る細胞数と回復の間には相関関係はなかった.
著者
LENG Ron A.
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.468, 2009-11-25 (Released:2010-05-25)

現在世界は,相互に関係し,作用しうる次の3つの危機に直面している : 気候変動,ピークオイル(安価なエネルギーの終末),そしてグローバルな資源枯渇.バランスの良い食事を心がけることはもちろんのこと,予想される将来の世界の人口に対しての食事を供給するために大きな変革が必要であることは言うまでもない.エネルギーに関連して,食料との関係を理解しなければならない.近代的な農業はエネルギー集約的な産業であり,エネルギー価格の高騰により影響を受けやすい.肥料の主要な原料は天然ガス(窒素肥料生産コストの70-90%)であり,生産資材の中で肥料は最大のエネルギーを使用する.安価な化石燃料により,食料や飼料(穀類がその80%を占める)は安価に生産することができた.しかし,原油は枯渇するに従って価格が上昇し,このような状況は大きく変化する.その結果,人の食料や企業的な畜産のための飼料の入手に大きな混乱を招きかねない.同時に食料や飼料生産のための肥沃な土地は多くの複合した問題のため収量の減少とともになくなりかねない.これらの問題とは : 気候変動による破壊的効果,農業用水の減少,土地の利用性と肥沃土の減少,バイオエタノール生産のための原料作物のための土地利用の拡大.ピークオイルの最悪の影響は気候変動による最悪の影響より早急に生じ,多くの国々における将来の畜産戦略に影響する主要な要因となりうる.畜産革命は,穀類の輸出国において発展したことと同様に,ブタや家禽,そして反芻家畜の生産をさせるために工業国から開発途上国に輸出される世界の余剰な(それ故安価な)穀類に基礎を置いている.しかしながら,もし人口が67億から90-100億に増加するならば,人が必要とする穀類(食料と工業原料)に対して余剰となるものは現在の発展シナリオとは異なるものとなり,家畜生産に利用しうる世界の穀類の量は高度に制限されると予想され,世界中における企業畜産の減少に繋がる.草食動物(主に反芻動物とウサギ)を基盤とする畜産業は,食料やバイオ燃料生産に使用されない幅広い農業副産物やバイオマスを活用することができるため,広範囲な発展が求められる.バイオマスの主要な資源として穀類のわらがある.これらは処理をすることで消化率を向上することができ,適正な栄養の添加により反芻家畜による利用性を高めることができる.人口が集中地に近いところで多様な産物を生産する地域毎に多様化した農業が将来の食料生産にとって最適と思われる.養分や水をリサイクルさせながら作物生産とともに反芻家畜と水産養殖の統合したシステムを開発しなければならない.投入資材と生産物が地元で加工されることが不可欠である.リグニンを多く含む副産物の処理のための省エネ型工場や高タンパク質副産物からバイパスタンパク質の地元での生産がそのような副産物をベースにした反芻家畜による肉生産や乳生産に必須である.作物の残さにより反芻家畜やウサギ,草食魚を飼育する統合システムが将来の動物性タンパク質生産として最も効率が良いと思われる.そのシステムは人口密度に応じて小規模農家あるいは大規模生産に適応させれば良い.反芻家畜の放牧は,農業副産物による家畜生産と同様の技術導入により生産を拡大しうる.また,環境にやさしい放牧管理技術の開発により土地の荒廃を解決しうる上,土壌中有機物として炭素固定を最適化しうる.反芻家畜生産の欠点として温室効果ガスであるメタンの排出がある.飼料の処理や,放牧草や副産物に補助飼料を加えることにより生産性を高めることができ,生産された畜産物あたりメタン産生を低減化できる.加えて,ルーメンにおける消化過程でのメタン産生を制限しうる研究も進められており,将来反芻家畜からのメタン産生を抑制することも可能かもしれない.
著者
中堀 祐香 高野 直樹 大江 史晃 齊藤 朋子 萩谷 功一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.409-414, 2018-11-25 (Released:2018-12-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究は,ばんえい競走馬における能力検定後馬体重(馬体重)を適切に説明する数学モデルの選択および遺伝率を推定することを目的とした.データは,2007年から2016年までに能力検定に合格した重種馬1,849頭の品種,性別,生産地市町村および馬体重の記録,および27,214個体を含む血縁個体である.測定時月齢は,能力検定合格回次の検定実施月と誕生月の記録から推定した.遺伝分析に用いる数学モデルを決定するため,測定年,性別,測定時月齢および生産地市町村を組み合わせた複数の母数効果モデルを仮定した.赤池の情報量規準,ベイズの情報量規準および決定係数より,遺伝分析には,測定年,性別および月齢を母数効果として含むアニマルモデルを採用した.馬体重の遺伝率推定値は,中程度(0.47)であったことから,遺伝的改良が可能な形質である.
著者
萩谷 功一 安宅 倭 河原 孝吉 後藤 裕作 鈴木 三義 白井 達夫 渥美 正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.345-351, 2004 (Released:2006-07-26)
参考文献数
17
被引用文献数
8 8

ホルスタイン種における月1回の検定記録から乳期全体の記録を予測する方法について比較検討した.データは,1990年から2002年までに独立行政法人家畜改良センターの4つの牧場で飼養されたホルスタイン種における771個体からの232,337の初産次の乳量における検定日記録である.乳期あたりの乳量は,分直後から分後305日までの乳量(以下,305日乳量)の合計とした.分析では,検定日間隔(Test Interval ; 以下,TI)法,最良予測(Best Prediction ; 以下,BP)法および多形質予測(Multiple Trait Prediction ; 以下,MTP)法からの推定値と真の305日乳量を比較検討した.MTP法における泌乳曲線の説明には,WoodまたはWilminkのモデルを採用した.TI法およびBP法を比較した場合,泌乳初期から中期の検定日記録に対してBP法が優れており,泌乳末期の検定日記録に対してTI法が適していた. MTP法は,Wilminkのモデルを採用した場合に,Woodのモデルを採用した場合よりも乳期全体において推定精度が高かった.Wilminkのモデルを採用したMTP法の推定精度は,泌乳初期から中期にかけてBP法と同程度であり,泌乳末期で他との比較において真の値にもっとも近似した.このことより,Wilminkのモデルを採用したMTP法は,乳期全体を通じて優れた推定法であることが示唆された.
著者
谷田 創 齋藤 拓 田中 智夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.148-156, 1992

繁殖豚の家族群飼管理モデル(ファミリーペンシステム)の有用性を検討することを目的とし,今回はこのシステムにおける子豚の吸乳行動について2つの実験を行なった.ファミリーペンを形成するにあたって,まず種雄豚2頭と繁殖雌豚7頭を群飼した.成豚への飼料給与は,コンピュタ自動給餌機を用いて個体別に行なった.実験1: 成豚,離乳後の子豚(離乳子豚),離乳前の子豚(哺乳子豚)からなるファミリー群を構成した.その結果,離乳子豚は,妊娠後期の雌豚に対して定期的に吸乳行動を起こし,この雌豚は分娩前に乳汁を分泌するようになり,その後,6頭の子豚を分娩したが,そのうち5頭は栄養不良により衰弱死した.また,離乳子豚が,哺乳子豚の吸乳行動とその母豚の授乳行動のサイクルに同期して,乳を盗むことが観察され,離乳した子豚をファミリーペンの中で継続して飼育することは,妊娠中の雌豚に悪影響を及ぼすだけでなく,哺乳子豚の吸乳行動をも阻害することが認められた.実験2: 実験1のシステムを改善し,離乳子豚を含めずに,成豚と,出生時期の近い異腹子豚だけからなるファミリー群を構成した.その結果,母豚の授乳行動には同期性が認められ,子豚の吸乳行動が各母豚に分散したため,1頭の母豚に集中することはなかった.また,妊娠中の雌豚に対して子豚が吸乳行動を起こすこともなかった.群内の繁殖雌豚の分娩時期をそろえ,離乳時に子豚を群れから隔離することにより,妊娠雌豚に対する吸乳行動を防止するとともに乳の盗み飲みも無くし,行動の自由を与えられた成豚と子豚を一つの群れとして総合的に管理することができた.今回の調査結果から,従来のストール飼育に代わる繁殖雌豚の管理法としてファミリーペンの実用化の可能性が示唆された.
著者
木部 久衛 野田 恵利子 唐澤 豊
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.882-888, 1981
被引用文献数
1

材料草の違いがサイレージの埋蔵過程における品質ならびに微生物相にどのような影響をおよぼすかを調査するため,出穂前期のオーチャードグラスを用い,これを切断長によりA区(0.5cm),B区(1.0cm),C区(3.0cm),およびD区(5.0cm)の4区に分け,それぞれ細切後大型試験管に詰め,発酵栓をほどこして56日間貯蔵した.得られた結果は以下のとおりである.1. 材料草を細切することにより埋蔵初期における乳酸菌のいちじるしい増殖を促し,pHを急速に低下させた.2. サイレージの埋蔵過程における発酵的品質は細切するほど向上し,切断長が0.5cmの場合に最もよい結果が得られた.サイレージのpH,揮発性塩基態窒素比率,酪酸ならびに全揮発性脂肪酸含量は,A区の場合がB, CおよびD区の場合に比較して最も低かった.また細切することにより乳酸含量は増加した.
著者
笠井 健吉 杉本 正仁 豊田 裕
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.885-890, 1979
被引用文献数
1

体外受精卵の移植によって得られた雌および雄マウスの繁殖能力について検討した.PMSG及びhCG(各5iu)を投与して過排卵を誘起したF<sub>1</sub>(C3H/He&times;C57BL/6J-at/at)成熟雌マウスを卵子提供雌とし,一方,精子提供雄としては,JCL:ICR系成熟雄マウスを用いて体外受精を行った.授精後6時間に第2極体放出の有無で判定した受精率は,80.9%(418/517)であった.培養した受精卵405個のうち受精後24時間で2細胞,48時間で4-8細胞及び~2時間で桑実胚あるいは初期胚盤胞へ発生したものはそれぞれ,99.8%,97.5%,及び97.0%であった.体外培養によって得られた桑実胚及び初期胚盤胞245個を21匹の偽妊娠雌マウスの子宮へ移植した結果,雄29匹及び雌23匹の合計52匹の新生子が得られた.生後3週で離乳した後に,7匹の雌とその同腹子の雄を選び2~3か月齢できようだい交配を行った.7匹の雌マウスのすべてが妊娠し,雄37匹及び雌41匹の健康な新生子が得られた.外形異常は認められず,3週齢での雄,雌の平均体重はそれぞれ,12.2&plusmn;2.7g及び12.3&plusmn;1.7g(Mean&plusmn;S.D.)で対照区と差のない成績であった.本研究の結果から,体外受精卵の移植によって得られた子の成熟後の交配,妊娠,分娩及び哺乳に関する一連の繁殖能力は正常であることが明らかにされた.
著者
大武 由之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.797-803, 1982-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
25

黒毛和種の去勢牛からの撓骨,〓骨および肋骨の各3点,食肉工場で豚枝肉から取り除いた上腕骨,大腿骨,肩甲骨,腰椎および肋骨の各3点,計24点の試料から,それぞれ骨髄脂質を抽出して試験に供した.試験した牛および豚の骨髄脂質は,ほとんど中性脂質から成っていた.牛骨髄脂質のおもな脂肪酸はC16:0,C16:1,C18:0およびC18:1で,とくにC18:1に富み,撓骨と〓骨のC18:0含量の少ないことが注目された.撓骨と〓骨との脂肪酸組成は類似していたが,肋骨は撓骨や〓骨に比べて,中性脂質ならびにリン脂質のいずれにおいてもC18:0が多くC18:1が少なかった.豚骨髄脂質のおもな脂肪酸はC16:0,C18:0,C18:1およびC18:2であって,中性脂質にあっても,リン脂質にあっても,解剖学的部位がちがっていても,それらの脂肪酸組域は比較的類似していた.概して,骨髄のリン脂質は中性脂質に比べてC16:1とC18:1が少なく,C20:3,C20:4,C22:5やC22:6などの多価不飽和脂肪酸が多かった.また,牛の骨髄脂質は豚の骨髄脂質よりもC16:1,,C18:1および飽和脂肪酸が多く,C16:0とC18:2が少なかった.牛骨髄のトリアシルグリセロール(TG)は,C16:0とC18:0は1-位置に多く結合し,C18:1は2-および3-位置に多く,C18:2は2-位置に多く存在していた.その結果,橈骨と〓骨とのTGの2-および3-位置は,90%近くが不飽和脂肪酸から成っていた.豚骨髄脂質ではC14:0,C16:0およびC16:1は,2-位置に多く結合し,一方C18:1は1-と3-位置に多く,C18:2もC18:1に似て1-と3-位置に多く存在していた.それらの結果,牛骨髄脂質とは対照的に,豚骨髄のTGでは2-位置は大部分飽和酸で占められ,3-位置は大部分不飽和酸で占められている.
著者
渡辺 彰 佐藤 博 常石 英作 松本 光人 滝本 勇治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.935-941, 1992-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
14

牛の屠殺方法が各種筋肉のpHおよびATP-関連化合物(ATP,アデノシン三りん酸;ADP,アデノシン二りん酸;AMP,アデノシン一りん酸;IMP,イノシン酸;Ado,アデノシン;Ino,イノシン;Hyp,ヒポキサンチン;Xan,キサンチン)の死後変化に与える影響を調べた.子牛9頭を供試し,麻酔処置により筋肉を採取したA区,屠殺時に延髄•脊髄破壊したP区および破壊処理なしに放血のみで屠殺したN区の3区に3頭ずつ分けた.採取した筋肉は胸最長筋(LD筋),大腰筋(PM筋)および大腿二頭筋(BF筋)で,採取後37°Cに保温して,pHおよびATP-関連化合物の経時変化を測定した.pH変化について,LDおよびBF筋では,処理による有意差は認められなかった.PM筋では,極限pHに到達するまで,pH値は,A区,N区,P区の順で高く推移し,屠殺1,3および4時間後では,A区がP区およびN区よりも有意(P<0.05)に高かった.また,ATP-関連化合物の分解程度をKa=(IMP+Ino+Hyp+Xan)/(ATP+ADP+AMP+IMP+Ino+Hyp+Xan)とすれば,PM筋のKaでは,屠殺1時間後でP区がN区よりも有意(P<0.01)に高かった,LD筋では2時間後にP区がN区よりも高い傾向があった.BF筋では,3時間以内で処理間に差異は認められなかった.これらのことよりPM筋は屠殺時の延髄•脊髄破壊の影響を強く受けてATPの分解が進んでいることが明らかとなった.
著者
石田 藍子 芦原 茜 井上 寛暁 松本 光史 田島 清
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.47-54, 2018-02-25 (Released:2018-03-23)
参考文献数
32

授乳期の母豚に,トウモロコシ全量を飼料用玄米と代替した飼料を給与し,母豚および子豚の飼養成績,免疫指標および発情回帰に及ぼす影響を検討した.LW種の雌豚13頭を供試し,トウモロコシを65%配合したトウモロコシ主体飼料を給与する対照区と,玄米主体飼料を給与する玄米区へ振り分け,分娩1日後から21日後の離乳まで試験飼料を給与した.分娩3日および7日後に乳および血液を採取した.その結果,母豚の飼養成績に対照区と玄米区に有意な差はなく,また発情回帰日数および背脂肪厚の変化量にも有意な差はなかった.子豚の増体重にも処理区間に有意な差はなかった.血液成分では,総タンパク質が玄米区で有意に高く,血漿中のIgG濃度が玄米区で有意に高かった.以上より,授乳期の母豚へ飼料中のトウモロコシを玄米と代替した飼料を給与しても,飼養成績および発情回帰に影響がないが,母豚の血中のIgG濃度は増加することが明らかとなった.