著者
青木 亮磨 北澤 正樹 高橋 聡 吉川 厚 山村 雅幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.159-164, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
7

教育においてデータを活用して教育施策に活用する動きが近年盛んになっており,多くの教育に関するデータが雑誌や本,WEB上で公開されている.本研究では大学入試に関するデータを用いた大学の入試難易度序列の決定手法を提案する.各高校の公開している大学合格実績データは高校の実力と大学入試の難易度に依存する系統的な欠損である.この系統的な欠損は高校がターゲットとする大学のみ合格率が高い性質を持つ.ここで,高校からの合格率の高い大学の入試難易度が似ていると考えると,合格率の高い部分にのみ注目することで系統的な欠損のあるデータで入試難易度を比較できる.この点から,距離を用いた並び替え手法,合格率を用いた並び替え手法,レイティングを用いた序列決定手法の3つの手法を作成した.得られた序列を塾が公開する偏差値による序列との順位相関で評価した結果,各手法での順位相関は0.83,0.85,0.89という値になった.今後は精度向上を目指して,同じ順位に分類された大学の更なる序列付けをする手法を検討していく.
著者
岡本 牧子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.37-40, 2019

<p>本研究では中学校理科第1分野の光学の学習に着目し,光を利用して密度分布を伴う空間を可視化するシュリーレン法を教材化することで,光学分野の苦手意識を少しでも克服し,普段見えないものを工夫して観察するという面白さを生徒達に感じてもらう事を目的としている.本論文では,生井と松尾らによる著書よりシュリーレン法の原理について確認し,市販の文房具を用いることにより学校現場で使用できるよう教材への応用を試みた.可視化対象をろうそくによる炎上方の上昇気流とした場合,定性的な気流の可視化には十分な精度を得ることができた.また本教材の中学3年生による使用感などを調査した結果,中学生が操作するのに十分な簡略さを備え,光学分野で習う凸レンズの学習への興味・関心を引き出せることがわかった.教材の有効性を確かめるためには,可視化対象,光線の作図能力の定着,STEM教科間で連携した指導内容や効果を調査する必要がある.</p>
著者
吉田 安規良 上地 飛夢 吉田 はるか
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.53-58, 2019

<p>透視天球儀にどのようなウェアラブルカメラを組み込むと,天球儀を外から観察しながら,想像に頼ることなく天球儀の内側からの様子も観察できる教具として利用可能なのかを判別するために,Wi-Fi接続により遠隔操作可能なウェアラブルカメラによる透視天球儀内部からの映像の差を確認した.総じてカタログスペック上の画角が大きいものほど実際に確認できる映像の視野が広く,対角画角が185°以上となっているような,できる限り広角で撮影できるウェアラブルカメラが望ましいことが分かった.ただしカタログスペックが同じであっても,得られる画像の視野の広さが同じとは限らないため,実際に得られる画像や透視天球儀への取り付け方法を確認する必要がある.画角が狭い安価なウェアラブルカメラに安価な広角レンズを取り付けるというような簡単に思いつく工夫では視野の狭さは改善しなかった.実際に使用する際には白飛びを防ぐため,照明をつけなくても天球儀上の文字が読める程度の明るさの部屋で使用し,窓の外の明るさが画像に影響しないようにする必要がある.</p>
著者
清野 樹恵 中嶋 彩華 久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.117-120, 2017-12-02 (Released:2018-07-01)
参考文献数
8

本研究は,小学校の理科授業場面における児童のメタ認知的方略の使用に着目し,他の学習方略(認知的方略,外的リソース方略)の使用との関係性について検討することを目的とした。公立小学校1 校の第6 学年の児童を対象に質問紙調査を行い,回答は全て5 件法で求めた。分析の対象者は95名であった。分析の結果,モニタリング方略の使用には作業方略,認知的方略,人的リソース方略が,コントロール方略の使用には認知的方略,人的リソース方略が有意な正の影響を与えていること,作業方略のみがコントロール方略の使用に対し有意な影響を与えていないことが示された。
著者
山本 輝太郎 石川 幹人
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.5-8, 2018

<p>たとえばPISA(OECD 生徒の学習到達度調査)では,生徒が習得を目指す科学的リテラシーに関して,科学・技術に関する議論に積極的に参加できる態度の形成が望ましいとしている.また,議論を建設的に行うために,誤った論法=誤謬に陥らないようにすることが重要である.そこで,筆者らが構築・運営している「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」におけるコメントを事例とし,科学が関与する議論においてどのような誤謬がみられるかについて分析した.結果,議論を閲覧する第三者に向けて自身の主張の正当性を演出するような誤謬が多くみられた.これを,現代社会におけるネット上での議論に特有の問題として位置づけ,こうした方面を重点的に学習する教材開発を目指している.<tt> </tt></p>
著者
服部 真一 杉田 明史 平賀 伸夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.1-4, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
1

小学校5年生理科「電磁石の性質」の単元末に,既習の知識を全て活用して,課題を解決できる教材の開発を行った。それを用いて,実際に授業を実践し,授業記録や授業中に書いたワークシートから,知識が活用できたか分析した。その結果,本教材は知識活用できる電磁石教材の1つとして効果があることが確かめられた。
著者
植原 俊晴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.37-42, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本研究では,中学生を対象にした金属の学習で既有知識と新しい知識を意図的に相互交渉させる学習活動を取り入れた授業を行い,その学習効果や学習者の動機づけに対する影響について検討した.具体的には,前者について,1.金属のルール適用の促進,2.金属のルール想起の促進の2点,後者について,1.実験結果の意外性,2.実験の楽しさの2点について,それぞれ調査を行った.その結果,学習効果について,学習者のルール適用は促進されたが.ルール想起に対する促進的効果は認められなかった.一方,動機づけについて,学習者は実験結果をある程度の意外感を持って受け止め,実験に対して一定の楽しさを感じていた.したがって,知識構造の中にあらかじめ学習活動の結果を説明し得る知識を準備しておくことは,学習者の動機づけを低減させないことが示唆された.
著者
大宮 輝雄 奥村 清
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.33-38, 1995-03-11 (Released:2017-11-17)
参考文献数
18

平成5年版科学技術白書で若者の科学技術離れが指摘され,高等学校では物理嫌い・物理離れが取り上げられている。そこで,物理履修者の減少の実態を物理教科書の採択数や共通一次・センター試験の受験率から調べ,その要因については科学・教育雑誌や研究紀要,論文などの文献から分析した。さらに大学生,高校生へのアンケート結果から物理を嫌う理由について調べるとともに,学習指導要領物理の目標の具体的取扱い,教科書の電気分野における記述方法,内容の扱い方,公式や図・グラフの数等における歴史的変遷から物理嫌いの要因について考察をした。その結果,物理嫌いの要因には,系統性重視となったことで,論理的内容が増加したため記号・公式が多用され,それらの理解・暗記不足となったことが,要因の一つとしてあげられることが分った。そこで,物理量記号の特性を調べるとともに,記号・公式を理解・暗記しやすくするための工夫として語源や歴史からの意味づけを行った。
著者
河原井 俊丞 宮本 直樹
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.55-60, 2019

<p>本研究では,「問い」の生成プロセスに関する実証的研究において授業中の発話と授業後の「問い」の生成に関するインタビューの内容をワークシートとアンケート調査の記述内容に併せ,それらをもとに「問い」の生成プロセスの検討を行うことで,生徒の実態に即した「問い」の生成プロセスを示し,どのようなプロセスが存在しているのかを明らかにすることができた.</p>
著者
久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.33-36, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

本研究は,高校生の理科学習場面における達成目標傾向,
著者
恩田 宗生 小原 知治 鈴木 由美子 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1-6, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
10

グループ学習の後に個人活動を加える集散型学習の学習効果、及び個人の協同作業に対する認識の違いが集散型学習に与える影響について、コンセンサスゲームを用いて分析した。集散型学習によってコンセンサスゲームの解答が有意に正解に近づき、さらに学習に対する自信や納得度が高まるなどの学習効果が明らかになった。また、協同効用因子が高い群と低い群では、思考の深まりの認識に大きな差があることが明らかになった。これらの調査から、グループ学習後に自分の言葉で思考をまとめ直す集散型学習の重要性とその留意点が示唆された。
著者
田中 真也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.81-84, 2018-03-25 (Released:2018-07-01)
参考文献数
7

中学生が「証明」に対して抵抗感をもってしまう原因の一つに,論証における納得の仕方や説得の仕方と ,生徒がこれまでの経験や教科等の学習を通して得た納得の仕方や説得の仕方とのギャップに生徒は戸惑っていることがあるのではないかと考え,本格的な論証指導が始まる前の中学1年で,論証の納得・説得の仕方のよさを感得させておく可能性を探った。論証の機能のうち「発見」に注目した授業づくりをし,生徒の納得・説得の仕方を大切にしつつ,論証の納得・説得の仕方のよさを感得させることを目的に授業を実践した。その結果,論証による説明だけが納得できる説明だとする生徒が増えるなど,生徒の実態に望ましい変化があった。
著者
前田 珠里 吉村 基 福本 有花 中城 満
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.39-42, 2015

本研究では、理科授業における測定誤差の扱い方に焦点を当て、測定誤差を解消するための具体的な手法について明らかにすることを目的とした。そこで、測定誤差を克服するための仮説として、「実験精度の向上」と「子どもの納得」という二つの視点に着目し、実際の授業記録から実験方法や指導方法の妥当性を分析・検討した。その結果、「あえて実験の精度を落とすこと」や「実験結果を一覧にし、客観的に考察させること」、「測定誤差の範囲をあらかじめ設定すること」などが測定誤差を克服するために効果的な手立てであるということが明らかになった。
著者
東原 義訓
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.39-42, 1998-06-13 (Released:2017-11-17)

小・中学校における情報教育、コンピュータ利用教育を推進するための人的環境整備として、メディア・コーディネータの果たす役割が大きく、その成果が注目されつつある。ここでは、長野県内のメディア・コーディネータ(コンピュータ加配教員)の役割とその効果を報告する。
著者
大西 俊弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.45-48, 2011 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

高等学校の数学科では、2012年度から学年進行で新教育課程が実施されている。新教育課程では数学的活動が重視されているが、それを具体化するねらいで高等学校では、数学Ⅰと数学Aにおいて、新しく「課題学習」が導入された。各社の教科書において「課題学習」がどのように扱われているのかを調査した。課題学習の事例の1つとして、「油分け算」を取り上げ、いろいろな解法があることについて述べる。
著者
隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.69-72, 2003
参考文献数
10

教育実習生による小学校理科授業を事例に,フィリピンで利用可能な英語字幕入り授業ビデオ・リソースを開発し,フィリピンの国立大学の学生を対象に,ビデオ・リソースを活用した理科授業に関するワークショップを開催した。そして,ビデオの理科授業について自由討論を行い,彼らの理科授業観を探り,フィリピンの大学生の理科授業観を日本の大学生(教育実習生)の理科授業観と比較することを試みた。その結果,フィリピンの大学生の方が日本の大学生よりも授業に対する見方が具体的で多様であることがわかった。そして,日本において近年提案されている理科授業観察の観点や評価の観点を紹介しながら,ビデオ・リソースの利用可能性について考察を行った。
著者
西野 秀昭
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.111-116, 2010 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

ヤマトヒメミミズ Enchytraeus japonensis は,有性生殖に加え,「破片分離」による数体節からなる断片から完全な個体を再生するユニークな無性生殖によっても増殖することができる.中学校理科「生物の成長とふえかた」の単元において,有性生殖は身近でもあり,学習における類例には事欠かない.しかし無性生殖は,単細胞生物の細胞分裂などの類例しかなく,有性生殖は多細胞生物で行い,無性生殖は単細胞生物で行うような印象となってしまう.生殖の方法は,生物種と同様に多様であり,子孫の残し方の工夫は,生命尊重の概念や生命への畏敬の念にもつながる学習の対象となるものと考えられる.本研究では,破片分離という珍しい無性生殖法に着目し,ヤマトヒメミミズの破片分離の人為的誘導を中学校でも実施できるよう検討した.また,ヤマトヒメミミズの破片分離を導く別の簡易な方法として,培地の寒天を市販の食用寒天に置き換える方法を見いだした.この方法では,市販品を用いることで,経費も安価で済み,生徒各人が自分の寒天培地上でヤマトヒメミミズを培養するだけで破片分離による無性生殖を導くことができる.「生物の成長とふえかた」単元への導入に際し,本研究で示す観察・実験は寒天培地にヤマトヒメミミズを移して観察するのみで容易であり,実験の成功体験もほぼ確実であることから,中学校理科授業での効果が期待される.
著者
山田 貴人 安藤 秀俊
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.41-44, 2015

理科と数学を関連付ける代表的な例として「単位」をあげ,「単位」に着目した理科と数学に関する意識について調査したところ,多くの生徒が問題文から式を作る立式ことに苦手意識をもっており,その着眼点に単位を意識できていないことがわかった。同時に,単位の意味を学ぶことに興味を示し,その活用性に期待感を持っている生徒が多かった。このことから,単位の組み立て方を短時間に反復して思考することができる教材(単位カード)を開発し教育的効果を検証している。中学生に実践したところ,活動中の生徒達からは思考を重ね新たな単位の組み立て方に気付く様子が多く見られた。